更新日:2024年07月10日
壮年性脱毛症とは?AGAとの違いや原因、症状の改善方法について解説
- 壮年性脱毛症とは、30~50代に発症する進行性の脱毛症である
- 壮年性脱毛症の症状は、Ⅰ型からⅥ型までの6グレード(型)に分けられる
- 壮年性脱毛症の原因としては、男性ホルモンの作用や食生活・ストレスによる自律神経の乱れが挙げられる
薄毛に悩んでいる方で、自分が壮年性脱毛症ではないかと気になっている方もいるかもしれません。壮年性脱毛症とはAGA(男性型脱毛症)の一種で、30〜50代に発症する進行性脱毛症のことです。
この記事では、壮年性脱毛症とAGA(男性型脱毛症)の違いや壮年性脱毛症の症状・原因などを解説します。薄毛が気になっている方は、ぜひ参考にしてください。
壮年性脱毛症とは?AGA(男性型脱毛症)との違い
壮年性脱毛症とは、AGA(男性型脱毛症)に分類され、主に30〜50代に発症する進行性脱毛症のことです。日本皮膚科学会の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版(P3)」によると、AGAの発症頻度は全年齢平均で約30%とされています。年代別に見ると20代で約10%、30代で 20%、40代で30%、50代以降で40数%と年齢とともに発症頻度が高まる傾向です。
ここでは、壮年性脱毛症とAGAの違いや壮年性脱毛症のメカニズム・主な症状について解説します。
参考:日本皮膚科学会ガイドライン「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」
壮年性脱毛症とAGAとの違い
壮年性脱毛症とAGAはどちらも薄毛の症状を示す疾患ですが、対象年齢に違いがあります。
壮年性脱毛症はAGAのなかでも、30〜50代の男性を対象とした薄毛の症状のことです。AGAは、思春期以降の成人男性に現れる薄毛の症状を指します。
壮年性脱毛症とAGAは原因や治療方法に違いはなく、基本的にはAGAと同じと考えて問題ないでしょう。なお、AGAは年代によって、以下のように呼ばれることがあります。
- 10〜20代:若年性脱毛症
- 30〜50代:壮年性脱毛症
- 60代以上:老人性脱毛症
上記のような名称があることも押さえておきましょう。
壮年性脱毛症のメカニズム
壮年性脱毛症は、毛周期(ヘアサイクル)が正常よりも短くなることにより発症します。
毛周期は3期間に分けられ、それぞれの特徴は以下のとおりです。
- 成長期(2〜6年):髪の毛が成長する期間
- 退行期(2〜3週間):髪の毛の成長が止まり、毛包(髪の根元を包む皮膚組織)が退縮していく期間
- 休止期(3〜4ヶ月)毛包の活動が休止する期間
壮年性脱毛症では、髪の毛の成長期が短くなってしまい、十分に髪の毛が育たないまま抜け落ちてしまいます。通常、1日に抜ける髪の毛は50〜100本程度で、100本以内であれば特に心配する必要はありません。抜け毛の数が100本を大きく上回る場合は、壮年性脱毛症の可能性があります。
壮年性脱毛症のグレード別の症状
壮年性脱毛症の脱毛パターンは、Ⅰ型からⅥ型までの6グレード(型)です。
- Ⅰ型:髪全体がややボリュームダウンし、額の生え際がやや後退していく
- Ⅱ型:Ⅰ型が進行している状態で、前髪の生え際(剃り込み部分)がM字になりはじめる
- Ⅲ型:Ⅱ型が進行している状態で、生え際のM字が深くなり、髪の毛のボリュームが少なくなる
- Ⅳ型:生え際が後退し、さらに頭頂部にO字型の薄毛ができる
- Ⅴ型:Ⅳ型がさらに進行した状態。生え際が後退し頭頂部の薄毛も目立つ状態
- Ⅵ型:生え際が後退し、頭頂部の薄毛とつながった状態。上から見るとU字になっている
上記のパターンをもとに、自身の進行具合を確認しましょう。
抜け毛が増えてきた?壮年性脱毛症のセルフチェック
「最近抜け毛が増え、薄毛が目立ってきた」と感じる方は、壮年性脱毛症を発症しているかもしれません。以下でご紹介するセルフチェック項目を参考に、確認してみてください。
- 親族に薄毛の人がいる
- 髪の毛が細くなってきた気がする
- 髪の毛のコシがなくなっている
- 枕元やシャンプー時に抜け毛が目立つようになった
- 前頭部の生え際が少しずつ後退してきて、額の面積が広くなった気がする
- 頭頂部の髪の毛が薄くなった気がする
- 同年代と比べて髪の量が少ない
親族に薄毛の人がいる場合は、遺伝的な要素が考えられます。また、髪の毛が以前より細くなっている、髪の毛にコシがなくなりしなやかさが失われている、髪の生え際が後退しているといった場合は、薄毛のサインと考えられるでしょう。
上記で当てはまる項目が多いほど、壮年性脱毛症を発症している可能性があります。
壮年性脱毛症の原因
壮年性脱毛症の主な原因は、以下の3つです。
- 男性ホルモンの作用
- 食生活の乱れ
- ストレスによる自律神経の乱れ
壮年性脱毛症は、男性ホルモンの作用が原因となるほか、食生活や自律神経の乱れによっても発症しやすいとされています。心当たりがないか、確認していきましょう。
男性ホルモンの作用
壮年性脱毛症の原因の一つとして、男性ホルモンの作用が考えられます。
男性ホルモンのテストステロンが還元酵素の5αリダクターゼのと結びつき、ジヒドロテストステロンに変換されることで髪の毛の成長が阻害されます。ジヒドロテストステロンは男性ホルモンの一種で、髪の元になる毛母細胞へ栄養を送る毛乳頭細胞の男性ホルモン受容体に取り込まれ、毛母細胞の働きを低下させる作用を持つことが特徴です。ヘアサイクルに悪影響を及ぼす指令を出して成長期が短縮されるため、健康な髪が育ちづらくなってしまいます。
食生活の乱れ
食生活の乱れも、壮年性脱毛症の原因の一つです。食生活が乱れて栄養バランスが偏ってしまうと、髪の成長に必要な栄養が不足してしまいます。
髪の成長には、特にビタミン類やタンパク質、亜鉛などが必要です。ビタミン類は緑黄色野菜や果物、タンパク質は魚や肉、大豆、亜鉛は牛肩肉や牡蠣などに多く含まれています。栄養バランスを意識しつつ、これらの食材を積極的に食事に取り入れてみましょう。
ストレスによる自律神経の乱れ
ストレスを抱え込みやすい性格の方も、壮年性脱毛症のリスクが高まるため注意が必要です。ストレスは自律神経のバランスを崩す原因となり、自律神経のバランスが崩れると血管が収縮して血流が悪化し、頭皮への栄養の供給量が低下してしまいます。
好きな音楽を聴く、映画を観る、運動するといった方法で日頃からストレス発散することを心がけましょう。
壮年性脱毛症の症状を改善するための方法
壮年性脱毛症の症状を改善するための具体的な方法には、治療薬による治療のほか、壮年性脱毛症の原因でもある生活習慣や食生活の改善が挙げられます。
「薄毛が目立ってきた」と感じる方は、ご紹介する方法をぜひ参考にしてください。
クリニックで受診して治療する
壮年性脱毛症は進行性で治療を行わないと症状が悪化するため、薄毛・抜け毛の症状が気になり始めたらクリニックで受診しましょう。壮年性脱毛症(AGA)の治療薬には、主に飲み薬のプロペシアやザガーロ、塗り薬のミノキシジルがあります。薄毛の症状を医師に伝え、進行度に合わせた治療薬を処方してもらいましょう。
なお、ドラッグストアや薬局では育毛剤が販売されていますが、育毛剤の働きはあくまで頭皮環境を整えることです。育毛剤だけでは壮年性脱毛症を根本的に治療できるわけではないことを念頭に置きましょう。また、薄毛・抜け毛を招く病気には壮年性脱毛症のほか円形脱毛症や脂漏性脱毛症などがあり、それぞれ治療法が異なるため、効果的に薄毛の症状を改善するには医師に相談して治療を行うのが賢明です。
生活習慣を改善する
壮年性脱毛症の症状を改善するには、生活習慣を改善することも大切です。
まずは、良質な睡眠をとることを心がけましょう。睡眠の質が悪いと成長ホルモンの分泌量が減ってしまい、髪が成長しづらくなって薄毛につながる可能性があります。就寝直前に食事をとったりスマートフォン・パソコンを使用したりするのは避けましょう。
また、適度な運動をすることも大切です。運動には血行促進・ストレス解消といったメリットがあり、薄毛の改善につながると考えられます。ジョギングやウォーキング、水泳など自身の取り組みやすい運動を日々の生活に取り入れてみましょう。
まとめ
AGAに分類される壮年性脱毛症は、主に30〜50代に発症する進行性脱毛症のことです。男性ホルモンの作用や食生活の乱れ、ストレスによる自律神経の乱れなどが原因で発症します。壮年性脱毛症にはⅠ型からⅥ型までの6グレード(型)あり、症状が進行すると治療の費用・期間の負担が大きくなる恐れがあります。薄毛が気になり始めたら、生活習慣を見直すとともに早めに受診して治療を開始しましょう。
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この記事の監修:
慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会専門医。 医師免許取得後、株式会社ボストンコンサルティンググループにてヘルスケア・IT領域にて従事。 現在は慶應義塾大学医学部助教、美容医療を主としたJSKINクリニックを経営・監修、オンライン診療サービス「レバクリ」監修。
<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS) 日本乳癌学会