更新日:2025年12月24日
「薬の効果でダイエットに取り組みたいが、保険適用の薬ってあるのかな?」とお悩みではありませんか。保険が適用されるダイエット用の薬はありますが、状況によって保険適用の条件が異なるため、事前知識を備えておくことが大切です。
この記事では、保険適用されるダイエット治療薬の種類や条件、費用の目安、治療薬の費用対効果を高めるポイントなどを解説します。健康のためのダイエットに向けて、ぜひ参考にしてください。
医療ダイエットに用いられる治療薬のなかには、保険適用されるものもあります。保険が適用されれば、通常は3割の自己負担額で治療薬を入手可能です。
厚生労働省「医療費の一部負担(自己負担)割合について」によると、医療費の自己負担の割合は以下のとおりです。
ただし、保険適用を受けるためには、いくつかの基準を満たす必要があります。
参考:厚生労働省「医療費の一部負担(自己負担)割合について」
すべての医療ダイエット治療薬が保険適用されるわけではありません。ダイエットに役立つ治療薬が保険適用の対象となるのは、「医師の指導に基づき、肥満症などの病気の治療を目的として医療ダイエットを行うケース」に限られます。
たとえば美容目的のダイエットは自由診療に該当します。薬剤を使用しても保険の適用外のため、全額自己負担する必要があります。
肥満の治療に薬剤を用いる場合でも、すべてのケースで保険が適用されるわけではありません。
一般社団法人 日本肥満学会によると、「肥満」の基準はBMI25以上と定められています。BMIは「体重kg ÷ 身長(m)の2乗」という計算式で算出できます。
治療薬に保険が適用されるのは、「肥満症」の診断を受けたケースです。「肥満症」と診断されるのは、「BMIが25以上」かつ「肥満による11種の健康障害(合併症)が1つ以上あるか、健康障害を起こしやすい内臓脂肪蓄積がある場合」です。BMI35以上は、「高度肥満症」に分類されます。
「肥満による11種の健康障害(合併症)」は、以下のとおりです。
使用する薬によって、保険適用の条件は異なります。保険適用の条件が厳しく設定されている薬もあります。
食事療法や運動療法で改善が見られない際に薬物療法が検討される傾向があるため、すぐに保険適用の薬を処方してもらえるとは限りません。

この記事の監修:
慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会認定専門医。 医師免許取得後、外資系経営コンサルティング企業のヘルスケア・IT領域にて従事。 慶應義塾大学医学部助教を経て、美容医療を主としたJSKINクリニック、及びオンライン診療サービス「レバクリ」監修。
<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS)
保険適用される主なダイエット治療薬には、以下の4つがあります。
保険が適用される薬で治療を行いたい希望がある場合、医師に相談してみましょう。ここでは、それぞれの治療薬の概要や保険適用の条件、自己負担額の目安を紹介します。
ウゴービは、糖尿病治療薬の「オゼンピック」や「リベルサス」と同じく、「セマグルチド」を主成分としたGLP-1受容体作動薬です。
主に、以下の効果が期待できます。
0.25〜2.4mgの薬剤を週1回、皮下注射して使用します。薬の量は徐々に増やしていくことが一般的です。
ウゴービの保険適用の条件は、以下のとおりです。
ウゴービに保険が適用され、3割の費用負担で済む場合、最大量の2.4mgが処方された際の費用目安は月額1万3,000円程度と想定されます。
ただし、薬剤代の他に、初診・再診料や採血費用も必要です。
ゼップバウンドの有効成分は マンジャロと同一成分である「チルゼパチド」です。GLP-1受容体とGIP受容体の両方に作用するデュアルアゴニストとして設計されており、食欲を抑え、胃の排出を遅らせ、エネルギー代謝に働きかけることで体重減少を促します。
日本でもゼップバウンドが肥満症治療薬として薬価収載され、一定の条件を満たせば公的医療保険が適用されるようになりました。
ゼップバウンドの保険適用の条件はいろいろありますが、一部は以下のとおりです。
医師の判断により、こういった条件を満たしたうえで処方されます。
ゼップバウンドを週に1回10mg投与する場合、自己負担(3割負担)額は約1,1000円となります。 投与量によって金額は変わるため、実際は医療機関の窓口にて相談してみるとよいでしょう。
サノレックスは、飲み薬の食欲抑制剤です。
有効成分の「マジンドール」が脳の食欲中枢に働きかけることで食欲を抑え、少ない食事でも満腹感をうながします。
主に、以下のような効果が期待できます。
基本的には1日1回、昼食前に1錠(0.5mg)を服用します。長期処方による依存性や効果減弱が指摘されているため、「服用期間は3か月まで」という制限があります。
サノレックスの保険適用の条件は、以下のとおりです。
医師の判断により、これらの条件を満たしたうえで処方されます。
サノレックス錠0.5mgの薬価は、1錠あたり170円程度です。保険が適用され、3割の費用負担で済む場合、1日1錠のサノレックスが処方された際の費用の目安は、月額1,500円程度と想定されます。
ただし、診察料や検査料は別途必要です。
防風通聖散は、便秘をともなう肥満症の治療に用いられることが多い漢方薬です。
主に以下のような働きがあり、肥満の改善に役立ちます。
保険適用で防風通聖散の処方を受けるためには、「肥満症」の診断を受ける必要があります。なお、見た目の肥満ではなく、健康上のリスクがあると医師に認められることが前提です。
医療機関によって異なるものの、防風通聖散の保険適用後の費用は1か月あたり1,500〜3,500円程度です。
防風通聖散は、保険漢方薬と同じ成分を含む製品をドラッグストアや通販で購入することが可能です。ただし、病院で処方を受けたほうが費用を抑えられる可能性が高いでしょう。
治療薬によるダイエットの費用対効果を高めるために、以下の3つのポイントを意識しましょう。
それぞれ、くわしく見ていきます。
治療薬を処方された際は、医師の指示を守り、適切に薬剤を使用することが重要です。用法・用量を守り、自己判断による薬の増量や中断は避けましょう。
薬剤には副作用があり、効果には個人差もあります。気になる点があれば、早めに医師に相談しましょう。少なくとも月に1回は医療機関を受診し、状況に応じた医師の説明を受けることをおすすめします。
薬剤による治療のみに頼るのではなく、並行して生活習慣を改善することが大切です。薬剤を使用しても、暴飲暴食や運動不足が続けば、十分な効果を得られない可能性があります。また、薬の投与をやめた後のリバウンドにつながりかねません。運動習慣をつけ、食生活を見直しましょう。
標準的な1日の摂取カロリーの目安は「目標体重(kg)×25kcal」です。カロリーだけでなく、バランスのよい栄養摂取を心がけましょう。運動は、有酸素運動や筋力トレーニングがおすすめです。
必要に応じて、公的制度を活用しましょう。使用する薬の条件を満たすことで、保険診療を受けられる可能性があります。
また、年間医療費が一定額を超える場合、確定申告を行うことで医療費控除を申請できます。納税者が、自分または自分と生計を一にする配偶者や親族のために、1月1日から12月31日までの間に支払った医療費が対象です。 ただし、美容目的や予防目的のものは対象外となることが多い点には注意しましょう。
ダイエットに処方薬を用いる場合、活用可能な公的制度がないか確認しておくことをおすすめします。
「肥満症」の診断を受けて治療に取り組む場合、保険適用される薬を使用するケースがあります。
保険適用される主なダイエット治療薬には、ウゴービ・サノレックス・防風通聖散などがあります。それぞれ効果や副作用、注意点などが異なるため、医師の指示に従いましょう。
治療薬を使用する場合、あわせて生活習慣の改善にも取り組むことがポイントです。必要に応じて、医療費控除などの公的制度も活用するとよいでしょう。
ダイエットや肥満症に関する疑問や悩みがあるにもかかわらず、病院に行く時間がない方は、まずはオンライン診療を検討してみてください。場所や時間にとらわれずにビデオチャットや電話で診察が受けられるため、手軽に医師に相談できるでしょう。