更新日:2026年09月02日

頬骨周辺に左右対称に広がるモヤモヤとした肌の影が気になっていませんか?それは女性ホルモンのバランスや日々の摩擦、紫外線によって発生する「肝斑(かんぱん)」かもしれません。肝斑は一般的なシミとは発生の仕組みが異なり、間違ったお手入れをするとかえって目立ってしまうリスクがあります。 この記事では、肝斑に用いられる飲み薬・塗り薬の種類と選び方、市販薬と処方薬の違い、注意点やセルフケアの方法を整理しています。健やかな素肌を目指すための参考にしてください。 ※この記事で紹介するトラネキサム酸・シナール・ハイドロキノン・トレチノインは、いずれも肝斑への承認適応(国から正式に認められた効能・効果)を持ちません。自由診療では、これらの医薬品が持つ作用に着目し、肝斑へのアプローチとして選ばれることがあります。なお、レバクリの提携医療機関で取り扱う美容皮膚治療で承認適応外として処方している薬は、トラネキサム酸・シナール・ハイチオール・ユベラ・グルタチオンの内服薬5種類です。

この記事の監修
慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会認定専門医。 医師免許取得後、外資系経営コンサルティング企業のヘルスケア・IT領域にて従事。 慶應義塾大学医学部助教を経て、美容医療を主としたJSKINクリニック、及びオンライン診療サービス「レバクリ」監修。
<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS)

肝斑は、主に30〜40代の女性の頬骨周辺に、左右対称にモヤモヤと広がるシミです。一般的なシミ(老人性色素斑)は長年の紫外線ダメージでできますが、肝斑は紫外線のほか、「女性ホルモンの乱れ」や洗顔などの「摩擦」が引き金となって発生します。境界線が曖昧で、輪郭がはっきりしないのが特徴です。
肝斑対策の基本は、シミのもととなる黒い色素(メラニン)の生成を抑える「飲み薬(内服薬)」を正しく服用することです。女性ホルモンや摩擦、紫外線によって起きてしまうメラニンの過剰な製造サインを、身体の内側からブロックしてアプローチするためです。 すでに表面に出てきている部分には「塗り薬」を組み合わせてお手入れする方法もあります。

「手っ取り早くレーザーでケアしたい」と思う方もいらっしゃいますが、一般的に肝斑はレーザー単独での改善は難しいとされています。
参考:日本形成外科学会等「形成外科診療ガイドライン 1 2021年版 皮膚疾患/頭頸部・顔面疾患/体幹・四肢疾患」 参考:日本美容外科皮膚科学会等「美容医療診療指針(令和三年度改訂版)美容皮膚科診療指針」
肝斑の内服ケアにおいて、臨床研究で有効性が報告され、広く用いられているのがトラネキサム酸です。

肝斑は、女性ホルモンの乱れや洗顔時の摩擦、紫外線といった刺激を受けると、「プラスミン」というシミの発生を促す物質が活性化します。プラスミンが活性化すると、シミのもとである「メラニン」を生成する「メラノサイト」を刺激する物質(プロスタグランジン等)が増加し、メラニン生成が促されます。 トラネキサム酸はこのプラスミンの働きを抑えることで、メラニンが過剰につくられる連鎖を抑制する働きが期待できます。

シナールの主成分であるビタミンCは、すでにできてしまった肝斑の黒い色素を、薄くする働き(還元作用)が期待できます。双方の役割を組み合わせることで、より満足度の高いインナーケアとなるでしょう。
塗り薬は、気になる部分へダイレクトに働きかけるアプローチとして自由診療では広く処方されています。

ハイドロキノンは、メラニンがつくられる酵素の働きを抑えることで、肌の透明感のサポートが期待される塗り薬です。 すでに蓄積されてしまったメラニンへのアプローチだけでなく、メラニンの過剰な生成そのものをブロックする働きがあるため、これから新しくできる肝斑を防ぎたいときにも適しています。
トレチノインはビタミンAの仲間で、肌の生まれ変わり(ターンオーバー)のサイクルを促す塗り薬です。肌の代謝をサポートすることで、古い角質のスムーズな排出を助けることが期待されます。
肝斑の飲み薬・塗り薬は、それぞれ知っておくべきリスクと注意点があります。医師の適切な指導のもとで使用することが重要です。
肝斑の飲み薬「トラネキサム酸」や「シナール(ビタミンC・ビタミンB5)」は、体質や体調により副作用が出る場合もあります。
トラネキサム酸には止血作用があるため、ごく稀に血栓(血の塊)ができることがあります。そのため、脳梗塞や心筋梗塞などの既往がある方は服用できません。また、喫煙されている方や低用量ピルを飲んでいる方は血栓症のリスクが高まる可能性があるため注意が必要です。服用前には医師の診察を受け、自身の体質や併用薬を正確に伝えましょう。
胃腸がデリケートな方や空腹時に服用した場合などは、消化器系が刺激されて胃の不快感、悪心(吐き気)、嘔吐、下痢などの症状が出るケースがあります。
塗り薬は肌に直接作用するため、使い方を誤るとデリケートな肝斑を刺激してしまうリスクがあります。
トレチノインを使い始めると、肌が赤くなったり、皮が剥けたりする「レチノイド反応」が起こることがあります。この状態のときに強い刺激や紫外線を浴びてしまうと、かえって肌の負担(炎症後の色素沈着)になるリスクがあります。使用量や頻度は医師の指示を厳守してください。
「早く変化を出したいから」と、極端に高濃度のハイドロキノンを使用すると、肌が部分的に白く抜ける白斑(はくはん)を招く危険性があります。ハイドロキノンは必ず医師の処方・指導のもとで使用することが重要です。
参考:独立行政法人医薬品医療機器総合機構「トラネキサム酸錠「YD」 添付文書」 参考:独立行政法人医薬品医療機器総合機構「シナール配合錠・シナール配合顆粒 添付文書」

肝斑のケアに用いられるトラネキサム酸の内服薬は市販薬と処方薬の2種類があります。それぞれに特徴があるため、違いを理解して自分に合った選択をすることが大切です。

市販薬と医療用医薬品では、配合されている成分にも違いがあります。 市販薬の多くは、トラネキサム酸に加えてビタミンCやビタミンB群などが配合された「複合薬」となっています。これらのビタミン類にはメラニンの生成を抑えたり、肌のターンオーバーを助けたりする作用が期待できる一方で、特定の成分にアレルギーがある方には適さない場合があります。
一方、医療用医薬品では、トラネキサム酸単体で処方されることが多く、必要に応じてほかの薬と組み合わせて処方されます。
市販のトラネキサム酸配合薬は、血栓症のリスクを管理するために服用期間が「最長2ヶ月まで」と定められており、一度休薬しなければならないルールがあります。医療用医薬品であれば、医師の診察のもとで肌の状態や健康上のリスクを確認しながら、2ヶ月を超えて継続できる可能性がある点がメリットです。
参考:独立行政法人医薬品医療機器総合機構「トラネキサム酸錠「YD」 添付文書」 参考:独立行政法人医薬品医療機器総合機構「トランサミン錠・トランサミンカプセル・トランサミン散 添付文書」 参考:第一三共ヘルスケア「トランシーノEX」
肝斑の薬を入手できる「対面診療」・「市販薬」・「オンライン診療(レバクリ)」の3つについて、安全性・費用・時間(手間)の観点で整理しました。

皮膚科やクリニックへの通院は、医師が直接肌の状態を確認したうえで処方してもらえるため、悩みに合った薬を選んでもらいやすい点がメリットです。ただし、予約・通院・待ち時間といった手間や、施設によっては費用が高くなるケースがあります。
ドラッグストアなどで手軽に購入できる反面、医療用医薬品は入手できません。すでにできてしまった肝斑を積極的に改善したい場合は、市販薬だけでは対応に限界がある場合があります。肌状態の確認や診療も受けられないため、自己判断でシミの種類を誤るリスクもあります。
オンライン診療は、スマホ1つで医師の診察から薬の受け取りまで、すべて自宅で完結できる便利な選択肢です。通院時間を省きながら、医師の診察のもとで適切な医療用医薬品の処方を受けられる場合があります。
肌を健やかな状態に保ち、新しいトラブルを防ぐためには、原因となる「肌への摩擦」と「女性ホルモンや体調の乱れ」、「紫外線」を防ぐ日々のセルフケアを並行することが欠かせません。

肌をゴシゴシこする洗顔は、デリケートな肝斑にとって大きな刺激となります。日常的なスキンケアやメイクの場面で摩擦を減らすことが重要です。 洗顔・クレンジング:洗顔料をしっかりと泡立て、手が直接肌に触れないよう泡のクッションを転がすように優しく洗いましょう。洗い流す際も、ぬるま湯を肌にそっと当てるイメージで行います。 スキンケア:化粧水や乳液をパンパンと叩くパッティングは肌への刺激となります。手のひら全体で肌を優しく包み込み、じんわりと浸透させる「ハンドプレス」を意識してください。 メイク:ファンデーションやチークを塗る際、ブラシやパフを強く肌に押し付けたり、横に引きずったりしないようにしましょう。特に肝斑が出やすい頬骨のあたりは、軽いタッチで「置くように」メイクするのが大切です。
ストレスや睡眠不足は、自律神経を乱して女性ホルモンのバランスに影響を与える一因になります。夜は湯船に浸かってリラックスする、決まった時間に就寝するなど、脳と身体を休める環境づくりを心がけてください。 食事面では、健やかな肌を維持するために栄養バランスの良い食事を心がけることが大切です。抗酸化作用の高いビタミン類(ビタミンCやE)を多く含む緑黄色野菜などを積極的に取り入れることで、肌の健康のサポートが期待できます。
紫外線はメラニンの生成を促して肝斑を悪化させる最大の要因となるため、曇りの日や室内でも365日毎日日焼け止めを塗り、特に肝斑が出やすい頬骨の周りは優しく重ね塗りして徹底的に肌を保護しましょう。
肝斑は非常にデリケートなシミのため、正しくケアすることがとても重要です。 まずは専門の医師のもとであなたのシミが本当に肝斑なのかを見極めてもらい、そのうえで体質に合ったケアの仕方やお薬の処方について、医師へご相談ください。
肝斑の内服薬はどのくらいの期間飲めば効果が出ますか?
肌の生まれ変わり(ターンオーバー)は一般的に28〜56日程度といわれており、年齢や体調によっても異なります。
トラネキサム酸を中心とした内服ケアは、このターンオーバーのサイクルが複数回にわたって正常に繰り返されることで、蓄積されたメラニンが少しずつ外へ排出されていく仕組みです。そのため、まずは肌が新しく入れ替わるサイクルを目安に、2〜3ヶ月ほど適切に継続することで肌のコンディションの変化を感じ始める場合があります。
肝斑対策の薬は妊活中や妊娠中、授乳中にも飲めますか?
妊活中や妊娠中、授乳中の服用については、美容目的での安全性が確立されていないため、自己判断は避け、必ず医師にご相談ください。特に肝斑治療は緊急性の高いものではないため、この時期は治療を見合わせる選択肢も含めて医師へご相談ください。なお、レバクリの提携医療機関で取り扱う美容皮膚治療では、妊娠中・授乳中の方への処方は行っておりません。
独立行政法人医薬品医療機器総合機構「トラネキサム酸錠「YD」 添付文書」 独立行政法人医薬品医療機器総合機構「トランサミン錠・トランサミンカプセル・トランサミン散 添付文書」 独立行政法人医薬品医療機器総合機構「シナール配合錠・シナール配合顆粒 添付文書」 第一三共ヘルスケア「トランシーノEX」 日本形成外科学会等「形成外科診療ガイドライン 1 2021年版 皮膚疾患/頭頸部・顔面疾患/体幹・四肢疾患」 日本美容外科皮膚科学会等「美容医療診療指針(令和三年度改訂版)美容皮膚科診療指針」