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更新日:2024/04/26

円形脱毛症の進行が止まらない理由は?原因と悪化させない方法を解説

この記事のまとめ
  • 円形脱毛症を進行させる原因は自己免疫疾患、アトピー性疾患、遺伝などがある
  • 円形脱毛症には単発型や多発型などの種類があり、進行度や治癒にかかる時間に違いがある
  • 医療機関で円形脱毛症の進行を止める治療法があるので、自己判断で市販薬を選ばないことが大事
  • 進行を止め、円形脱毛症を改善するためには、生活習慣の見直しも重要

円形脱毛症は生活の質を著しく低下させる病気です。発症するといつまで続くのか不安になってしまう方も多いでしょう。すでに円形脱毛症の治療を行っている方の中にも、進行が止まらず悩んでいる方がいるのではないでしょうか。

本記事では、円形脱毛症の進行が止まらない理由や円形脱毛症の種類を解説。また、治療法や治癒までの期間、回復期にみられる兆候、治療と並行して自分で出来る生活習慣の改善方法について紹介していきます。

円形脱毛症の進行が止まらない理由

円形脱毛症はそもそもなぜ起きるのでしょうか。ここでは、重症化を引き起こすと考えられている6つの要因について説明していきます。

自己免疫疾患

自己免疫疾患とは、何らかの原因により免疫機能に異常が生じることで、Tリンパ球が細胞や組織など身体の特定部位を異物と認識し、攻撃してしまう病気のことです。

円形脱毛症は毛包組織に対する自己免疫疾患が原因の1つとして考えられています。毛包とは、頭皮の内側にある毛根を包んでいる皮膚組織のことで、髪の毛を生成し抜けないように保護する役割を担っています。

その毛包をTリンパ球が攻撃することで、円形脱毛症が発症します。毛包細胞が攻撃され続けると、円形脱毛症をさらに進行させてしまうことにつながります。

アトピー性疾患の合併

円形脱毛症とアトピー性疾患の合併率は高く、円形脱毛症ガイドラインによると、円形脱毛症を発症した患者の4割以上に何らかのアトピー性疾患があるとの研究結果が報告されています。円形脱毛症の進行が止まらない、治っても再発を繰り返すなどの悩みを抱える患者は、自身や家族がアトピー素因を持っている割合が高くなります。

特に、フィラグリン遺伝子異常によるアトピー性皮膚炎を合併していると重症化する傾向が強まるとされており、注意が必要です。

参考:日本皮膚科学会「円形脱毛症ガイドライン2017年版

遺伝

円形脱毛症を発症した患者の約8.4%に家族内発症が認められ、親等が近しい程発症率が上がることがわかっています。近年の円形脱毛症患者のゲノム解析では、ある特定の遺伝子領域が疾患感受性と強く関連することが報告されました。

また、アトピー性疾患も遺伝する確率が高いため、体質的に円形脱毛症が進行しやすい方がいることが示唆されています。

参考:日本皮膚科学会「円形脱毛症ガイドライン2017年版

ホルモンバランスの乱れ

髪の毛の成長に関わる重要なホルモンとして、エストロゲンとプロゲステロンが挙げられます。

エストロゲンには髪の毛のハリやコシを生み出す作用があり、プロゲステロンには髪の成長を維持する働きがありますが、この2つのホルモンバランスが何らかの原因で乱れることで、円形脱毛症の進行、悪化を招くと考えられています。

特に女性の場合、出産や更年期によってホルモンバランスが変化することで、円形脱毛症が発症・進行し、悩まされることがあります。

ウィルス感染

病気による高熱や過度なダイエットなどによって、強い肉体的・精神的ストレスを受けると、毛周期が乱れ、一時的に髪の毛が抜ける中毒性脱毛症を引き起こす可能性が高くなります。実際に、ブタインフルエンザウィルスに感染した患者で、円形脱毛症の悪化が確認されたもあります。

感染症により、中毒性脱毛症が円形脱毛症を進行させるケースも考えられるため、体調を崩した際には注意が必要です。

参考:J-Global「ブタインフルエンザウイルス感染により誘導または悪化した円形脱毛症

関連疾患の発症

円形脱毛症の進行が止まらない、または重症化する原因の1つとして、関連疾患の発症が疑われることがあります。

関連疾患には橋本病やバセドウ病などの甲状腺疾患や尋常性白斑、SLE(全身性エリテマトーデス)、関節リウマチ、I型糖尿病など、免疫のバランスが崩れることで発症する疾患が挙げられます。特に甲状腺疾患と尋常性白斑を合併した患者は、脱毛症状が悪化する傾向にあるため、専門医による詳しい検査を受けることが重要です。

また、円形脱毛症の進行が止まらず悪化する場合、上記の要因が複合して起こる可能性が高いです。原因の特定には、血液検査などの詳細な検査が必要です。原因を特定することで進行や悪化を防ぎ、より早く円形脱毛症を治すことにつながります。病状の進行が止まらないと感じているなら、一度専門医を受診することをお勧めします。

ストレスは円形脱毛症を進行させるか?

長年、ストレスが円形脱毛症の原因となり、症状を進行させるのではないかと考えられてきました。しかし、現在では円形脱毛症は自己免疫疾患の一種という見解が一般的で、結論から言うとストレスが直接的な原因とならない場合もあります。実際、円形脱毛症を発症した患者の中には、ストレスをまったく自覚していない例も多いです。

ただし、ストレスにより抜け毛が増えることは証明されています。精神的、肉体的ストレスは自律神経に影響を及ぼします。自律神経は活動する時に働く交感神経と、リラックスする時に働く副交感神経に分けられます。

ストレスを感じると交感神経が過度に働き、緊張状態が続いたり、イライラしたりします。同時に副交感神経の作用が抑えられるため、眠りが浅くなったり、胃腸の調子が悪くなったりと体にさまざまな不調が現れます。緊張状態が続くと血管が収縮し、血流が悪くなります。その結果、毛根に充分な栄養が行き届かず、抜け毛が増えることにつながるのです。

また、自律神経はホルモンを調整する働きがあり、自立神経の乱れがホルモンバランスにも大きな影響を与えることもわかっています。そのため、ストレスを抱えた状態が円形脱毛症を悪化させることは大いにあり得るのです。

不安や悩みは都度解消し、適度な運動や質の良い睡眠を心がけて、ストレスを軽減させることが重要視されています。

円形脱毛症の種類

円形脱毛症には種類があり、病型によって進行度合、重症化のリスクが異なります。

円形脱毛症の患者の多くは、コイン大の脱毛斑がひとつだけの単発型に分類されますが、進行が止まらず悪化する場合は、多発型などほかの種類の円形脱毛症を発症している可能性が高いです。

ここでは、円形脱毛症の5つの種類と、それぞれの特徴を解説していきます。

単発型

単発型は、コイン大の脱毛斑を頭部に一つだけ認める、いわゆる「10円はげ」に代表される症例です。軽症例が多く、およそ8割が発症から1年以内に自然治癒しますが、ほかの病型に移行することもあるので、放置することは推奨されません。早期に医師の診察を受けることが重要です。

多発型

多発型の円形脱毛症は、コイン大の脱毛斑を2つ以上認める点が特徴です。単発型から移行するケースもあります。

複数の脱毛斑がまとまって発生することにより、脱毛範囲が広がることが懸念される病型です。再発を繰り返しやすく、慢性化する可能性が高いため、注意が必要です。

全頭型

全頭型では、脱毛の範囲が頭部全体に及びます。単発型や多発型よりアトピー性皮膚炎の合併率が高く、回復までに長い期間を要することが特徴です。

蛇行型

蛇行型には、頭髪の生え際が帯状に脱毛するという特徴があります。後頭部から側頭部にかけて、片側だけでなく両側に発症することが多いです。アトピー性皮膚炎の合併率が最も高く、難治性となります。

汎発型

髪の毛だけではなく、眉毛やまつ毛など全身の体毛まで抜け落ちる病型です。蛇行型に次いでアトピー性皮膚炎の合併率が高いことが特徴で、蛇行型と同じく難治性です。

円形脱毛症の進行が止まるまでの期間

円形脱毛症には、脱毛が進行していく「急性期」と、病状が固定する「固定期」があります。

脱毛が進行しているかどうかの判断には、牽引試験を行います。牽引試験は、髪の毛を引っ張って容易に抜けるかを確認することで行われます。10回の牽引で50本以上抜ければ進行期と判断され、脱毛せず、脱毛斑だけが残っている状態なら固定期となります。

個人差はありますが、単発型の場合およそ半年で病状固定期に入るといわれています。

正しい治療を受けた場合、単発型は3〜4ヶ月で回復することもありますが、多発型や全頭型など脱毛の範囲が広範囲の場合は、治癒までに数年かかることがほとんどです。

また、回復率は脱毛範囲が広い程下がる傾向にあり、脱毛範囲が頭部全体の25%未満の場合、回復率は68%、脱毛範囲が50%未満の場合で回復率は32%となります。

早期に専門医の診察を受け、脱毛斑が広がる前に治療することが重要です。

参考:日本皮膚科学会「円形脱毛症ガイドライン2017年版

円形脱毛症の進行を止める治療法

前述のとおり、円形脱毛症には、脱毛が進行する急性期と、脱毛が落ち着き病状が固定する病状固定期があります。

円形脱毛症ガイドラインによると、進行期、固定期ともにステロイドを使用した治療が推奨されています。ステロイドは体内で作られるホルモンの一種で、免疫抑制作用や炎症を強力に抑える力があります。そのため、自己免疫疾患に対する有効な薬剤として広く使われている薬です。

特に進行期には、脱毛範囲に応じてステロイドのパルス療法や内服療法を行います。脱毛面積が4分の1以下の場合は、ステロイドの内服を勧められることが多いですが、脱毛面積が頭部全体の4分の1以上となりさらに進行している場合には、医療機関に入院してステロイド薬剤を1日数時間、3日間点滴します。これがステロイドのパルス療法です。

ステロイドのパルス療法の治療中は、体重増加やムーンフェイスなどの副作用が出る可能性があるため、医師とよく相談し、納得のうえで治療に臨んでください。

参考:日本皮膚科学会「円形脱毛症ガイドライン2017年版

市販薬は円形脱毛症の進行を止めるのに有効か

円形脱毛症に有効とされる市販薬は、血流を促進し発毛を促すものがほとんどです。脱毛が進行している場合、ステロイドを使用して進行を止めることが多いですが、ステロイドには様々な強さがあり、効き目の強いステロイドは、市販薬では入手することができません。効き目の強いステロイドは強い副作用も報告されるため、基本的には医師の処方がないと入手できない薬です。

市販薬は、脱毛がなくなり、脱毛斑だけになった状態を緩和する効果は期待できますが、脱毛が進行している状態の進行期に使える市販薬はほぼないといえるでしょう。自己判断で市販薬に頼ることは症状を悪化させたり、体調を崩したりする原因になりかねません。

まずは専門医に相談することを優先しましょう。

円形脱毛症の進行が止まる前兆

適切な治療を受けると円形脱毛症の進行が止まり、症状が回復していきます。軽快していく過程で頭皮にかゆみを感じる場合がありますが、これは伸びてきた毛先が頭皮に触れる刺激と考えて良いでしょう。髪の毛がある程度長くなるとかゆみは治るため、いつまでもかゆみが続いたり、赤みやフケ、ベタつきを伴ったりする場合はすぐに医師に相談してください。

また、回復期には脱毛斑に白髪が生えてくることがあります。これは髪の毛を作る毛母細胞が先に回復し、その後にメラニンを作るメラノサイト細胞が回復するために起こる現象です。白髪が生えてきても時間が経てば黒くなります。不安にならずに治療を継続することが大切です。

円形脱毛症の進行を止めるセルフケア方法

専門機関での治療と並行して普段の生活習慣を見直すことで、円形脱毛症の進行を緩やかにし、早く治すことが期待できます。

ここでは、睡眠、食事、ストレスの軽減方法の3つに焦点を当てて、自分で出来る改善方法を紹介します。規則正しい毎日を送ることで自律神経を整え、バランスのとれた心身を目指しましょう。

質の良い睡眠をとる

眠っている間は浅い睡眠であるレム睡眠と、深い睡眠であるノンレム睡眠を交互に繰り返します。ノンレム睡眠には、体内の修復や回復を促す成長ホルモンを多く分泌し、代謝を上げる作用があります。ノンレム睡眠の回数が多い程、睡眠の質は高くなると言えるでしょう。

脳の温度が低下するときに入眠が促進されるため、就寝の数時間前に運動によって脳の温度を一過性に上げると就寝時の脳温の低下量が増え、快眠につながると考えられています。

眠りに就く3、4時間前にウォーキングなどの運動をすると、眠りを深くする効果が期待できます。運動が苦手な場合は、38度のぬるま湯に30分、または42度のお湯に5分浸かることで同等の効果があるため、入浴する時間と方法を変えてみると良いでしょう。

また、休日に長く寝る「寝溜め」は禁物。体内時計のリズムを保つため、毎日同じ時間に起きて

朝日を浴びることが大切です。夜遅くまでパソコンやスマートフォンを使用することは避け、なるべく就寝の90分前からは目を休めるように心がけましょう。

参考:厚生労働省「快眠と生活習慣

栄養バランスの良い食事を摂る

頭皮の状態を整え、髪の毛の成長をサポートするビタミンB2、B6のほか、健康な髪の毛を作るタンパク質と亜鉛を意識して摂るようにしましょう。

ビタミンB2、B6が豊富な食べ物にはバナナや緑黄野菜、ゴマ、ナッツ類があります。タンパク質は赤身の肉や大豆に多く含まれ、牡蠣などの海産物や高野豆腐には亜鉛が豊富です。

甘いものや揚げ物はビタミンB群を大量に消費し、脂肪やコレステロールを増加させて血流を悪くするため控えましょう。ただし、過度な食事制限はストレスとなり、逆に円形脱毛症を進行させてしまう結果にもなりかねないので、無理のない範囲で見直すことが大切です。

ストレスを緩和させる

仕事や人間関係の問題はストレスにつながりやすくなります。

仕事の優先順位をつける、オンとオフを切り替える習慣をつけるなど、仕事についてはプライベートとの線引きをしっかりと行うことでストレスを緩和できます。また、カタルシス効果といって、自分の気持ちや感情を誰かに打ち明けることで心の安定を図る方法もあります。

不安やイライラを自分だけで落ち着かせることは簡単なことではありません。

我慢せず正直に自分の気持ちを話すことも、時には必要なのです。

また、瞑想することは深いリラックス効果と、ものごとをポジティブに考えられる効果をもたらすといわれています。どうしてもイライラが収まらない、心が落ち着かないときは、部屋を暗くして

静かに目を閉じ、心の中でゆっくりと数を数えてみてください。

瞑想が難しい場合は、深呼吸をしてみると良いでしょう。ストレスを感じると呼吸が浅くなる傾向があるため、気がついたときに1分間、深呼吸をするように心がけてください。

毎日の生活の中で改善できることから少しずつ始めて、可能な限りストレスを溜めない日常を目指すことが大事です。ただし、自己流の改善法は返って症状を悪化させる恐れがあるので、必ず医師に相談するようにしましょう。

参考:朝日新聞Reライフ.ネット「メンタルヘルスの専門家が勧める効果的なストレス解消法

まとめ

円形脱毛症は年齢や性別を問わず、誰でもかかる可能性のある病気です。内臓などに重篤なダメージをもたらす病気ではありませんが、見た目に影響することから発症すると心に大きな負荷がかかります。

円形脱毛症の原因や病型の特徴を正しく知り、適切な治療をなるべく早く始めることで症状の進行や重症化を防ぎ、回復率を上げることができます。正しい治療と一緒に普段の生活習慣を見直すことで、円形脱毛症をより早く治すことも期待できるでしょう。

決して自己判断で治療を中断したり、誤ったケアをしたりしないことが進行を止める近道です。円形脱毛症の進行が止まらず悩んでいるなら、早めに専門医に相談することをお勧めします。

この記事の監修:

牧野 潤医師

慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会専門医。 医師免許取得後、株式会社ボストンコンサルティンググループにてヘルスケア・IT領域にて従事。 現在は慶應義塾大学医学部助教、美容医療を主としたJSKINクリニックを経営・監修、オンライン診療サービス「レバクリ」監修。

<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS) 日本乳癌学会