更新日:2026年06月17日


この記事の監修
慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会認定専門医。 医師免許取得後、外資系経営コンサルティング企業のヘルスケア・IT領域にて従事。 慶應義塾大学医学部助教を経て、美容医療を主としたJSKINクリニック、及びオンライン診療サービス「レバクリ」監修。
<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS)
脂漏性脱毛症の症状を知り、自分の脱毛が当てはまるのか確認したい方もいるかもしれません。脂漏性脱毛症とは、皮脂の過剰分泌によって起こる脂漏性皮膚炎という疾患が原因で起こる脱毛症のことです。 本記事では、脂漏性脱毛症の原因や症状、ほかの脱毛症との見分け方などを解説します。また、主な治療法も紹介するので、「頭皮がベタつくようになった」「フケや抜け毛が気になる」といった症状がある方は参考にしてみてください。
脂漏性脱毛症とは、頭皮の皮脂分泌が過剰になることで起こる脂漏性皮膚炎によって引き起こされる脱毛症のことです。
脂漏性皮膚炎は皮脂腺が密集する部位に発症する炎症性疾患で、その背景には、皮膚の常在真菌であるマラセチアが関係しています。皮脂が多い環境ではマラセチアが増えやすく、マラセチアが皮脂を分解して生じた代謝物に対して頭皮が反応することで、赤みや発疹といったトラブルを引き起こすと考えられています。
脂漏性皮膚炎は対処しなければ炎症が続いたり、症状が進んだりする可能性があります。特に、脱毛症になるほど症状が進んでいる場合は、医学的な治療が必要です。しかし、早めに治療を開始し、セルフケアも続けることで脱毛の進行を抑制できる可能性があります。
脂漏性脱毛症の初期症状は、乾燥した頭皮の剥がれやベタつくフケとして現れます。この炎症が慢性化して毛包にまでダメージが及ぶと、抜け毛が増えたり、頭皮環境の悪化により髪が育ちにくくなったりする可能性があります。
なお、脂漏性皮膚炎による脱毛は、一気に髪が抜けるのではなく、頭皮環境が悪化していくプロセスを経て徐々に進行します。脂漏性皮膚炎が直接的に脱毛を起こすのではなく、炎症によって引き起こされる二次的な症状といえるでしょう。
脂漏性脱毛症の進行パターンは、AGA(男性型脱毛症)のように特定の形(M字やO字)で進むのではなく、炎症が強い部位から薄くなるのが特徴です。
特に皮脂分泌が盛んな頭頂部や後頭部、あるいは赤みが出やすい生え際や耳の後ろなどは炎症が慢性化しやすく、抜け毛が目立ちやすい部位といえます。
脂漏性脱毛症が進行する流れは以下のとおりです。
| 症状の程度 | 進行状況 |
|---|---|
| 軽症型 | 過剰な皮脂により頭皮のベタつきが起こり、毎日洗髪しても髪がべたつく状態になる。 |
| 中等症型 | 常在菌のマラセチアが増殖し、頭皮が炎症を起こす。 炎症が進むと毛包にダメージがおよび、毛包周囲の血流や細胞活動が停滞して髪に栄養が行き渡らなくなる。 |
| 重症型 | 炎症が慢性化して、毛包の萎縮や傷跡が進行することで、抜け毛が増加したり毛髪の再生が困難になる。 |
まずは頭皮のベタつきが起こり、毎日洗髪しても髪がべたつく状態になります。ベタつきは増え過ぎた皮脂によるものであり、これによって常在真菌のマラセチアが増殖し、その結果頭皮が炎症を起こすのです。なお、髪は1日に100本程度抜けるのが自然ですが、シャンプー時に「いつもより抜け毛が多い」と感じたり、抜け落ちた毛の根元に白いベタついた塊が付着したりしている場合は、脂漏性皮膚炎が進行しているサインかもしれません。
さらに炎症が進むと毛包にダメージがおよび、毛包周囲の血流や細胞活動が停滞して髪に栄養が行き渡らなくなります。
炎症が慢性化すると、毛包の萎縮や瘢痕化(傷跡)が進行し、抜け毛が増加したり毛髪の再生が困難になることで、薄毛が進行することがあります。
脂漏性脱毛症の発症には複数の要因が関与しており、これらが相互に影響し合うことで症状が現れます。主な原因を理解することで、効果的な予防や治療につながるでしょう。
ここでは、脂漏性脱毛症を引き起こす4つの主要な原因について詳しく解説します。
頭皮に存在する常在真菌のマラセチアの増殖は、脂漏性皮膚炎の原因の一つです。
マラセチアは誰の頭皮にも存在し、皮脂を栄養源として増殖する性質があり、皮脂分泌が過剰になると、菌が異常に増殖してしまいます。増殖したマラセチアが皮脂を分解して生じる代謝物が、頭皮の炎症やかゆみを引き起こすと考えられています。
炎症が起こると頭皮のバリア機能が低下し、さらに菌が増殖しやすい環境となる悪循環が生まれます。この炎症が毛包にまでダメージを与えると、抜け毛が増加し、脂漏性脱毛症が発症するのです。
皮脂の過剰分泌は、脂漏性脱毛症の主な原因の一つです。本来、皮脂は乾燥や紫外線から頭皮を保護する役割を果たしますが、不規則な食生活や睡眠不足、ストレスによるホルモンバランスの乱れなどが重なると、分泌量が過剰に増えてしまいます。
皮脂が常在真菌によって分解されて生じた代謝物が頭皮と反応して、炎症やかゆみを引き起こすと考えられています。
頭皮や髪のベタつきを感じたときは、すでに菌が増殖の準備を整えているサインである可能性があります。この段階で適切な対応をすることが、脂漏性皮膚炎や脱毛症への進行を食い止めるために大切です。
ホルモンバランスの乱れは、皮脂分泌に影響を与え、脂漏性脱毛症の発症リスクを高めます。皮脂の分泌を増加させるのは男性ホルモン(主にテストステロンや、その代謝物であるジヒドロテストステロン)であるため、ホルモンバランスが男性ホルモン優位になると、皮脂が過剰に分泌され菌が繁殖しやすい状態になるのです。
一方、女性ホルモン(エストロゲン)には、皮脂の分泌を抑える働きがありますが、月経周期や妊娠、出産などでホルモンバランスが変化すると、皮脂分泌が増加する場合があります。その結果、皮脂量が増え、脂漏性皮膚炎から脱毛へと進行しやすくなるのです。
ホルモンバランスの乱れを防ぐために、規則正しい生活習慣や適度な運動、ストレス管理などを心がけましょう。
生活習慣の乱れは、頭皮の乾燥や皮脂の分泌などに影響する可能性があります。
脂質や糖質の摂り過ぎは皮脂分泌を促進し、マラセチアの栄養源を増やす原因となるでしょう。また、頭皮の代謝を助けるビタミンB群や、髪の主成分であるケラチンの生成を支える亜鉛などが不足すると、頭皮のバリア機能が低下し、症状の悪化を招きやすくなります。
生活習慣の乱れを改善するには、バランスの良い食事や質の良い睡眠、適度な運動などでストレスを溜めない工夫が大切です。これらの改善により、脂漏性脱毛症の予防が期待できるでしょう。
脱毛症と呼ばれる疾患には、円形脱毛症やAGAなどもあります。原因と対策が合っていなければ治療の遅れを招いてしまうため、それぞれの特徴を理解し、見分けることが必要でしょう。
以下の表に、脂漏性脱毛症と主な脱毛症の比較をまとめました。
| 脱毛症の種類 | 脂漏性脱毛症 | 円形脱毛症 | 男性型脱毛症 |
|---|---|---|---|
| 主な原因 | 皮脂の過剰分泌によるマラセチアの増殖 | 自己免疫疾患 | 男性ホルモンの影響 |
| 特徴 | 皮脂過剰分泌、頭皮のベタつき、かゆみ、脂性フケ | 円形・楕円形の脱毛斑 | M字型・O字型の脱毛パターン、炎症なし |
| 診療科 | 皮膚科 | 皮膚科 | 皮膚科・AGAクリニック |
| 主な治療方法 | 抗真菌薬、ステロイド外用薬など | ステロイド外用薬、免疫抑制薬など | フィナステリドやデュタステリド、ミノキシジルなど |
この比較表を参考に、自分の症状がどの脱毛症に当てはまるかを確認し、適切な医療機関を受診してください。
AGAは、男性ホルモンのテストステロンが5αリダクターゼという酵素によりDHT(ジヒドロテストステロン)に変換されることで発症します。DHTが毛乳頭細胞にある男性ホルモン受容体と結合するとヘアサイクルの成長期が短縮され、脱毛が起こるのです。

AGAの特徴的な脱毛パターンとして、生え際のM字型後退や頭頂部のO字型脱毛が見られます。また、髪が十分に育つ前に抜けるため、抜け毛が細く短いことも特徴の一つです。
一方、脂漏性脱毛症は頭皮の炎症が原因で起こるため、頭皮のベタつきやかゆみ、脂性フケなどの炎症症状を伴います。脱毛パターンも特定の部位ではなく、頭皮全体に起こるのが特徴です。
また、AGAのみでは頭皮の炎症は基本的に見られませんが、脂漏性脱毛症では炎症が現れます。治療法も異なり、AGAではデュタステリドやフィナステリドなどの酵素阻害薬のほか、発毛を促すミノキシジルなどが使用されますが、脂漏性脱毛症では抗真菌薬による治療が中心です。炎症が強い場合は、抗炎症薬(ステロイド外用薬など)が使われることもあります。
円形脱毛症は自己免疫疾患の一種で、免疫系が毛根を攻撃することで起こる脱毛症です。通常、健康な毛包は免疫細胞に見つからないようにバリアのような仕組みを持っています。しかし、何らかのきっかけでこのバリアが壊れると、血液中のTリンパ球が毛包(特に毛包下部)周囲に集積し、自己免疫反応が起こることで毛包の成長が阻害されるのです。

特徴的な症状として、境界がはっきりとした円形または楕円形の脱毛斑が現れます。脱毛斑は一箇所または複数に現れたり、広範囲に拡大したりするなど、いくつかのパターンもあるのが特徴です。
また、円形脱毛症では、脱毛した頭皮に赤みやフケなどの症状は基本的に見られません。また、数週間から数ヶ月という短期間で急速に進行する場合があるのも特徴です。
一方、脂漏性脱毛症による脱毛は円形にはならず、頭皮全体の炎症に伴って徐々に広がっていきます。
円形脱毛症にはステロイド療法や局所免疫療法などが用いられますが、脂漏性脱毛症では原因菌を抑える抗真菌薬によるアプローチが中心です。
脂漏性脱毛症の治療には、主に外用薬が用いられます。脂漏性皮膚炎が軽度であればセルフケアで改善することもありますが、脱毛が起きるほど症状が進行している場合は医学的なアプローチが必要です。
脂漏性皮膚炎の外用薬は、原因菌であるマラセチアの増殖を直接抑える抗真菌薬に加え、かゆみや赤みがひどい場合にはステロイド外用薬が併用されます。ただし、ステロイドの長期的な使用は頭皮の萎縮などのリスクを伴うため、医師の管理下で使用することが大切です。
マラセチアの増殖を抑えることによって頭皮の炎症が収まり、頭皮の環境が改善することで、脱毛の進行を抑える効果が期待できます。

まず、洗髪前に髪をとかし、ほこりや汚れを落とします。これによって髪の絡まりも解けるため、洗髪時の髪へのダメージを減らせるでしょう。
洗髪時は、十分にお湯で予洗いを行い、シャンプーをしっかりと泡立ててから頭皮をマッサージするように洗います。爪を立てて洗うと頭皮を傷つける恐れがあるため、指の腹を使って優しく洗うことが大切です。お湯が熱過ぎると頭皮にダメージを与えるため、40度未満のぬるま湯を使いましょう。
すすぎは洗髪時間の2倍程度かけて、シャンプーが残らないように丁寧に行います。洗髪後は速やかにドライヤーで乾かし、湿った状態を長時間続けないことも大切です。
脂漏性脱毛症の改善に向けて、頭皮の常在菌であるマラセチアの増殖を抑えるため、抗真菌成分が配合された薬用シャンプーを使うのも選択肢の一つです。抗真菌シャンプーは、週1〜2回を目安に使用してください。
1.配合をチェックしたい有効成分
菌の増殖を抑え、炎症を鎮める成分が配合されたものを選びましょう。
2.頭皮に優しい洗浄成分(アミノ酸系)
肌と同じ弱酸性で、頭皮バリアを守りながら優しく洗い上げます。
3.使用時の注意点と見直したい習慣
脂漏性皮膚炎を改善したい時期は、整髪剤の使用を控えることも検討してみてください。
質の良い睡眠によってホルモンバランスを整えることは、間接的に頭皮の環境を整える効果があります。髪の成長に必要な成長ホルモンは入眠直後の睡眠で最も多く分泌されるので、眠りの質を高めることが健やかな髪を育むポイントとなるためです。
質の良い睡眠のために必要なこととして、以下が挙げられます。

成長ホルモンは皮膚のターンオーバーを促すため、炎症で傷ついた頭皮の組織が修復されやすくなります。その結果、頭皮の乾燥や刺激に強い健康な皮膚へと生まれ変わるため、マラセチアによる刺激に対しても過敏に反応しにくい状態になるのです。
また、良質な睡眠によって副交感神経が優位になると、頭皮の血流が改善されるため栄養が届きやすくなり、炎症を鎮める効果も期待できるでしょう。
ここでは、脂漏性脱毛症に関する疑問や不安について、Q&A形式で解説します。正しい知識を身につけることで、適切な対処ができるでしょう。
脂漏性脱毛症は完治しますか?期間はどれくらい?
脂漏性脱毛症は、適切な治療によって改善が期待できる疾患ですが、再発しやすいため「良好な状態を維持すること」が実質的な完治の目安となります。具体的には、頭皮の炎症が治まり、抜け毛が健康な人と同等の正常範囲に戻れば、一段落したと考えられるでしょう。
改善を実感できるまでの期間は、症状の程度や個人差により、一概にはいえません。軽度の場合は数週間で治療の効果が現れることもありますが、長期間の治療が必要な場合もあります。また、脂漏性皮膚炎は再発しやすいため、症状が改善したあとも継続的なケアが必要です。
脂漏性脱毛症で病院に行くタイミングは?
頭皮のベタつきやフケが1週間以上続く場合や、抜け落ちた毛の根元に白い塊が付着したりしている場合は皮膚科の受診を検討すべきタイミングといえます。
抗真菌成分を含むシャンプーは、症状コントロールに役立つことがあります。ただし、症状が強い場合や長引く場合には、自己判断のみで対処を続けると脂漏性皮膚炎が悪化するリスクがあるため、医療機関での治療を優先しましょう。
また、炎症のダメージが毛包におよび、その状態が長く続くと回復が困難になる可能性もあるでしょう。日常生活に支障をきたすほどのフケがある場合や、頭皮に炎症が見られる場合は、皮膚科を受診してください。
なお、脱毛の原因が脂漏性皮膚炎でない可能性もあります。「いつもより抜け毛が多い」など脱毛についての相談は、皮膚科のほか、AGAクリニックも選択肢となるでしょう。
通院が困難な場合は、オンライン診療で相談する方法もあります。
脂漏性脱毛症は人にうつる可能性はありますか?
脂漏性脱毛症は人から人へうつる疾患ではありません。原因となるマラセチアは誰の頭皮にも存在する常在菌であり、感染症ではないため安心してください。
マラセチアは健康な人の皮膚にも存在しており、通常は皮膚の健康維持に役立っています。脂漏性脱毛症は、この常在菌が皮脂の過剰分泌により異常増殖することで起こる疾患です。
したがって、脂漏性脱毛症の人と同じタオルを使用したり、密接な接触をしたりしても過度に心配する必要はありません。ただし、清潔を保つことは大切なため、毎日の洗髪やタオルの洗濯などは適切に行ってください。
脂漏性脱毛症は皮脂の過剰分泌により常在真菌のマラセチアが増殖し、頭皮の炎症から抜け毛に至る疾患です。頭皮のベタつきや脂性フケから始まり、炎症が慢性化すると、毛包の萎縮や瘢痕化(傷跡)が進行し抜け毛が増加したり、毛髪の再生が困難になることで薄毛が進行したりします。
脂漏性脱毛症の主な治療法は、医療機関で処方される抗真菌薬やステロイド外用薬を用いた局所療法です。これらに加え、薬用シャンプーの活用や生活習慣の改善といったセルフケアを並行して行うのが望ましいでしょう。
脱毛が続く場合は、ほかの原因も考えられるため、早めの受診をおすすめします。特に、脂漏性皮膚炎の治療を続けても抜け毛が止まらない場合は、AGAを併発している可能性も否定できません。「忙しくて通院できない」「近くに病院がない」という方は、オンライン診療も選択肢の一つとして検討してみてください。
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AGA治療は、主に内服薬・外用薬で行われます。
| 代表的な成分 | 分類 | 主な効果 |
|---|---|---|
| フィナステリド・デュタステリド | 内服薬 | 抜け毛の進行を食い止める |
| ミノキシジル | 内服薬・外用薬 | 毛包を活性化させ発毛を促す |
治療期間について
効果実感には個人差がありますが、ヘアサイクル改善のため3ヶ月〜半年ほどの継続が推奨されます。
費用について
AGA治療は、保険適用外の「自由診療」です。対面診療では、薬代(1ヶ月数千円ほど)の他に、初診料や診察料がかかる場合もあります。
治療の継続には期間と費用に加え、定期的な通院が必要です。時間や費用、人目などの通院の負担が、忙しい方にとって課題となる場合があります。
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交感神経は男性ホルモンを活性化して、皮脂の分泌を増やします。「寝室にスマホを持ち込まない」など、できることから習慣化して睡眠の質を高めましょう。

軽度の症状であればセルフケアで改善することもありますが、症状が進行している場合は医療的なアプローチが必要です。早めに炎症を抑えれば、毛包へのダメージを抑制できる可能性があります。毛包が縮小すると脱毛が進んでしまうため、その前に食い止めることが大切です。