更新日:2025年01月21日
AGAの治療法「HARG(ハーグ)療法」とは?治療法や注意点を解説
- HARG(ハーグ)療法とは「毛髪再生治療」と称されるAGA治療法のこと
- 3~4週間に1回来院し、頭皮に注射針で注入する治療法
- 開始後3~6か月後に効果が実感できるとされている
- 副作用がほぼなかったり、髪の成長力を取り戻せたりする点がメリット
- HARG+(ハーグプラス)療法という治療法もある
HARG療法というAGAの治療法について耳にし、どこへ行けば受けられるのか気になっている人もいるでしょう。HARG療法では、一定期間の治療を受けることで自然に髪が生えるようになるとされています。
本記事では、HARG療法の治療法や特徴など、押さえておきたい情報をまとめました。HARG療法からバージョンアップしたHARG+(ハーグプラス)療法についても解説しているので、ぜひ参考にしてください。
HARG(ハーグ)療法とは
HARG療法とは、最新の再生医療を用いた毛髪再生治療を指すAGA治療法のことです。
- Hair(=毛髪)
- Re-Generative(=再生)
- medication(=医療)
という英単語の頭文字を取って、HARG(ハーグ)と命名されています。
HARG療法は、AAPEと呼ばれるヒト脂肪幹細胞培養上清液の成長因子という生体(ヒト由来)タンパク質をメインにした、HARGカクテルと呼ばれる薬剤を直接頭皮に注入する治療法です。
AAPEには、毛髪再生を促進させるVEGFや毛包成長期の誘発効果のあるタンパク質など、150種類以上の成長因子が含まれており、頭髪の成長にそれぞれの因子が影響を与えると考えられています。HARG療法に含まれる細胞成長因子としては、次のようなものが挙げられます。
- PDGF:毛の成長期を保持するために必要な成長因子
- KGF(ケラチノサイト成長因子):毛髪を構成するタンパク質であるケラチンを作り出す毛母細の増加を促進させる働きがある、また、発毛にも必要な成長因子
- VEGF(血管内皮細胞成長因子):頭皮の血管新生に必要な成長因子
- DGF(血小板由来成長因子):血管を作る働きがあるほか、損傷した頭皮や毛包の修復を促して、発毛促進・脱毛予防の効果が期待できる成長因子
- TGF beta1(トランスフォーミング成長因子):抜け毛を促進する働きがあ、毛周期を制御する成長因子
上記のようにHARG療法では、毛乳頭細胞を再生して自身の毛髪を再生させるメカニズムであるため、従来の薬物療法とは違い治療を一定期間受けることで、自然に髪が生えるようになるとされています。
HARG(ハーグ)療法の治療期間
HARG療法では、3~4週間に1回来院し、注射針で頭皮にHARGカクテルを注入します。1回の施術で効果を得られる治療法ではなく、治療開始後3~6か月後に治療効果が実感できるとされているため、注意しましょう。
また、治療後、メンテナンス治療を年に数回行うことで発毛状態が維持できるといわれています。
HARG(ハーグ)療法が向いている人
HARG療法が向いている人には、以下のような症状の人が挙げられます。
- AGAの人
- 円形脱毛症の人
- 原因不明の薄毛で悩んでいる人
- 育毛サロンに通っていたが、効果が出なかった人
- 育毛剤や発毛剤を内服しているものの、効果が出ない人
- 人工植毛やカツラではなく、自分の髪の毛を生やしたい人
上記に自分が該当する場合は、HARG療法を検討してみましょう。
HARG(ハーグ)療法の治療の流れ
実際にHARG療法の治療を受ける流れについて解説します。主な流れは、以下のとおりです。
- カウンセリング、診察
- 麻酔
- 施術
- 乾燥・消毒
- マッサージ
- 整髪、アフターフォロー
カウンセリングでは、生活環境や治療歴、遺伝など、治療に必要な情報を確認します。頭髪状態を診察し、適した治療方法を提案後、治療計画を立てて、治療費用の見積もりを行います。
治療に入った場合、3~4週間に1回程度、定期的に通院して治療を受け、6回1クールとして続けるのが一般的な流れです。基本的に、患者様が治療に満足した時点で治療は終了となります。
年齢が上がるにつれて、また薄毛の範囲が広いほど治療に時間を必要としますが、おおよそ1年前後の治療期間となる場合が多いようです。
HARG(ハーグ)療法の特徴
HARG療法の主な特徴としては、副作用がほぼない、AAPEを使用し髪の成長力を取り戻せる、一定期間の治療後は放置できる、といったものが挙げられます。
治療に臨む際は、特徴をしっかり理解しておきましょう。
副作用がほぼない
HARG(ハーグ)療法には副作用がほぼありません。HARG療法では、化学薬品ではなくヒト共通のタンパク製剤を使用するため、今のところアレルギー反応・拒絶反応・臓器障害など、有害事象の報告はされていません。
ただし、頭皮に直接注射器や専門の注射機器で薬剤を注入するため、頭皮に赤みや鈍い痛みが生じる可能性はあることは理解しておきましょう。
健康上のリスクは限りなく少ないですが、注射による治療のため、痛みに対する恐怖感が治療を受ける上で1つの障壁となるかもしれません。
AAPEを使用し髪の成長力を取り戻せる
HARG療法は、AAPEという生体(ヒト由来)タンパク質を頭皮に注入して、発毛組織に働きかけることでヘアサイクルを整え、髪の成長力を取り戻す治療法です。
AAPEには幹細胞から抽出した150種類以上の成長因子が含まれており、それぞれが頭髪の成長に影響を及ぼすと考えられています。
さらに、髪の成長に欠かせないビタミンB、H、C、Eなどの毛髪の成長を促進するビタミン剤のほか、システインやブフロメシルなども配合されていて、毛母細胞を強く刺激することで発毛作用をもたらします。
一定期間の治療後は放置できる
HARG療法の特徴として、一定期間治療したあとは年1~2回のメンテナンスで毛髪を維持できる点が挙げられます。
薬物療法の場合は、効果を継続するには薬の服用が必要です。服用をやめると再びAGAが進行する恐れがあるほか、薬の飲み忘れが原因でAGAが再び進行するリスクもあります。
しかし、HARG療法は一時的に毛髪を再生させる治療ではなく、髪本来の能力を取り戻す治療であるため、年1~2回のメンテナンスで毛髪を維持することが可能です。
HARG(ハーグ)療法を受ける上での注意点
続いて、HARG療法を受ける上での注意点を紹介します。主な注意点は、以下の5点です。
- AGAガイドラインでの推奨度は低い
- 注入方法はかなりの痛みをともなう
- 費用が高い
- 施術できるのは特定の医療機関のみ
- 注射後はパーマやブリーチなどを行えない
HARG療法では髪の成長力を取り戻せたり、一定期間の治療後は放置できたりするなど、メリットが多いように見えますが、注意事項が存在することも事実です。治療を受ける場合は、ここで紹介する注意点をしっかりと理解しておきましょう。
AGAガイドラインでの推奨度は低い
HARG療法など注入法(メソセラピー)によるAGA治療は、皮膚科学会が作成した「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」での推奨度が低いという点です。
皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」では、B.推奨度の分類において、「行わないほうがよい(C2)」とされています。ただし、「副作用が強い」「効果がない」といった理由で、「行わないほうがよい」とされているわけではありません。
HARG療法の調査や研究が今後十分に行われれば、将来正式に推奨される可能性を秘めた治療法といえます。
参考:皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」
注入方法によってはかなりの痛みをともなう
HARG療法では、頭皮に針を刺し薬液を頭皮内に注入します。注入方法によっては、かなりの痛みをともなうことを理解しておきましょう。
注入法には一定の決まった方法があるわけではありません。各クリニックによってさまざまです。なかでも一般的な方法が、注射器を使用するパピュール法です。
パピュール法では、表皮とその下にある真皮との間にHARGカクテルを注入します。頭部に1~2cm間隔でぼうりゅうを作るように注射するのが特徴です。
頭皮に針を刺す注入法では、施術者の技術によって精度にばらつきがあったり、注入時に強い痛みをともなったりするため、医師と相談した上で施術を行いましょう。
費用が高い
HARG療法の治療費は比較的高い傾向にあり、各病院やクリニックによって独自の料金体系を取っています。一概にいくらとはいえませんが、1回あたり10万円程度が必要となることもあるようです。
1回あたり約10万円とした場合、6回1クールなど複数回数行う必要のあるHARG療法では、60万円程度が必要になることは覚悟しておきましょう。
ただし、薄毛治療は、基本的に長期間続けていかなければならない治療です。投薬治療では、毎月の治療費が少額で済みますが、継続的に受ける必要があります。
一方、HARG療法は発毛するまでに約1年間の初期費用はかかりますが、発毛後は生えた毛髪を維持する治療(10万円前後)を年に一度受けるだけです。
そのため、トータルコストでいうとHARG療法のほうが安く済む可能性もあります。自身の症状と治療法を照らし合わせて、適したほうを選ぶようにしましょう。
施術できるのは特定の医療機関のみ
HARG療法は、どこの病院やクリニックでも受けられるわけではありません。HARG療法を施術できるのは、日本医療毛髪再生研究会に認定された医療機関でしか受けられないため、注意しましょう。
なお、HARG療法を受けられる医療機関は日本医療毛髪再生研究会のHPから確認できます。気になる人は、以下のHPをご確認ください。
注射後はパーマやブリーチなどを行えない
施術後の注意点として、注射後はパーマやブリーチなどを行えません。頭皮に針を刺して薬液を注入するHARG療法では、通常若干の出血があるためです。
基本的に、施術から1週間程度はパーマやブリーチなどは行えません。洗髪は医療機関によって異なるため、施術を受ける際は事前に確認をしましょう。
HARG療法からバージョンアップしたHARG+(ハーグプラス)療法とは
HARG+(ハーグプラス)療法とは、HARG療法がバージョンアップしたAGAの治療法のことです。両者の治療法は、次のとおりです。
- HARG療法:ヒト脂肪幹細胞培養上清液の成長因子というタンパク質をメインに頭皮に直接注入して毛乳頭細胞を再生し、自身の毛髪を再生させる治療
- HARG+療法:ヒト脂肪幹細胞培養上清液をさらにろ過して、不純物を徹底的に取り除いたエクソソームを直接頭皮に注入する治療
エクソソームとは、分泌細胞からターゲット細胞にメッセージを伝えるメッセンジャーとして働く細胞間の伝達物質のことで、活発に体内を循環しています。
内部に細胞の成長因子や核酸、タンパク質、脂質などが存在し、再生能力や抗炎症効果、シグナル伝達力、細胞増殖、細胞吸収力などの能力を持つのが特徴です。
毛髪再生においては、注入されたエクソソームに含まれるmiRNAや成長因子、タンパク質などが、さまざまな薄毛要因をブロックして薄毛の進行を抑制し、発毛を促進・持続させます。
また、HARG+療法では毛髪再生速度が速まるため、治療に帯する満足度がより向上することも期待できるでしょう。
HARG+(ハーグプラス)療法の治療期間
HARG+療法では、月1回の施術を1クール(6~9回)行います。HARG療法同様、頭皮にHARGカクテルを注入した直後に毛が生えてくるわけではありません。注入した細胞が活性化するまでには時間がかかるため、治療計画をしっかり立てて臨むようにしましょう。
HARG+(ハーグプラス)療法の治療の流れ
HARG+療法の治療の流れは、次のとおりです。
- カウンセリング
- 診察
- 麻酔
- 施術
- 乾燥・消毒
- マッサージ
- 整髪・アフターフォロー
基本的に、HARG療法と同じ流れで治療を行います。HARG療法が、3週間から4週間に1回程度、6回1クールとして治療を行うのに対し、HARG+療法では1か月に1回程度、6~9回1クールとして治療を行う点が相違点です。
HARG+(ハーグプラス)療法の特徴
HARG+療法の特徴には、次の2点があります。
- HARG療法よりも効果を早く実感できる
- ほぼすべての薄毛治療に使用できる
各ポイントを解説します。
HARG療法よりも効果を早く実感できる
HARG+療法の特徴の1つが、HARG療法よりも効果を早く実感できることにあります。HARG+療法では、従来の製剤からエクソソームのみを抽出した製剤を使用しているため、HARG療法よりも早く効果を感じられます。
ほぼすべての薄毛治療に使用できる
HARG+療法のもう1つの大きな特徴が、ほぼすべての薄毛治療に使用できることです。薄毛治療で多く用いられるAGA治療薬(内服薬)は、基本的に男性にしか使用できません。
しかし、HARG+療法は自身の細胞を活性化させて薄毛を改善する毛髪再生治療であるため、性別や薄毛のタイプを問わず使用できる点は魅力です。
まとめ
HARG療法は、HARGカクテルと呼ばれる薬剤を直接頭皮に注入するAGA治療法です。3~4週間に1回来院して注射を行い、治療開始後3~6か月後に治療効果が実感できるとされています。
副作用がほぼない、AAPEを使用し髪の成長力を取り戻せる、一定期間の治療後は放置できる、といった特徴がある半面、費用が高い、AGAガイドラインでの推奨度は低いといった注意点も存在します。
また、近年ではHARG療法からバージョンアップしたHARG+療法もあるため、気になる人はあわせてチェックしてみてください。
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この記事の監修:
慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会専門医。 医師免許取得後、株式会社ボストンコンサルティンググループにてヘルスケア・IT領域にて従事。 現在は慶應義塾大学医学部助教、美容医療を主としたJSKINクリニックを経営・監修、オンライン診療サービス「レバクリ」監修。
<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS) 日本乳癌学会