更新日:2026年08月26日

この記事の監修
慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会認定専門医。 医師免許取得後、外資系経営コンサルティング企業のヘルスケア・IT領域にて従事。 慶應義塾大学医学部助教を経て、美容医療を主としたJSKINクリニック、及びオンライン診療サービス「レバクリ」監修。
<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS)
「勃起の悩みにマッサージは関係があるの?」と気になる方もいるかもしれません。鼠径部のマッサージや骨盤底筋ほぐしは、医学的な治療を補助するセルフケアになりますが、EDの根本的な改善は難しいでしょう。EDの症状が続く場合は、マッサージだけを続けるよりもPDE5阻害薬による治療を取り入れることが選択肢になります。処方には医師の診察が必要なため、気になる方は医師への相談も検討してみてください。
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勃起は海綿体に血液が流入することで起こります。ここでは、勃起と血流の関係や、マッサージと勃起力との関係について解説します。
勃起は、性的刺激をきっかけに陰茎の海綿体に血液が流れ込むことで起こります。 性的刺激を受けると神経から一酸化窒素(NO)が放出され、その働きによって細胞内でcGMP(環状グアノシン一リン酸)が産生されます。cGMPが増えると血管が拡張し、海綿体に血液が流れ込むことで勃起が生じる仕組みです。 そして、性的興奮が収まると、cGMPを分解するPDE5(ホスホジエステラーゼ5)という酵素が働き、海綿体の血管が収縮して勃起が収まります。
マッサージは骨盤周りの筋肉をほぐし、一時的に血行を促す補助的なアプローチにはなりますが、ED(勃起不全)の根本的な改善にはつながりません。 EDの主な原因は、糖尿病や高血圧などの生活習慣病、あるいは動脈硬化によって血管の柔軟性そのものが低下し、陰茎への血流が不足することにあります。マッサージによって硬化した血管の柔軟性を取り戻したり、低下した血管の機能を元に戻したりすることはできません。実際、EDの診療ガイドラインで勃起機能改善のために推奨されている生活習慣改善は、血管を健康に保つための「肥満への食事療法」「有酸素運動」「禁煙指導」などです。 マッサージはこれらのようなガイドラインに裏付けられた治療的介入(医学的エビデンスのある治療)ではないため、セルフケアだけに頼っても症状の改善は期待できません。症状が気になる場合は、セルフケアだけに頼らず、医師への相談を検討することが大切です。
勃起力の低下が気になる方が日常的に取り入れられるマッサージとして、鼠径部リンパマッサージ・骨盤底筋ほぐし・睾丸マッサージの3つを紹介します。以下に3つのマッサージの特徴をまとめました。
| マッサージ名 | アプローチする部位 | 目的・期待される変化 |
|---|---|---|
| 鼠径部リンパマッサージ | 太ももの付け根(内側) | 骨盤周辺の血流を促す補助的アプローチ |
| 骨盤底筋ほぐし | 骨盤の底を支える筋肉群 | 筋肉の緊張を緩め、陰茎への血流をサポートする |
| 睾丸マッサージ | 精巣とその周辺 | 精巣周辺の血行促進 |
なお、これらのマッサージは、いずれも医学的な治療ではありません。あくまで補助的なケアの位置づけであることを理解したうえで、試してみるとよいでしょう。
鼠径部は太ももの付け根の内側にあり、リンパ節が集まる部位です。鼠径部をほぐすことで、骨盤周辺の血流を促す補助的なアプローチになるとされています。鼠径部のリンパマッサージのやり方は、以下のとおりです。
強く圧迫しすぎると神経や血管を傷つける恐れがあるため、痛みを感じない範囲で行いましょう。入浴後など体が温まった状態で行うと、筋肉が緩みやすくなります。
骨盤底筋は、骨盤の底部を支える筋肉群で、勃起や射精にも関わっています。骨盤底筋が過度に緊張していると、陰茎への血流が妨げられる恐れがあるため、マッサージでほぐすのがよいでしょう。
骨盤底筋ほぐしは以下の手順で行います。
骨盤底筋は、普段意識して使うことのない筋肉であるうえに、体の内部の筋肉のため、マッサージができているかわからないという方もいるでしょう。骨盤底筋は、肛門や尿道を締めるように力を入れると刺激されます。陰茎を引き上げる、亀頭をおなかに引き込むイメージで力を入れるのもポイントです。痛みが強い場合は中断し、無理のない範囲で行ってください。
睾丸マッサージは、精巣とその周辺の血行を促すことを目的としたケアです。タイ式マッサージでは「ジャップカサイ」と呼ばれ、古くから男性機能のケアとして行われてきた歴史があります。ただし、現時点では医学的なエビデンスは限られています。
睾丸マッサージのやり方は以下のとおりです。
強い痛みや違和感がある場合はすぐに中止してください。痛みが続く場合は精巣捻転などの恐れもあり、放置すると精巣が壊死することもあります。泌尿器科への受診を検討してください。
東洋医学では、特定のツボを刺激することで気や血の巡りを整えると考えられています。EDやその周辺の不調に関連するとされるツボとして知られているのが、「中極(ちゅうきょく)」と「関元(かんげん)」です。なお、ツボを刺激することで、不調が改善するという医学的なエビデンスは限定的なため、あくまで補助的なセルフケアとして取り入れてみるとよいでしょう。
中極は、おへそから指4〜5本分ほど下の下腹部にあるツボです。東洋医学では、泌尿器系や下半身の冷えなど、身体のバランスを整えるケアに関連するツボとして知られています。
中極の押し方は以下のとおりです。
空腹時・食後すぐ・入浴直後は避け、体が落ち着いたタイミングで行うのがよいでしょう。
関元は、おへそから指3本分ほど下にあるツボです。東洋医学では、男性機能全般の不調に関連するツボとされています。
関元の押し方は以下のとおりです。
中極・関元ともに、強く押しすぎると内臓を刺激する場合があります。妊娠中の方や下腹部に疾患がある方はツボ押しを避けてください。

ツボ押しは、血流改善やリラックス効果を通じた補助的なケアとして取り入れる分には差し支えありません。ただし、医学的なエビデンスは限定的であり、ツボ押しだけでEDの改善が見込めるわけではありません。勃起力の低下が継続している場合は、セルフケアを続けるだけでなく、医師への相談を検討するのも選択肢の一つです。
マッサージは勃起力維持をサポートするセルフケアとして有用な場合がありますが、マッサージだけでEDが改善するケースはほとんどありません。ここでは、マッサージやセルフケアでは対応が難しいEDの種類や原因について解説します。
マッサージが補助的なケアとして機能するとすれば、心因性のEDです。 たとえば、心因性EDなどで、セルフケアの実践にED改善の効果があると思うことによるプラセボ効果が実感できる場合もあるでしょう。 一方、動脈硬化や神経障害、糖尿病・高血圧などの器質的疾患が根本にある場合、マッサージやストレッチで血流を促しても状態の変化は見込みにくく、医療機関での診断と治療が必要になります。
EDは大きく以下の4つに分類されます。それぞれの原因とマッサージの効果範囲を確認しておきましょう。
| 種類 | 主な原因 | マッサージの効果範囲 |
|---|---|---|
| 器質性ED | 糖尿病・高血圧による動脈硬化、脳血管障害・脊髄損傷・パーキンソン病などの神経障害、前立腺がんなどの手術による神経・血管の損傷 | 効果は限定的なので、医療的な治療が必要となる |
| 心因性ED | 心理的なストレスやプレッシャーによる脳の興奮伝達の阻害 | リラックスを通じたアプローチが補助的に働く場合があるが、根本的には心因へのアプローチが必要 |
| 混合性ED | 加齢による血管の柔軟性低下・テストステロン減少と心理的要因の重なり | セルフケアで対応しきれない場合が多い |
| 薬剤性ED | 抗うつ剤・精神安定剤・睡眠薬・筋弛緩剤・循環器系薬による血管収縮や神経伝達の阻害 | マッサージでの変化は見込みにくいため、服用中の薬が原因と疑われる場合は自己判断で中断せず処方医に相談する |
なお、いずれの場合も、症状が続く場合は医師への相談を検討するのがよいでしょう。
器質性EDとは、血管や神経そのもののダメージが原因で引き起こされるEDのことです。血管や神経のダメージの原因には、糖尿病や高血圧による動脈硬化、脳血管障害・脊髄損傷・パーキンソン病などの神経障害が挙げられます。
器質性EDでは、血管が物理的に狭くなっていたり神経伝達が阻害されていたりするため、マッサージで血流を促しても十分な変化は見込みにくく、医療機関での診断と治療が中心となります。
心因性EDとは、心理的なストレスやプレッシャーにより、脳からの興奮がうまく陰茎に伝わらないことで引き起こされるEDのことです。マッサージによるリラックスが補助的に働く場合がありますが、根本的には心理的アプローチや医療的介入が選択肢となるでしょう。
混合性EDは加齢による血管の柔軟性低下やテストステロン減少に、心理的な要因が重なって起こるEDのことです。若年層でも寝不足(身体的要因)と仕事の疲れ(精神的要因)が重なって、混合性EDが発症することがあります。セルフケアだけでは対応しきれない場合が多いため、医師への相談が必要です。
薬剤性EDとは、服用中の薬の影響により血管収縮や神経伝達の阻害が生じて起きるEDのことです。抗うつ剤・精神安定剤・睡眠薬などの中枢神経に作用する薬や、筋弛緩剤など末梢神経に作用する薬、不整脈・高血圧などの循環器系に作用する薬などが、薬剤性EDの原因となることが多いでしょう。
薬剤性EDの場合、マッサージでの対応は難しいといえます。服用中の薬がEDの原因として疑われる場合は、自己判断で中断せず、必ず処方医に相談してください。
マッサージや運動などのセルフケアを続けても状態に変化が見られない場合は、ED治療薬の使用を検討することが選択肢の一つとなるでしょう。 EDの治療においては、第一選択として国内承認のPDE5(ホスホジエステラーゼ5)阻害薬による内服治療が推奨されています。2026年8月時点で日本国内で承認されているPDE5阻害薬には、シルデナフィル(バイアグラ)・バルデナフィル(レビトラ)・タダラフィル(シアリス)の3種類があり、効果の発現時間や持続時間、食事の影響などがそれぞれ異なります。

これらの薬はいずれも、性的刺激があった際に勃起する力をサポートするものであり、飲むだけで勃起が起きる薬ではありません。気になる方は医師への相談を検討してみてください。
参考:独立行政法人 医薬品医療機器総合機構「バイアグラ錠 添付文書」 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構「バルデナフィル錠 添付文書」 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構「シアリス錠 添付文書
勃起とマッサージについて寄せられることの多い質問に回答しています。勃起の悩みをマッサージで解消しようと考えている方は、参考にしてみてください。
マッサージだけでEDの症状は改善できますか?
マッサージは血行促進やリラックスを通じた補助的なアプローチであり、EDの根本的な治療にはなりません。EDの症状が続く場合は、医師への相談を検討してください。
勃起への働きかけが期待されるツボに、即効性はありますか?
中極・関元などのツボは即効性があるものではありません。ツボのような東洋医学的なアプローチは継続的に取り入れることが前提であり、一度の刺激で大きな変化を期待することは難しいとされています。
マッサージはお風呂で行った方がより良いですか?
入浴中や入浴後は体が温まり筋肉が緩みやすい状態のため、鼠径部リンパマッサージや骨盤底筋ほぐしを行いやすいでしょう。ただし、医学的な違いを示すデータは限定的です。
鼠径部リンパマッサージや骨盤底筋ほぐし、睾丸マッサージなどは、医学的なアプローチに対する補助的なケアとして取り入れられます。中極・関元などのツボを押すことや、ストレッチも、血行を促すことやリラックスを通じてサポートになる場合があるでしょう。
ただし、EDには器質性や薬剤性など、マッサージで変化がみられにくい原因によるものも含まれているうえ、ED治療の第一選択としてPDE5(ホスホジエステラーゼ5)阻害薬による内服治療が推奨されています。セルフケアを続けても勃起の状態に変化が見られない場合は、医師への相談を検討してください。
独立行政法人 医薬品医療機器総合機構「バイアグラ錠 添付文書」
独立行政法人 医薬品医療機器総合機構「バルデナフィル錠 添付文書」
独立行政法人 医薬品医療機器総合機構「シアリス錠 添付文書」
厚生労働省「アクティブガイド2023」
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ED治療は、「シルデナフィル」・「パルデナフィル」・「タダラフィル」などの成分を含む内服薬で行うのが一般的です。
治療の必要性について
EDは生活習慣病が原因の場合もあるため、放置せず早期に専門医へ相談することが推奨されます。
費用について
ED治療は、保険適用外の「自由診療」です。対面診療では、薬代(1錠500~2,000円ほど)の他に初診料や診察料がかかる場合があります。
ED治療は専門医への相談が不可欠ですが、デリケートな悩みであるため、通院の待ち時間や人目が心理的ハードルとなる場合も少なくありません。
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