更新日:2026年06月02日


この記事の監修
慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会認定専門医。 医師免許取得後、外資系経営コンサルティング企業のヘルスケア・IT領域にて従事。 慶應義塾大学医学部助教を経て、美容医療を主としたJSKINクリニック、及びオンライン診療サービス「レバクリ」監修。
<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS)
ジヒドロテストステロン(DHT)が薄毛の原因と聞いて、仕組みや対処法を知りたいと思う方もいるかもしれません。DHTは男性らしい体を形成するのに必要なホルモンですが、AGA(男性型脱毛症)の主な原因でもあります。 本記事では、DHTが生成される仕組みやAGAに与える影響などを解説します。また、AGA治療におけるDHT抑制のアプローチも紹介するので、薄毛対策を検討する際の参考にしてください。
ジヒドロテストステロン(DHT)は、AGA(男性型脱毛症)に関与する男性ホルモンの一種です。
DHTは、男性ホルモンのテストステロンが5αリダクターゼという酵素によって変換され、生成される物質です。このDHTが毛乳頭細胞にある男性ホルモン受容体(アンドロゲンレセプター)と結合すると、ヘアサイクルを乱し薄毛を引き起こします。
テストステロンとジヒドロテストステロン(DHT)は、どちらも男性ホルモンの一種ですが、その特性と働きに違いがあります。
| 特徴 | テストステロン | ジヒドロテストステロン(DHT) |
|---|---|---|
| 生成過程 | 精巣や副腎で生成される | テストステロンから5αリダクターゼにより変換される |
| 主な働き | 筋肉量や性機能の維持 | 胎児期の男性器形成、思春期の男性化、皮脂分泌促進 |
テストステロンは精巣や副腎で生成される物質で、筋肉量や性機能の維持に必要です。思春期にはテストステロンの分泌が増え、筋肉を増加させたり、声変わりを起こしたりします。
一方、DHTは胎児期における男性器の形成、思春期の二次性徴の発達(声変わり、体毛の増加など)に関わっています。これらの過程で体は意図的にDHTを生成し、男性としての特徴を形作るのです。
また、成人男性の体内では、DHTは前立腺の成長や維持にも関わっています。さらに、性欲の維持にも一定の役割があると考えられており、DHTは男性の性的特徴と機能を支える重要なホルモンといえるでしょう。
ジヒドロテストステロン(DHT)は、テストステロンが体内の5αリダクターゼという酵素によって変換され、生成される男性ホルモンです。
5αリダクターゼには、側頭部や後頭部の皮脂腺に多い「I型」と、前頭部や頭頂部の毛乳頭に多く分布する「II型」が存在します。この酵素の活性度が高いほどテストステロンをDHTに変換しやすく、体内におけるDHTの量が増加するのです。
また、DHTの生成量は酵素の活性度だけでなく、年齢やホルモンバランスの変化によって変わります。年齢とともにテストステロンの分泌量が減ると、5αリダクターゼの影響力が相対的に強くなったり、少ないホルモンをキャッチするために受容体の感度が高くなったりして、局所的にDHTの影響が顕著に現れることがあります。
ジヒドロテストステロン(DHT)は、特に男性においてメリットとデメリットの両面があります。
【メリット】
DHTのメリットは、男性としての身体的特徴の発達と、その機能維持に寄与することです。DHTは胎児期の男性器発達に不可欠で、DHTがないと正常な男性器形成ができません。また、思春期における男性化(声変わり、ひげや体毛の成長、皮脂分泌の活発化など)を促進する働きがあります。
成人後も、性機能の維持や脳機能(認知能力や前向きな気分の維持)に深く関わっており、男性の心身の健康を支えるベースとなっているのです。
【デメリット】
DHTのデメリットはAGAの主な原因となることです。また、頭皮においては薄毛を引き起こす一方、体毛においては毛を濃く太くする働きがあります。これはアンドロゲンレセプターの反応が部位によって異なるためで、DHTによって髭や胸毛が濃くなる場合があるのです。
さらに、DHTは皮脂分泌を促すため、頭皮のべたつきの原因となり間接的に薄毛を進行させる可能性もあります。また、ニキビや脂性肌の原因になることもあるでしょう。
加えて、DHTは前立腺肥大症のリスク因子でもあります。年齢とともに前立腺にDHTが蓄積され、前立腺が肥大することで排尿障害などの症状を引き起こす可能性があるのです。

DHTはAGAの発症に深く関与する男性ホルモンの一種です。テストステロンが5αリダクターゼという酵素によって変換されることで生成されますが、このDHTが髪の成長を阻害することがAGAの主要なメカニズムです。
ジヒドロテストステロン(DHT)が薄毛を引き起こす主な要因は、毛乳頭細胞に存在するアンドロゲンレセプターとの結合です。遺伝的にDHTに対する感受性が高い毛包では、DHTがアンドロゲンレセプターと結合すると、髪の成長を抑制するFGF-5やTGF-βという遺伝子が活性化します。
FGF-5はヘアサイクルの成長期を短縮し、TGF-βは毛根を縮小させる因子であるため、この2つの作用により髪が細く短くなり、やがて薄毛となります。
健康な髪は成長期(2〜6年)・退行期(2〜3週間)・休止期(2〜3ヶ月)というヘアサイクルを繰り返しています。しかし、DHTの影響でヘアサイクルが乱れると成長期が短縮され、髪が十分に成長しないまま休止期に移行してしまうのです。

さらに、乱れたヘアサイクルが続くと毛包自体が小さくなる「ミニチュア化」が進み、髪は細く短くなり、最終的には産毛のような状態になってしまいます。
この変化は一度に全ての髪で起こるわけではなく、徐々に進行するものです。最初は抜け毛の増加や髪のボリューム減少として気づき、やがて目に見える薄毛として現れるようになります。
DHTの影響は、頭部のすべての部位で均一に現れるわけではありません。前述のとおり、前頭部と頭頂部の毛乳頭細胞には5αリダクターゼII型とアンドロゲンレセプターが多く存在するため、集中的に影響を受けます。
その結果、以下のようなAGA特有の薄毛の進行パターンが形成されるでしょう。
一方、側頭部や後頭部はDHTの影響を受けにくいため、AGAが進行しても比較的毛髪が残ります。
これらの進行パターンを踏まえ、日常で気づきやすいAGAの主な初期サインを以下にまとめました。
これらの変化は、徐々に進行するため気づきにくいことがあります。シャンプーのときに頭皮が硬くなっていないか、柔らかく動くかどうかを確認するなど、セルフチェックを習慣にすると良いでしょう。

DHTが髪の成長期を短縮させることで抜け毛が進行します。健康な髪は2〜6年の成長期がありますが、DHTの影響下では著しく短縮され、髪が太く育つ前に抜けてしまうのです。特に前頭部と頭頂部はDHTの影響を受けやすい部位なので、早めの対策をおすすめします。
ジヒドロテストステロン(DHT)の生成量や影響の受けやすさには個人差があります。以下の特徴に当てはまる場合、体内でDHTが活発に働いている、あるいはDHTに対する感受性が高い可能性があります。
ただし、これらは絶対的な指標ではなく、必ずしもすべての特徴を持っていなくてもAGAが進行することもあります。
食事や生活習慣の改善だけで、DHTの生成を抑制するのは難しいでしょう。AGAの進行を抑制するためには医学的な治療が必要です。
ただし、治療と平行して乱れた生活習慣を改善すると、間接的に髪の健康をサポートできる可能性があります。
たとえば、バランスの良い食事は、日常生活で改善できる生活習慣の一つです。
亜鉛やビタミンB群、良質なタンパク質などの栄養素は健康な頭皮と髪の維持に欠かせません。亜鉛を多く含む牡蠣や赤身肉、タンパク質を摂れる鶏むね肉や卵などを食生活に取り入れてみてください。また、過度なストレス状態が続くと、間接的にDHTの生成を促す可能性があります。ストレスに対抗するため男性ホルモンの分泌が増え、その影響で5αリダクターゼの働きが活発化してDHTへの変換が促されるためです。
したがって、リラクゼーションや趣味の時間を持ち、ストレス管理を行うことをおすすめします。
さらに、質の良い睡眠は成長ホルモンの分泌を促し、細胞の修復・再生を促進して間接的に頭皮の健康をサポートできる可能性があるでしょう。
これらの食事と生活習慣の改善は、DHTの生成を直接的に抑制することはできませんが、AGAの進行速度を緩やかにする助けになります。

食事と生活習慣の改善だけでDHTの生成を抑制するのは難しいでしょう。生活習慣の改善が健康に良いことは間違いありませんが、AGAに対しては医学的アプローチと併用することをおすすめします。
AGAクリニックで行われるDHT抑制のアプローチとしては、5αリダクターゼの阻害薬による治療が主流となっています。内服薬としては、フィナステリドとデュタステリドが代表的です。
ここでは、フィナステリドとデュタステリドの作用機序や効果について解説します。
フィナステリドは5αリダクターゼII型を選択肢に抑制し、テストステロンからジヒドロテストステロン(DHT)への変換を阻害して発毛を促す薬剤です。フィナステリドによってDHTの生成が抑制され、乱れたヘアサイクルを正常化して脱毛を抑制します。
なお、フィナステリドは男性ホルモンに作用するので、性機能に関する副作用が生じる可能性があります。そのほか、フィナステリドの添付文書で報告されている主な副作用は以下のとおりです。
| 1~5%未満 | 1%未満 | 頻度不明 | |
|---|---|---|---|
| 過敏症 | そう痒症、じん麻疹、発疹、血管浮腫 | ||
| 生殖器 | リビドー減退 | 勃起機能不全、射精障害、精液量減少 | 睾丸痛、血精液症、男性不妊症・精液の質低下 |
| 肝臓 | AST上昇、ALT上昇、γ-GTP上昇 | ||
| その他 | 抑うつ症状、めまい |
参考:独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)「フィナステリド錠0.2mg『サワイ』/フィナステリド錠1mg『サワイ』」
ただし、副作用は上記の頻度ですべての人に必ず起こるわけではありません。副作用の有無や症状、程度には個人差があります。
また、上記の過敏症についてはフィナステリドに限った副作用ではなく、どの薬においても起こりうるものです。また、肝臓に関する副作用についても、肝臓で代謝される薬において認められる症状です。
フィナステリドの効果が現れるまでには、半年〜1年間を目安とした継続的な服用が必要です。また、効果が実感できるまでの時期や程度には個人差があります。
参考:独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)「フィナステリド錠0.2mg『サワイ』/フィナステリド錠1mg『サワイ』」
デュタステリドは、フィナステリドと同様に5αリダクターゼ阻害薬ですが、I型とII型の両方を阻害するのが特徴です。前述のとおり、5αリダクターゼI型は側頭部や後頭部に多く、II型は前頭部と頭頂部に多く存在するとされているため、フィナステリドとデュタステリドでは作用範囲が異なると考えられています。
以下は、デュタステリドの添付文書で報告されている主な副作用をまとめたものです。
| 1%以上 | 1%未満 | 頻度不明 | |
|---|---|---|---|
| 過敏症 |
ジヒドロテストステロン(DHT)はAGAの直接的な原因となる男性ホルモンの一種です。DHTが生成されることでヘアサイクルが乱れ、薄毛を引き起こします。
DHTの生成を食事や生活習慣の改善だけで抑制するのは難しく、AGA対策には医学的アプローチが必要です。AGAは進行性の脱毛症なので、早い段階で治療を始めることが望ましいでしょう。
AGA治療薬は皮膚科やAGAクリニックなどで処方を受ける必要がありますが、通院に抵抗がある方はオンライン診療という選択肢もあります。オンライン診療は自宅にいながら医師に相談ができ、処方薬は配送で受け取ることが可能です。
経過観察を受けながら治療を継続するためにも、自分に合った方法を選んでみてください。
記事を読んでAGAの治療に関心を持ったものの、こんな不安やお悩みはありませんか?
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AGA治療は、主に内服薬・外用薬で行われます。
| 代表的な成分 | 分類 | 主な効果 |
|---|---|---|
| フィナステリド・デュタステリド | 内服薬 | 抜け毛の進行を食い止める |
| ミノキシジル | 内服薬・外用薬 | 毛包を活性化させ発毛を促す |
治療期間について
効果実感には個人差がありますが、ヘアサイクル改善のため3ヶ月〜半年ほどの継続が推奨されます。
費用について
AGA治療は、保険適用外の「自由診療」です。対面診療では、薬代(1ヶ月数千円ほど)の他に、初診料や診察料がかかる場合もあります。
治療の継続には期間と費用に加え、定期的な通院が必要です。時間や費用、人目などの通院の負担が、忙しい方にとって課題となる場合があります。
オンライン診療とは、スマホやPCを使い、ご自宅など好きな場所から医師の診察を受け、お薬を配送してもらえるサービスです。従来のAGA治療における「通院の負担」「待ち時間」「人目」といった課題を解決します。
「レバクリ」は、AGA治療の「始めやすさ」と「続けやすさ」を重視し、オンライン診療のメリットを最大限に活かしたサービスを提供しています。
| 発疹 |
| じん麻疹、アレルギー反応、血管性浮腫 |
| 精神神経系 | 頭痛、抑うつ気分 | 浮動性めまい |
| 生殖器 | 性機能不全(リビドー減退、勃起不全、射精障害) | 精巣痛、精巣腫脹 |
| 皮膚 | 脱毛症(主に体毛脱落)、多毛症 |
| その他 | 倦怠感、血中CK増加 |
参考:独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)「デュタステリド錠0.1mgZA『NS』/デュタステリド錠0.5mgZA『NS』」
なお、副作用についてはフィナステリドと同様に個人差があります。また、過敏症についても、どの薬においても起こりうるものであることを認識しておきましょう。
AGA治療薬の服用を検討する際は必ず専門医に相談し、薄毛の進行度合いや体質などの診断を受けることが大切です。特に、フィナステリドからデュタステリドの切り替えを考える場合などは、医師と十分に相談しましょう。
参考:独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)「デュタステリド錠0.1mgZA『NS』/デュタステリド錠0.5mgZA『NS』」