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更新日:2024/01/10

AGA治療薬の種類・効果・副作用について、ガイドラインに基づいて解説

この記事のまとめ
  • AGA治療薬には5αリダクターゼの活動の阻害、頭皮の環境改善といった効果がある
  • AGA治療薬には先発薬と後発薬があり、効果・副作用はどちらも同じ
  • AGA治療薬には内服薬と外用薬があり、医師に相談して薬を選ぶと良い
  • AGA治療薬の主な入手方法は、医療機関、オンライン処方、個人輸入の3つ

AGAは自然な治癒を見込むのは難しく、改善させるためには医薬品による治療が効果的です。AGA治療薬にはいくつかの種類があるため、それぞれの薬の役割を知り、自分に適したぴったりな治療薬を選択できるといえるでしょう。ここでは、AGA治療薬の役割とAGA治療薬の種類について詳しくご紹介します。副作用についても併せてお伝えするため、参考にしてください。

AGA治療薬の役割

AGA治療薬の種類について知る前に、まずはAGA治療薬がどのように効果を発揮するのか、その作用機序を知っておきましょうAGA治療薬は主に以下の2つの作用機序によって効果を発揮します。

  • 5αリダクターゼの活動を阻害する
  • 頭皮の環境を整える

ここでは、この作用機序に沿って治療薬の役割を解説します。

5αリダクターゼの活動を阻害する

5αリダクターゼとは、男性ホルモンの一種であるテストステロンを、AGAの原因となるジヒドロテストステロンへと変換する酵素です。5αリダクターゼの活動を阻害することで、ジヒドロテストステロンへの変換を防ぎ、抜け毛を減らす効果が期待できます。

5αリダクターゼにはI型とII型があり、I型は後頭部に多く分布し、後頭部の薄毛の原因となります。一方、II型は前頭部及び頭頂部に分布しており、この部位に薄毛を引き起こします。薬によってはI型とII型両方を阻害できるものとII型しか阻害できないものがあり、抜け毛の範囲によって使う薬を変えることが多いでしょう。また、5αリダクターゼの活動を阻害する薬は、主に内服薬が中心です。

5αリダクターゼについて詳しく知りたい方は、「5αリダクターゼとは?AGAとの関わりや抑制する方法について解説」も参考にしてみてください。

頭皮の環境を整える

抜け毛には、ジヒドロテストステロンだけでなく頭皮の環境も関係しており、頭皮の血行が悪かったり、頭皮が不衛生であったりしても抜け毛の原因となります。薬を服用し頭皮の環境を整えることで、健康な髪の毛が増え抜け毛も減り、AGAを改善させることができます。頭皮の環境を整える薬には、内服薬に加え、直接患部に塗布する外用薬があります。

AGA治療薬の種類と効果・副作用

AGA治療薬は、同じ効果があるものでもいくつかの種類があります。近年では先発薬のほかに、後発薬も多数流通してきたことによって、治療薬の種類が増えてきました。

先発薬とは、最初に開発・承認された医薬品のことです。先発薬は十分な臨床研究が行われているため安全性が高いですが、薬価が少々高いというところが難点です。 後発薬とは、先発薬の後に開発された薬剤で、先発薬と同等の効果があることが証明されている医薬品です。後発薬の最大のポイントは、薬価が安いという点です。臨床試験は十分になされていないものの、先発薬と同様の成分を使っているので、安全性も先発薬と対して劣らないとされています。

ここでは、AGA治療薬の効果や副作用について、先発薬を中心に解説し、後発薬についても紹介します。

プロペシア

プロペシアは世界で初めてAGA治療薬として出された先発薬で、日本では2005年10月に厚生労働省の認可が降りした。プロペシアは、フィナステリドを主成分とし、II型5αリダクターゼを阻害し、薄毛の改善を目指す薬です。「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017 年版」でも、推奨度はAであり、AGA治療としてまず最初に選択されることの多い薬剤です。

「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」によると、服用開始後48週間で54~58%の軽度改善効果が見られており、さらに2年間および 3年間の内服継続によって、軽度改善以上の効果が68~78%の方に見られています。特に、40歳未満の症例や重症度が低い症例でより高い効果を示しており、若い方や軽度のAGAの方は、より良い改善効果を期待できます。

副作用には、性機能の低下として勃起機能不全、射精障害、精液量減少、リビドー減退があり、発症頻度は約1~5%程度です。また、プロペシアは本人だけでなく家族へも影響を与える可能性が高い薬です。妊娠中あるいは妊娠している女性が割れたプロペシアに触れると、プロペシアの成分が体内に吸収され、お腹の中の子が男児だった場合に、男性器の性状発育へ影響を及ぼす可能性が示唆されています。そのため、家族に妊娠中あるいは妊娠の可能性がある女性がいる場合には取り扱いに十分な注意が必要です。

プロペシアの後発薬はフィナステリドで、プロペシアと同様の効果・副作用を有しています。

参考:公益社団法人 日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017 年版

ザガーロ

ザガーロは2015年に厚生労働省の認可が下りて日本で販売開始したAGA治療薬です。 ザガーロも「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017 年版」で推奨度Aに分類されている治療薬で、プロペシアと同様に、5αリダクターゼの活動を阻害し、AGAの改善を目指します。この薬の特徴は、5αリダクターゼの活動をI型、II型どちらも阻害できる点です。そのため、頭部全体の薄毛が気になる方は、ザガーロを選択するのがベターといえます。

副作用は性機能低下であり、勃起機能不全、射精障害、精液量減少、リビドー減退といった症状が出現します。発症頻度としては約17%程度であり、他の治療薬と比べると副作用が出現しやすいです。

ザガーロの後発薬は、デュタステリドです。こちらも、ザガーロと同じ効果・副作用となっています。

参考: 医薬品医療機器総合機構「ザガーロカプセル 製造販売承認申請書添付資料」 公益社団法人 日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017 年版

ミノキシジル

ミノキシジルはもともと海外で経口降圧薬として使用されていた薬です。その副作用で、多毛症を発症する患者がいたことを受けて、AGA治療薬に取り入れられました。

ミノキシジルにはタブレット状の内服薬のほかに外用薬がありますが、外用薬のみが「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017 年版」にて高い水準の効果があることが立証されており、推奨度はAです。ミノキシジルの外用薬は、AGA治療薬の中で唯一市販が認可されている薬剤で、ドラッグストアなどでも購入可能です。

ミノキシジルの外用薬は、頭皮に直接塗布することで、頭皮の血行を促進して頭皮の環境を整え、発毛を促します。「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017 年版」によると、24週間経過観察をした結果、脱毛部1cm²内に5mgのミノキシジルを使用した場合、平均26.4本の発毛が確認されています。

ミノキシジル外用薬は頭皮に直接薬剤を塗布することもあり、副作用として瘙痒(そうよう=かゆみのこと)・落屑(らくせつ=ふけのこと)・紅斑・毛包炎、接触皮膚炎、顔面の多毛などが見られます。

ミノキシジルの後発薬は外用薬にのみ存在し、各製薬会社からさまざまな種類が発売されているので、効果・副作用については各製品の説明書を確認するようにしてください。

ミノキシジルについては、「ミノキシジルの効果とは?副作用や他のAGA治療薬との違いも解説」でも詳しく解説しています。

参考:公益社団法人 日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017 年版

フロジン

フロジンはカルプロニウム塩化物を主成分とした外用薬で、強い血管拡張作用により血行を促進しつつ、毛乳頭へ血流を送り込み、その栄養によって発毛を促進します。有用性が十分に実証されていないこともあり、「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017 年版」では、推奨度をC1としています。

副作用は、一過性の発赤、掻痒感(かゆみ)にくわえ、アセチルコリン様作用として刺激痛、局所発汗、熱感など。また、血管の拡張作用によって全身性の発汗、それに伴う悪寒、戦慄、嘔気、嘔吐なども見られる可能性があるため、塗布するタイミングの検討が必要です。

フロジンについても、アロビックスという後発薬があり、その効果・副作用はフロジンと同様です。

参考: 公益社団法人 日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017 年版」 KEGG MEDICUS「医療用医薬品:フロジン

AGA治療薬の選び方

AGA治療薬は作用や副作用が種類によって異なるため、自身の改善させたい髪の悩みに合わせて、治療薬を選ぶことが重要です。独断で治療薬を選ぶのではなく、医師に相談して治療薬を選んでもらうことがおすすめです。薬を選ぶ際には、主に次のような点を意識してみましょう。

先発薬か後発薬か

先発薬と後発薬どちらを選ぶかについては、患者側の意見を尊重してくれる医療機関が多いです。安全性や薬価、実績などを考慮したうえで、自分に合った治療薬を選びましょう。

悩みにマッチしているか

AGA治療薬の作用を理解したうえで、自分の悩みにマッチしている治療薬を選びましょう。例えば、後頭部までの薄毛に悩んでいる方が、前頭部や頭頂部にアプローチする治療薬を使用しても悩みの解決には至りません。自分の悩みをより明確に医師に伝えたうえで、治療薬を選びましょう。

継続できるか

AGA治療薬は少なくとも6カ月間の使用が推奨されています。そのため、継続できるかどうかは最大のポイントです。内服薬の方が継続できるか、外用薬の方が継続できるのかを自分の生活スタイルと照らし合わせたうえで検討してみるとよいでしょう。

AGA治療薬を手に入れる方法

AGA治療薬を手に入れるには次の3つの方法があります。

クリニックを受診して処方してもらう

医療機関を受診して医師に診療をしてもらい、自分に合った治療薬を処方をしてもらう方法です。AGA治療の場合、主に皮膚科で処方してもらえます。医師が自分の状態を診察したうえで処方をするため、安全性が非常に高いのがメリットです。しかし、保険診療外となるため、診療費・薬剤費などの費用負担が高くなってしまいます。くわえて、クリニックを受診する時間もかかるという点がデメリットです。

オンライン診療で医師より処方してもらう

近年増えてきているオンライン診療を活用して薬を処方してもらう方法です。クリニックに行く必要がなく自宅など好きな場所で受診でき、さらに薬も郵送されるので時間がない方におすすめです。実店舗がない分、費用を安く抑えて薬を処方しているサービスも多いので、クリニックに通院するよりもコストが抑えられる可能性があります。

ただし、ごく稀ですが医師免許を持っていない人が診療しているケースもあるため、信頼できるオンライン診療を探すべきといえます。

個人輸入

海外からインターネットを活用して自分で薬を輸入する方法です。医療機関を受診しなくてもパソコンやスマートフォン、タブレットから薬を購入でき、診療費がかからないので費用負担は軽減できます。ただし、個人輸入で入手する薬剤は偽物であるリスクが高く、健康被害を被る可能性が高いのでお勧めはしません。

AGA治療薬の個人輸入について詳しく知りたい方は、「AGA治療薬の個人輸入は危険?AGA治療薬の安心できる入手方法を解説」も参考にしてみてください。

まとめ

AGA治療薬は5αリダクターゼを阻害したり、頭皮の環境を整えたりしてAGAを改善させます。治療薬には内服、外用薬などさまざまな種類があるため、自分にマッチした薬剤を選ぶのが良いでしょう。AGA治療薬は医療機関で医師から処方してもらうだけでなく、オンライン処方や個人輸入などの方法があります。安全に、かつ自分が納得いく薬剤を処方してもらえるように、薬剤の入手先は慎重に選ぶことをおすすめします。

この記事の監修:

牧野 潤医師

慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会専門医。 医師免許取得後、株式会社ボストンコンサルティンググループにてヘルスケア・IT領域にて従事。 現在は慶應義塾大学医学部助教、美容医療を主としたJSKINクリニックを経営・監修、オンライン診療サービス「レバクリ」監修。

<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS) 日本乳癌学会