更新日:2024年03月29日
うつとEDの関係は?うつでEDになる2つの原因と4つの対策を解説!
- うつとEDは双方向的な関係にあり、うつの方はEDになりやすく、EDの方はうつを発症しやすい
- うつでEDになる主な原因として、抑うつ症状、薬剤性EDが考えられる
- うつでEDになった際の対策には、うつの治療を行う、内服薬を見直す、薬剤加療を行う、専門医を受診することが挙げられる
うつ症状があると診断された方の中には、EDについても悩んでいる方もいるでしょう。周囲の人に相談しづらく、心配に思っている方もいらっしゃるかもしれません。
うつとEDには少なからず関連があり、併発しやすい疾患です。
本記事では、うつとEDの関係、うつでEDになる2つの原因、そしてうつでEDになった時の4つの対策を解説します。
うつとEDの関係
うつとEDは双方向的な関係にあることが報告されています。
本邦の研究によると、45~54歳の方において、うつ症状がある方がEDを合併するリスクは、うつ症状がない方と比較し約2.02倍であったと報告されています。また、フィンランドで行われた研究によると、EDの症状がある方はEDの症状がない方と比較し、5年間で約1.8倍うつ症状を生じやすかったことが報告されています。
このように、うつ症状がある方はEDを発症するリスクが高く、逆にEDの方もうつ症状を発症するリスクが高いことが研究によって示唆されています。
また、うつ症状、EDともに、男性更年期障害(加齢性腺機能低下症、LOH症候群)によって生じる可能性もあります。
男性更年期障害とは40歳台前後で男性ホルモンが減少することによって、発汗やほてりといった身体症状、抑うつやイライラといった精神症状、そしてEDなどの性機能症状が生じる疾患です。
男性更年期障害は、身体症状・精神症状・性機能症状のいずれかで体調不良を自覚し、血液検査で男性ホルモンの値が低い場合に診断がつきます。
男性更年期障害においてもうつ症状とEDを併発することがあるため、うつとEDは関係性の深い疾患といえます。
うつ病とオナニーの関係については、「うつ病でオナニーができないときはどうすれば良い?原因と対策を解説」を参照してください。
参考:National Library of Medicine「Relationships between erectile dysfunction, depression, and anxiety in Japanese subjects」「Bidirectional relationship between depression and erectile dysfunction」
うつでEDになる原因
うつでEDになる主な原因として、抑うつ症状、抗うつ剤の作用の2つが考えられます。うつでEDの症状がある場合は、複合的な原因であることも多いです。
ここでは、うつでEDになる原因について具体的に解説します。
抑うつ症状
うつでEDになる1つ目の原因は抑うつ症状です。抑うつ症状は意欲の低下や感覚の鈍麻を生じる可能性があります。
また、抑うつは、性行為や自慰行為への意欲の低下を引き起こしたり、感覚の鈍麻によって性的刺激に対する反応を鈍したりする場合があります。
意欲の低下や性的刺激に対する感覚の鈍麻によって、EDが引き起こされます。
抗うつ剤の作用
うつでEDになる2つ目の原因は抗うつ剤の作用です。うつに対して使用する薬剤の中にはEDや性欲減退を引き起こし得る薬剤があります。
EDの原因となる抗うつ剤の代表例として、セロトニン再取り込み阻害薬であるパロキセチンやセルトラリン、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬であるベンラファキシンがあります。
ED診療ガイドラインによるとEDの発生率は、パロキセチンが約64.5%、セルトラリンが約67.1%、そしてベンラファキシンが約75%と報告されています。
また、ベンゾジアゼピン系、三環系抗うつ薬もEDや性欲減退作用を生じる可能性があります。
このように、うつの症状自体による影響だけでなく、使用薬剤による影響の可能性があり、複合的な要因でEDにつながりうるといえます。
抗うつ剤とEDの関係については、「抗うつ剤でEDになる?その理由と対策を解説」でも詳しく解説しています。
参考:日本性機能学会/日本泌尿器科学会「ED診療ガイドライン[第3版]」
うつでEDになったときの対策
うつの方がEDになった場合、まずはEDの原因をはっきりさせることが大切です。なぜなら、原因を明確にすることで、原因に応じた対策を取ることができるからです。
ここでは、うつでEDになった時の対策について具体的に解説します。
うつの治療をしっかり行う
うつでEDになったときの1つ目の対策は、うつの治療をしっかり行うことです。うつの治療によってEDの改善が期待できる場合があります。
うつの治療では、うつ病とはどのような病気なのか、うつによって生じる症状・治療について理解し、適切な治療を実施することが大切です。
うつの治療に当たっては薬物治療を行う場合が多いです。使用する薬剤としては、前述したSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)、SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)、そして三環系抗うつ薬などが代表的です。
そのほかにも、職場などストレスとなっている環境を遠ざける環境調整や、カウンセラーによる精神療法などがとられることも多いです。どのような治療方針が好ましいかは、まずは自身の症状について、うつの治療を担当している主治医に相談しましょう。
また、自身でできる対策として、身体的・精神的ストレスを軽減することが大切です。バランスの良い食事、十分な睡眠、適度な運動などを心がけ、しっかりと休息を取るようにしましょう。
内服薬を見直す
うつでEDになった時の2つ目の対策は、内服薬を見直すことです。前述したように、内服している抗うつ剤がEDを引き起こしている可能性があるためです。
しかし、自己判断での抗うつ剤の中断はうつ症状の悪化を引き起こす可能性があり、危険です。抗うつ剤の自己中断によりうつが悪化すると、結果的にEDの症状も増悪する恐れがあります。抗うつ剤は必ず医師に相談の上、見直しを検討しましょう。
また、抗うつ剤だけでなく、他の薬剤もEDの原因になる場合があります。具体的には、高血圧に対する薬剤、前立腺肥大症に対する薬剤などです。
薬剤を複数内服している場合は、かかりつけ医に内服薬の見直しを相談することも選択肢です。
薬剤加療を行う
うつでEDになったときの3つ目の対策は、EDに対する薬剤加療を行うことです。EDに対してはホスホジエステラーゼ5阻害薬(PDE5阻害薬)を使用する場合が多いです。
男性が性的刺激を受けると陰茎の細胞からNO(一酸化窒素)が分泌され、NOによってcGMP (cyclic GMP)という物質が増加します。cGMPは血管拡張作用を持ち、勃起を引き起こす一因になります。
PDE5は勃起の一助となるcGMPを分解する酵素です。ED治療薬はcGMPを分解するPDE5を阻害する作用を持ち、勃起と勃起の継続を期待できます。
主なPDE5阻害薬は、シルデナフィル(バイアグラ)、バルデナフィル(レビトラ)、タダラフィル(シアリス)などです。代表的な副作用として、頭痛やほてりがあります。
PDE5阻害薬は、うつに対する薬剤との飲み合わせは問題ありませんが、循環器系の薬剤などとは一部併用禁忌です。必ず医師の診察の上処方してもらうよう注意しましょう。
EDのクリニックへ相談する
うつでEDになった時の4つ目の対策は、ED専門のクリニックへ相談することです。なぜなら、ED専門のクリニックは原因の鑑別から治療までを一貫してお任せできるからです。
EDの原因はうつだけではなくさまざまです。大きく分けると器質性、心因性、混合型、薬剤性があります。EDは器質的な原因から除外することが大切です。
ED専門のクリニックへ相談することでEDの原因検索や薬剤加療の必要性なども含め、一貫して診察してもらうことができます。もちろん、うつ症状がある方も相談できます。
対面での診察まで踏み切れない方は、EDのオンラインクリニックへまずは気楽に相談することも選択肢の1つです。
また、うつ症状の悪化が原因でEDになっている場合、そしてうつに対する薬剤が原因でEDになっている場合はうつで通っているクリニックなどへも相談する必要があるので注意しましょう。
EDの治療方法について詳しく知りたい方は、「EDの治療はどのように行う?ED治療にかかる費用や治療の流れも解説」も参考にしてみてください。
まとめ
うつ症状がある方はEDになりやすく、EDの方はうつ症状を生じやすいです。うつでEDになる原因として、抑うつ症状、そして抗うつ剤の作用が考えられます。
うつでEDになった際の対策は、うつの治療をしっかり行う、内服を見直す、薬剤加療を行う、そしてED専門のクリニックへ相談することです。
うつとEDは双方向的な関係にあります。うつ、ED共に悩んでいる方はできるだけ早く病院やクリニックへ相談するようにしましょう。
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この記事の監修:
慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会専門医。 医師免許取得後、株式会社ボストンコンサルティンググループにてヘルスケア・IT領域にて従事。 現在は慶應義塾大学医学部助教、美容医療を主としたJSKINクリニックを経営・監修、オンライン診療サービス「レバクリ」監修。
<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS) 日本乳癌学会