レバクリ

更新日:2024/02/15

ミノキシジルの効果とは?副作用や他のAGA治療薬との違いも解説

この記事のまとめ
  • ミノキシジルはAGAの治療薬の一種
  • ミノキシジルには内服薬(飲み薬)と外用薬(塗り薬)の両方がある
  • ミノキシジルには頭皮の血行を促進し、発毛や髪の成長を促進する作用がある
  • ミノキシジルの効果を実感するまでには、3ヶ月~半年程度かかる
  • ミノキシジルには併用できない薬があるため注意が必要

AGA治療を考えるとよく目にする「ミノキシジル」という治療薬の名前。どのような効果があるのか、また効果が出るまでの期間や副作用の種類が気になる方も多いのではないでしょうか。

ここではミノキシジルについて気になる方に向けて、効果や期間、副作用、使用前に注意しておくべきことについて説明します。

ミノキシジルとは

ミノキシジルはAGAに効果のある成分の1種です。 血管を広げる作用があることから、1960年代にアメリカの製薬会社によって「ロテニン」という高血圧治療の薬の有効成分として用いられていました。使用を進めるうちに患者に多毛症の副作用がみられたため、AGAの治療薬として使用されるようになりました。 現在では、フィナステリドやデュタステリドと並び、AGAの治療薬として世界的に普及しています。

ミノキシジルには、飲み薬である内服薬と、頭皮に塗る外用薬の2種類があります。 外用薬は厚生労働省の認可を受けており、クリニックや薬局で入手することができます。一方内服薬は未認可であるため、国内での製造・販売は行われていません。しかし、医師の責任で海外から薬を輸入して処方することは可能であることから、ミノキシジル内服薬を取り扱っているクリニックも多く存在します。

ミノキシジルの効果

ミノキシジルには、頭皮の血行を促進し、発毛や髪の成長を促進する作用があります。 ミノキシジルの外用薬は、直接頭皮に塗ることによって毛母細胞を刺激し、AGAによって乱れたヘアサイクルを正常にする効果があると言われています。

AGAが進行すると、ヘアサイクルのうち毛髪が成長する「成長期」が短くなり、十分に成長する前に髪が抜けてしまうことで、薄毛が進行していきます。 ミノキシジルの作用によって毛母細胞が活性化され、毛髪の成長期が延長されることによって、1本1本の毛が長く太く成長するようになり、毛髪量の増加が期待できます。

また、内服薬には血管拡張の作用があるため、頭皮にまで血流が届きやすくなることで、髪の毛の成長に必要な栄養が行き届きやすくなり、髪の成長を促します。 栄養が届くと毛乳頭細胞が活発に分裂するため、発毛に繋がると考えられています。

日本皮膚科学会が公開している「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン」によると、ミノキシジルの外用薬はフィナステリドやデュタステリドとともに最高評価「A」を受けており、有効なエビデンスがあることから、使用を推奨されています。

参考:公益社団法人 日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン

ミノキシジルの副作用

前述した通り、ミノキシジルには、内服薬と外用薬が存在し、副作用の発生具合はそれぞれ異なります。頭皮に直接塗布する外用薬では、発疹やかゆみなどの頭皮トラブルが生じる可能性があります。また、内服薬は動悸やめまいなどの副作用を起こす可能性があります。

ただし、副作用自体の発生頻度は低く、厚生労働省から報告されているデータによると、ミノキシジル5%含有外用薬の使用によって発生した副作用は3,072例中271例 、 378件とされており、発生率としては8.82%です。

参考:厚生労働省「ミノキシジルのリスク区分について

初期脱毛

初期脱毛は、治療の初期段階で一時的に抜け毛が増加する副作用です。個人差がありますが、服用開始から2〜8週間ごろに見られる可能性があります。

初期脱毛が生じる原因には、ヘアサイクル(毛周期)が関係しています。 AGAの影響で休止期になっていた髪の毛が治療薬によって成長期へ移行することで、古い髪の毛が新しい髪の毛に押し出されて抜け落ちてしまうのです。

急に抜け毛が増えて驚いて治療を中断してしまうというケースもあるようですが、このタイミングで治療を中断すると効果を実感することができないため、初期脱毛が見られても継続して治療を行うことが大切です。

ミノキシジルの初期脱毛については、「ミノキシジルの初期脱毛が起こる理由とは?原因と対策を解説」でも詳しく解説しています。

皮膚炎

頭皮に直接塗る外用薬を服用した際は、皮膚への影響が生じる場合があります。 具体的には、頭皮が赤くなったり、かぶれやかゆみなどが発生したりするという症例が報告されています。肌に合わないと感じた場合は速やかに医師に相談し、使用を継続して問題ないか判断してもらいましょう。

動悸・息切れ

ミノキシジル内服薬の服用によって現れる副作用として、動悸や息切れが起こる可能性があります。

ミノキシジルはもともと高血圧治療の薬でもあるため、心臓や血圧などの異常がある方は、心機能障害や不整脈などの症状が現れる可能性もあります。頻度としては非常に稀ですが、低血圧や高血圧で治療中の方や、心臓に障害のある方は、ミノキシジルの服用に際して必ず医師に相談するようにしてください。

頭痛・めまい

内服薬の服用時にみられる副作用として、頭痛やめまいなどもあげられます。 ミノキシジルの持つ血管拡張作用により血圧が下がり、頭痛やめまいを引き起こす可能性があります。 ミノキシジルの使用開始後に頭痛やめまいの症状がみられた場合は、必ず医師に相談しましょう。

むくみ

前述したとおり、ミノキシジルを使用することで、血管が拡張され、血流が良くなります。末梢神経まで血液が行き渡るようになると、中枢の血流量が減ってしまいます。これを受けて、体内では血液を増やす動きが生じ、一時的に血液量が過剰になることで、むくみにつながる可能性があります。

一時的な症状であることが多いものですが、まれに心機能の低下によってむくみが起こっているケースもあるため、むくみがみられた場合は一度医師に相談しておくと安心です。

多毛症

ミノキシジルの飲み薬の場合、髪の毛だけでなく全身の毛が影響を受け、多毛症になってしまうケースがあります。 もともと体毛が毛深いことで悩まれている方は、この副作用によってかえって悩みが増してしまうこともあるため、特に注意が必要です。

肝機能障害

ミノキシジルは肝臓で代謝される薬であるため、肝機能障害が起こる可能性があります。肝機能障害はAGA治療薬に限らず多くの薬で起こる可能性があります。 重大な副作用であるものの、発生する頻度は極めて稀であるため、心配しすぎる必要はありませんが、こちらも留意しておきましょう。

心疾患

ミノキシジルの血管を拡張させる作用に伴って、狭心症などの心疾患になる場合もあります。 心臓に血液を送る冠動脈の動きが緩むことにより、心臓への血流量が少なくなり、胸痛や息切れなどの症状が発生します。ただし、報告例は少なく、必ずしもミノキシジルの作用によって起こるものとは言い切れないとも考えられています。

ミノキシジルのと他のAGA治療薬の違い

ミノキシジル以外の主要なAGA治療薬として、プロペシアやザガーロ、フィナステリドなどが挙げられます。これらの治療薬との違いについて解説します。

ミノキシジルとプロペシアの違い

プロペシアは、脱毛を抑制する有効成分の1種である「フィナステリド」を主成分として作られたAGA治療薬です。フィナステリドを主成分とする治療薬として日本国内で認可を受けているのは、プロペシア錠と、そのジェネリック医薬品であるフィナステリド錠の2種類です。

ミノキシジルとプロペシアには、薬の作用機序に違いがあります。

ミノキシジルは血管の拡張や毛母細胞の細胞分裂を促すことで発毛につなげるのに対して、プロペシアはAGAの原因となるジヒドロテストステロン(DHT)のもととなる5αリダクターゼ(5α還元酵素)という物質の作用を阻害することで、毛髪の維持や抜け毛の予防が期待されるものです。

5αリダクターゼにはⅠ型とⅡ型があり、Ⅰ型は側頭部・後頭部・全身の毛乳頭細胞・皮脂腺・前立腺に存在し、Ⅱ型は前頭部・頭頂部・脇・髭・陰毛に存在します。プロペシアはⅡ型の5αリダクターゼの作用を阻害する薬です。

ミノキシジルとフィナステリドの違い

前述した通り、フィナステリドとはプロペシアに含まれる有効成分の名前であり、日本国内では同名のジェネリック医薬品が処方・販売されています。

そのため、ミノキシジルとのフィナステリドの違いは、基本的にプロペシアの場合と同様です。

ミノキシジルとザガーロの違い

ザガーロは、イギリスのグラクソ・スミスクライン社が開発したAGA治療薬であり、有効成分は「デュタステリド」です。デュタステリドは、2009年に「アボルブ」という前立腺肥大症の治療薬として国内で承認されており、2015年にAGA治療薬「ザガーロ」として承認されました。

ミノキシジルとザガーロにも作用機序に違いがあり、ザガーロはプロペシアと同様にAGAの原因となる5αリダクターゼの作用を阻害する働きを持ちます。 プロペシアはⅡ型の5αリダクターゼを阻害するのに対し、ザガーロはⅠ型とⅡ型の両方を阻害するため、プロペシアよりもさまざまな薄毛の改善効果があることがわかっています。

ミノキシジルと他のAGA治療薬は併用できるか

プロペシア、フィナステリド、ザガーロのいずれも、ミノキシジルとの併用が可能です。

前述した通り、ミノキシジルはこれらの治療薬と異なる作用機序を持っているため、併用することでより高い効果が得られると考えられます。

ミノキシジルの作用が「発毛を促進する」ものであるのに対し、プロペシアやフィナステリド、ザガーロの作用は「脱毛を抑制する」ものであるからです。

ミノキシジルとフィナステリドの併用については、「フィナステリドとミノキシジル併用の効果や注意点を説明」でも詳しく解説しています。

ミノキシジルの効果がでるまでの期間

ミノキシジルの効果が出るまでの期間には個人差がありますが、服用開始から4ヶ月~半年程度はかかると想定しておきましょう。

正しい手順で服用しているにもかかわらず、半年以上効果が見られない場合は、一度医師に相談してみることをおすすめします。

ミノキシジルの服用をやめると起こりうる事については、「ミノキシジルをやめるとAGAは進行する?中止してよいタイミングも解説」を参照してください。

ミノキシジルの使用方法

ミノキシジルの内服薬と外用薬について、それぞれの使用方法を説明します。

内服薬を服用する場合

ミノキシジルの内服薬は、1日1回、水かぬるま湯で飲みましょう。 成分の血中濃度を一定に保つため、なるべく毎日決まった時間に服用することがおすすめです。

内服薬は作用が強いため、飲み始めのうちは副作用が出てしまう可能性もあります。 服用開始から1ヶ月程度は、錠剤を半分に割って飲むことで、少ない量から服用を始めるというのも方法の1つです。

外用薬を使用する場合

ミノキシジルの外用薬は、1日に2回、朝と夜に頭皮に塗って使用することが推奨されます。 定められた量を、毛髪が薄くなっている部分の頭皮に直接塗布します。 頭皮全体へと塗り広げる必要はありませんが、薄毛部分のみに塗布することを意識し過ぎると塗りムラが生じる恐れもあるため、少し広い範囲に塗り広げるのがポイントです。

内服薬・外用薬ともに、たくさん服用/使用したからといって効果が高まるわけではないので、用法用量を守って使用しましょう。

ミノキシジルを服用する際の注意点

最後に、ミノキシジルの服用に関する注意点について解説します。

併用できない薬がある

ミノキシジルの内服薬には、併用禁止となる薬があります。

一般的な風邪薬などの処方薬や市販薬は、一緒に服用しても問題ありません。 ただし、既に高血圧治療薬を服用している場合、ミノキシジルを併用することで、降圧効果が過剰に出現してしまうおそれがあります。医師への相談の上、内服薬ではなく外用薬の処方に変更されるケースもあるため、注意しておきましょう。

また、外用薬を使用する際は、他の育毛剤や軟膏などは併用しないほうが良いとされています。 他の薬剤が、ミノキシジル外用薬の吸収を妨げてしまう可能性があるためです。

個人で輸入しない

近年は、費用の安さなどを理由に、ECサイトなどを通じて海外からミノキシジルをはじめとする治療薬を個人で輸入するケースが増えています。

しかし、個人輸入を行うことはとても危険です。偽薬であるリスクがあるだけでなく、個人輸入のミノキシジルで健康被害が起こった場合は国の救済制度の利用もできなくなります。

費用を抑えるつもりでも、かえって医療費がかさんでしまったり、健康被害につながったりする可能性があるため、医療機関を受診し、自分にあった薬を詳報してもらうことをおすすめします。

AGA治療薬の個人輸入について詳しく知りたい方は、「AGA治療薬の個人輸入は危険?AGA治療薬の安心できる入手方法を解説」も参考にしてみてください。

まとめ

この記事では、ミノキシジルの効果や期間、副作用について解説しました。

ミノキシジルはAGAの治療薬で、頭皮の血行を促進し、発毛や髪の成長を促進する作用があります。内服薬(錠剤)と外用薬(液剤)があり、後者は厚生労働省の認可を受けているものの、前者は未承認です。重大な副作用が発生する確率は低いですが、皮膚のかゆみや動悸・息切れなどが生じるケースがあります。

服用する際は専門医に相談のうえ、用法用量を守って服用するようにしましょう。

この記事の監修:

牧野 潤医師

慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会専門医。 医師免許取得後、株式会社ボストンコンサルティンググループにてヘルスケア・IT領域にて従事。 現在は慶應義塾大学医学部助教、美容医療を主としたJSKINクリニックを経営・監修、オンライン診療サービス「レバクリ」監修。

<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS) 日本乳癌学会