更新日:2026年08月31日

この記事の監修
慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会認定専門医。 医師免許取得後、外資系経営コンサルティング企業のヘルスケア・IT領域にて従事。 慶應義塾大学医学部助教を経て、美容医療を主としたJSKINクリニック、及びオンライン診療サービス「レバクリ」監修。
<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS)
尿の出にくさなどの前立腺肥大症の症状とともに、勃起力の低下が気になっていませんか。前立腺肥大症とEDは発症に関わる危険因子の多くが共通しており、併発することもあります。なお、前立腺肥大症もEDも、食生活を改善したり適度な運動を取り入れたりすることで、同時に予防・改善が図れる場合があります。両方の症状がみられる場合でも、同時に治療できるケースがあるので、気になる方は医師へ相談してみてください。
前立腺肥大症とEDには、密接な関係があると考えられています。ED診療ガイドラインでは、前立腺肥大症による排尿の悩み(下部尿路症状)が、EDの危険因子の一つとして挙げられています。排尿の悩みと性機能の悩みは、一見別々に思えても背景を共有していることもあるでしょう。
前立腺肥大症のある男性は、EDを併発しやすいと報告されています。前立腺肥大症の治療によってEDが改善する場合があることから、両者は関連して起こると考えられるようになりました。実際に、前立腺肥大症による排尿障害に悩む人が、同時に性機能の低下も感じているケースは珍しくありません。
ただし、排尿の悩みに比べて性機能の悩みは相談しづらく、一人で抱え込みやすいテーマでもあります。まずは両者に関係があると知ることが、適切な対処への第一歩になるでしょう。
前立腺肥大症とEDは、どちらも加齢とともに頻度が高まるという共通点があります。前立腺は加齢に伴って少しずつ大きくなり、尿道を圧迫して排尿障害を起こすことがあるのが特徴です。
EDも、加齢による血管の柔軟性の低下などを背景に、年代が上がるほど頻度が高まる場合があります。どちらも年齢を重ねた男性が向き合いやすい悩みであり、両方が同じ時期に重なることもあるでしょう。年齢のせいと諦めず、症状の背景を知っておくことが大切です。
前立腺肥大症がEDにつながる背景には、複数の要因が重なっていると考えられています。勃起機能に影響することがある要因は次の3つです。
実際には、これらのどれか一つが原因ではなく、いくつかの要因が組み合わさってEDを引き起こす点が特徴です。
骨盤内の動脈硬化は、前立腺周囲の機能と陰茎への血流のどちらにも影響します。勃起は陰茎海綿体に血液が流れ込むことで起こる現象のため、骨盤内全体の血流が悪くなると勃起機能にも影響が及ぶでしょう。
骨盤の血流という共通の原因を通じて、排尿障害と勃起の悩みはつながっていると考えるとわかりやすいでしょう。
前立腺肥大症とEDには、共通する危険因子が多く存在します。具体的には、次のような要因が、両方の発症リスクを高めるとされています。
これらは血管の状態を悪化させ、全身の血流に影響する要因になり得ます。血流は勃起にも深く関わるため、同じ要因が前立腺肥大症とEDの双方に関わっていると考えられるでしょう。
排尿トラブルによる睡眠不足や心理的ストレスも、EDに関わる要因の一つです。夜間に何度も目が覚める、外出先でトイレが気になる、尿が出にくく時間がかかるといった症状は、生活の質を下げてしまうでしょう。
こうした不安やストレスは、性欲や勃起機能に影響を与える可能性が指摘されています。身体的な要因だけでなく、心理的な要因も前立腺肥大症とEDの併発の背景にあると理解しておくとよいでしょう。
前立腺肥大症の治療薬には、性機能に影響する場合があるものがあります。また、手術によって射精障害が起こるリスクも報告されています。前立腺肥大症の治療のうち、EDなどに関連する治療薬や手術は主に次の3つです。
前立腺肥大症の治療中で、性機能に関して気になる症状がある場合は、自己判断で薬を中断せず、まずは主治医に相談することが大切です。
前立腺肥大症に使用されるα遮断薬は、前立腺や膀胱の筋肉の緊張をゆるめて排尿症状の和らぎが期待できる薬ですが、射精に関する症状が出ることがあります。薬の種類によって射精への影響の程度は異なるため、性機能が気になる場合は薬の選び方を医師と相談するとよいでしょう。
前立腺肥大症に使用される5α還元酵素阻害薬は、前立腺を小さくする効果が期待できる一方で、性欲低下やEDが起こることがあります。フィナステリドやデュタステリドといった薬が5α還元酵素阻害薬に該当し、前立腺を肥大させる男性ホルモン(ジヒドロテストステロン)の産生を抑えることで前立腺を縮小させるのが薬の作用です。
この薬のホルモンを抑える作用に伴い、薬の服用中に性欲減退や射精障害、薬剤性EDなどの症状があらわれる場合があります。症状が続くときは、薬の変更や休薬について主治医に相談しましょう。
前立腺肥大症の手術は、勃起機能と射精機能で影響の現れ方が異なる場合があります。前立腺肥大症の代表的な手術である経尿道的前立腺切除術(TURP)では、射精した精液が膀胱側へ逆流する「逆行性射精」が起こることが報告されています。
なお、近年は射精機能を温存する術式や、体への負担が少ない低侵襲治療も選択可能です。手術を検討する際は、排尿症状の改善だけでなく、性機能への影響についても医師とよく相談しましょう。

前立腺肥大症の薬で性機能の変化を感じても、自己判断で服薬を中断するのは避けてください。薬の種類を変えたり、ED治療薬を併用したりすることで、排尿症状の治療を続けながら性機能に配慮できる場合があります。気になる症状は担当の医師に率直に伝えることが大切です。
前立腺肥大症があっても、ED治療薬は服用できます。ED治療にあたっては、ED治療薬(PDE5阻害薬)の使用が第一選択とされており、前立腺肥大症のある方でも医師の判断のもと処方される場合があります。また、前立腺肥大症とEDの治療を並行することも可能です。ただし、併用禁忌の薬もあるので、事前に医師への確認が必要です。
ED治療薬(PDE5阻害薬)は、前立腺肥大症があっても服用できるのが特徴です。
通常、性的刺激を受けると、陰茎の血管を広げる物質であるcGMP(環状グアノシン一リン酸)が増え、海綿体に血液が流れ込んで勃起が起こります。PDE5(ホスホジエステラーゼ5)はこのcGMPを分解する酵素で、ED治療薬はPDE5の働きを抑えることで勃起をサポートします。薬を飲めば自動的に勃起するわけではなく、性的刺激を受けたときの勃起する力を補う役割を担います。
PDE5を阻害する作用は、前立腺肥大に影響を与えるものではないため、前立腺肥大症のある方のED治療にPDE5阻害薬の使用は有効とされているのです。
参考:厚生労働省「勃起障害のメカニズムと病態生理等」
国内で承認されているED治療薬には、主にシルデナフィル・バルデナフィル・タダラフィルの3種類があります。作用の仕組みは共通していますが、持続時間や食事の影響などに違いがあります。

いずれも1日1回、性行為の約1時間前の服用が基本で、投与間隔は24時間以上あける必要があります。どの薬が向くかは体質や生活スタイルによって異なるため、医師と相談して選ぶことが大切です。
参考:独立行政法人 医薬品医療機器総合機構「シルデナフィル錠 添付文書」 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構「バルデナフィル錠 添付文書」 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構「タダラフィル錠 添付文書」
前立腺肥大症の薬である「ザルティア」とED治療薬の「シアリス」は、同じタダラフィルという有効成分を含みますが、適応や保険適用が異なる薬です。有効成分は同じですが、同じように使えるわけではありません。ザルティアとシアリスの違いを整理しておきましょう。
ザルティアとシアリスはどちらも有効成分がタダラフィルですが、適応・用量・保険適用上の扱いが異なります。
ザルティアは前立腺肥大症に伴う排尿障害の改善が目的の薬で、保険適用があります。用量は2.5mg・5mgです。一方、シアリスはED(勃起不全)の治療が目的の薬です。ED治療が自由診療であり、シアリスも保険適用外の薬となります。用量は5mg・10mg・20mgの3種類があります。
厚生労働省の承認は目的ごとに行われるため、有効成分が同じでも2つの薬は別々のものとして扱われます。
参考:独立行政法人 医薬品医療機器総合機構「ザルティア錠 添付文書」 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構「タダラフィル錠 添付文書」
ED治療を目的とする場合、ザルティアは処方されません。ザルティアはあくまで前立腺肥大症による排尿障害の治療薬として承認されているためです。ED治療の目的でザルティアを使うことは承認された使い方ではないため、医薬品副作用被害救済制度の対象外となります。
ED治療を希望する場合は、ED治療薬として承認されているシアリスなどが選択肢になります。目的に合った薬を、医師の診察のもとで選ぶことが大切です。
参考:独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)「ザルティア錠 添付文書」
前立腺肥大症とEDは、生活習慣の見直しが良好な状態の維持に役立つと考えられています。両者には加齢・肥満・糖尿病・高血圧などの共通の危険因子があり、血管や血流の状態を整えることが双方に役立つためです。薬による治療と並行して、前立腺肥大症とEDを予防・改善するために日常でできる取り組みやすい生活習慣を紹介します。
適度な運動は、血管と血流の状態を整え、前立腺肥大症とEDの両方に役立つと考えられています。EDは血管の健康状態と関わりが深く、有酸素運動などで血流が改善すると勃起機能の維持に働きかけると報告されています。ウォーキングや軽いジョギングなど、無理なく続けられる運動から始めるとよいでしょう。運動は肥満の解消にもつながるため、共通の危険因子への対策にもなります。
食生活の見直しや節酒・禁煙も、前立腺肥大症とEDの予防に役立ちます。バランスの取れた食事や適正体重の維持は、糖尿病や高血圧といった危険因子の管理につながります。また、喫煙は血管を収縮させる作用があるとされるため、禁煙は勃起機能の面からも有効な対策です。お酒についても、過度な飲酒は勃起に必要な神経伝達を鈍らせるうえ、前立腺肥大による頻尿を悪化させる場合があります。お酒は適量を心がけ、飲みすぎないようにしましょう。
前立腺肥大症とEDに関するよくある質問にお答えしています。
前立腺肥大症が改善すればEDも改善しますか?
タダラフィルのように、前立腺肥大症による排尿困難の治療とED治療の両方に適応のある薬があります。ただし、必ずしも両方の疾患が一緒に改善するわけではありません。EDの原因は複数重なることが多いため、EDについては別途医師に相談することが大切です。
前立腺肥大症の薬とED治療薬は一緒に飲めますか?
併用できる場合もありますが、飲み合わせには注意が必要です。特にα遮断薬とED治療薬の併用は血圧低下に注意が必要なため、服用中の薬をすべて医師に伝えたうえで判断してもらいましょう。
ED治療薬は前立腺肥大症の排尿障害にも効果がありますか?
タダラフィルには前立腺肥大症による排尿障害を改善する効果が期待でき、「ザルティア」という薬として承認されています。ただし目的ごとに処方される薬が異なるため、どちらの目的で薬を服用するのかを医師と確認する必要があります。
前立腺肥大症がある場合のEDもオンライン診療で相談できますか?
EDについてはオンライン診療(カメラ付きビデオ通話)で相談できます。前立腺肥大症そのものの検査・診断は対面での診察が必要なため、排尿障害がある場合は泌尿器科の受診をおすすめします。
前立腺肥大症とEDは、加齢や生活習慣病といった共通の要因を背景に併発しやすく、骨盤内の血流低下やストレスがEDにつながることがあります。前立腺肥大症の治療薬のうち、α遮断薬は射精に関する症状、5α還元酵素阻害薬は性欲低下やEDに関わる場合があるため、気になる症状は自己判断で中断せず主治医に相談することが大切です。
前立腺肥大症があってもED治療薬(PDE5阻害薬)は基本的に服用でき、タダラフィルのように排尿障害の改善が期待できるものもあります。なお、同じ有効成分「タダラフィル」を配合するザルティアとシアリスは適応疾患や保険適用が異なるうえ、ED治療の目的でザルティアは処方されません。前立腺肥大症そのものは泌尿器科での診察が必要ですが、EDについてはオンライン診療でも相談できるため、気になる症状があれば一人で抱え込まず、まずは医師へ相談してみましょう。
独立行政法人 医薬品医療機器総合機構「タダラフィル錠 添付文書」
独立行政法人 医薬品医療機器総合機構「ザルティア錠 添付文書」
独立行政法人 医薬品医療機器総合機構「シルデナフィル錠 添付文書」
独立行政法人 医薬品医療機器総合機構「バルデナフィル錠 添付文書」
厚生労働省「勃起障害のメカニズムと病態生理等」
記事を読んでEDの治療に関心を持ったものの、こんな不安やお悩みはありませんか?
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ED治療は、「シルデナフィル」・「パルデナフィル」・「タダラフィル」などの成分を含む内服薬で行うのが一般的です。
治療の必要性について
EDは生活習慣病が原因の場合もあるため、放置せず早期に専門医へ相談することが推奨されます。
費用について
ED治療は、保険適用外の「自由診療」です。対面診療では、薬代(1錠500~2,000円ほど)の他に初診料や診察料がかかる場合があります。
ED治療は専門医への相談が不可欠ですが、デリケートな悩みであるため、通院の待ち時間や人目が心理的ハードルとなる場合も少なくありません。
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ED治療薬には、併用してはいけない薬(併用禁忌)があるため、服用中の薬は必ず医師に伝える必要があります。
特に、狭心症などで使われる硝酸剤(ニトログリセリンなど)との併用は、急激な血圧低下を招くおそれがあるため、ED治療薬と併用するのは禁忌です。硝酸剤は飲み薬だけでなく、貼り薬・スプレーなどに含まれる場合も対象になります。また、前立腺肥大症で使われるα遮断薬にも血圧を下げる作用があり、ED治療薬と併用するとめまいや立ちくらみに注意が必要です。
飲み合わせは医師が判断し、安全を確認したうえで薬を処方するため、服用中の薬やサプリメントは診察時に必ず伝えましょう。
参考:独立行政法人 医薬品医療機器総合機構「タダラフィル錠 添付文書」