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更新日:2024年07月19日

フィナステリドとデュタステリドの違いとは?効果と副作用について解説

この記事のまとめ
  • フィナステリドは5αリダクターゼII型を特異的に阻害しAGAを治療する
  • デュタステリドは5αリダクターゼI型とII型の両方を阻害し、AGAを治療する
  • 副作用は、どちらも共通して1%以上の確率でリビドー減退があり、そのほかに生殖器、肝機能障害、過敏症がある
  • デュタステリドの方がAGA治療の効果が高い反面、副作用が発現しやすい可能性がある

最近はAGAにおいてさまざまな研究が進み、多くの治療薬が誕生してきました。しかし、多くの薬が誕生しすぎて、一体どれが良いのか判断に迷うことも多いのではないでしょうか。

特に、フィナステリドとデュタステリドはAGA治療に使われることが多い薬剤で、どちらの薬を使用すべきか悩んでいる方もいるでしょう。そこで今回はフィナステリドとデュタステリドの効果や副作用、体内動態の違いについて紹介していきます。

フィナステリドとデュタステリドはどちらも5αリダクターゼ阻害薬

デュタステリドとフィナステリドは5αリダクターゼ阻害薬と言われる薬剤に含まれる成分です。フィナステリドは、プロペシア錠などに、デュタステリドは、サガーロカプセルやアボルブカプセルなどに含まれます。

どちらとも5αリダクターゼという酵素の働きを阻害することで、AGAや前立腺肥大の原因となるジヒドロテストステロンという男性ホルモンの生成を抑制し、症状を抑制する作用があります。

5αリダクターゼは、人間の全身に広く分布している酵素の1種で、発現している場所によって構造や性能が違い、主に2種類のアイソザイム(種類)が存在します。

5αリダクターゼI型は男性型脱毛症と前立腺肥大症の発症に関係しており、5αリダクターゼII型は男性型脱毛症(AGA)の発症に関与しています。特にAGAは、前頭部や頭頂部の毛髪に発現している5αリダクターゼII型によって生成されたジヒドロテストステロンが毛乳頭細胞に作用することで、前頭部や頭頂部の毛髪の軟毛化と脱毛化を引き起こします。

そのため、5αリダクターゼ阻害薬は男性型脱毛症(AGA)に対して効果を発揮するといえるのです。

関連記事:5αリダクターゼとは?AGAとの関わりや抑制する方法について解説

フィナステリドとデュタステリドの違い

フィナステリドとデュタステリドは、阻害する5αリダクターゼの種類、効果効能と副作用、薬物動態それぞれに違いがあります。それぞれについて解説します。

5αリダクターゼ阻害作用の違い

ここでは、フィナステリドとデュタステリドの作用機序と、それによる効果効能の違いについて説明します。

フィナステリドの5αリダクターゼ阻害作用

フィナステリドの作用機序としては、5αリダクターゼII型を特異的に阻害します。

5αリダクターゼII型は主に前頭部や頭頂部に発現しているため、その働きを阻害することで、それらの部位のAGAの症状抑制と治療を行うことが可能です。

デュタステリドの5αリダクターゼ阻害作用

デュタステリドの作用機序としては、5αリダクターゼI型と5αリダクターゼII型を両方とも阻害します。

5αリダクターゼI型は側頭部や後頭部のほかに全身のさまざまな組織に分布しており、成長期には骨や筋肉細胞内で血中のテストステロンをジヒドロテストステロンに変換し成長を促進します。

しかし、年齢を重ねた男性においては、精巣で生成されたテストステロンが前立腺細胞内で5αリダクターゼI型によってジヒドロテストステロンに変換されることで、前立腺肥大などを発症させてしまうのです。

5αリダクターゼI型とII型を両方阻害するデュタステリドは、前立腺肥大とAGAに対して症状の抑制と治療を行うことが可能です。

副作用の違い

ここでは、フィナステリドとデュタステリドの作用機序による副作用の違いについて説明していきます。

フィナステリドの副作用

フィナステリドの添付文書によると、フィナステリドの副作用は、リビドー減退(1〜5%未満)、勃起不全・射精障害・静液量減少(1%未満)が挙げられ、そのほかにも頻度不明ではありますが過敏症や生殖器・肝臓などにおける機能異常が現れる可能性があります。

フィナステリドは5αリダクターゼII型のみを特異的に阻害するため、5αリダクターゼI型とII型を両方阻害するデュタステリドよりも副作用の発生率が低いと考えられています。

一方で、デュタステリド0.5mg/日とフィナステリド1mg/日では副作用の発現数と重症度も変わらなかったとの研究もあり、明確に差があるとは言えない状況です。

参考: 医療品医療機器総合機構「フィナステリド錠1mg『NIG』」 National Library of Medicine「The efficacy and safety of dutasteride compared with finasteride in treating men with androgenetic alopecia: a systematic review and meta-analysis

デュタステリドの副作用

デュタステリドの添付文書によると、デュタステリドの副作用はリビドー減退(1%以上)、発疹・頭痛・抑うつ・乳房障害・腹部不快感(1%未満)のほか、過敏症や精神系・生殖系および乳房、皮膚、消化器などにおける機能障害が現れる可能性があります。

参考:医療品医療機器総合機構「デュタステリドカプセル0.1/0.5mgZA『トーワ』

体内における作用の違い

ここではフィナステリドとデュタステリドの体内動態の違いについて説明していきます。

ここで言う体内動態は、身体の中での薬の作用のことを指します。具体的には摂取した薬の半減期、体内分布、代謝酵素の違いについて説明します。

半減期

半減期とは、薬を摂取した際に、薬の血中濃度が半分になるまでにかかる時間のことです。半減期は、薬の作用する時間の長さなどに関わります。半減期が短いということは、薬の代謝が早いことを示しており、薬の効き目が短いということになるのです。

フィナステリド1mgの半減期は4.46±1.03hrで、デュタステリド0.1mgの半減期は19.8±23.2hrであり、デュタステリドの方が半減期が長く、薬の作用時間も長い傾向にあります。

そのため、デュタステリドの方が安定した効果を長時間得やすい可能性があります。

一方で、副作用が発現した場合、半減期が長いデュタステリドは症状が治まるまで時間がかかる可能性も考えられるでしょう。

参考:医療品医療機器総合機構「フィナステリド錠1mg『NIG』」「デュタステリドカプセル0.1/0.5mgZA『トーワ』

体内分布

体内分布とは、薬が体の中でどういった組織に取り込まれるか、取り込まれやすいかといったことを示す言葉です。体内分布の1つの指標である血液中タンパク質結合率は半減期の長さに関わり、値が高いほど薬の成分が血液中に残りやすくなります。

フィナステリドとデュタステリドの血液中タンパク質結合率は、フィナステリドが83〜85%、デュタステリドは99.8%であり、デュタステリドの方が血液中に残りやすいことが分かります。

また、精液中への移行率としては、フィナステリドが投与量の0.00076%以下で、デュタステリドの精液中/血清中薬物濃度比は平均11.5%とされています。

精液中の移行率の計算方法が違うため単純な比較はできませんが、少なくともデュタステリドの方が精液へ移行しやすく、性機能に作用しやすいことが考えられます。

医療品医療機器総合機構「フィナステリド錠1mg『NIG』」「デュタステリドカプセル0.1/0.5mgZA『トーワ』

代謝酵素

代謝酵素とは、主に肝臓に発現している、薬の代謝(分解)や排泄にかかわる酵素を指します。

フィナステリドとデュタステリドは、主に肝臓のシトクロームP450(CYP)という酵素で代謝され、CYPの中でもフィナステリドはCYP3A4とCYP3A5、デュタステリドはCYP3A4で代謝されます。

また、代謝酵素阻害(その酵素が十分機能を発揮できないようにする)作用については、フィナステリドがCYP2C19、デュタステリドはCYP3A4とCYP2C19を阻害します。そのため、デュタステリドはCYP3A4で代謝されますが、CYP3A4そのものを阻害する作用があるため結果的に代謝されづらく、半減期が長くなることが考えられます。

さらに、阻害する酵素が多いデュタステリドは、フィナステリドに比べてより併用薬との飲み合わせについて考慮する必要があります。

フィナステリドやデュタステリドを入手する方法

フィナステリドやデュタステリドを手に入れるには、まず専門機関への受診が必要です。これらの治療薬は医療用医薬品に分類されるため、ドラッグストアは薬局等では購入できません。

フィナステリドとデュタステリドのどちらもAGAに対する治療効果は十分ありますが、併用されることはまずありません。なぜなら、併用した場合、過剰に5αリダクターゼを阻害してしまい副作用の発生リスクと副作用症状の重症化が考えられるからです。

受診後にフィナステリドとデュタステリドのどちらが処方されるかは、検査の結果や医師の治療方針によって決定されます。

しかし基本的には、患者の副作用リスクを抑えるためにまずはフィナステリドを使用し、効果がなければデュタステリドを使用するのが一般的といえます。

まとめ

今回は、フィナステリドとデュタステリドの作用機序をもとに、効果や副作用、体内動態の違いについて、またフィナステリドとデュタステリドの使用方法について説明しました。

最近ではさまざまな研究や治療実績の蓄積によりそれぞれの成分の違いについて分かることが増えてきましたが、一概にどちらが良いと言い切れないのが現状です。

もしも、フィナステリドとデュタステリドどちらが良いか悩むようであれば、かかりつけ医に相談してみるのもおすすめです。また、手軽にAGA治療の受診ができるオンライン診療もあるため、通院する時間が取りにくい方や、AGAクリニックに出向くことを人目に付きたくない方は、そちらを利用することもおすすめします。

この記事の監修:

牧野 潤医師

慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会専門医。 医師免許取得後、株式会社ボストンコンサルティンググループにてヘルスケア・IT領域にて従事。 現在は慶應義塾大学医学部助教、美容医療を主としたJSKINクリニックを経営・監修、オンライン診療サービス「レバクリ」監修。

<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS) 日本乳癌学会