更新日:2025年05月26日
鏡を見て、分け目から地肌が見える範囲が広くなってきたように感じることはありませんか?このような症状は、「分け目ハゲ」と言われています。分け目ハゲは、年齢や性別を問わず起こる可能性があるため、その原因を理解しておくことが重要です。
本記事では、分け目ハゲになる原因や対策とともに、治療法について解説します。
分け目ハゲは、20代でも起こってしまう可能性があります。「分け目ハゲ」という言葉は医学用語ではないため、明確な定義がありません。髪の毛が細くなったり、少なくなったりすることが原因で、分け目から見える地肌の範囲が広く見える状態が「分け目ハゲ」というのです。
以下の症状であれば、分け目ハゲと考えてもよいでしょう。
分け目部分は地肌が見えやすく、薄毛が目立ちやすい場所です。なかには、分け目よりも頭頂部のほうが薄毛が進行しているケースもあります。そのため、分け目の薄毛が気になる場合は、頭頂部の状態もチェックしましょう。
一般的に、薄毛のリスクは年齢を重ねるとともに高まります。しかし、過度なダイエットやストレスにより、若い年代の方でも薄毛に悩まされるケースは少なくありません。分け目ハゲは、年齢や性別を問わず起こる可能性があることを理解しましょう。
女性の分け目ハゲの原因には、以下の5つが挙げられます。
ここでは、それぞれの原因について解説します。
女性の分け目ハゲの原因として、ストレスが挙げられます。強いストレスを受けた場合、自律神経の乱れにより、血行不良を引き起こします。血行不良になり血管が収縮すると、髪の毛に十分な栄養が届きません。
また、ストレスは頭皮環境の悪化にも影響を及ぼします。頭皮環境が悪化した場合、老廃物が頭皮に蓄積され、髪の毛への栄養の吸収を妨げます。髪の毛に栄養が届かないことにより、抜け毛や薄毛を招き、分け目ハゲにつながります。
ホルモンバランスの変化も、分け目ハゲの原因のひとつです。女性には、妊娠や出産、更年期など、生涯を通してホルモンバランスが大きく変化する機会があります。ホルモンバランスの変化により女性ホルモンの分泌量が減り、男性ホルモンの分泌量が増加した場合、薄毛を発症することがあります。
また、産後2〜3か月をピークに抜け毛が増える症状「分娩後脱毛症」も、ホルモンバランスの乱れが原因です。出産機会が多い20代や30代は、分娩後脱毛症により分け目ハゲになってしまうケースもあります。
生活習慣の乱れも、分け目ハゲの原因に挙げられます。髪の毛の主成分は、タンパク質の一種である「ケラチン」です。食事から摂取したタンパク質を体内でアミノ酸に分解し、アミノ酸を再合成することによりケラチンが生成されます。このケラチンの生成には、亜鉛が必要です。
髪の生育や健康な頭皮環境の維持には、ビタミン類が欠かせません。ファストフード中心の食生活や過度なダイエットによる偏った食生活を続けていた場合、タンパク質や亜鉛、ビタミン類を十分に摂取できていないことが考えられます。正常なヘアサイクルを維持できず、分け目ハゲを招きかねません。
また、睡眠不足になった場合、成長ホルモンが正常に分泌されず、髪の毛の成長にも悪影響が出るでしょう。髪の毛にとって、正しい生活習慣を送ることは大切な要素です。
分け目ハゲの原因には、頭皮へのダメージも挙げられます。紫外線は頭皮の乾燥や炎症につながるだけでなく、髪の成長に関わる毛母細胞を損傷させるリスクがあります。分け目が薄毛になった場合、その部分から頭皮へのダメージを受けやすくなるため、更に薄毛を悪化させることにもなりかねません。
気象庁の「日積算UV-B量の月平均値の数値データ表」によると、4〜9月に紫外線の量が増加しており、その時期は特に注意が必要です。
参考:気象庁「日積算UV-B量の月平均値の数値データ表」
毎日同じ髪型にしていた場合も、分け目ハゲを誘発させてしまう可能性があります。毎日、分け目を同じ場所にしていた場合、分け目部分に負担がかかります。ポニーテールのような髪型の場合も同様です。
牽引力によって、分け目の部分に血行不良が生じ、分け目ハゲを引き起こす可能性が高まります。分け目に限らず、同じ場所に負担がかかるような髪型を続けた場合に、分け目ハゲのリスクが高まります。
脱毛症によって、分け目ハゲになるケースもあります。分け目ハゲになる主な脱毛症は、以下のとおりです。
ここでは、それぞれの脱毛症と分け目ハゲの関連性について解説します。
分け目ハゲになる脱毛症として、FAGAが挙げられます。FAGAとは、男性ホルモンのひとつであるジヒドロテストステロン(DHT)が、正常なヘアサイクルを乱すことにより髪の毛が抜けていく脱毛症です。
ジヒドロテストステロンは、過度なストレスや睡眠不足による自律神経の乱れをきっかけとして増加します。10代や20代でも発症する可能性があるため、注意が必要です。FAGAの症状には個人差があり、分け目が薄くなるタイプはクリスマスツリー型、もしくはオルセン型と言われます。
AGAが生え際や頭頂部から進行しやすい一方、FAGAは全体的な薄毛になりやすいことが特徴です。
参考 : 日本皮膚科学会ガイドライン「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」
分け目ハゲになる脱毛症には、牽引性脱毛症も挙げられます。髪を引っ張ることにより頭皮に負担がかかり、頭皮の血行の悪化から抜け毛が増える脱毛症です。いつも同じ形で髪の毛を結ぶ習慣のある人や、カチューシャやヘアバンド、ヘルメットなどの頭皮や髪の毛を圧迫するアイテムを使用する習慣のある人に見られます。
牽引性脱毛症は、負担がかかっている部分を解放すれば症状が改善されます。ただし、頭皮に負担がかかっている髪型を変えずに負担をかけ続けた場合、毛包まで傷害を受け、永久に髪の毛が生えてこなくなる可能性もあるため注意が必要です。
参考 : 日本皮膚科学会「ヘアスタイルと脱毛症の関係はありますか?」
分娩後脱毛症も、分け目ハゲになる脱毛症のひとつです。分娩後脱毛症とは、出産後に女性ホルモンが減少し、産後3か月〜半年をピークに抜け毛がひどくなる脱毛症です。とくに、ブラッシング時や洗髪時に髪の毛が抜けます。櫛や排水溝に普段よりも明らかに多い量の抜け毛があるようなら、分娩後脱毛症の可能性があるでしょう。
分娩後脱毛症は一時的な症状であり、基本的には時間の経過とともに自然に治まるものです。ただし、産後の睡眠不足や食生活の乱れ、ストレスにより抜け毛が治まらないケースもあります。
びまん性脱毛症も、分け目ハゲになる脱毛症のひとつです。びまん性脱毛症とは、頭皮全体の髪の毛が薄くなる脱毛症です。「びまん」とは「一面に広がる」という意味を指しています。
びまん性脱毛症は、ホルモンバランスや自律神経の乱れによって発症しますが、原因はひとつではありません。複数の原因が複雑に絡み合った結果、発症します。30代後半から発症するケースが多いものの、睡眠不足や偏った食生活などの生活習慣の乱れや、過度なダイエットによる栄養不足が原因となる場合もあり、20代から発症するケースも珍しくありません。
女性の分け目ハゲへの対策として挙げられるのは、以下の6つです。
ここでは、それぞれの対策について解説します。
女性の分け目ハゲへの対策には、生活習慣の見直しが有効です。睡眠不足や偏った食生活などの生活習慣の乱れは、脱毛症を引き起こす恐れがあります。そのため、毎日の食事や睡眠の質を見直すことが大切です。
食事面では、タンパク質や亜鉛、ビタミン類などの髪の毛の成長に必要な栄養素を含んだ食材を摂取しましょう。これらの栄養素を含んだ食材として、以下のものが挙げられます。
良質な睡眠をとるためには、寝心地の良いパジャマや枕にして睡眠環境を整え、スマートフォンやタブレット端末を寝室に持ち込まないことが大切です。睡眠前にストレッチや適度な運動などで身体を温めたり、趣味を楽しむことによりストレスをため込まないようにすることも重要です。
女性の分け目ハゲへの対策には、ストレスの発散もおすすめです。ストレスの蓄積は、脱毛症を引き起こす恐れがあります。そのため、ストレスが溜まった場合に発散できる方法を見つけておくことが重要です。
例えば、親しい人とカフェに行って話をしたり、カラオケで歌ったりするほか、旅行に行って非日常を感じてみてはいかがでしょうか。自分なりのストレス発散法を見つけていくことが大切です。
適切なヘアケアをすることも、女性の分け目ハゲへの対策です。頭皮や髪の毛にダメージが残っていた場合、脱毛症を引き起こす可能性があります。一度、普段使用しているシャンプーやコンディショナーなどのヘアケア用品を見直すことが大切です。
シャンプーは、頭皮への負担が少なく育毛作用のあるものや、発毛をサポートする成分が配合されたものを選ぶとよいでしょう。
洗髪方法も見直す必要があります。頭皮の汚れをしっかりと落とすために、シャンプー前にブラッシングし、シャワーでしっかりとすすぎましょう。シャンプーはしっかりと泡立てて、1分ほど泡パックをすると汚れが浮きやすくなります。泡をすすぐ際は、最低でも2分間は洗い流してください。
頭皮マッサージも、薄毛対策に有効です。入浴時や寝る前などに頭皮マッサージを取り入れることで、頭皮の血行促進や毛穴の詰まり緩和などに期待できます。指の腹を使い、頭皮を優しくマッサージしましょう。
また、紫外線対策として帽子や日傘、頭皮用の日焼け止めスプレーを活用したり、頻繁なヘアカラーやパーマでの刺激を避けることも薄毛予防につながります。
女性の分け目ハゲへの対策のために、定期的にヘアスタイルを変えましょう。頭皮や髪の毛に負担がかかった髪型を続けた場合、牽引性脱毛症を引き起こす可能性があります。いつも同じ個所で髪の毛を分けていたり、毎日ポニーテールにしていたりする人は、定期的にヘアスタイルを変えることが大切です。
頭皮や髪の毛に負担がかからない髪型にすることも、抜け毛予防につながります。
分け目ハゲが目立ちにくい髪型にすることも、女性の分け目ハゲへの対策です。分け目ハゲになってしまった場合、前述した対策をしたからといって、すぐに髪の毛が生えてくるわけではありません。その場合、分け目ハゲを隠す方法として手っ取り早いのが、以下のように分け目ハゲが目立ちにくい髪型にすることです。
分け目を変えるだけでも印象が変わりますが、髪の毛の長さを短くするだけでも、ボリュームを出せたり分け目自体をなくせたりするため、分け目ハゲを隠せます。
対策を講じても、分け目ハゲがなかなか改善されない場合は、医師の診断を受けましょう。女性の分け目ハゲは、皮膚科や内科でも相談できますが、専門のクリニックを受診するほうが確実です。
薄毛治療に精通した医師に診断してもらうことにより、症状や目的に合った治療を選択でき、薄毛の改善につながるでしょう。オンライン診療を実施しているクリニックも存在します。時間がない人や、クリニックに直接足を運ぶのに抵抗がある人は、オンライン診療の利用もおすすめです。
分け目ハゲになる脱毛症のひとつであるFAGAになった場合は、治療が必要です。FAGAの治療では、内服薬や外用薬を用いた投薬治療を行うのが主流ですが、メソセラピーや植毛といった方法もあります。
症状や目的に応じて使い分けたり、複数の薬を併用したりするケースもあります。ただし、FAGAの治療は美容目的の治療に該当し、保険適用外となるため、注意が必要です。ここでは、それぞれの治療法について解説します。
FAGAの治療として、内服薬の服用が挙げられます。FAGA治療で処方される内服薬には、以下のものが挙げられます。
ただし、内服薬だけでは薄毛が改善しない場合もあります。その場合は、外用薬やメソセラピーによる治療と併用することもあります。また内服薬については治療適応を慎重に検討する必要があるため、自己判断をせず、医師の指導を受けることが必要です。
外用薬も、FAGAの治療に挙げられます。代表的な外用薬は、ミノキシジルです。ミノキシジルは、元々血圧を下げる薬として使用されていましたが、副作用として多毛が見られたことから、薄毛治療薬として再開発されました。日本皮膚科学会によるFAGA治療のガイドライン「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」でも、推奨度Aと高く評価されています。
また、血管拡張作用や発毛を促す効果のある「アロビックス」や、頭皮環境を整える効果のあるケトコナゾール配合のシャンプーを用いて治療するケースもあります。
参考 : 日本皮膚科学会ガイドライン「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」
メソセラピーも、FAGAの治療に挙げられます。メソセラピーとは、薬剤やアミノ酸、ビタミン剤などの有効成分を直接頭皮に注入する治療法です。クリニックによって配合される成分が異なり、抜け毛予防や発毛促進に有効な成分を独自にブレンドしたオリジナルの薬剤を使用できることがメリットです。
頭皮に注射針を刺すため、痛みがあることがデメリットでしたが、注射針も細くなり痛みも軽減されてきています。内服薬や外用薬による投薬治療と併用することが多く、より早く発毛を実感できるでしょう。ただし、投薬治療に比べて費用が高いため、注意が必要です。
植毛も、FAGAの治療のひとつに挙げられます。植毛とは、薄毛ではない側頭部や後頭部の毛根を周辺組織ごと切り取り、薄毛箇所に移植する治療法です。生着すれば通常のヘアサイクルになり、自然に髪が生まれ変わるため、分け目の薄毛治療にも有効です。
ただし、移植するためにはある程度の毛量が必要なため、全体的に髪の量が少なくなっている人には向いていません。周囲のFAGAが進行した際に、境目が不自然に目立ってしまう可能性もあります。
人工毛を使用する治療もありますが、拒絶反応を起こすリスクがあるため注意が必要です。
FAGAの治療として、市販の育毛剤の使用を考える人もいるかも知れません。しかし、育毛剤は頭皮を清潔に保ち、髪の成長をサポートするためのものです。あくまでも髪の成長をサポートするためのものであり抜け毛予防の効果は期待できても、発毛効果は期待できません。
そのため、育毛剤で分け目ハゲを改善するのは難しいでしょう。生活習慣の改善やヘアケアを見直しても症状が改善されない場合は、治療を受けることが大切です。
分け目ハゲは年齢や性別を問わず起こるため、20代でも分け目ハゲになる可能性があります。女性の分け目ハゲの原因として、ストレスやホルモンバランスの変化などのほか、FAGAや牽引性脱毛症などの脱毛症も挙げられます。
女性の分け目ハゲへの対策として挙げられるのは、以下のとおりです。
FAGAになった場合は治療が必要です。FAGAの治療では、内服薬や外用薬を用いた投薬治療を行うのが主流ですが、メソセラピーや植毛といった方法もあります。
「仕事が忙しい」「病院にいくのは抵抗がある」という方には、オンライン診療がおすすめです。場所や待ち時間を気にせず、診察が受けられるため安心でしょう。分け目ハゲについて相談したい方は、検討してみてはいかがでしょうか。
この記事の監修:
慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会認定専門医。 医師免許取得後、外資系経営コンサルティング企業のヘルスケア・IT領域にて従事。 慶應義塾大学医学部助教を経て、美容医療を主としたJSKINクリニック、及びオンライン診療サービス「レバクリ」監修。
<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS)