更新日:2024年03月06日
心因性EDの原因は?治療方法や必要性についても解説
- 心因性EDは、過去のトラウマやストレス、精神的な疾患が原因で起こる
- 心因性EDの治療法の第一選択は、ED治療薬を内服すること
- ED治療薬を内服しても効果を感じにくい場合は、心理療法などを併用する
- 性行為の失敗によるトラウマは、ED治療薬を内服し成功体験を重ねることで改善できる
過去の性行為に失敗してから、次の性行為も失敗するのではないかと不安な方もいるのではないでしょうか。性行為がうまくいかない原因は、もしかすると心因性EDである可能性があります。
本記事では、心因性EDの症状やきっかけ、治療方法を詳しく解説します。心因性EDの予防方法や、そのままにしておくリスクについても紹介するので、参考にしてください。
心因性EDとは
心因性EDとは、ストレスやトラウマ、うつ病などの精神疾患により、性的刺激の興奮がうまく陰茎に伝達されず、勃起が発現しない状態を指します。自慰行為はできるがパートナーとの性行為だけうまくいかない「妻だけED」など、特定の状況で発生することもあります。
ストレスが溜まった状態が続くと、心因性EDだけでなく、うつ病などの気分障害を発症する可能性があります。
東邦大学医療センターによると、若い男性が発症するEDには心因性が多く、30代のEDを発症している方の9割が心因性EDとされています。
心因性EDは、血管や神経に障害がある器質性EDとは異なり、朝立ちは起こります。睡眠にはレム睡眠とノンレム睡眠があり、レム睡眠中は自律神経の影響により反射的に勃起が発現します。EDかもしれないと感じていて、朝立ちもない場合は、器質性のEDである可能性が高いです。
そのほかのEDの原因については、「EDとはどんな症状?原因別の治療方法からセルフケアについても解説」でも詳しく解説しています。
参考:東邦大学医療センター「勃起障害」
心因性EDの原因
心因性EDの原因には、心理的要因と精神的な疾患があります。それぞれ解説します。
心理的要因
心理的な原因には、人間関係や仕事、妊活のプレッシャーなどの日常的なストレスが原因となる現実心因と、過去のトラウマなど心の奥に潜む不安や悲しみが原因となる深層心因があります。
それぞれ解説します。
現実心因
現実心因となるストレスには、下記のようなものがあります。
- 性行為に対しての緊張・焦り
- 妊活への期待
- 妊娠への不安
- 人間関係や仕事でのストレス
上記の原因でストレスを感じることで、性行為の際に勃起ができなくなることがあります。リラックスできない状態で性行為を試みても、勃起の発現が難しいのです。性的な興奮や刺激はリラックスした状態でなければ脳に伝えられません。
現実心因によるEDは、薬物療法が第一の選択肢になります。ED治療薬を内服すると勃起が発現し性行為ができるようになるでしょう。
深層心因
深層心因としては、下記のようなものが挙げられます。
- 性行為や女性器への嫌悪感
- 過去のトラウマ(PTSD)
- 性行為を失敗した経験によるネガティブ・不安
深層心因が原因となる場合は、自分で原因に気付いているときもあれば、自分自身で原因に気付いていないこともあります。
精神的な疾患
心因性EDの原因となる精神的な疾患は、以下のとおりです。
- うつ病
- 不安神経症
- 統合失調症
- アルコール依存症
- 薬物依存症
うつ病をはじめとするの精神的な疾患が原因でEDを発症している場合は、ED治療薬に加えて抗うつ薬を内服して治療を行います。
ただし、抗うつ薬には、副作用により薬剤性EDを発症するケースがあると報告されています。もし、抗うつ薬を内服して勃起が発現しないと感じた場合は、自己判断で服用を中断せず医師に相談し、内服の変更が可能か相談してみましょう。
抗うつ剤とEDの関係性について詳しく知りたい方は、「抗うつ剤でEDになる?その理由と対策を解説」も参考にしてみてください。
参考:日本性機能学会/日本泌尿器科学会「ED診療ガイドライン[第3版]」
心因性ED治療の必要性
心因性EDを発症したのにもかかわらず治療をしない場合、性行為ができない状態が続いてストレスが溜まってしまい、うつ状態などの不安障害に発展することがあります。
うつ状態や不安障害を発症すると、性行為ができないだけでなく、日常生活にも支障をきたす可能性があります。うつ状態になってしまうと、自分に自信がなくなり仕事や他者とのコミュニケーションもうまくいかなくなってしまいます。仕事や人間関係がうまくいかないことでストレスがたまるという、負の連鎖を繰り返すことになる可能性もあります。
精神的・身体的に健康を維持した状態で生活するためにも、EDを治療しておきましょう。
心因性EDの治療法
心因性EDの治療方法は下記の3つです。
- 薬物療法
- 心理療法
- パートナーと相談する
1つずつ解説します。
薬物療法
薬物治療では、バイアグラやレビトラ、シアリスなどのED治療薬(PDE5阻害薬)を使用します。ED治療薬は、勃起を抑えるPDE5という酵素の働きを阻害し、勃起ができるように促すものです。
ED治療薬を内服することで、「勃起ができる」と自信を持った状態でリラックスして性行為に臨めるでしょう。心因性EDの方は、過去の性行為で失敗した経験を不安に感じており、この不安を繰り返す悪循環に陥ることが多いです。
ED治療薬を内服して成功体験を重ねることが、不安を断ち切るために重要です。成功体験を重ねていくと、以前失敗したことを気にせず性行為を行うことができ、心因性EDの改善に期待できます。
薬物療法を行う際は、食事にも注意が必要です。レビトラは高脂肪の食事を摂取した後に、バイアグラはどんな食事でも接種後に内服すると、効果が低下する可能性があります。
バイアグラやレビトラ、シアリスにはジェネリック製剤があります。レビトラは現在販売が中止されており、同成分のジェネリック製剤であるバルデナフィルのみ内服可能です。薬の費用を抑えたい方はジェネリックを検討すると良いでしょう。
バイアグラの効果については、「ED治療薬であるバイアグラの効果や服用方法・副作用・注意点について解説」を参照してください。
心理療法
心理療法は、カウンセリングや行動療法などの精神的な面からアプローチする方法です。心因性EDの原因である性行為のトラウマや女性への嫌悪感には、心理療法による治療が効果的なケースがあります。
カウンセリングや行動療法を受けて、自分では気が付かなかったストレスの原因がわかると、ストレス改善に向けた行動につなげることができます。ストレスが改善できると、EDの改善も期待できるでしょう。
カウンセリングは、カウンセラーと1対1で実施したり、パートナーを含めた3名で行ったりします。1度のカウンセリングで効果を感じることは少ないとされており、複数回受けると効果を実感できる可能性が高くなるでしょう。
心理療法は、薬物療法で効果を実感できなかった際に併用して行われるケースが多く、基本的にED治療には薬物療法が優先になります。
ED診療ガイドラインでは、薬物療法と心理療法を併用して治療する方法と、薬物療法のみで治療する方法を比較した場合、併用した治療の方が効果が高いと報告されています。
参考:日本性機能学会/日本泌尿器科学会「ED診療ガイドライン[第3版]」
パートナーと相談する
パートナーと相談して、パートナーからの理解を得たり、性行為以外の愛情表現を考えたりすることも、心因性EDの治療法の1つです。心因性EDは、パートナーとの性行為がうまくいかず発症することも多いからです。
性行為以外の愛情表現ができると、「性行為ができないといけない」という緊張状態から解放されるため、リラックスした状態で性行為に臨めます。
性行為以外の愛情表現として下記の方法があります。
- 手をつなぐ
- ハグやキスをする
- 同じベッドで過ごす
- 「好き」「愛してる」などの声をかける
パートナーと相談して、お互いが満足できる生活を過ごせるようにしましょう。
心因性EDを日常生活で予防する方法
心因性EDを日常生活で予防する方法は下記の2つです。
- ストレス解消方法を見つける
- 職場や家族と円滑な人間関係を構築する
ストレス解消方法は、ドライブや釣り、スポーツ、音楽鑑賞、映画鑑賞と個人によってさまざまです。あなたが楽しいと感じることに取り組み、ストレスを解消できると心因性EDの予防に期待できるでしょう。
また、職場や家族との円滑な人間関係の構築も重要です。特に、職場において多くの人がストレスを感じており、厚生労働省によると、仕事でストレスを感じていると回答した方は82.2%となっています。
職場で円滑な人間関係を構築するには、挨拶を自分から行ったり、困ったことを相談したり、相手の話を聞いていますという姿勢を見せたりすることが重要です。また、日ごろから挨拶をしておくと困ったときに相談しやすくなります。相手と話そうとする姿勢を見せていると、相手からの印象が良くなるでしょう。
仕事のときだけでなく、家族と過ごすときにも同じことをすると、円滑な人間関係を構築でき、ストレスを溜めない生活に近づけるでしょう。
参考:厚生労働省「令和4年 労働安全衛生調査(実態調査)の概況」
まとめ
心因性EDの原因は、性行為の失敗による緊張、仕事でのストレス、性行為への不安、うつ病などの精神的な疾患です。EDを治療せずに長期間過ごしていると、うつ病や統合失調症など日常生活に支障をきたすこともあります。
心因性EDの治療は、ED治療薬の内服が第一選択であり、効果を実感できなかった場合にカウンセリングなどの心理療法が行われます。性行為の失敗によるトラウマは、ED治療薬や心理療法を行い、性行為が成功すると解消できる可能性があります。
「心因性EDになったかもしれない」と悩んでいる方はクリニックに相談してみましょう。
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この記事の監修:
慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会専門医。 医師免許取得後、株式会社ボストンコンサルティンググループにてヘルスケア・IT領域にて従事。 現在は慶應義塾大学医学部助教、美容医療を主としたJSKINクリニックを経営・監修、オンライン診療サービス「レバクリ」監修。
<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS) 日本乳癌学会