更新日:2026年08月26日

この記事の監修
慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会認定専門医。 医師免許取得後、外資系経営コンサルティング企業のヘルスケア・IT領域にて従事。 慶應義塾大学医学部助教を経て、美容医療を主としたJSKINクリニック、及びオンライン診療サービス「レバクリ」監修。
<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS)
「新型コロナに感染してから勃起力が落ちた気がする」と後遺症を疑っている方もいるかもしれません。新型コロナ感染はEDの発症リスクを高めると複数の研究で報告されていますが、多くは時間とともに改善する傾向があります。この記事では、コロナ感染とEDの関係やメカニズム、回復までの期間、ワクチンとの関係、対処法・治療法を解説します。
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新型コロナ感染はEDの発症リスクを高めると、国内外の研究で報告されています。 ただし、感染した人が必ずEDになるわけではなく、もしEDになった場合でも、多くは時間の経過とともに回復する傾向があります。新型コロナ感染とEDの関係を示す研究データを紹介します。
新型コロナ感染とEDの新規発症リスクの上昇の関連について、海外の大規模調査では、コロナから回復した男性は、感染していない男性に比べてEDを新たに発症するリスクが27%高かったと報告されています。 国内でも、日本人の研究チームが新型コロナ感染後に入院した男性609人を調査し、そのうち116人(19.0%)がEDを自覚したと報告しています。 これらの結果から、新型コロナ感染がEDの一因となりうると考えられています。
参考:National Library of Medicine「Prior COVID-19 infection associated with increased risk of newly diagnosed erectile dysfunction」 National Library of Medicine「Prevalence of erectile dysfunction as long-COVID symptom in hospitalized Japanese patients」
新型コロナに感染するとEDの発症リスクが高まりますが、新型コロナに感染した人が必ずEDになるわけではありません。正しい情報を知ったうえで、気になる症状が続く場合に医師へ相談すると良いでしょう。
新型コロナ感染は、血管やホルモン、精神面など複合的に関わり、さまざまな臓器に影響を及ぼす結果、勃起に必要な血流やホルモンにも作用してEDを引き起こすと考えられています。 新型コロナがEDを引き起こすメカニズムを、3つに分けて紹介します。
新型コロナ感染後のEDで有力な原因と考えられているのが、血管内皮機能の障害による血流の低下です。 勃起は、性的刺激を受けて陰茎の血管を広げる物質であるcGMP(環状グアノシン一リン酸)が増え、海綿体に血液が流れ込むことで起こりますが、新型コロナは、血管の内側にある内皮細胞に多いACE2受容体を介して感染し、血管内皮を傷つけることで勃起に必要な血流が妨げられると考えられています。 血流がスムーズに保てなくなることで、性的刺激を受けたときに血液が十分に海綿体に流れ込むことができず、EDにつながるとされています。
参考:厚生労働省「勃起障害のメカニズムと病態生理等」 National Library of Medicine「A possible mechanism of erectile dysfunction in coronavirus disease-19: Cavernosal smooth muscle damage: A pilot study」
新型コロナ感染によって精巣がダメージを受けてテストステロンが減少する可能性が示唆されている研究も、海外で発表されています。研究によってはテストステロンに明確な差がみられなかったものもあり、ホルモンだけがEDの原因とは限りませんが、テストステロンは性機能に関わるホルモンのため、低下すると勃起機能に影響する可能性はあります。
参考:National Library of Medicine「Impact of COVID-19 on testicular function: a systematic review and meta-analysis」
新型コロナへの感染や療養に伴う精神的ストレスも、EDの一因と考えられています。 感染への不安や生活の変化による抑うつ・ストレスは、脳から陰茎への性的な興奮の伝達を妨げ、勃起しづらくなる心因性EDにつながることがあります。 実際に、新型コロナ感染後にEDがみられた人では抑うつの傾向が強かったとする報告もあります。 身体面だけでなく、心理面の影響もEDと関わりがあります。
参考:Scientific Reports「Erectile dysfunction after COVID-19 recovery: A follow-up study」
新型コロナ感染後のEDは、時間の経過とともに回復する傾向があると報告されています。 後遺症としてのEDは一時的なケースが多いとされますが、回復までの期間には個人差があります。回復の見通しと、回復までに影響しうる要因を解説します。
新型コロナ感染後のEDは、時間の経過とともに改善する傾向がみられます。 健康な男性を対象にした海外研究では、感染から6ヶ月未満の男性は勃起機能が低下していた一方、感染から1年以上経った男性は未感染の男性と差がみられなかったと報告されています。 厚生労働省も、新型コロナの罹患後症状(いわゆる後遺症)は時間の経過とともに回復するケースが多いとしています。 すぐに変化を感じられなくても、経過をみながら対処していくことが大切です。
参考:厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の罹患後症状(いわゆる後遺症)に関するQ&A」 National Library of Medicine「Does Post-COVID-19 Erectile Dysfunction Improve over Time?」
回復までの期間には、年齢や心理面などが影響すると報告されています。 海外研究では、新型コロナから回復して3ヶ月経ってもEDが続く要因として、40歳以上であることと、感染をきっかけに抑うつがみられたことが挙げられており、年齢による血管の変化や、感染に伴う精神的な落ち込みが、回復に影響する可能性があります。 症状が長引く場合や不安が強い場合は、経過を待つだけでなく医師に相談することを検討しましょう。
参考:National Library of Medicine「Erectile Dysfunction After COVID-19 Recovery: A Follow-up Study」

新型コロナ感染後のEDは一時的なことが多く、時間の経過とともに改善していくケースがよくみられます。ただし、症状が長く続いた例も報告されており、また新型コロナ以外の原因が隠れている可能性もあります。気になる症状が続くときは医師に相談してください。
新型コロナワクチンの接種は、EDのリスクと関連しないと報告されています。 2022年に発表された海外の調査では、ワクチン接種とEDの発症リスクに関連はみられませんでした。また、ワクチン接種が精子の量や濃度、運動率に影響するという報告も確認されていません。
参考:National Library of Medicine「COVID-19 vaccination not associated with increased risk of erectile dysfunction」
EDの原因は新型コロナ感染だけとは限らず、さまざまな要因が考えられます。 EDは原因によって大きく4つのタイプに分けられ、複数が重なることも少なくありません。 自分のEDがどのタイプに近いかを確認して、適切な対処につなげましょう。
器質性EDは、血管や神経の障害、ホルモンの異常などによって起こるタイプです。 糖尿病・高血圧・脂質異常症などの生活習慣病が進むと動脈硬化が起こり、陰茎の血流が悪くなって勃起しづらくなります。また、脳血管障害や脊髄損傷、前立腺の手術などで神経が障害を受けることも原因になります。 加齢とともにリスクが高まるタイプです。
心因性EDは、心理的なストレスやプレッシャーが原因で起こるタイプです。 仕事の悩みや人間関係の不安、過去の性行為での失敗経験などが影響します。身体に問題がなくても、緊張や不安によって脳からの興奮がうまく伝わらず、勃起しづらくなることがあり、若い世代にもみられます。
薬剤性EDは、服用している薬の影響で起こるタイプです。 降圧剤や抗うつ剤、精神安定剤、睡眠薬などの一部には、副作用としてEDを引き起こすものがあります。服用中の薬が気になる場合でも、自己判断で中断せず、かかりつけ医に相談してください。
混合性EDは、身体的な要因と心理的な要因が重なって起こるタイプです。 たとえば、加齢による血管の衰え(身体的要因)に、仕事の疲れやストレス(心理的要因)が加わって発症するケースがあります。 新型コロナ感染後のEDも、血管の障害と感染への不安などが重なる混合性の側面があると考えられます。 原因が複数あるため、特定が難しいタイプです。
新型コロナ感染後のEDには、生活習慣の見直しで対処する方法と医療機関で治療する方法があります。新型コロナ後遺症としてのEDは時間とともに改善する傾向がありますが、症状が続く場合はセルフケアに加えて、医療機関を受診することも検討してみましょう。
EDの対処では、まず生活習慣を見直すことが基本です。 適度な運動・バランスの良い食事・十分な睡眠・節酒・禁煙によって、血管の状態を改善できる可能性があります。とくに肥満の解消や有酸素運動、禁煙は、勃起機能の改善に役立つとされています。 生活習慣の改善は、新型コロナ感染後の体調回復にもつながるメリットもあります。
生活習慣を見直しても改善しない場合は、ED治療薬による治療も選択肢に挙がります。 日本で承認されているED治療薬は、PDE5(ホスホジエステラーゼ5)阻害薬と呼ばれる3種類(シルデナフィル・バルデナフィル・タダラフィル)です。 PDE5阻害薬は、性的刺激によって増加したcGMPの分解を抑え、陰茎海綿体平滑筋の弛緩と血液流入を補助します。性的刺激を受けたときに勃起する力を補う薬で、飲めば自動的に勃起するわけではありません。 硝酸剤(狭心症の薬)などと併用できないほか、一部の新型コロナ治療薬と併用できない場合もあるため、服用中の薬は必ず医師に伝えてください。 効果や持続時間は薬ごとに異なるため、医師と相談して選びましょう。
参考:独立行政法人 医薬品医療機器総合機構「バイアグラ錠50mg/25mg 添付文書」
ED治療薬が使えない場合や効果が不十分な場合には、治療薬以外の方法もあります。陰圧式の勃起補助具で物理的に血液を集める方法や、陰茎海綿体に薬剤を注射する方法などです。 ただし、これらは国内で一般的な方法とはいえず、対応できる医療機関も限られます。まずは医師に相談し、自分に合った方法を検討することが大切です。
新型コロナ感染後のEDについて、よく挙がる質問に回答します。
新型コロナ感染後のEDはどのくらいで治りますか?
個人差がありますが、時間の経過とともに改善する傾向が報告されています。海外研究では、感染から1年以上経つと未感染の男性と勃起機能に差がみられなくなったとされています。症状が長く続く場合は医師に相談しましょう。
新型コロナ治療薬とED治療薬は一緒に飲めますか?
併用できない組み合わせがあります。一部の新型コロナ治療薬は、ED治療薬と併用すると作用が強く出るおそれがあり、併用禁忌とされているものがあります。
ED治療薬を服用中に新型コロナの薬を勧められた際は、必ず医師に伝えてください。
新型コロナ感染でテストステロン(男性ホルモン)は低下しますか?
低下する可能性が指摘されています。ウイルスが精巣にダメージを与え、テストステロンが減少する可能性が示唆されています。ただし、明確な差がみられなかったとする研究もあり、はっきりとは分かっていません。
新型コロナ感染は、EDの発症リスクを高めると国内外の研究で報告されています。 背景には、血管内皮の障害や男性ホルモンの低下、感染に伴う精神的ストレスなどが関わると考えられます。 一方で、新型コロナ感染の後遺症として起こるEDは、時間の経過とともに改善する傾向があり、ワクチン接種とEDの関連は示されていません。 生活習慣の見直しに加え、症状が続く場合はED治療薬の服用も選択肢の一つです。 気になる症状が続く場合は、自己判断せず医師への相談を検討してみてください。
National Library of Medicine「Prior COVID-19 infection associated with increased risk of newly diagnosed erectile dysfunction(Hebert KJ, et al. 2024)」
National Library of Medicine「Prevalence of erectile dysfunction as long-COVID symptom in hospitalized Japanese patients」
厚生労働省「勃起障害のメカニズムと病態生理等」
National Library of Medicine「A possible mechanism of erectile dysfunction in coronavirus disease-19: Cavernosal smooth muscle damage: A pilot study」
National Library of Medicine「Impact of COVID-19 on testicular function: a systematic review and meta-analysis」
Scientific Reports「Erectile dysfunction after COVID-19 recovery: A follow-up study」
厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の罹患後症状(いわゆる後遺症)に関するQ&A」
National Library of Medicine「Does Post-COVID-19 Erectile Dysfunction Improve over Time?」
National Library of Medicine「COVID-19 vaccination not associated with increased risk of erectile dysfunction」
独立行政法人 医薬品医療機器総合機構「バイアグラ錠50mg/25mg 添付文書」
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ED治療は、「シルデナフィル」・「パルデナフィル」・「タダラフィル」などの成分を含む内服薬で行うのが一般的です。
治療の必要性について
EDは生活習慣病が原因の場合もあるため、放置せず早期に専門医へ相談することが推奨されます。
費用について
ED治療は、保険適用外の「自由診療」です。対面診療では、薬代(1錠500~2,000円ほど)の他に初診料や診察料がかかる場合があります。
ED治療は専門医への相談が不可欠ですが、デリケートな悩みであるため、通院の待ち時間や人目が心理的ハードルとなる場合も少なくありません。
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