更新日:2025年05月26日
「全体的に髪が薄くなったような気がする」「分け目が広がって地肌が見えてきている」と、人知れずお悩みの女性は多いのではないでしょうか。誰かに相談するのが恥ずかしく感じ、自分だけではないかと悩んでいる方もいるかもしれません。実は、はげや薄毛にお悩みの女性は少なくないです。本記事では、女性に多い脱毛症やその原因、治し方や隠し方について紹介します。
はげや薄毛は男性のお悩みで、女性には関係ないと思っている方もいるかもしれません。しかし、実は女性にもはげや薄毛に悩む人は多くいます。
以下では、女性で薄毛に悩む人の割合や気になる症状について、調査をもとに見ていきましょう。
株式会社リクルートのホットペッパービューティーアカデミーによる調査「薄毛に関する意識調査2023」によると、「現在薄毛である」という女性は8%でした。そのうちの大半の人が「薄毛を気にしている」と回答しています。
一方、男性で「現在薄毛である」と回答した人は25.3%でした。女性で薄毛の方は男性に比べると少ないものの、お悩みを持つ方は少なくないといえます。
女性の薄毛に関して気になる症状があらわれる場所としては、「分け目」が67.2%、「頭頂部」が62.7%という結果になりました。一方で男性の気になる症状には「頭頂部」「前頭部」が上位であり、女性と男性でお悩みが異なることがわかります。
参照元:株式会社リクルート ホットペッパービューティーアカデミー「薄毛に関する意識調査2023」
女性と男性とでは、はげや薄毛に関するお悩みは異なる傾向にあります。加えて、女性に多く見られる脱毛症も存在します。
以下では、女性に多いはげや薄毛のパターンを4つ見ていきましょう。
びまん性脱毛症とは、頭部全体で薄毛が進行する脱毛症で、女性に多く見られます。特定の箇所に脱毛が見られるわけではなく、髪全体のボリュームが減少するのが特徴です。髪が細く弱々しくなるなど、髪自体に変化が表れることもあります。
びまん性脱毛症は、ホルモンバランスの乱れや生活習慣など、さまざまな要因が絡み合って起こるといわれています。進行のスピードには個人差があるものの、他の脱毛症と比べると緩やかです。明らかな症状がすぐに出ないため、早期に気付かない傾向があります。女性ホルモンの影響で起こることから、AGA(男性型脱毛症)に対して「FAGA(女性男性型脱毛症)」と呼ばれることもあります。
牽引性脱毛症とは、髪が引っ張られて頭皮に負担がかかることで起こる脱毛症です。男女関係なく発症する可能性があり、とくに女性で髪を結ぶ方は発症しやすいといえます。日頃からポニーテールやお団子ヘアなどの髪をしっかりと引っ張る必要があるヘアスタイルをしている方は、生え際や分け目部分の髪が薄くなりやすいです。更には、エクステやヘアアイロンの使用も頭皮に負担がかかるため、牽引性脱毛症の原因となる場合があります。
牽引性脱毛症は、頭皮の負担を減らすことで改善が期待できます。髪をおろすストレートなど頭皮に負担のかかりにくいスタイルをとり入れたり、時々分け目を変えたりすることで、自然に改善することが多いです。
円形脱毛症とは、円形や楕円形に脱毛が起こる症状のことです。脱毛部分が10円玉程度の大きさとなることもあるため、「10円はげ」と呼ばれることもあります。ただし、脱毛部分の大きさや数は人によって異なり、頭全体に脱毛が起こる場合や体毛がすべて抜ける場合もあるなど、症状は人それぞれです。
円形脱毛症は、男性よりも女性の方が発症しやすい傾向にあります。脱毛と聞くと加齢によって起こるイメージを持つ方もいるかもしれませんが、円形脱毛症は20~30代といった若年層の発症も少なくありません。円形脱毛症の原因は、免疫系に異常が生じる自己免疫疾患や、アトピー性の皮膚炎・ストレスなど多岐にわたります。
円形脱毛症が1か所のみに表れる場合は、1年以内に自然治癒することが多いようです。「何か所も脱毛している」「なかなか改善しない」「再発を繰り返す」といった場合は、医療機関で治療を受けましょう。
分娩後(産後)脱毛症とは、産後3か月から半年頃にかけて抜け毛が増加する症状のことです。妊娠中に多く分泌されていた女性ホルモンの量が急激に減少することで、抜け毛が一気に増えてしまいます。
ただし、分娩後脱毛は一時的なものであり、半年から1年半程度でもとのヘアサイクルに戻るとされています。生活習慣や出産時の年齢によって個人差があることも知っておきましょう。
特有の原因を持つ脱毛症もあるものの、髪が抜ける根本的な原因には共通したものがあります。以下では、女性のはげや薄毛に多い原因を4つ紹介します。心当たりのあるものがないか、一度チェックしてみましょう。
ホルモンバランスの乱れにより、はげや薄毛が引き起こされる場合があります。女性のライフスタイルの中では、出産・更年期・閉経など女性ホルモンのバランスが乱れる機会は多いものです。こうした変化の中で、髪のお悩みを抱える方は少なくありません。
髪の成長周期であるヘアサイクルは、成長期・退行期・休止期の3つの期間から成り立ちます。女性ホルモンの1つであるエストロゲンには、このうちの成長期を維持する働きがあります。
エストロゲンが多く分泌されているときは、髪が抜けにくい状態です。一方で、女性ホルモンが減少すると多くの髪が退行期・休止期を迎え、脱毛が発生しやすい状態となります。ホルモンバランスの乱れは、髪が細くなる、つやがなくなり弱々しくなるなど、髪質も悪化させる原因の1つです。
びまん性脱毛症や分娩後脱毛症は、このような仕組みも関係して起こるとされています。
ストレスも髪の成長に悪影響を及ぼし、はげや薄毛を招きます。ストレスの影響で自律神経が乱れ、血行不良を起こすと、髪に必要な栄養が行き渡りません。加えて、過食や睡眠不足を引き起こすこともあるでしょう。その結果、脱毛や髪質の変化につながることもあります。
結婚や出産などライフスタイルの変化や、家事や育児・介護、仕事などのバランスに悩みを抱える女性は多いのではないでしょうか。このような生活の中でストレスが蓄積され、髪に影響が及ぶことも少なくはありません。
過度なダイエットが、はげや薄毛を招くこともあります。行き過ぎた食事制限によって栄養のバランスが崩れると、髪に必要な栄養が行き渡らなくなります。栄養は生命維持のために必要な内臓などの器官に優先的に送られるため、しっかりと食事を摂らなければ髪にまで栄養が回ってきません。
ダイエット中に髪への影響が出なくても、数年後に脱毛してしまうという形であらわれることも考えられます。過度な食事制限や栄養の偏ったダイエットは避け、無理なく減量を目指すことが大切です。
カラーやパーマを頻繁にすることで頭皮や髪に負担がかかり、脱毛につながることもあります。カラーやパーマには強い薬剤を使うこともあるため、繰り返し施術を受けることで頭皮に負担が蓄積されていきます。ダイエットと同様に、すぐに影響がなくても回数を重ねることで脱毛につながりかねません。
ヘアスタイルを変えることは、おしゃれを楽しむ方法の1つです。しかし、頭皮に負担のかからない方法や頻度で行いましょう。
髪のために日頃から気をつけなければならないのは、生活習慣の乱れです。偏った食生活や睡眠不足、運動不足などは、身体の健康を損なうだけでなく髪にも悪影響を及ぼします。
頭皮や髪に必要な栄養をしっかりと摂取し、十分な睡眠時間と適度な運動量の確保を心掛けましょう。
はげや薄毛に悩んでいても、誰かに相談するのが恥ずかしいという女性は多いでしょう。「できることなら自分で改善したい」と考える方が多いのではないでしょうか。
以下では、女性のはげや薄毛を治すために、日常生活の中でとり入れられる方法を紹介します。加えて、自力で改善できない場合は医療機関を受診することも視野に入れるとよいでしょう。
髪は食べたものから作られるため、まずは食事の栄養バランスを見直しましょう。髪の材料となるタンパク質や、健康的な髪を育てるために必要な亜鉛や鉄分などをしっかりと摂ることが大切です。良好な頭皮を保つためには、ビタミン類も欠かせません。
タンパク質は肉や魚、亜鉛は牡蠣や牛肉、鉄分はレバーや赤身の肉・魚に多く含まれます。ビタミン類を多く含むナッツ類や果物も積極的に摂りましょう。
ただし、髪によいからといって特定の食品ばかり摂取することは好ましくありません。さまざまな食品をバランスよく食べることが大切です。
髪の成長には、十分な睡眠も必要です。睡眠中には成長ホルモンが分泌されます。しっかりと睡眠をとって、髪の成長を妨げないようにしましょう。成長ホルモンが多く分泌される時間帯は、22時から翌2時といわれています。できる限りこの時間帯には睡眠状態となるよう、生活リズムを調整しましょう。
睡眠の時間だけでなく、睡眠の質も大切です。ぐっすりと眠れるように、就寝前にスマートフォンやパソコンを触ることは避けましょう。食事を就寝時間の3時間前までに終わらせることで、胃腸の働きによって睡眠の質が低下することを防止できます。就寝時間や起床時間を決めて、規則正しい睡眠サイクルを心掛けましょう。
髪の成長に重要である女性ホルモンのバランスを整えることも大切です。ホルモンバランスを整えるためにも、食生活や睡眠の改善は役立ちます。
加えて、豆腐や納豆などの大豆製品を意識して摂取することもおすすめです。大豆製品に含まれるイソフラボンは、女性ホルモンの1つであるエストロゲンに似た働きをすることで知られています。大豆製品を積極的に摂り、ホルモンバランスを整えましょう。
自分に合ったヘアケアを行うことで、はげや薄毛の改善につながります。日常的に使うシャンプーには頭皮や髪への負担が少ないものを選び、シャンプー後はしっかりと洗い流しましょう。シャンプーの際には、頭皮を優しくマッサージすることもおすすめです。
入浴後の自然乾燥は避け、ドライヤーで乾かすことも大切です。温風で髪がおおむね乾いたら、冷風に切り替えて髪を冷ますことでキューティクルが閉じ、つやのある髪となります。このほか、適度にブラッシングをすることも有効です。日々のケアを見直すことで、髪や頭皮への負担を軽減できるでしょう。
ストレスをためないようにこまめに解消していくことも、髪の健康につながります。ストレスは血行不良や不眠などを引き起こす恐れがあり、髪だけでなく身体全体に悪影響を及ぼします。
美味しいものを食べる、買い物を楽しむなど、自分なりのストレス解消法を知っておくとよいでしょう。散歩やスポーツ、カラオケなど、体力を使うと血行が促進され、ストレス解消や質の高い睡眠につながります。ストレス解消のための時間が取りにくい方は、手軽に食べられる甘いものをストックしておく、深呼吸をするなどの方法を試してみてください。
日常生活の中で改善できない場合や、改善せず程度がひどくなる場合は、医療機関の受診を検討しましょう。受診することで、自分の症状や生活に合った改善方法を提案してもらえます。
専門家である医師に診てもらい話をすることで、心が軽くなる場合もあります。1人で悩んでしまいストレスを抱える前に、適切な医療機関を受診することがおすすめです。
日常生活を送る中で会う人には、はげや薄毛を見られないようにしたいものです。長い目で見た場合、はげや薄毛の治し方に加えて、すぐに実践できる隠し方を知りたいという方もいるのではないでしょうか。
以下では、はげや薄毛を隠すために女性におすすめの方法を3つ紹介します。髪のお悩みを隠しながらおしゃれを楽しめる方法を紹介するので、ぜひ活用してください。
ヘアスタイルをこれまでと変えることで、はげや薄毛の部分を目立たなくできることもあります。
たとえば、ショートヘアにすることでトップのボリュームを出しやすく、気になる部分をふんわりと隠せるでしょう。とくに牽引性脱毛症の方は、髪を結ばないスタイルにすることで、頭皮の一部分に負担がかかることを防止できます。
信頼できる美容師さんがいる場合は、相談してみてもよいでしょう。はげや薄毛を隠しながら、おしゃれも楽しめる新しいヘアスタイルを提案してもらえるかもしれません。
「ヘアスタイルを変えるのは抵抗がある」という方は、日々のヘアアレンジを変えてみましょう。
日常的に髪を結んでいる方の中には、毎日同じ結び方をしている方も多いのではないでしょうか。「結び方や分け目を変える」「ワックスやスプレーでふんわり仕上げる」「髪を1つに束ねずハーフアップにする」など、ヘアアレンジによって気になる部分を隠すことも可能です。
ヘアスタイルの変更と同様に、牽引性脱毛症の防止にもなります。
ウィッグやアクセサリーなどを使って、気になる部分を隠すことも一つの方法です。近年はおしゃれなウィッグが多く販売されています。つむじなどにピンポイントで使えるものもあるため、楽しんで活用してみましょう。
またヘアバンドやカチューシャ、バレッタやヘアピンなどをうまく使うことで、はげや薄毛の目立たないようにアレンジができます。
はげや薄毛のお悩みを抱える方は、男性だけでなく女性にも多くいます。女性に多いのは、女性ホルモンの影響によるびまん性脱毛症や分娩後(産後)脱毛症、ヘアスタイルによる牽引性脱毛症や円形脱毛症です。生活習慣やホルモンバランスを整えて根本的な改善を目指すとともに、うまく隠す方法を知って日々を快適に過ごしましょう。
この記事の監修:
慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会認定専門医。 医師免許取得後、外資系経営コンサルティング企業のヘルスケア・IT領域にて従事。 慶應義塾大学医学部助教を経て、美容医療を主としたJSKINクリニック、及びオンライン診療サービス「レバクリ」監修。
<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS)