更新日:2025年11月28日
「産後のお腹がなかなか戻らない」「食事制限や運動を頑張っているのに効果が出ない」と悩んでいる方もいるかもしれません。お腹の脂肪には内臓脂肪と皮下脂肪があり、女性につきやすい皮下脂肪は落としにくいのが特徴です。
本記事では、お腹周りにつく脂肪の種類と主な原因を解説し、食事・運動・医療の3つの観点から効果的な落とし方を紹介します。
お腹周りの脂肪には内臓脂肪と皮下脂肪があり、それぞれ特徴や落とし方が異なります。お腹周りの脂肪が気になり効果的に対策したいときは、まずはどのような脂肪がついているのかを理解することが大切です。ここでは、お腹周りにつく脂肪の種類と主な原因について解説します。
内臓脂肪は、胃や腸といったお腹の内臓の周りにつく脂肪です。
内臓脂肪は代謝されやすく、適切な食事管理や運動によって落としやすいとされています。しかし、蓄積しやすいのも特徴で、特に男性や閉経後の女性につきやすいといわれています。
内臓脂肪による肥満(内臓脂肪型肥満)は、「リンゴ型肥満」とも呼ばれます。内臓脂肪が過度に蓄積すると、血糖値や血圧などに影響を与え、糖尿病や高血圧症といった生活習慣病のリスクが高まるため注意が必要です。
内臓脂肪が蓄積する主な原因は、摂取エネルギーが消費エネルギーを上回ることです。摂取エネルギーが消費エネルギーを上回る原因として、下記の例が挙げられます。
| 内臓脂肪が蓄積する主な原因 | 原因のメカニズム |
|---|---|
| 高カロリー食のとり過ぎ | 脂質や糖質の多い食事を継続的にとることで、余剰エネルギーが脂肪として蓄積される |
| 運動不足 | デスクワークが中心の生活や、日常的に体を動かす機会が少ないと、消費カロリーが減少する |
| 過度な飲酒 | アルコールはエネルギー密度が高いほか、肝臓での脂肪分解を阻害する |
これらの要因が重なると、内臓脂肪がよりつきやすくなります。また、加齢とともに基礎代謝が低下すると、同じ食生活でも脂肪がつきやすくなるでしょう。内臓脂肪は、後述する食事・運動習慣の改善により燃焼を図れます。
皮下脂肪は皮膚の下につく脂肪で、内臓脂肪に比べて代謝速度が遅く分解されにくいため、落としにくいのが特徴です。お腹だけでなく太ももやお尻などにもつきやすく、皮下脂肪による肥満(皮下脂肪型肥満)は「洋ナシ型肥満」とも呼ばれます。
皮下脂肪は女性につきやすいとされています。内臓脂肪ほど生活習慣病におけるリスクは高くありませんが、美容面での悩みの原因になりやすいでしょう。
皮下脂肪を減らすには、内臓脂肪よりも長期的な取り組みが必要です。食事管理と運動を継続し、状況に応じて医療的アプローチを検討するとよいでしょう。
皮下脂肪がつく原因は複数ありますが、女性の場合はホルモンバランスの変化が主な原因です。女性ホルモンの一つであるエストロゲンの分泌量低下は、皮下脂肪の蓄積に影響を与えます。
エストロゲンには脂肪の代謝を促進する作用があり、分泌量が減少すると脂肪が燃焼しにくくなります。エストロゲンの分泌量が低下する主な原因は、以下のとおりです。
| 原因 | 影響 |
|---|---|
| 出産 | 妊娠中に分泌量が多かった女性ホルモンが急激に減少する |
| 加齢 | 30代後半から徐々にエストロゲンの分泌量が減少し始める |
| 不規則な生活 | 食事や睡眠の時間が不規則な場合、自律神経の乱れを招き、ホルモンバランスも乱れる |
皮下脂肪は一度つくと落としにくいため、日頃からバランスの良い食事や適度な運動を心掛け、蓄積を防ぐことが大切です。
食事でお腹の脂肪を落とすには、摂取カロリーが消費カロリーを上回らないようにしたり、高タンパク・低糖質の食事を意識したりすることが大切です。ここでは、食事におけるお腹の脂肪の落とし方について解説します。

この記事の監修:
慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会認定専門医。 医師免許取得後、外資系経営コンサルティング企業のヘルスケア・IT領域にて従事。 慶應義塾大学医学部助教を経て、美容医療を主としたJSKINクリニック、及びオンライン診療サービス「レバクリ」監修。
<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS)
お腹の脂肪の落とし方の一つ目は、摂取カロリーを消費カロリー以下にすることです。
1日の摂取カロリーを把握するには、食品のカロリー表示を参考にしたり食事記録アプリを活用したりする方法があります。
1日の摂取カロリーの目安は、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」を参考にするとよいでしょう。同資料の「1 エネルギー・栄養素」には、性別や年齢、身体活動レベルに分けて「推定エネルギー必要量」が記載されています。たとえば30~49歳の女性で身体活動レベルが「ふつう(座り仕事が中心だが、軽い運動や散歩などをする人)」の場合、1日あたりの推定エネルギー必要量は2050kcalです。
消費カロリーは、基礎代謝量(何もしなくても消費するカロリー)や身体活動量などによって変化します。厚生労働省の「1 エネルギー・栄養素」によると、30~49歳で体重53.3kgの場合、基礎代謝量の基準値は1170kcalです。基礎代謝量を参考に身体活動量を調整し、消費カロリーをコントロールしましょう。
参考:厚生労働省「『日本人の食事摂取基準(2025年版)』策定検討会報告書」
高タンパク・低糖質の食事には脂肪燃焼を促進する効果が期待できるため、お腹の脂肪の落とし方として実践したい方法の一つです。
タンパク質は筋肉の合成に必要な栄養素で、摂取することで筋肉量を維持しながら脂肪を減らせます。また、タンパク質は食事誘発性熱産生(食べ物の消化・吸収に使われるエネルギー)が高く、同じカロリーの炭水化物や脂質よりも多くのカロリーを消費します。タンパク質が多い食材の例は、卵や大豆製品、魚介類、乳製品などです。
糖質の摂取量を控えめにすることも大切です。糖質を摂ると血糖値が上がり、体内でインスリンの分泌が増えて脂肪の合成・蓄積が促進されます。白米やパン、麺類などの精製炭水化物を控え、代わりに野菜や豆類などの食物繊維を多く含む食品を選ぶと、血糖値の上昇を抑えられるでしょう。
食事の際に野菜から食べることで、血糖値の急上昇を防ぎ、脂肪の蓄積を抑えられます。野菜に含まれる食物繊維は、糖質の吸収速度を緩やかにする働きがあるためです。
食事の順番は、「野菜→タンパク質→炭水化物」が理想的です。最初にサラダや温野菜を食べ、次に肉や魚、最後にご飯やパンなどの炭水化物を食べましょう。この習慣を続けることで、同じ食事内容でも脂肪がつきにくくなります。
また、朝食に食物繊維が豊富な食品を食べることで、昼食後の血糖値の急上昇を抑えられるファーストミール効果というのもあります。
よく噛んでゆっくり食べると、食事が少量であっても満腹中枢が刺激されて満腹感を得やすくなります。
食事開始から満腹中枢が刺激されるまで、約15分かかるといわれています。一口あたり30回程度を目安に咀嚼することで食事時間が自然と長くなり、早食いによる食べ過ぎを防止できるでしょう。
また、咀嚼回数を増やすことで唾液の消化酵素の分泌を促し、食べ物の消化・吸収をスムーズにできます。これにより栄養素の効率的な利用が可能になり、脂肪の蓄積を避けられるでしょう。
咀嚼回数を増やす習慣付けには、次のような工夫が役立ちます。
上記の習慣を取り入れることで、自然と咀嚼回数が増えて食事量をコントロールしやすくなります。
食事内容や食べ方の改善とともに、脂肪燃焼をサポートするサプリメントの活用も一つの選択肢です。ただし、サプリメントはあくまで補助的な役割かつ効果には個人差があるため、飲んだだけで劇的な効果は期待できないことはあらかじめ理解しておきましょう。
脂肪燃焼をサポートする成分の例は、以下のとおりです。
| 成分名 | 期待できる効果 |
|---|---|
| L-カルニチン | 脂肪酸を細胞内のミトコンドリアへ運ぶ役割があり、脂肪代謝を促進する |
| 茶カテキン | 脂質の代謝が活発になり、エネルギー消費量が増えることで体脂肪を低減する |
| コエンザイムQ10 | エネルギー産生を助け、脂肪燃焼をサポートする |
サプリメントを飲む際は、用法・用量を守ることが大切です。また、妊娠中・授乳中の人や持病がある人は、医師に相談してから飲みましょう。
食事管理と並んで大切なのが運動です。筋トレや有酸素運動を行うことで、お腹の脂肪燃焼を図れます。ここでは、運動の観点からお腹の脂肪の落とし方について解説します。
筋トレによって筋肉量が増えると基礎代謝が上がり、何もしていない状態でもより多くのカロリーを消費できる体になります。
初心者におすすめの筋トレメニューの例は、以下のとおりです。
上記の運動は特別な道具がなくてもでき、自宅で隙間時間を活用して行えます。週に2〜3回のペースで継続することで、徐々に筋肉量が増えて基礎代謝が上がるでしょう。
筋トレ初心者の方は無理をせず、少ない回数から始めて徐々に増やすことが継続のコツです。
ウォーキングや水泳、エアロビクスといった有酸素運動をすると、脂肪や糖質がエネルギー源として利用されるため、体脂肪の減少を図れます。
有酸素運動で効果的に脂肪燃焼を図るには、適切な強度と時間を意識して行うことが大切です。
厚生労働省の「成人を対象にした運動プログラム」によると、基礎疾患がない20~65歳の人を対象として、「ややきつい」と感じる程度の有酸素運動を1回30~60分、週2~5回程度行うことを推奨しています。
運動習慣がなかった人は、身体への負担を避けるために週2~3回程度、1回10~15分程度から始め、慣れてきたら頻度や時間を増やしましょう。
参考:厚生労働省「成人を対象にした運動プログラム」
有酸素運動と筋トレの組み合わせにより、脂肪燃焼と代謝アップの効果を得られ、効率的にお腹の脂肪を落とせます。
相乗効果を狙う際は、筋トレを先に行い、その後に有酸素運動を行いましょう。筋トレで筋肉内のグリコーゲン(糖質)を消費した後に有酸素運動を行うと、エネルギー源として脂肪が優先的に使われます。
効果的なトレーニングの流れの例は、以下のとおりです。
週に3〜4回、筋トレと有酸素運動を組み合わせたトレーニングを行うことで、効果的にお腹の脂肪減少を図れるでしょう。
食事や運動で効果を得づらい場合や、より確実な結果を求める場合には、脂肪溶解注射やメディカルダイエット治療薬といった医療的なアプローチも選択肢の一つです。ここでは、医療の観点でお腹の脂肪の落とし方について解説します。
お腹の脂肪を落としたい場合、漢方薬の服用により体質改善を図り、脂肪がつきにくい身体をつくる方法があります。
漢方薬は種類によって期待できる効果が異なり、体質や症状に合わせて選ぶことが大切です。
| 漢方薬の種類 | 期待できる効果 | 体質・症状 |
|---|---|---|
| 防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん) | 体内の余分な熱や水分を排出し、エネルギー消費を高めて脂肪の分解を促進する | 腹部の皮下脂肪が多く、便秘気味の人 |
| 防已黄耆湯(ぼういおうぎとう) | 水分代謝を改善して余分な水分を排出し、むくみを改善する | 汗をかきやすく、疲れやすい人 |
| 大柴胡湯(だいさいことう) | ストレスによる自律神経の乱れを抑制し、脂質代謝を上げて脂肪燃焼を促進する | ストレスを感じやすく、上腹部が張りやすい人 |
漢方薬には市販薬がありますが、自分の体質・症状に合う漢方薬を服用するために、医療機関で処方してもらうのも一つの方法です。
脂肪溶解注射は、脂肪を減らしたい部位に薬剤を注射し、脂肪細胞を分解・破壊する治療法のことです。脂肪溶解注射に含まれる成分は、脂肪細胞の細胞膜を破壊し、中の脂肪を溶かす作用があります。溶けた脂肪は体内で代謝され、汗や尿と一緒に排出されます。
1回の施術時間は、30分程度です。効果を実感する施術回数の目安は2〜4回ほどとされています。
脂肪溶解注射のメリットは、気になる脂肪をピンポイントで減らせることや、施術後の日常生活への影響が少ないことです。一方、施術後に腫れや内出血が生じやすいことがデメリットとして挙げられます。
費用は部位や使用する薬剤の種類、クリニックによって異なりますが、1回あたり3〜10万円程度が目安です。
脂肪冷却は、脂肪がほかの細胞に比べて高い温度で凍る特性を活かし、脂肪細胞のみを冷却・破壊する医療ダイエットの方法です。壊死した脂肪細胞は、数週間~数ヶ月かけて体外に排出されます。
施術時間は部位によって異なりますが、1回あたり30〜60分程度が目安です。2~3回ほど通院し、同じ部位を施術すると効果を実感しやすいとされています。
脂肪冷却のメリットは、注射や外科的処置がなく、ダウンタイムがほとんどないことです。また、一度施術を受けた部位の脂肪細胞は減少するため、食事管理や運動習慣を維持できれば効果が持続しやすいとされています。
デメリットは、効果を実感できるまでに1〜3ヶ月程度かかることです。また、赤みや内出血といった副作用が出る可能性があります。
費用は施術する部位やクリニックによって異なりますが、1回あたり5〜15万円程度が目安です。
医療用EMSは、電気刺激により筋肉を収縮させ、筋力強化と脂肪燃焼を同時に促進する治療法です。医療用EMSの施術では、脂肪を減らしたい部位に専用のパッドを装着し電気刺激を与え、普段のトレーニングでは使わない筋肉も鍛えられるのが特徴です。
効果を実感するためには、週1〜2回の頻度で計4〜8回程度施術を受けるのが目安とされています。また、治療効果を得るために食事管理や運動も行うのがおすすめです。
費用は施術部位やコース内容、クリニックによって異なりますが、1回あたり1〜3万円程度が目安です。
GLP-1が配合されている内服薬・注射薬によって痩せやすい身体にし、お腹周りの脂肪を落とす方法もあります。GLP-1は、食欲抑制や血糖値の上昇抑制といった作用があるホルモンの一種です。
GLP-1内服薬を毎日服用すると自然に食欲を抑えられ、食事量が減少して摂取カロリーを削減できます。GLP-1注射薬による治療では、週に1回腹部に自己注射します。これにより胃の働きを緩やかにして食欲を抑制し、自然に食事量を減らして体重減少を図ります。
メディカルダイエット治療薬の費用は薬剤の種類や通院頻度によって異なりますが、月に1〜5万円程度が目安です。効果には個人差がありますが、GLP-1内服薬の場合、服用開始から1~3ヶ月程度で体重が減少します。
お腹周りの脂肪を効果的に落とすためには、自己流のダイエットよりも専門家のアドバイスを受けることが近道です。特に何度もダイエットに挑戦しているものの効果が出ない場合は、医師に相談することをおすすめします。
医師に相談することで、体質や生活習慣、健康状態を総合的に判断した上で、適したお腹の脂肪の落とし方を提案してもらえます。また、自己流のダイエットは知らず知らずのうちに身体に負担をかける場合がありますが、医師への相談により健康を損なわず効率的に脂肪を減らせるでしょう。
「医師に相談したいけれど、病院に行く時間がない」という方には、オンライン診療がおすすめです。スマートフォンやパソコンを使って自宅で医師の診察を受けられるため、育児や仕事などで忙しい方も気軽に医師のアドバイスを得られます。処方された薬は自宅に配送されるため、薬局に行く手間も省くことが可能です。
オンライン診療を利用する際は、医療機関のWebサイトで対応している診療内容や料金を確認し、自分のニーズに合ったクリニックを選びましょう。
お腹の脂肪を効果的に落としたい場合、まずは自分のお腹の脂肪が内臓脂肪と皮下脂肪のどちらであるかを把握することが大切です。内臓脂肪は代謝されやすく、食事・運動によって比較的短期間で落とせますが、女性につきやすい皮下脂肪は落としにくく長期的な対策が必要になります。
食事面では、摂取カロリーを消費カロリー以下に抑えたり、高タンパク・低糖質の食事を心がけたりすることが効果的です。運動では筋トレで基礎代謝を上げて有酸素運動を行うと、相乗効果が期待できます。
自己流のダイエットで効果が出ない場合は、漢方薬や脂肪溶解注射、メディカルダイエット治療薬などの医療的アプローチも検討しましょう。医師に相談することで、体質や健康状態などを踏まえてより効果的なお腹の脂肪の落とし方を提案してもらえます。忙しい方はオンライン診療も選択肢の一つです。