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更新日:2023年12月22日

オナニーでハゲるって本当?医学的根拠やハゲになる原因について解説

この記事のまとめ
  • オナニーをするとハゲるというのに医学的根拠はない
  • オナニーでテストステロン量は増えるが、薄毛とは直接関係しない
  • オナニーで消費される亜鉛とタンパク質は、微々たる量
  • 薄毛や抜け毛が気になる場合は専門機関の受診がおすすめ

「オナニーをしすぎるとハゲる」という噂を聞いたことはありませんか?実際はどうなのか、本記事でオナニーと薄毛の関係について詳しく解説していきます。また、薄毛になるのはAGAと呼ばれる男性型脱毛症が原因である場合が多いため、AGAについても解説していきます。

オナニーをするとハゲる?

結論からいうと、オナニーをするとハゲるということには、医学的根拠は今のところありません。「今のところ」というのは、ハゲる(薄毛になる)要因には遺伝的要因や食生活、喫煙、飲酒などによる影響の方が大きく、オナニーをすると薄毛になるというのは推測の域を出ないためです。つまり、可能性は否定できませんが、それほど大きく関係していないと考えられているのが現状です。

では、なぜオナニーをするとハゲると言われるようになったのでしょうか。この理由としては、次の3つが根拠となっていると推測できます。男性ホルモンが増えること、亜鉛を消費すること、タンパク質を消費することです。

男性ホルモンが増えてハゲる?

男性ホルモンが増えてハゲる、ということはあまり考えられません。薄毛や抜け毛の要因であるAGAは、確かに男性ホルモンの一種であるジヒドロテストステロンが、前頭部や頭頂部の毛乳頭細胞上の男性ホルモン受容体に結合することで発症します。ジヒドロテストステロンは、男性ホルモンのテストステロンが5αリダクターゼという酵素によって変換されることで、生成されます。

オナニーを頻繁に行うと、テストステロン値が上昇するという研究結果があるため、それによってハゲやすくなると噂されるようになったと考えられます。

しかし、オナニーで増えるのはあくまでテストステロンであり、AGAの原因となるジヒドロテストステロンが増えるわけではありません。テストステロンが増えたとしても、5αリダクターゼが増えるわけではないので、ジヒドロテストステロンの増加量はそれほど多くはないと考えられます。

テストステロンと薄毛の関係については、「テストステロンは薄毛の原因?日常生活でもできる薄毛の改善方法も解説!」でも詳しく解説しています。

参照元:National Library of Medicine「Social Modulation or Hormonal Causation? Linkages of Testosterone with Sexual Activity and Relationship Quality in a Nationally Representative Longitudinal Sample of Older Adults

亜鉛の消費でハゲる?

亜鉛を消費することでハゲる、ということもあまり考えられないでしょう。

確かに、オナニーによって体外に放出される精液には、亜鉛というミネラルが含まれています。髪は、主にケラチンというタンパク質で構成されており、ケラチンはシスチンやメチオニンと呼ばれるタンパク質を材料に作られます。亜鉛は、シスチンやメチオニンをケラチンに合成する際に必要になるため、オナニーをしすぎると大量の亜鉛を消費してしまい、はげると噂されることになったと考えられます。

しかし、精液中の亜鉛濃度は0.1mg/mlといわれており、1回の射精の精液量は3ml程度であるため、1度のオナニーで消費される亜鉛は0.3mg程度です。全卵(50g)1個に含まれる亜鉛の量は0.6mg、茶碗ごはん1杯(150g)に含まれる亜鉛量は0. 9mgであることから、オナニーの回数が多くなければ消費した亜鉛は簡単に摂取することができますし、射精による亜鉛消費量はそれほど多いわけではありません。

タンパク質の消費でハゲる?

オナニーによるタンパク質の消費量も少ないため、タンパク質の消費によって薄毛になるることも考えにくいとされています。確かに、精液中には亜鉛以外にも、タンパク質や糖分が含まれています。髪の成長や修復にもタンパク質を使用するので、オナニーをしすぎるとタンパク質不足となり、髪の成長や修復が阻害されると噂されています。

しかし、精液の約80%は水分であり、精液に含まれるタンパク質は5mg/ml程度だと言われています。1度の射精による精液量は3ml程度なので、1度のオナニーで消費されるタンパク質は15mg程度と考えられます。茶碗ごはん1杯(150g)に含まれるタンパク質は3.8g、全卵(50g)に含まれるタンパク質は6.1gなので、射精によって消費されるタンパク質も、簡単に食事から賄うことができます。

ハゲの原因はオナニーではなくAGA

薄毛や抜け毛で悩んでいる方は、オナニーの回数を気にするよりも、AGAの発症を疑った方が良いかもしれません。AGAは日本人男性の約30%が発症する疾患で、20代で約10%、30代で20%、40代で30%、50代以降で40数%と年齢とともに高くなる傾向があります(※)。若い方にはそれほど発症するわけではありませんが、同じ年代の方と比べて薄毛になっているように感じる、以前と比べて抜け毛が増えているように感じるという場合は、AGAによる薄毛可能性があります。

AGAでは頭髪の成長が抑制され短く細い産毛のような髪の毛が増えてくるので、前頭部や頭頂部の髪の毛を直接触ってみて、髪の毛が細くなっていないか・柔らかくなっていないか・短くなっていないかの3点を確認すると良いでしょう。朝起きたときやシャンプーをしたときに、抜け毛が多くなっていないかなどを確認することも大切です。また、AGAは遺伝による影響が大きいため、自分の家族にAGAの既往歴がある人がいないかどうかも一緒に確認すると、より判断しやすくなります。

ほかにも、自宅で行えるAGA診断キットを利用するのも一つの方法です。AGA診断キットには、毛髪内のジヒドロテストステロン量を測るものや、遺伝子検査を行えるものなどさまざまなタイプがあります。自分はAGAかもしれないと思った人はそれらの診断キットを買って使用してみるのも良いかもしれません。

※参照元:日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版

自分がハゲかもと思ったらAGAの専門家へ相談しよう

セルフチェックや診断キットなどでAGAによる薄毛を発症しているかもしれないと感じた方は、なるべく早めにAGAの専門機関で受診することをおすすめします。自分がAGAかどうかわからないけれど薄毛や抜け毛が気になる、という場合でも、専門機関で調べてもらうことが可能です。

自己判断よりも専門の医師による診察の方が確実であり、早めの受診はAGAの早期発見にも繋がります。AGAは早期発見と早期治療が非常に重要になってくる疾患で、症状の発見が早ければ早いほど薄毛の進行を防ぐことができます。

AGAの治療について詳しく知りたい方は、「AGA治療は効果がないと言われる6つの理由」も参考にしてみてください。

まとめ

オナニーと薄毛には、医学的に関連性はありません。オナニーをするとテストステロン値が上昇したり、精液中の亜鉛やタンパク質を消費したりしますが、どちらもAGAへの影響は乏しいと考えられます。薄毛や抜け毛が気になる場合は、早めにAGAの専門機関を受診して治療を開始することが大切です。クリニックに直接行く以外にも、オンライン診療で手軽に受診することもできますので、検討してみてください。

この記事の監修:

牧野 潤医師

慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会専門医。 医師免許取得後、株式会社ボストンコンサルティンググループにてヘルスケア・IT領域にて従事。 現在は慶應義塾大学医学部助教、美容医療を主としたJSKINクリニックを経営・監修、オンライン診療サービス「レバクリ」監修。

<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS) 日本乳癌学会