更新日:2024年10月29日
PMDDになりやすい人とは?PMSとの違いや症状、悪化を防ぐ方法も解説
- PMDDになりやすい人は生活習慣が乱れていたりストレスを抱えていたりする
- PMDDはPMSの一種であり、症状が重く生活に支障をきたすレベルのもの
- PMDDとPMSは「症状の重さ」「診断基準」「治療法」などが異なる
- PMDDはホルモンバランスの変化が影響するとされるが明確な原因は解明されていない
- PMDDを根本的に改善するためには医療機関で受診することがおすすめ
「生理前にイライラしたり気分が落ち込んだりしてしまい、日常生活に支障が出てしまう」「生理前の不調をどのように対処すればいいかわからない」など、PMDDの症状や対策に悩んでいる方もいるでしょう。PMDDはPMSの一種で、PMSよりも症状が強いことが特徴です。
この記事では、PMDDになりやすい人の特徴や症状を軽減する方法、治療法などを解説します。生理前の不調を改善できるよう、ぜひ参考にしてください。
PMDDになりやすい人の特徴
PMDDになりやすい人の特徴には、主に以下の7点が挙げられます。
- 腸内環境のバランスが崩れている
- 食生活が乱れている
- 生活習慣が乱れている
- ストレスを抱えている
- 体重の増減が激しい
- 家族がPMSやPMDDを経験している
- うつや不安症などの既往歴がある
それぞれの特徴について見ていきましょう。
腸内環境のバランスが崩れている
腸内環境のバランスが崩れていると、PMDDになりやすいと考えられます。
精神を安定させる神経伝達ホルモンのセロトニンは、主に腸で生成されています。セロトニンは、腸内で「トリプトファン」というアミノ酸から合成され、この合成は腸内の善玉菌が担っています。
セロトニンは脳の活動に深く関わり感情の調整を行うため、腸内環境が乱れるとセロトニン不足を引き起こし、PMDDの症状を誘発する場合があります。
食生活が乱れている
PMDDになりやすい人の特徴として、食生活が乱れていることも挙げられるでしょう。とくに、偏った食生活により以下の栄養素が不足すると、PMDDの発症につながると考えられます。
- ビタミンB6
- マグネシウム
- カルシウム
- オメガ-3脂肪酸
インスタント食品やジャンクフードを食べることが多い人は、上記のような栄養素が不足してしまいがちです。それにより、PMDDになりやすいことを知っておきましょう。
生活習慣が乱れている
生活習慣が乱れている人も、PMDDになりやすいといえるでしょう。睡眠不足や運動不足、過度な飲酒などの生活習慣の乱れは、ホルモンバランスを崩す要因であるとされるためです。ホルモンバランスが乱れると、PMDDの症状があらわれやすいと考えられます。
ストレスを抱えている
ストレスを抱えていることは、PMDDになりやすい人の特徴の1つです。慢性的なストレスや強い心理的な負担は、ホルモンバランスや神経伝達物質に影響するとされており、PMDDのリスクを高める原因になり得ます。
体重の増減が激しい
体重の増減が激しい傾向にあることも、PMDDになりやすい人の特徴として挙げられるでしょう。短期間での体重の増減は、ホルモンバランスに影響を与えてしまい、PMDDの症状を引き起こしかねません。
家族がPMSやPMDDを経験している
PMDDのなりやすさには、遺伝的要素もあると考えられています。家族がPMSやPMDDを経験している場合、通常よりも発症のリスクが高いと考えられます。
うつや不安症などの既往歴がある
うつや不安症などの既往歴がある人も、PMDDになりやすいとされています。うつや不安症などの既往歴がある人は、ホルモンの変動に対する感受性が高いとされているためです。
そもそもPMDDとは
PMDDとは「Premenstrual Dysphoric Disorder」の略語で、日本語に訳すと「月経前不快気分障害」です。月経前に重い精神的および身体的な症状があらわれる疾患をさします。
PMDDはPMS(月経前症候群)の一種で、PMSは多くの女性が経験するものの、PMDDはその症状がさらに重く、日常生活に支障をきたすほどであることが特徴です。精神疾患の診断基準・診断分類である、「DSM-5」では抑うつ障害群にカテゴリーされています。
【チェックリスト】PMDDの症状
自分がPMDDに該当するかどうか、以下のチェックリストで確認してみましょう。月経前5日間に以下のような精神および身体症状にあてはまる症状がみられ、月経開始後4日以内に症状が消失する場合は、PMDDの可能性があるといえます。
【精神症状】
- イライラする
- 気分のアップダウンが激しい
- 情緒不安定になる
- 衝動的な発言を抑えられない
- 不眠もしくは過眠状態である
- 自分の言動に否定的になる
- 過食を止められない
- この世からいなくなりたいと考える
- 周囲に激しく八つ当たりをする
【身体症状】
- 乳房の張りや痛みを感じる
- 頭が痛い
- 腹部の膨満感がある
- 関節痛・筋肉痛がある
- 体重が増加している
- 手足がむくむ
- のぼせる
- 強い倦怠感を覚える
PMDDの原因
PMDDの原因は、はっきりとは解明されていません。月経のある女性であれば、誰もが発症の可能性があるとされています。
一般的には、月経周期中に卵胞ホルモン(エストロゲン)や黄体ホルモン(プロゲステロン)のバランスが変化することが関係しているのではないかといわれています。これらの生理周期に起きる正常なホルモンバランスの変化に、身体や精神が強く反応してしまうことで、PMDDを発症するというものです。
PMDDとPMSとの違い
PMDDはPMSの一種ですが、「症状の重さ」「診断基準」「治療法」などに違いがあります。両者の違いを確認しましょう。
症状の重さ
PMDDとPMSでは、症状の重さが異なります。PMDDの症状はPMSよりも極めて重く、PMSのイライラや軽度の気分の落ち込み、身体の不快感などの症状が、PMDDでは日常生活に支障をきたすレベルであらわれます。その違いは、とくに精神的な症状において顕著です。PMDDでは強い不安やパニック、激しい落ち込みなどがみられます。
診断基準
明確な診断基準の有無も、PMDDとPMSの違いです。PMSには、「(何らかの検査値が)正常範囲を超えていたら要治療」といった明確な診断基準はありません。
一方、PMDDには、DSM-5(精神障害の診断・統計マニュアル)に明確な診断基準が示されています。月経前の症状が少なくとも5つ以上みられ、そのうちの1つ以上が「抑うつ・イライラ・不安・情緒不安定」のいずれかにあてはまると、PMDDと診断されます。
治療法
治療法も、PMDDとPMSの違いの1つです。
PMSの治療に用いられるのは、主に生活習慣の改善やストレスを軽減する取り組みなどの自然療法です。他方、PMDDの治療はホルモン療法や抗うつ薬、認知行動療法などを組み合わせるケースが多くみられます。
PMDDになりやすい人が症状を軽減する方法
PMDDになりやすい人が症状を軽減する方法として挙げられるのは、以下の6つです。
- 適度に運動する
- 飲酒と喫煙を控える
- カフェインを摂り過ぎない
- 腸内環境を整える
- カルシウムやトリプトファンなどを摂取する
- 十分な睡眠を取る
それぞれの方法について解説します。
適度に運動する
PMDDになりやすい人におすすめなのは、適度な運動習慣を取り入れることです。適度に運動することで、ストレスの軽減や生理中のむくみなどを緩和する効果が期待できます。また、ウォーキングなどの程よい運動は、セロトニンを増やすためにも効果的です。
飲酒と喫煙を控える
PMDDになりやすいことを自覚している場合、無理のない範囲で飲酒と喫煙を控えることを検討しましょう。
喫煙者のPMDD発症率は、非喫煙者と比較して高いとされています。アルコールについても、摂取によってPMDDやPMS症状の悪化を招くとされているため、できる限り飲酒量を減らすことが望ましいでしょう。
カフェインを摂り過ぎない
PMDDの症状が出始める生理1週間前から生理中にかけては、カフェインが含まれているコーヒーや紅茶などは飲む量を減らしましょう。カフェインには神経を興奮させる働きがあり、摂り過ぎるとPMDDを悪化させるリスクがあります。代わりにノンカフェインコーヒーやハーブティーなどを飲むようにするとよいでしょう。
腸内環境を整える
PMDDの症状を緩和するために、腸内環境を整えることも大切です。腸内では、精神を安定させる神経伝達ホルモンである、セロトニンが多く生成されているためです。
腸内環境を整えるには、乳酸菌をはじめとする善玉菌を多く含むヨーグルトや納豆、味噌などの発酵食品を積極的に食べることをおすすめします。
カルシウムやトリプトファンなどを摂取する
カルシウムやトリプトファンは、PMDDの症状を和らげる効果が期待されています。
カルシウムはホルモンバランスを安定させたり、神経伝達や筋肉の機能を正常に保ったりする栄養素です。カルシウムは牛乳や小魚、ヨーグルトなどを食べることで摂取できます。
精神を安定させる神経伝達ホルモンのセロトニンを作る際に必要になるのが、アミノ酸の一種であるトリプトファンです。トリプトファンは体内で生成できないため、以下のような食品から積極的に摂取するように心がけましょう。
- 鶏肉
- 卵
- 牛乳・チーズ・ヨーグルト
- カツオ・マグロ
- 豆腐・納豆・味噌
栄養バランスをとるため、特定の食品だけを食べるのは避け、肉や魚、野菜、果物、大豆製品などをまんべんなく日々の食事に取り入れることを心掛けましょう。
十分な睡眠を取る
PMDDになりやすい人は、十分な睡眠を取ることで症状を軽減できる可能性があります。
一般的に必要とされる6~8時間の睡眠時間を確保するのはもちろん、睡眠の質も意識する必要があるでしょう。睡眠時間を確保できていても、睡眠の質が低い場合、寝不足に感じる場合があります。睡眠の質を向上させるためには、食事は睡眠の3時間前までに終わらせる、就寝前にスマホやPCなどを触らないといったことが大切です。
PMDDの治療・対処法
PMDDの治療・対処法には、症状の記録や生活習慣の改善などの薬を使わない対処法と、漢方薬や抗うつ剤などの薬を使う治療法があります。それぞれの方法を解説します。
薬を使わない対処法
薬を使わない対処法として有効なのは、症状を記録する方法です。症状を記録し続けることで、月経周期の何日目くらいにどのような症状が起こりやすいかがわかります。それにより、どのタイミングで何をしたらよいかの対処を講じられるでしょう。
栄養バランスを考慮した食事や適度な運動など生活習慣を見直すことでも、PMDDの症状を軽減する効果が期待できます。
薬を使う治療法
PMDDの治療に用いられる漢方薬は、抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)や加味逍遙散(かみしょうようさん)などです。抑肝散加陳皮半夏は、イライラしたり、気分が落ち着かなかったりする方に向いています。加味逍遙散は、イライラしがちで怒りっぽい、のぼせやすい、不安を感じるという方に適しています。
そのほか、抗うつ薬や低用量ピルなどで治療することもあります。抗うつ薬の一種であるSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)は、放出されたセロトニンが次の神経に到達する前に吸収されるのを防ぐことで、脳内のセロトニン濃度を高める薬剤です。低用量ピルは排卵を抑制し、PMSやPMDDの出現を防ぎます。
まとめ
PMDDになりやすい人の特徴には、「腸内環境のバランスが崩れている」「食生活など生活習慣が乱れている」「ストレスを抱えている」などが挙げられます。また、家族がPMSやPMDDを経験していたり、自身にうつや不安症などの既往歴があったりする場合も発症のリスクが高まることが特徴です。
PMDDは、症状の記録や生活習慣の改善などの薬を使わない対処法と、漢方薬や抗うつ剤などの薬を使う治療法があります。PMDDの症状がつらく悩んでいる場合は、専門の医療機関で抗うつ剤や低用量ピルを処方してもらうことを検討しましょう。
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この記事の監修:
慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会専門医。 医師免許取得後、株式会社ボストンコンサルティンググループにてヘルスケア・IT領域にて従事。 現在は慶應義塾大学医学部助教、美容医療を主としたJSKINクリニックを経営・監修、オンライン診療サービス「レバクリ」監修。
<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS) 日本乳癌学会
※この記事は産婦人科専門医と共同で監修を行いました