更新日:2026年02月10日
「AGA治療を検討しているものの、本当に効果がある治療法が分からない」「信頼できる情報が欲しい」と考える方もいるかもしれません。AGAガイドラインは、日本皮膚科学会が作成した医学的指針です。各治療法を5段階の推奨度で客観的に評価しているため、AGA治療を行う際の参考になるでしょう。
本記事では、AGAガイドラインの内容を詳しく解説します。AGA治療を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
AGAガイドラインの正式名称は「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン」で、公益社団法人日本皮膚科学会が作成・公開している医学的指針です。医師や薄毛に悩む患者に対し、科学的根拠に基づいてAGA・FAGAの治療法や推奨度を掲載しています。
薄毛治療を検討している方にとって、AGAガイドラインは広告や口コミではなく、医学的な観点から客観的に治療法を判断できる信頼性のある情報源といえるでしょう。ここでは、AGAガイドラインについて詳しく解説していきます。
AGAガイドラインは以下の内容で構成されており、総ページ数は15ページほどです。
AGAガイドラインの冒頭で、AGAがどのような疾患なのか解説されています。診断・治療方針などの情報もまとめられているため、AGA治療に関して理解を深めることが可能です。
フィナステリドやデュタステリドの内服、ミノキシジル外用といった治療法のほか、有効性を示す科学的根拠が整理されていることから、クリニックで勧められているAGAの治療法は効果が期待できるものなのか自分で確認できるようになります。
なお、AGAガイドラインに掲載している治療法には「推奨度」の5段階評価が付けられており、何の治療法がどの程度推奨されるかが一目で分かる構成となっています。
AGAの解明が進むとともに、治療に有効な内服・外用薬が開発され、AGA専門のクリニックや皮膚科で使用されるようになりました。一方、医学的根拠に乏しい民間療法や誤った情報が横行している実情もあり、無効な治療、あるいはリスクのある治療を受けている方も少なくありません。
AGAガイドラインが作成された主な目的は、薄毛治療の質の向上と標準化です。ガイドラインによって指針ができたことで、薄毛に悩む方は不確かな情報に惑わされずに、信頼性のある情報に基づいた治療法を選択できるようになりました。また、医師にとっても治療の根拠が明確になり、患者に必要な医療を提供できるようになっています。
ここでは、AGAガイドラインに掲載される治療法を紹介します。推奨度のレベルが高い順に、各治療法と内容を解説するので、AGA治療について知りたい方は参考にしてみてください。
AGAガイドラインに掲載されている「推奨度A」は、治療を行うよう強く勧めるレベルとして評価された治療法です。AGAの治療について医師に相談した際に、第一選択肢として挙げられるAGAの治療法とされています。
AGAガイドラインで推奨度Aに分類されているのは、「フィナステリドの内服」「デュタステリドの内服」「ミノキシジルの外用」の3つです。以下でそれぞれの治療法について解説します。
フィナステリドとは、AGAの主な原因である5αリダクターゼという酵素の働きを阻害するAGA治療薬です。5αリダクターゼは、男性ホルモンのテストステロンを薄毛の原因となるDHT(ジヒドロテストステロン)に変換する働きがあります。DHTが毛乳頭細胞に作用すると毛髪の成長サイクルが乱れ、薄毛につながるのです。
フィナステリドには、5αリダクターゼII型の働きを阻害する作用機序があります。服用によって乱れていたヘアサイクルは正常に戻るため、脱毛の進行を防ぐことが可能です。AGAガイドラインでは推奨度Aとされており、薄毛治療においてその有効性が確認されています。
| フィナステリドの主な効果 | 作用機序 | 副作用 |
|---|---|---|
| 脱毛進行の抑制(一部症例で毛髪の増加が認められる) | 5α-リダクターゼのII型を阻害し、AGAの原因物質であるDHTの生成を抑制 | リビドー減退や精液量減少、乳房肥大、抑うつ症状など |

この記事の監修:
慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会認定専門医。 医師免許取得後、外資系経営コンサルティング企業のヘルスケア・IT領域にて従事。 慶應義塾大学医学部助教を経て、美容医療を主としたJSKINクリニック、及びオンライン診療サービス「レバクリ」監修。
<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS)
フィナステリドについては、「フィナステリドの効果とは?副作用や服用時の注意点についても説明」でも詳しく解説しています。
デュタステリドもフィナステリドと同様に、5αリダクターゼの活性を阻害してAGAの改善を目指すAGA治療薬です。AGAガイドラインでは、デュタステリドは推奨度Aと評価されています。
フィナステリドが5αリダクターゼのII型のみを阻害するのに対し、デュタステリドはI型とII型の両方を阻害します。I型とII型のどちらも阻害できるため、より強力にDHTの生成を抑制することが可能です。「頭部全体の薄毛が気になる」「フィナステリドよりも効果が強いAGA治療薬を希望する」といった場合、デュタステリドが処方されることが多いでしょう。
ただし、作用が強力な分、フィナステリドと比べると副作用が出現しやすい点には注意が必要です。
| デュタステリドの主な効果 | 作用機序 | 副作用 |
|---|---|---|
| 脱毛の進行抑制や発毛促進 | 5α-リダクターゼのI型とII型の両方を阻害し、DHTの生成を抑制 | 性機能不全や乳房障がい、浮動性めまい、腹痛など |
デュタステリドについて知りたい方は、「デュタステリドが効かないのはなぜ?考えられる7つの原因と対処法を解説」も参考にしてみてください。
ミノキシジルは、AGAガイドラインにおける推奨度Aの治療薬のうち、唯一の外用薬です。もともと高血圧症に対する薬として開発された薬剤ですが、副作用として多毛症が見られることから、外用薬としてAGA治療に応用されるようになりました。
ミノキシジルの作用機序は、毛根周囲の血流を改善して毛母細胞へ栄養や酸素を供給しやすくし、ヘアサイクルを成長期へと誘導することです。ミノキシジル外用薬はフィナステリドやデュタステリドの内服薬と併用可能で、より高い効果が期待できるとされています。
| ミノキシジル外用薬の主な効果 | 作用機序 | 副作用 |
|---|---|---|
| 発毛促進や毛髪の肥大化 | 毛根周辺の血流を改善することで、毛母細胞を活性化して、ヘアサイクルを成長期へと誘導 | 頭皮のかゆみやかぶれ、赤みなど |
ミノキシジルについては、「ミノキシジルに効果はある?効果を高める方法や期間の目安も解説します」も参考にしてみてください。
推奨度Bは「行うように勧める」と評価された治療法です。AGAガイドラインで推奨度Bとして分類されているのは、「自毛植毛術」「LED・低出力レーザー照射」「アデノシンの外用」です。以下で、それぞれの治療法について解説します。
自毛植毛術は、後頭部や側頭部といったAGAの影響を受けにくい部位から健康な毛髪を採取し、薄毛が気になる部分に移植する外科的治療法です。移植された毛髪は、成功すれば性質を保ったまま生着して成長を続けます。人工植毛のように拒絶反応を起こすリスクが低く、生着すればカラーやパーマなどのヘアスタイルを楽しむことも可能です。
AGAガイドラインでは、内服薬や外用薬で満足のいく結果が得られず、ほかに手段がない状況において、十分な経験と技術を有する医師が施術する場合に限り自毛植毛を推奨するとされています。AGAによる薄毛で悩む方は、まず内服薬や外用薬での治療を検討しましょう。
自毛植毛が気になる方は、「自毛植毛とは?効果や費用相場、手術の流れを解説」も参考としてご覧ください。
LEDや低出力レーザーを用いた光照射治療は、頭皮に特定の波長の光を当てることで毛母細胞を活性化し、発毛を促す治療法です。
AGAガイドラインでは、男性の被験者に対して低出力レーザーを週に3回照射し、26週間の経過観察をしたところ、19.8本/cm²増加したと掲載されています。なお、女性の被験者には、20.2本/cm²の増加した結果がみられました。(※これらは特定条件下の臨床試験結果であり、効果には個人差があります。)
LEDや低出力レーザーでの治療法は、発毛効果の有用性を示す根拠があり、照射後の副作用が軽度であることから、AGAガイドラインでの推奨度はBとされています。自宅でLEDや低出力レーザーを使用できる機器もあり、手軽さも特徴の一つです。
アデノシンを有効成分とする外用薬は、頭皮に塗布することで発毛促進作用が期待できる治療法として、ガイドラインで推奨度Bに位置づけられています。
アデノシンはもともと体内に存在する物質であり、細胞のエネルギー源として知られるATP(アデノシン三リン酸)の構成成分です。外用剤として使用すると、毛乳頭細胞に作用して成長因子の産生量を増加させるため、発毛をサポートすると考えられています。
アデノシンは、その有用性が確認できていることから、AGAガイドラインではAGAの外用療法として勧めるとされています。一方、女性への有効性を示す臨床試験は不十分なため、外用療法は推奨ではなく「行ってもよい」とされているのが特徴です。
AGAガイドラインで推奨度C1に分類される治療法は、「行ってもよい」とされるものです。以下で、推奨度C1の「カルプロニウム塩化物の外用」「t-フラバノンの外用」「サイトプリン・ペンタデカンの外用」「ケトコナゾールの外用」「かつらの着用」について解説するので、参考にしてみてください。
カルプロニウム塩化物は頭皮の血管を拡張させ、血流を改善することで毛根への栄養供給を促す成分です。医薬品としては、「フロジン」や「カプロニウム塩化物」などの商品名で販売されています。カルプロニウム塩化物のエビデンスが十分ではないことから、AGAガイドラインでの推奨度はC1です。
ニプロ株式会社のフロジンの添付文書によると、発生頻度は0.1~5%未満と低いものの、一過性の発赤やそう痒感、刺激痛、局所発汗などの副作用が現れる場合があるとされています。また、頻度不明の副作用には、全身性の発汗や悪寒、吐き気といった症状が挙げられます。
参考:ニプロ株式会社「フロジン」
t-フラバノンとは、日本の花王株式会社が独自で開発した育毛成分です。育毛剤や発毛促進剤に配合されており、毛根を包む毛包細胞の増殖を促すなどして、抜け毛の進行を防ぐ作用が期待されています。
t-フラバノンはAGAに対する有効性を示す根拠が弱いことや、抜け毛の改善率が70〜75%とほかの治療法と比較して低いことから、AGAガイドラインでの推奨度はC1です。効果を示す根拠が不足していますが、副作用が軽微な点から、女性がFAGAの治療として使用してもよいとされています。
t-フラバノンには育毛成分としての効果が期待できるものの、効率的かつ確実性の高いAGA治療を検討している方は、推奨度Aの内服薬や外用薬での治療を選択することがおすすめといえます。
サイトプリンとペンタデカンはそれぞれ別の成分ですが、AGAガイドラインではともに推奨度はC1です。サイトプリンやペンタデカンの成分を有効とする外用薬は、毛髪の成長をサポートするのを目的としています。AGAガイドラインによると、サイトプリンとペンタデカンの副作用は軽微とされています。
サイトプリンとペンタデカンの効果については有用性を示す臨床データが十分にないことから、「推奨」ではなく「行ってもよい」とされています。
ケトコナゾールは抗真菌薬で、本来は水虫や脂漏性皮膚炎、皮膚カンジダ症などの治療で使われる治療薬です。AGA治療においてはシャンプーに混ぜて使用されることもあり、頭皮環境を整えて育毛を促します。
しかし、ケトコナゾールの有用性についてはまだまだ検証が必要なことに加え、日本では育毛剤としての認可が下りていません。そのため、AGAガイドラインでの推奨度は、C1とされています。
ケトコナゾールについて詳しく知りたい方は、「ケトコナゾールとは?主な効能や副作用を解説」も参考にしてみてください。
かつらの着用はAGAの進行による薄毛を隠し、外見を改善するための手段です。AGAを改善するための治療ではないため、AGAガイドラインではかつらの着用を推奨度C1に分類しています。
AGAガイドラインによると、かつらの着用はQOL(生活の質)が低下している場合に行ってもよいとしていることから、薬物療法が効果を示すまでの間の暫定的な対策として取り入れたい方におすすめといえます。かつらの着用をしてみたい方は、自身の症状や好み、生活スタイル、予算などに応じて検討しましょう。
AGAガイドラインでは、行わないほうがよい治療法として「推奨度C2」と、行うべきではない「推奨度D」の分類を設けています。推奨度C2やDに分類される治療法は、安全性が十分に確立されていないものです。
AGAガイドラインで推奨度C2に分類されている治療法には、「ビマトプロスト・ラタノプロスト外用」「成長因子導入・細胞移植療法」の2つがあります。推奨度Dに分類されているのは、「ミノキシジルの内服」です。以下で解説するので、どのような治療法なのか確認してみてください。
ビマトプロストやラタノプロストは、もともと緑内障の治療薬として開発された薬です。副作用としてまつ毛の発毛効果が確認されたことから、薄毛治療の効果を確認するためにラタノプロストの臨床試験が行われました。
男性被験者の50%に改善効果がみられたものの、「外用する場合の安全性が確認されていない」「高価で経済的な負担が大きくなる」といった理由から、AGAガイドラインでの推奨度はC2となっています。
ビマトプロストについても、ヒト頭皮由来毛包の器官培養系において発毛促進効果を示しましたが、臨床試験による検証はまだ実施されていません。医学的根拠に基づきAGA治療を進めたい方は、推奨度の高い治療法を検討しましょう。
成長因子導入・細胞移植療法とは、毛誘導能をもった間葉系細胞の直接移植、またはその分泌物を含む培養上清の生成物を患部に注入することで、発毛促進の効果を期待する治療法です。
しかし、成長因子導入・細胞移植療法は限られた施設でしか実施できず、先進医療の分野となっています。今後期待される治療法として注目されていますが、「安全性や有効性の検証が十分ではない」「再生医療等の安全性の確保等に関する法律に則って施術する必要がある」などの理由から、AGAガイドラインの推奨度はC2に分類されています。
現時点で成長因子導入・細胞移植療法を一般の人に提供することは現実的でないため、AGA治療を検討している方はフィナステリドの服用やミノキシジル外用といった推奨度の高い方法の検討がおすすめです。
ミノキシジルは外用薬として使用した場合、AGAガイドラインで推奨度Aに分類される効果的な治療法です。しかし、内服薬としての使用はガイドラインでは推奨されていません。
ミノキシジルは経口の血圧降下薬として開発された薬剤で、副作用として多毛症が観察されたことから、外用薬としてAGA治療に応用されるようになりました。ミノキシジルの外用薬は局所的に使用するため作用範囲は限定的ですが、内服薬の場合は服用するため全身に作用します。
そのため、血管拡張による副作用が示唆されることや国内未承認薬であることから、AGAガイドラインでの推奨度は「行うべきではない」治療法としてDに分類されているのです。
ここでは、AGAガイドラインに関してよくある疑問に対し、Q&A形式で回答していきます。気になる方は、参考としてご覧ください。
「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン」とは、公益社団法人日本皮膚科学会が作成・公開している、AGAとFAGAの治療に関する医学的根拠に基づいた指針です。正式名称を略して、AGAガイドラインと呼ばれることもあります。
AGAガイドラインは、科学的根拠に基づいて各治療法の有効性と安全性を評価し、医師が適切な治療を提供するための基準を示しています。内服薬や外用薬、外科的治療などのさまざまな治療法が掲載されており、推奨度の分類を5つに分けて評価しているのが特徴です。
AGAガイドラインは医師が患者に必要な治療を提供するための基準であるだけでなく、薄毛に悩みを抱える方が客観的な評価や信憑性の高い情報を得るための信頼できる情報源ともいえます。
2025年11月現在、AGAガイドラインの最新版は、2017年に発行された「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017年版」です。この2017年版は、2010年版以降に発表された新たな医学論文や臨床試験データに基づいて、各治療法の推奨度や記載内容が更新されました。新たな治療薬の登場や既存の治療法に関する科学的根拠が積み重なることで、今後も改訂版が作成される可能性はあるでしょう。
AGAガイドラインは科学的根拠に基づいた信頼できる情報源ですが、個人の症状や希望、予算などによって最適な治療法は異なります。AGAガイドラインを参考にしつつ、医師と相談して自分に合った治療計画を立てることが大切です。
AGAガイドラインは、薄毛治療を検討する際に信頼できる医学的指針です。各治療法をエビデンスに基づいて5段階の推奨度で評価しているため、何が本当に効果的なのかを客観的に判断できます。推奨度Aに分類されるフィナステリドやデュタステリドの内服、ミノキシジルの外用は、効果的なAGAの治療法として前向きに検討すべきでしょう。
AGAガイドラインを参考にすることで、インターネット上の広告や口コミに惑わされず、科学的根拠に基づいた治療の選択が可能になります。AGA診療ガイドラインの内容を踏まえ、医師と相談しながら、自分に合った適切な治療計画を立てるようにしましょう。