更新日:2026年05月28日


この記事の監修
慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会認定専門医。 医師免許取得後、外資系経営コンサルティング企業のヘルスケア・IT領域にて従事。 慶應義塾大学医学部助教を経て、美容医療を主としたJSKINクリニック、及びオンライン診療サービス「レバクリ」監修。
<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS)
5αリダクターゼがAGAに関与すると聞いて、メカニズムや対処法を知りたい方もいるかもしれません。5αリダクターゼは還元酵素の一種で、男性ホルモンのテストステロンをAGAの原因となるジヒドロテストステロン(DHT)へ変換する働きを持つものです。
本記事では、5αリダクターゼの種類やAGAとの関わり、抑制方法などを解説します。AGA発症の仕組みを知り、治療方法を検討するための参考にしてみてください。
5αリダクターゼは、体内に存在する酵素で、男性ホルモン代謝に関与します。この酵素は男性ホルモンのテストステロンを、より強力な作用を持つジヒドロテストステロン(DHT)に変換します。
5αリダクターゼはテストステロン自体よりも、DHTへの変換後に毛包へ強く作用すると考えられています。しかし、テストステロンが5αリダクターゼの作用によりDHTへ変換されると、毛乳頭細胞に作用して薄毛を引き起こすのです。
5αリダクターゼにはI型とII型があり、体内に分布する部位が異なります。ここでは、それぞれの特徴を解説するので、まずは5αリダクターゼについて理解しましょう。
5αリダクターゼI型は、主に全身の皮膚や皮脂腺に存在し、頭部においては皮脂腺や皮膚に多く、頭皮では側頭部・後頭部にも分布するとされています。5αリダクターゼl型の活性度が高いと皮脂の分泌量が増え、頭皮のベタつきや炎症を引き起こして間接的に薄毛の原因になる可能性があるでしょう。
また、5αリダクターゼl型は全身の皮膚に広く分布していることから、過剰な皮脂分泌によるニキビなどの皮膚トラブルとも関連してます。ただし、l型による影響はあくまで皮脂分泌による「環境要因」が主であるため、AGAへの直接的な関与はⅡ型より小さいと考えられています。
5αリダクターゼll型は前立腺や髭、前頭部や頭頂部の毛乳頭などに存在しています。5αリダクターゼll型はI型と比較してAGA関連部位でのDHT産生に深く関与し、AGA発症に重要な役割を果たすと考えられています。5αリダクターゼll型の活性度が高い場合は、生え際の後退や頭頂部の薄毛が進行しやすくなります。
また、II型の特徴として、頭皮の毛乳頭細胞に多く存在することが挙げられます。DHTが毛乳頭細胞のアンドロゲンレセプターと結合すると、髪の成長を阻害する物質を生成し、ヘアサイクルが短縮されます。
なお、DHTは頭髪には脱毛を促す一方で、脇や髭などの体毛に対しては発毛を促進する作用を持つのが特徴です。

5αリダクターゼには作用部位が異なる2つのタイプが存在します。頭皮においては、I型が側頭部や後頭部、II型が前頭部や頭頂部に作用するため、それぞれの分布域に合わせて薄毛の進行パターンが異なるのです。
前述のとおり、5αリダクターゼはテストステロンと結合してジヒドロテストステロン(DHT)に変換され、ヘアサイクルを乱して薄毛を引き起こします。
DHTが毛乳頭細胞のアンドロゲンレセプターと結合すると、毛包の成長シグナルが抑制され、成長を抑制するシグナルが発信されるのです。このシグナルは毛包周囲の環境を悪化させることで、髪の基となる毛母細胞の増殖を停止させるため、ヘアサイクルの成長期が極端に短縮されてしまいます。
その結果、髪が十分に育つ前に抜け落ちるようになり、DHTの影響を受け続けた毛包は徐々に萎縮するでしょう。これにより毛包のミニチュア化が進行し、最終的には産生される髪も細く短い産毛のような状態へと変化するのです。

5αリダクターゼがDHTを生成し、ヘアサイクルを短縮させます。AGA治療では、DHTの生成を防ぐために5αリダクターゼを阻害する治療薬を使うことが一般的です。毛包のミニチュア化が進む前に、乱れたヘアサイクルを正常化させることが大切といえます。
自分は5αリダクターゼの活性度が高いのかどうか、気になる方もいるかもしれません。ここでは、5αリダクターゼの活性度が高い可能性がある人の特徴として、遺伝的要素と体毛の濃さについて解説します。
ただし、家族歴や体毛の濃さがあっても、必ずしも薄毛になるわけではない点に留意が必要です。
AGAのなりやすさには遺伝的要素が関与しており、5αリダクターゼ活性やアンドロゲン感受性もその一因と考えられています。家族歴がある人は、AGA関連の遺伝的素因を受け継いでいる可能性があるでしょう。5αリダクターゼの活性度が高いと、DHTの生成量は多くなります。
また、アンドロゲンレセプターがDHTにどれくらい反応するかという「感受性」も、遺伝的な要因の一つです。感受性を決定する遺伝情報は、X染色体上に存在します。男性はX染色体を母親から受け継ぐため、母方家系の薄毛傾向は参考になりますが、それだけで将来の薄毛を決定するものではありません。
ただし、遺伝的要素があるからといって必ず薄毛になるわけではありません。遺伝的要素を受け継がない場合や、AGA以外の疾患や生活習慣などが間接的に影響する場合など、薄毛にはさまざまな原因が考えられます。
5αリダクターゼの活性度が高い人の特徴として、「皮脂の多さ」や「体毛の濃さ」も挙げられます。前述のとおり、5αリダクターゼI型は皮脂分泌に関与するため、皮脂分泌が多い人ではアンドロゲン作用が関与している可能性があります。
また、髭の濃さはアンドロゲン感受性の参考所見の一つです。日本皮膚科学会のガイドラインによると、髭の毛包においては、DHTがアンドロゲンレセプターと結合すると「細胞成長因子」が誘導されます。これにより成長期が延長されるため、髭はより太く濃く育つのです。
しかし、前頭部や頭頂部ではDHTとの結合によって成長期が短縮されてしまうため、5αリダクターゼの活性度が高い人は、髭が濃くなる一方で、頭髪が薄毛になる可能性があります。
5αリダクターゼを抑制する代表的治療薬として、フィナステリドとデュタステリドがあります。どちらの治療薬も医療機関を受診し、医師の処方を受けるのが正規の入手方法です。個人輸入などで入手することは避け、医師の管理下で正しく服用してください。
フィナステリドは日本国内で承認されているAGA治療薬で、先発品は「プロペシア」、ジェネリック医薬品は「フィナステリド錠」の名称で処方されています。
フィナステリドは5αリダクターゼII型を選択的に阻害し、テストステロンからDHTへの変換を抑制する薬剤です。DHT抑制によりヘアサイクル改善が期待され、抜け毛が抑制される効果が期待できるでしょう。
フィナステリドは男性ホルモンに作用するので、性欲低下、勃起機能低下などの副作用が報告されています。また、フィナステリドは前立腺がんの腫瘍マーカーであるPSA値を約50%低下させる可能性があるため、前立腺がんを診断する目的で血清PSA濃度を測定する場合は医師に服用を必ず伝えてください。
そのほか、フィナステリドの添付文書で報告されている主な副作用は以下のとおりです。
| 1~5%未満 | 1%未満 | 頻度不明 | |
|---|---|---|---|
| 過敏症 | そう痒症、じん麻疹、発疹、血管浮腫 | ||
| 生殖器 | リビドー減退 | 勃起機能不全、射精障害、精液量減少 | 睾丸痛、血精液症、男性不妊症・精液の質低下 |
| 肝臓 | AST上昇、ALT上昇、γ-GTP上昇 | ||
| その他 | 抑うつ症状、めまい |
参考:独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)「フィナステリド錠0.2mg『クラシエ』/フィナステリド錠1mg『クラシエ』」
副作用は上記の頻度ですべての人に必ず起こるわけではありません。副作用の有無や症状、程度には個人差があります。
また、上記の過敏症についてはフィナステリドに限った副作用ではなく、どの薬においても起こり得ます。また、肝機能異常はまれですが報告されており、服用中に体調変化があれば医師へ相談が必要です。
フィナステリドは、少なくとも6ヶ月間は医師の指示どおりに服用することが大切です。また、効果が実感できるまでの時期や程度には個人差があります。
参考:独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)「フィナステリド錠0.2mg『クラシエ』/フィナステリド錠1mg『クラシエ』」
デュタステリドも5αリダクターゼ阻害薬ですが、I型とII型の両方を阻害するのが特徴です。デュタステリドも日本国内で承認されており、先発品は「ザガーロ」、ジェネリック医薬品は「デュタステリド錠」の名称で知られています。
前述のとおり、5αリダクターゼI型は側頭部や後頭部に多く、II型は前頭部と頭頂部に多く存在するとされているため、フィナステリドとデュタステリドでは阻害する酵素タイプが異なるため、治療反応にも差が出る場合があります。 デュタステリドの添付文書で報告されている主な副作用は以下のとおりです。
| 1%以上 |
|---|
ここでは、5αリダクターゼに関する疑問や不安について、Q&A形式で解説します。AGA治療薬の服用に不安があり、治療の開始を迷っている方は参考にしてみてください。
生活習慣の改善で5αリダクターゼの活性を抑えることは可能?
生活習慣の改善のみで5αリダクターゼ活性を明確に抑制することは難しいと考えられます。栄養バランスの取れた食事や十分な睡眠、運動習慣は、間接的に髪の健康をサポートする可能性がありますが、直接的に5αリダクターゼを減らす対策にはなりません。
AGAの進行を抑制するためには、医学的なアプローチが必要です。医療機関を受診してフィナステリドやデュタステリドによる治療を行い、併行して生活習慣も見直すことが重要です。
5αリダクターゼ阻害薬は一生飲み続ける必要がある?
5αリダクターゼ阻害薬(フィナステリドやデュタステリド)は、服用を中止すると効果が徐々に失われていくため、維持したい場合は継続的な服用が必要です。服用を中止するとDHT抑制効果が失われ、再びAGAが進行する可能性があります。
ただし、一生飲み続けなければならないと決まっているわけではありません。AGAの進行は年齢とともに変化し、年齢とともに進行パターンが変化することもあります。また、生活環境の変化などによっては、服用頻度の調整や症状や希望に応じて治療内容の見直しが検討される場合があります。
大切なのは、自己判断で服用をやめるのではなく、医師と相談のうえ検討することです。定期的な経過観察を行いながら、必要に応じて治療内容を調整していくことが望ましいでしょう。
5αリダクターゼとは、テストステロンをジヒドロテストステロン(DHT)に変換する酵素で、AGAの主な原因となるものです。この酵素にはl型とll型の2種類があり、l型は側頭部や後頭部、ll型は前頭部や頭頂部に分布しています。DHTが毛乳頭細胞のアンドロゲン受容体に作用すると、ヘアサイクルが短縮され、髪の毛が十分に成長する前に抜け落ちる原因となるでしょう。
5αリダクターゼを抑制する方法として効果的なのは、AGA治療薬のフィナステリドやデュタステリドによる医学的なアプローチです。どちらも医療機関で処方を受ける必要がありますが、オンライン診療という選択肢もあります。オンライン診療は希望の場所で医師の診察を受け、処方薬は配送で受け取ることが可能です。
AGA治療は少なくとも6か月以上の継続で効果判定を行うことが一般的です。自分に合った方法で薄毛対策を始めてみてください。
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AGA治療は、主に内服薬・外用薬で行われます。
| 代表的な成分 | 分類 | 主な効果 |
|---|---|---|
| フィナステリド・デュタステリド | 内服薬 | 抜け毛の進行を食い止める |
| ミノキシジル | 内服薬・外用薬 | 毛包を活性化させ発毛を促す |
治療期間について
効果実感には個人差がありますが、ヘアサイクル改善のため3ヶ月〜半年ほどの継続が推奨されます。
費用について
AGA治療は、保険適用外の「自由診療」です。対面診療では、薬代(1ヶ月数千円ほど)の他に、初診料や診察料がかかる場合もあります。
治療の継続には期間と費用に加え、定期的な通院が必要です。時間や費用、人目などの通院の負担が、忙しい方にとって課題となる場合があります。
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| 1%未満 |
|---|
| 頻度不明 |
|---|
| 過敏症 | 発疹 | じん麻疹、アレルギー反応、血管性浮腫 | |
| 精神神経系 | 頭痛、抑うつ気分 | 浮動性めまい | |
| 生殖器 | 性機能不全(リビドー減退、勃起不全、射精障害) | 精巣痛、精巣腫脹 | |
| 皮膚 | 脱毛症(主に体毛脱落)、多毛症 | ||
| その他 | 倦怠感、血中CK増加 |
参考:独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)「デュタステリド錠0.1mgZA『NS』/デュタステリド錠0.5mgZA『NS』」
デュタステリドもPSA値を低下させることがあるため、前立腺がんの検査を受ける際は必ず医師に服用を伝えてください。
また、副作用についてはフィナステリドと同様に個人差があり、すべての人に発現するわけではありません。また、過敏症についても、どの薬においても起こり得るものです。
どちらの薬剤を選ぶかは、AGAの進行度や個人の体質、副作用のリスクなどを考慮して専門医と相談することが望ましいでしょう。自己判断での服用は避け、必ず医師の処方と指導のもとで服用するようにしてください。
参考:独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)「デュタステリド錠0.1mgZA『NS』/デュタステリド錠0.5mgZA『NS』」