更新日:2026年07月31日


この記事の監修
慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会認定専門医。 医師免許取得後、外資系経営コンサルティング企業のヘルスケア・IT領域にて従事。 慶應義塾大学医学部助教を経て、美容医療を主としたJSKINクリニック、及びオンライン診療サービス「レバクリ」監修。
<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS)
頭皮のベタつきや黄色いフケ、かゆみとともに抜け毛が増え、脂漏性脱毛症ではないかと不安な方もいるかもしれません。脂漏性脱毛症は、皮脂の過剰分泌で起こる脂漏性皮膚炎が頭皮に広がり、炎症から抜け毛に至る脱毛症です。軽度な脂漏性皮膚炎であれば、市販薬などのセルフケアで改善することもありますが、抜け毛が生じるほどに悪化している場合は医療機関の受診を検討しましょう。
頭皮の脂漏性皮膚炎では、通常それ自体が脱毛の原因となることはありません。ただ一部の患者で強い炎症などによる一過性の脱毛がみられることがあります。これを脂漏性脱毛症と呼ぶことがありますが、脂漏性皮膚炎自体は通常、永続的な脱毛を引き起こしません。脱毛が持続する場合は、男性型脱毛症(AGA)など他の脱毛症の併存を考慮する必要があります。
脂漏性脱毛症(しろうせいだつもうしょう)は、脂漏性皮膚炎という皮膚疾患がもとになって起こる脱毛症です。
脂漏性皮膚炎は、皮脂が過剰に分泌されることで常在真菌のマラセチアが増え、患部に炎症が生じる病気です。脂漏性湿疹と呼ばれることもあります。脂漏性皮膚炎が頭皮に発症し、頭皮環境が悪化して抜け毛が生じることもありますが、通常は脂漏性皮膚炎が原因で脱毛が起きることは稀です。
脂漏性脱毛症の主な症状は、以下のとおりです。
毎日洗髪しても髪がベタつき、増え過ぎた皮脂によって頭皮環境が悪化していきます。
特に、黄色いベタついたフケは脂漏性脱毛症に特徴的なため、フケの色や質感にも注目してください。
脂漏性脱毛症は、頭皮の慢性的な炎症で毛包がダメージを受けることで生じるものです。増え過ぎた皮脂を栄養にマラセチアが増殖し、頭皮に炎症が起こると、髪の成長に影響を与えます。炎症が慢性化すると、頭皮環境が悪化したり、かゆみによるかき壊しが生じたりして、抜け毛につながる場合があります。なお、健康な状態でも髪は1日に100本程度抜けるため、抜け毛の本数だけでなくフケや炎症の有無もあわせて確認することが大切です。
脂漏性皮膚炎の特徴は、皮脂腺が多い部位に起こりやすいことです。頭皮のほかに、顔の小鼻まわりや眉間、生え際、耳、胸元など皮脂の分泌が多い場所によくみられます。
頭皮・生え際・おでこでは、黄色いベタついたフケや赤み、かゆみが出やすくなります。生え際やおでこは皮脂腺が集まっており、皮脂や汗が溜まりやすいため、症状が目立つことがあります。頭皮では炎症が全体に広がりやすく、それに伴って抜け毛が増えるのが脂漏性脱毛症の特徴です。フケやかゆみが続くときは、頭皮を清潔に保つことを意識しましょう。ただし、洗い過ぎには注意が必要です。
顔や耳でも、皮脂の多い部分に赤みやかさつき、フケ状の皮むけが現れます。具体的には、小鼻の脇や眉間、目の周り、耳の周辺などです。顔や耳はデリケートなので、自己流のケアで悪化するおそれもあります。症状が続く場合は、皮膚科で相談しましょう。
脂漏性皮膚炎の発症には複数の要因が関与しており、これらが相互に影響し合うことで症状が現れます。主な原因は以下のとおりです。
原因を理解することで、効果的な予防や治療につながるでしょう。
頭皮に存在する常在真菌のマラセチアの増殖は、脂漏性皮膚炎の原因の一つです。マラセチアは誰の頭皮にも存在し、皮脂を栄養源として増殖する性質があります。そのため、皮脂分泌が過剰になると、菌が異常に増殖してしまいます。頭皮の炎症やかゆみを引き起こす要因は、増殖したマラセチアが皮脂を分解して生じる代謝物です。
炎症が起こると頭皮のバリア機能が低下し、さらに菌が増殖しやすい環境となる悪循環が生まれます。この炎症が毛包にまでダメージを与えると、抜け毛が増加し、脂漏性脱毛症が発症するのです。
皮脂の過剰分泌は、脂漏性皮膚炎の主な原因の一つです。本来、皮脂は乾燥や紫外線から頭皮を保護する役割を果たします。しかし、不規則な食生活や睡眠不足、ストレスによるホルモンバランスの乱れなどが重なると、分泌量が過剰に増えることがあります。
脂漏性皮膚炎の悪化を防ぐには、頭皮や髪のベタつきを感じた早い段階で、適切な対応をとることが大切です。
ホルモンバランスの乱れは、皮脂分泌に影響を与え、脂漏性皮膚炎の発症リスクを高めます。皮脂の分泌を増加させるのは、男性ホルモン(主にテストステロンや、その代謝物であるジヒドロテストステロン)です。ホルモンバランスが男性ホルモン優位になると、皮脂が過剰に分泌され菌が繁殖しやすい状態になります。
一方、女性ホルモン(エストロゲン)には、皮脂の分泌を抑える働きがあります。月経周期や妊娠、出産などでホルモンバランスが変化すると、皮脂分泌が増加する場合があります。ホルモンバランスの乱れを防ぐために、規則正しい生活習慣や適度な運動、ストレス管理などを心掛けましょう。
生活習慣の乱れは、頭皮の乾燥や皮脂の分泌などに影響する可能性があります。たとえば、脂質や糖質の摂り過ぎは皮脂分泌を促進する要因です。また、頭皮の代謝を助けるビタミンB群や、髪の主成分であるケラチンの生成を支える亜鉛などが不足すると、頭皮のバリア機能が低下して症状の悪化を招きやすくなります。
生活習慣の乱れを改善するには、バランスの良い食事や質の良い睡眠、適度な運動などでストレスを溜めない工夫が大切です。
脱毛症と呼ばれる疾患には、円形脱毛症やAGAなどがあります。原因と対策が合っていなければ、治療の遅れを招いてしまうため、それぞれの特徴を理解し、見分けることが大切です。以下の表に、脂漏性脱毛症と主な脱毛症の比較をまとめました。
| 脱毛症の種類 | 脂漏性皮膚炎による脱毛 | 円形脱毛症 | AGA |
|---|---|---|---|
| 主な原因 | 皮脂の過剰分泌によるマラセチアの増殖 | 自己免疫疾患 | 男性ホルモンの影響 |
| 特徴 | 皮脂の過剰分泌、頭皮のベタつき、かゆみ、脂性フケ | 円形・楕円形の脱毛斑 | M字型・O字型の脱毛パターン |
| 診療科 | 皮膚科 | 皮膚科 | 皮膚科・AGAクリニック |
| 主な治療方法 | 抗真菌薬、ステロイド外用薬など | ステロイド外用薬、免疫抑制薬など | フィナステリドやデュタステリド、ミノキシジルなど |
この比較表を参考に、自分の症状がどの脱毛症に当てはまるかを確認し、適切な医療機関を受診してください。
AGAとは、男性の薄毛に多くみられる進行性の疾患です。原因は、男性ホルモンのテストステロンが5αリダクターゼという酵素と結びついて生成されるDHT(ジヒドロテストステロン)です。DHTが毛乳頭細胞にある男性ホルモン受容体と結合するとヘアサイクルの成長期が短縮され、脱毛が起こります。

AGAの特徴は、生え際のM字型後退や頭頂部のO字型脱毛です。また、髪が十分に育つ前に抜けるため、抜け毛が細く短いことも特徴の一つです。
一方、脂漏性脱毛症は脱毛パターンも特定の部位ではなく、頭皮全体に起こります。AGAのみでは頭皮の炎症は基本的にみられませんが、脂漏性脱毛症では炎症が現れます。
両者は治療法も異なり、AGAではデュタステリドなどの5αリダクターゼ阻害薬のほか、発毛を促すミノキシジルなどが使用されますが、脂漏性脱毛症では抗真菌薬による治療が中心です。炎症が強い場合は、抗炎症薬(ステロイド外用薬など)が使われることもあります。
円形脱毛症は自己免疫疾患の一種で、免疫系が毛根を攻撃することで起こる脱毛症です。通常、健康な毛包は免疫細胞に見つからないようにバリアのような仕組みをもっています。しかし、何らかのきっかけでこのバリアが壊れると、血液中のTリンパ球が毛包周囲に集積し、自己免疫反応が起こることで毛包の成長が阻害されます。

特徴的な症状は、境界がはっきりとした円形または楕円形の脱毛斑です。脱毛斑は一箇所または複数に現れたり、広範囲に拡大したりするなど、いくつかのパターンがあります。また、円形脱毛症では、脱毛した頭皮に赤みやフケなどの症状は基本的にみられません。数週間から数ヶ月という短期間で急速に進行する場合があるのも特徴です。
一方、脂漏性脱毛症による脱毛は円形にはならず、頭皮全体の炎症に伴って徐々に広がっていきます。
円形脱毛症にはステロイド療法や局所免疫療法などが用いられますが、脂漏性脱毛症では原因菌を抑える抗真菌薬によるアプローチが中心です。
脂漏性皮膚炎のフケと乾燥によるフケは、フケの色と質感で見分けられます。脂漏性皮膚炎のフケは黄色っぽくベタつき、頭皮や毛髪に張り付くのが特徴です。
一方、乾燥による乾性のフケは白く乾いて、頭皮からパラパラと落ちることがあります。原因は、洗いすぎや空気の乾燥などです。
ベタついた黄色いフケや赤み、かゆみ、抜け毛などがみられる場合は、脂漏性皮膚炎が疑われるため、乾性のフケと勘違いして放置しないようにしましょう。
脂漏性脱毛症は、皮膚科への相談を検討しましょう。脂漏性皮膚炎は軽度であれば、市販薬などのセルフケアで落ち着くこともあります。しかし、抜け毛が生じるほど悪化している場合は、医療機関での治療が必要です。
治療薬は、以下2種類が挙げられます。
まず、抗真菌薬でマラセチアの増殖を抑えます。かゆみや赤みが強い場合には、炎症を抑えるステロイド外用薬が併用されることもあります。ただし、ステロイドの長期使用は、頭皮の皮膚萎縮などのリスクを伴うため、医師の管理下で使用することが大切です。
特に、顔付近への使用には注意が必要です。目の周りや耳などの皮膚が敏感な部位は刺激を受けやすく、悪化のおそれもあるため、医師に適した治療薬を選んでもらいましょう。

脂漏性皮膚炎は再発しやすく、炎症が長引くと毛包がダメージを受けて回復が難しくなることがあります。「市販薬でしばらく様子を見よう」と自己流のケアを続けるうちに悪化するケースもあるため、症状が1週間以上続くときは早めに医療機関で相談しましょう。
脂漏性脱毛症には、専用のシャンプーや生活習慣の改善などのセルフケア方法があります。
また、医療機関へ行く時間がない場合は、市販薬の使用を検討する方もいるかもしれません。ここでは、自分でできるケア方法を紹介します。
ただし、前述のとおり症状が悪化している場合は、医療機関での治療を優先しましょう。
頭皮の脂漏性皮膚炎には、抗真菌成分が配合された薬用シャンプーが選ばれます。マラセチアの増殖を抑え、頭皮環境を整える目的で、週1〜2回を目安に使用します。選ぶ際のポイントは次のとおりです。
一方、ラウリル硫酸Naなどの洗浄力が強い成分は頭皮の乾燥を招くことがあるため、症状が気になる時期は避けるのが無難です。整髪剤の使用も頭皮の負担になりやすいため、できるだけ控えましょう。
また、洗髪は次の手順を意識すると頭皮への負担を減らせます。

質の良い睡眠やバランスの良い食事は、頭皮環境を整える一つの方法です。皮脂の分泌は睡眠不足やホルモンバランスの乱れに影響を受けるため、生活リズムを整えることが間接的に頭皮の状態をサポートします。
厚生労働省は成人の睡眠時間として、おおよそ6〜8時間を目安に挙げています。就寝前の飲酒やカフェイン、スマートフォンの使用を控えるなど、眠りの質を高める工夫を行いましょう。食事面では、脂質や糖質の摂り過ぎを避け、頭皮の代謝を助けるビタミンB群や亜鉛などをバランス良く取り入れましょう。
ただし、生活習慣の改善だけで脂漏性皮膚炎が治るわけではないため、治療と並行して取り組むことが大切です。 参考:厚生労働省「良い睡眠の概要(案)」
脂漏性皮膚炎に市販薬を使う場合は、抗真菌成分や抗炎症成分を含むものが使われます。頭皮用ではミコナゾール硝酸塩などの抗真菌成分を配合した薬があり、かゆみや赤みにはグリチルリチン酸などの抗炎症成分を含むものが用いられることもあります。
市販薬によって配合成分や使用部位が異なるため、購入時はパッケージの成分表示と使用上の注意を確認することが大切です。
ここでは、脂漏性脱毛症に関する疑問や不安について、Q&A形式で解説します。正しい知識を身につけることで、適切な対処ができるでしょう。
脂漏性脱毛症は完治しますか?期間はどれくらいですか?
脂漏性脱毛症は適切な治療で改善が期待できます。しかし、再発しやすいため、頭皮の良好な状態を維持することが大切です。改善までの期間は症状の程度や個人差により、数週間で改善することもあれば、長期間の治療が必要な場合もあります。
脂漏性皮膚炎は何科を受診すれば良いですか?
脂漏性皮膚炎は、皮膚科を受診しましょう。脂漏性皮膚炎が治っても抜け毛が気になる場合は、AGAの可能性があります。その際は、AGAクリニックの受診を検討しましょう。
脂漏性脱毛症は人に移りますか?
脂漏性脱毛症は人から人へ移る疾患ではありません。原因となるマラセチアは誰の頭皮にも存在する常在菌で、感染症ではないため安心してください。
脂漏性脱毛症で病院に行くタイミングは?
頭皮のベタつきやフケが1週間以上続く場合や、抜け落ちた毛の根元に白い塊が付着している場合は受診を検討するタイミングです。自己判断のみで対処を続けると、悪化するリスクがあります。炎症や日常生活に支障が出るほどのフケがあるときは、皮膚科を受診してください。
脂漏性脱毛症は、皮脂の過剰分泌で増えたマラセチアが頭皮に炎症を起こし、抜け毛につながる脱毛症です。頭皮のベタつきや黄色い脂性フケ、かゆみから始まり、炎症が慢性化すると抜け毛が生じることがあります。
症状は頭皮だけでなく、生え際やおでこ、小鼻周り、眉間など皮脂の多い部位に現れます。抜け毛が起こるのは、主に頭皮です。
治療は、抗真菌薬やステロイド外用薬による局所療法が中心です。薬用シャンプーや生活習慣の見直しといったセルフケアを取り入れつつ、症状が続く場合は早めの受診を検討してください。
脂漏性皮膚炎が改善しても抜け毛が止まらない場合は、AGAを併発している可能性もあります。抜け毛が気になるときは、AGAクリニックへの相談も検討しましょう。
厚生労働省「良い睡眠の概要(案)」
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AGA治療は、主に内服薬・外用薬で行われます。
| 代表的な成分 | 分類 | 主な効果 |
|---|---|---|
| フィナステリド・デュタステリド | 内服薬 | 抜け毛の進行を食い止める |
| ミノキシジル | 内服薬・外用薬 | 毛包を活性化させ発毛を促す |
治療期間について
効果実感には個人差がありますが、ヘアサイクル改善のため3ヶ月〜半年ほどの継続が推奨されます。
費用について
AGA治療は、保険適用外の「自由診療」です。対面診療では、薬代(1ヶ月数千円ほど)の他に、初診料や診察料がかかる場合もあります。
治療の継続には期間と費用に加え、定期的な通院が必要です。時間や費用、人目などの通院の負担が、忙しい方にとって課題となる場合があります。
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