更新日:2024年01月11日
薄毛になったら何科を受診すべき?原因ごとの受診科目について解説
- 薄毛の原因がAGAの場合は皮膚科かAGA専門のクリニックへ行くのがおすすめ
- 脂漏性脱毛症、ひこう性脱毛症の場合は皮膚科で受診する
- 円形脱毛症の場合は皮膚科か心療内科で受診する
- 抜毛症の場合は精神科か心療内科で受診する
薄毛を治療するにあたって、何科を受診したら良いのか悩んでいる人も多いのではないでしょうか。ひと口に薄毛といっても、脱毛の原因となる疾患によって受診すべき科は違ってきます。
本記事では、薄毛は何科を受診したら良いのかそれぞれの原因となる疾患ごとに症状と合わせて紹介していきます。
薄毛が気になったら何科に行けば良い?
薄毛や抜け毛の症状が出た場合、基本的には皮膚科を受診すべきです。しかし、薄毛・抜け毛の発症原因によってそれぞれ受診する科が変わってくるので、自分の薄毛・抜け毛が何によって起きているのか、事前にある程度目星をつけておくのも重要です。
薄毛・抜け毛の原因として考えられる疾患にはAGA(男性型脱毛症)や脂漏性脱毛症、円形脱毛症、ひこう性脱毛症、抜毛症があります。それぞれの症状は別物であるため、自身の薄毛・抜け毛の原因がどれか本記事を参考に考えてみてください。
AGA(男性型脱毛症)の場合
AGA(男性型脱毛症)の場合は、皮膚科かAGA専門クリニックで受診しましょう。AGAによる薄毛の症状と治療法は、次のとおりです。
AGAとは
AGAとは、男性ホルモンの1種であるジヒドロテストステロンが、前頭部や頭頂部に発現している男性ホルモン受容体と結合して軟毛化や脱毛を引き起こす症状です。ジヒドロテストステロンは、テストステロンを材料として前頭部や頭頂部に特異的に発現している5αリダクターゼII型という酵素によって作られます。そのため、髪の毛の軟毛化や脱毛が、前頭部や頭頂部に集中しておきます。
「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」によると、AGAは20代で約10%、30代で20%、40代で30%、50代以降で40数%の男性に発症するとされており、年齢とともに発症率が上昇するのが特徴です。また、遺伝的要因による影響も大きく、家族がAGAを発症している人はAGAを発症しやすいとされています。
自分がAGAによる薄毛かどうかを判断するには、以前より生え際が後退していたり頭頂部が薄くなったりしていないかを確認すると良いでしょう。
AGAについて詳しく知りたい方は、「AGAとは?抜け毛・薄毛が進行する男性型脱毛症について分かりやすく解説」も参考にしてみてください。
参考:公益社団法人 日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」
AGAの治療法
AGAの治療薬としては、5αリダクターゼの活性を阻害するフィナステリドや、血行促進効果などによって毛乳頭細胞の活性化を行うミノキシジル外用剤などが主に使用されます。
病院やAGA専門クリニックでの治療以外にも、栄養バランスの良い食生活や定期的な運動習慣、ストレスの発散、十分な睡眠時間と質の確保を行うことで、薄毛の症状改善を助けたり悪化を防止できる可能性があります。自分の薄毛・抜け毛の原因がAGAかもしれないと思う人は、生活習慣の見直しも同時に行ってみてください。
AGA治療薬については、「AGA治療薬の種類・効果・副作用について、ガイドラインに基づいて解説」でも詳しく解説しています。
脂漏性脱毛症の場合
脂漏性脱毛症の場合は、皮膚科への受診が必要です。脂漏性脱毛症の症状と治療法は、次のとおりです。
脂漏性脱毛症とは
脂漏性脱毛症とは、頭髪の生え際や顔面など皮脂の分泌を行う皮脂腺の密度が高い部位に発生する、脂漏性皮膚炎という湿疹が原因で脱毛が起こる症状です。脂漏性皮膚炎は、皮脂の分泌が過剰となることで、皮膚に常在する細菌や真菌が増殖して引き起こされます。特徴的な症状として、赤みのある湿疹や黄色みを帯びた湿ったフケ、うろこ状のフケが発生します。
脂漏性皮膚炎を発症すると頭皮環境の悪化はもちろん、発生したフケによって頭髪の健全な成長が阻害されたり、炎症反応によって毛乳頭細胞の増殖に悪影響が発生したりして、頭髪の軟毛化や脱毛を引き起こします。また、乳幼児や30〜40歳の成人に好発し、遺伝的要因やストレス、気候の影響を受けることが分かっており、特に寒く乾燥している冬に発症しやすいとされています。
脂漏性脱毛症の判断材料としては、頭皮や顔面に赤みのある湿疹や黄色い湿疹が発生していないか、乾燥したフケがあるか、といったところを確認すると良いでしょう。
脂漏性脱毛症の治療法
治療方法としては、もともとの原因となっている脂漏性皮膚炎を治療する方法があります。脂漏性皮膚炎の治療にあたっては、ステロイド外用剤による湿疹の症状改善や、抗真菌薬含有シャンプーによる殺菌などが行われます。症状がある程度落ち着いたとしても、抗真菌薬含有シャンプーを使用し再発予防などが必要となります。
円形脱毛症の場合
円形脱毛症の場合は、皮膚科か心療内科への受診が必要です。円形脱毛症の症状と治療法は、次のとおりです。
円形脱毛症とは
円形脱毛症とは自己免疫性疾患の1種であり、その名前のとおり頭髪の一部が円形や楕円形に脱毛してしまう疾患です。自己免疫性疾患とは、自身の抗体が自身の細胞を異物と誤認して攻撃を行い、炎症反応などの症状を生じさせる疾患です。円形脱毛症では、自身の抗体が頭皮の毛乳頭細胞を異物と誤認し攻撃することで、頭髪の一部の軟毛化や脱毛を引き起こします。
円形脱毛症は遺伝的要因による影響が大きく、過度なストレスや疲労、感染症などを引き金として発症すると考えられています。また、円形脱毛症はアトピー性皮膚炎やリウマチ、全身性エリテマトーデスなどほかの自己免疫性疾患と合併することもあります。
円形脱毛症の診断時の判断材料としては、頭部全体ではなく一部分が脱毛していること、ストレスなどによる原因の有無があります。
円形脱毛症の治療法
円形脱毛症の治療方法としては、頭髪での炎症を抑制するためにステロイドの局所注射療法やステロイド外用剤の使用、JAK(ヤヌスキナーゼ)阻害薬の使用などがあります。
また、円形脱毛症は遺伝的要因以外にもストレスや疲労などの環境的要因がきっかけになることが多いため、定期的な運動習慣、ストレスを発散すること、十分な睡眠時間と質の確保を行うことで症状の改善を助けたり発症を予防できたりする可能性があります。
まずは皮膚科で現在の症状に対する治療を受けながら、場合によってはストレスケアによる症状改善を期待すべく、心療内科でもカウンセリングを受けることをおすすめされる場合もあります。
ひこう性脱毛症の場合
ひこう性脱毛症の場合は、皮膚科への受診が必要です。ひこう性脱毛症の症状と治療法は、次のとおりです。
ひこう性脱毛症とは
ひこう性脱毛症は、乾燥している細かいフケが大量に生成されることで、毛穴がふさがると同時に常在している真菌の過剰な繁殖が起こり、頭皮の炎症を生じさせる脱毛症です。頭皮で炎症が起こると頭髪の健全な成長が阻害され、発生しているフケと炎症で毛穴がふさがってしまい、頭髪が成長しづらい頭皮環境になります。
また、フケは頭皮全体でまんべんなく発生するため、頭髪が全体的に薄くなるのが特徴です。フケが大量に発生してしまう原因は、洗浄力が強いシャンプーによる頭皮の乾燥や刺激物の付着、頭皮のターンオーバーに必要なビタミンなどの栄養不足などが考えられます。
ひこう性脱毛症がどうかを判断するには、頭皮全体に痒みがあるかどうか、頭皮をかくと乾燥したフケがパラパラと大量に落ちてくるかどうかを確認すると良いでしょう。
ひこう性脱毛症の治療法
治療方法としては、ステロイド外用剤で炎症を抑えるほか、抗ヒスタミン薬で炎症による痒みを抑えたり、ビタミン剤を使用して皮脂の分泌を抑えたりするなどの方法があります。
また、洗髪時はシャンプーなどのすすぎ残しや整髪料の洗い残しがないようよく洗うようにしましょう。
抜毛症の場合
抜毛症の場合は、精神科や心療内科への受診が必要です。抜毛症の症状と治療法は、次のとおりです。
抜毛症とは
抜毛症とは自身の頭髪や眉毛などを繰り返し抜いてしまう症状のことで、頭髪を過度に抜きすぎるために抜いた部分が薄毛になってしまいます。人によって無意識に抜毛をしてしまう人もいれば、一時的なストレスなどによって抜毛をしてしまう人もおり、頭髪に限らずあらゆる部位の体毛を抜いてしまいます。
抜毛症を発症している患者は、緊張感や不安感による精神的ストレスなどによって抜毛を行ってしまう傾向があります。また、抜いた頭髪などを飲み込んでしまうことで毛髪胃石(飲み込んだ毛髪が固く凝集し、消化管から排出されなくなったもの)が形成されることもあり、外科的処置が必要になる場合もあります。
抜毛症は、思春期の児童や成人女性の発症率が高いのも特徴です。この脱毛症を発症する人の多くはうつ病などの精神疾患を併発していることも多く、抜毛症と並行して精神疾患の治療も必要となります。
抜毛症の治療法
抜毛症の治療方法としては、併発している精神疾患に対しての向精神病薬の使用、抜毛をしてしまう原因の特定と回避のための認知行動療法などがあります。抜毛症の発症は精神的ストレスによることが多いため、ストレスを発散することや定期的な運動習慣、十分な睡眠時間と質の確保を行うことで症状の改善を助けたり予防できたりする可能性があります。
薄毛の原因がAGAの場合はAGA専門のクリニックで受診するのがおすすめ
AGA専門のクリニックとは、その名前のとおりAGAの診断と治療に特化している医療機関です。AGAの診断と治療自体は一般的な皮膚科でも行ってもらえますが、AGA専門のクリニックには、特にAGAに対する治療実績が豊富にあります。
そのため、本当にAGAによる薄毛なのかどうかの診断や、症状に合わせたより専門的な治療を行うことが可能で、AGAの根本的治療が行える可能性が高いです。AGAは人によって症状の進行ペースが違ったり、効果的な治療方法が人によって違ったりすることがあるため、治療実績の多い専門のクリニックで受診した方が治療に効果的であるといえるでしょう。
また、AGAの治療は基本的に保険適用外で全額自己負担となりますが、AGAクリニックは一般的な皮膚科と比べて保険適用外治療に関する知識が多く、対応できる治療方法の選択肢が多い傾向にあります。さらに、AGAクリニックはオンライン診療に対応しているクリニックも多く、手軽に診断と治療を行うことができます。 AGAは進行性の脱毛症のため、早期診断と早期治療を行うことが重要です。AGAの疑いが強い方は、早期にAGAクリニックへの受診がおすすめです。
まとめ
今回は薄毛は何科に受診したら良いか、AGAや脂漏性脱毛症、円形脱毛症、ひこう性脱毛症、抜毛症のそれぞれについて症状や治療法と一緒に紹介しました。薄毛や抜け毛とひと口にいっても、脱毛の原因によって受診する必要がある科はさまざまなので、自分の薄毛の症状は何が原因かある程度目星をつけて受診するのがおすすめです。
また、薄毛・抜け毛の原因はAGAである場合が多いので、AGA専門のクリニックへの受診がおすすめです。AGAの疑いが強い方は、AGA専門のクリニックへ受診してみるのが良いでしょう。
この記事の監修:
慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会専門医。 医師免許取得後、株式会社ボストンコンサルティンググループにてヘルスケア・IT領域にて従事。 現在は慶應義塾大学医学部助教、美容医療を主としたJSKINクリニックを経営・監修、オンライン診療サービス「レバクリ」監修。
<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS) 日本乳癌学会