更新日:2026年07月24日


この記事の監修
慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会認定専門医。 医師免許取得後、外資系経営コンサルティング企業のヘルスケア・IT領域にて従事。 慶應義塾大学医学部助教を経て、美容医療を主としたJSKINクリニック、及びオンライン診療サービス「レバクリ」監修。
<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS)
急に抜け毛が増え、休止期脱毛症ではないかと不安に感じていませんか?休止期脱毛症は、ストレスや疾患などをきっかけに多くの髪が休止期へ移り、抜け毛が増える状態です。原因に応じた対応で回復が期待できます。
本記事では、休止期脱毛症の急性・慢性の違いや原因、AGAとの見分け方を解説します。抜け毛が気になる方は参考にしつつ、医師への相談も検討してみてください。
休止期脱毛症とは、何らかの原因で、多くの毛包が成長期から休止期へ移行し、抜け毛が増える状態です。本来は数年かけて育つはずの髪が成長を止めて抜け落ちるため、髪全体のボリュームが減ったように感じられます。 休止期脱毛症は、進行のスピードや続く期間によって、急性休止期脱毛症と慢性休止期脱毛症の2種類に分けられます。
急性休止期脱毛症は、きっかけとなる出来事の約2〜3ヶ月後に、短期間で一気に抜け毛が増えるのが特徴です。成長期の髪が急激に休止期へ移行することで、まとまった量の抜け毛が生じます。引き金になる要因の一例は、以下のとおりです。
原因が取り除かれれば数ヶ月で抜け毛が落ち着き、そのあとは少しずつ回復していく傾向にあります。
慢性休止期脱毛症は、6ヶ月以上にわたって徐々に髪のボリュームが減っていきます。急性休止期脱毛症のように急激な抜け毛ではなく、はっきりとしたきっかけがわかりにくいのが特徴です。 慢性休止期脱毛症の背景には、鉄欠乏性貧血や甲状腺機能の異常といった疾患、慢性的な栄養不足などが関係する場合があります。原因が特定しにくいケースもあるため、抜け毛が長く続くときは医療機関で相談することが大切です。

髪の成長が止まっている期間は休止期と呼ばれます。休止期は次の新しい髪を作るための準備期間で、2〜3ヶ月ほど続きます。正常なヘアサイクルの場合、頭髪全体のうち約10~15%ほどが休止期の状態です。 髪が太く長く育つ時期は成長期です。成長期は毛根にある細胞が活発に分裂を繰り返しており、頭髪全体の約85〜90%が成長期の状態とされています。成長期の期間は、2〜6年ほどです。 髪を作る細胞の活動には限界があり、一定期間が過ぎると成長を止める退行期へと移行します。退行期は頭髪全体の約1%で、期間は2〜3週間程度です。退行期で毛根が徐々に小さくなり、そのあとに休止期が訪れます。
休止期脱毛症の最もわかりやすい症状は、それまでと比べて抜け毛が急に増えることです。特定の部分だけが抜けるのではなく、頭部全体からまんべんなく抜ける傾向にあります。 ここでは、自分で休止期脱毛症と気づくための目安と、受診を検討するタイミングを見ていきましょう。
一般的に、健康な状態での抜け毛は1日あたり50〜100本程度ですが個人差があります。これを大きく上回る量の抜け毛が続く場合は、注意が必要です。 たとえば、「シャンプーやドライヤーのときに手やブラシに絡む毛が明らかに増えた」「朝起きたときの枕に抜け毛が目立つ」といった変化はサインの一つと捉えられます。髪をかき分けても地肌が以前より透けて見えるときも、休止期脱毛症の可能性があります。
セルフチェックはあくまで自分の状態を知るための目安で、これだけで休止期脱毛症と確定はできません。抜け毛の量や状態に不安があるときは、自己判断で放置せず医師に相談することが大切です。 「抜け毛の増加が半年以上続く場合」や「抜ける量が明らかに多い場合」は、背景に疾患が隠れていることもあるため、原因を見極めるうえでも医療機関の受診を検討しましょう。
| 休止期脱毛症 | AGA | |
|---|---|---|
| 原因 | 心身の強いストレスや疾患、深刻な栄養不足など | 遺伝や男性ホルモンであるDHT |
| 脱毛範囲 | 頭部全体の広い範囲 | 前頭部や頭頂部 |
| 治療法 | 原因に応じた治療やケア | フィナステリドやデュタステリドといった内服薬、ミノキシジル外用薬 |
休止期脱毛症とAGAは、原因・脱毛の広がり方・治療方法のいずれも異なります。どちらの抜け毛なのかを見分けることは、正しい対処への第一歩です。ここでは、3つの観点から休止期脱毛症とAGAの違いを整理します。
AGAの主な原因は、遺伝や男性ホルモンであるDHT(ジヒドロテストステロン)だと考えられています。体内のテストステロンは、5αリダクターゼという酵素によってDHTへ変換されます。DHTが毛乳頭細胞のアンドロゲン受容体に結合することで毛周期の成長期が短縮し、薄毛が進行します。

一方、休止期脱毛症は心身の強いストレスや疾患、深刻な栄養不足など、人によって原因が異なります。特定のホルモンが主因となるAGAと違い、休止期脱毛症は複数の要因が関わることが多い傾向にあります。
休止期脱毛症とAGAは、脱毛が起こる範囲にも違いがあります。AGAは主に前頭部や頭頂部から薄くなり、DHTの影響を受けにくい後頭部や側頭部の髪は残る傾向があります。 これに対し、休止期脱毛症は特定の部位に限定されず、頭部全体の広い範囲にわたって抜け毛が起こるのが特徴です。「生え際や頭頂部だけが気になる」のか、「全体的にボリュームが減って地肌が透けてきた」のかは、両者を見分ける目安になります。
休止期脱毛症とAGAでは、治療方法も異なります。AGAについては、診療ガイドラインに基づき、フィナステリドやデュタステリドといった内服薬、ミノキシジル外用薬を用いた治療が行われるのが一般的です。 一方、休止期脱毛症に特化した標準的な治療ガイドラインは十分整備されていません。後述するように、原因に応じて治療やケアの内容が変わります。
新型コロナウイルス感染症の後遺症として現れる脱毛は、休止期脱毛症の可能性があると考えられています。回復者457名を対象とした調査では全体の22.7%に脱毛が見られ、感染から4週間時点で16%、12週間時点でも6.3%の人に脱毛の持続が確認されました。 新型コロナウイルス感染後に抜け毛が増えたと感じ不安なときは、休止期脱毛症の可能性も考え、医療機関で相談しましょう。
参考:厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の罹患後症状(いわゆる後遺症)について」
休止期脱毛症の治療では、何が引き金になっているのか原因を見極めるのが基本です。そのうえで、原因に応じて次のような対応を行います。
高熱や外傷、手術などの約2〜3ヶ月後に生じる急性休止期脱毛症は、原因が取り除かれると数ヶ月で抜け毛が落ち着き、そのあと緩やかに回復していく傾向にあります。

急に抜け毛が増えたとき、背景に貧血や甲状腺の病気、服用中の薬が関係していることは珍しくありません。市販の育毛アイテムで様子を見る前に、まずは原因を確認することが大切です。
休止期脱毛症の場合は原因に応じた対応を行うとともに、日常生活でのセルフケアを並行して行い、髪の健やかな成長をサポートすることが大切です。ここでは、髪の成長を支えるセルフケア方法を紹介します。
生活習慣を整えることは、髪の成長を支えるのに役立ちます。まず、意識したいのは睡眠です。髪の成長に関わる成長ホルモンは、入眠直後のノンレム睡眠が起こるときに分泌が増えるといわれています。就寝直前の食事やスマートフォンの使用を避け、寝る前はリラックスして過ごし、眠りの質を高めましょう。 また、適度な運動習慣も髪のサポートに役立ちます。適度な運動は、ストレス軽減や睡眠の質の改善につながるため、結果として毛髪の健康を支える生活習慣の一つになります。
参考:厚生労働省「知っているようで知らない睡眠のこと」
心身の健康維持や回復を支えるためにも、要因となりうるストレスを溜め込まず、上手に付き合っていくことが大切です。日々の生活の中で自分なりの発散方法を見つけ、こまめにリセットしましょう。 ストレスの解消法は人によって異なり、正解はありません。下記の例のように、心地良いと感じるリフレッシュ法を実践しましょう。
具体的な方法が見つからない場合は、抱えている不安を信頼できる人に言葉にして伝えるだけでも、心の負担を軽くすることが期待できます。
参考:厚生労働省「こころと体のセルフケア」
髪や頭皮への悪影響を防ぐには、毎日の食事から適切に栄養を摂ることが大切です。ダイエット中も食事を抜くなどの無理な制限は避け、多様な食材を組み合わせて毛髪の正常な成長を支えるための食習慣を保ちましょう。
具体的には、「主食」「主菜」「副菜」「牛乳・乳製品」「果物」を基本に組み合わせるのが理想です。ごはんやパンなどの主食でエネルギーを蓄え、肉・魚・卵・大豆製品などの主菜から良質なタンパク質を摂り、野菜・きのこ・海藻類などの副菜でビタミンやミネラルを補いましょう。
参考:厚生労働省「食事バランスガイド」
休止期脱毛症について、読者が抱きやすい疑問をまとめました。以下で詳しくお答えします。
休止期脱毛症で抜けた髪はまた生えますか?
原因が取り除かれればヘアサイクルが整い、再び髪が生えて回復が期待できます。特に急性休止期脱毛症は、きっかけが解消されてから数ヶ月で落ち着いていく傾向にあります。
ただし、回復の早さには個人差があるため、長引く場合は医師に相談しましょう。
休止期脱毛症は何科を受診すれば良いですか?
抜け毛や薄毛は、皮膚科を受診するのが基本です。原因が甲状腺疾患や貧血などの場合は、内科などその疾患に応じた診療科での治療が必要になることもあります。
休止期脱毛症の治療に健康保険は使えますか?
AGAをはじめとする薄毛そのものの治療は、原則として保険適用外の自由診療です。ただし、抜け毛の原因が甲状腺疾患や鉄欠乏性貧血などの病気である場合、その病気の治療には保険が適用されることがあります。
休止期脱毛症は、身体的・精神的なストレスや疾患などをきっかけにヘアサイクルが乱れ、多くの毛が成長期から休止期へ移行することで起こる脱毛です。高熱や手術、出産などの2〜3ヶ月後に一気に抜け毛が増える急性休止期脱毛症と、6ヶ月以上かけて徐々に髪が減る慢性休止期脱毛症に分けられます。
AGAが前頭部や頭頂部から薄くなるのに対し、休止期脱毛症は頭部全体に抜け毛が広がりやすいのが特徴です。休止期脱毛症の標準的な治療法は確立されていませんが、原因に応じて疾患の治療やストレスの軽減などを行います。十分な睡眠や適度な運動、バランスの良い食事といったセルフケアを並行することも大切です。
急に抜け毛が増えたときは、生活習慣や最近の出来事を振り返り、休止期脱毛症の可能性も考えてみましょう。症状が長引く場合は、自己判断せず医師に相談してください。
厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の罹患後症状(いわゆる後遺症)について」
厚生労働省「知っているようで知らない睡眠のこと」
厚生労働省「こころと体のセルフケア」
厚生労働省「食事バランスガイド」
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AGA治療は、主に内服薬・外用薬で行われます。
| 代表的な成分 | 分類 | 主な効果 |
|---|---|---|
| フィナステリド・デュタステリド | 内服薬 | 抜け毛の進行を食い止める |
| ミノキシジル | 内服薬・外用薬 | 毛包を活性化させ発毛を促す |
治療期間について
効果実感には個人差がありますが、ヘアサイクル改善のため3ヶ月〜半年ほどの継続が推奨されます。
費用について
AGA治療は、保険適用外の「自由診療」です。対面診療では、薬代(1ヶ月数千円ほど)の他に、初診料や診察料がかかる場合もあります。
治療の継続には期間と費用に加え、定期的な通院が必要です。時間や費用、人目などの通院の負担が、忙しい方にとって課題となる場合があります。
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