更新日:2025年05月26日
女性のFAGAは女性男性型脱毛症といい、加齢・出産によるホルモンバランスの変化や過度なダイエット、ストレスなどが引き金となり、ヘアサイクルが乱れることで生じます。FAGAの主な症状は、ハリやコシがなくなり、髪全体のボリュームが少なくなることです。
本記事では、FAGAが生じるメカニズムや主な症状、原因などを解説します。FAGAの対処法も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
女性の脱毛症はAGAではなくFAGAと呼ばれ、区別されています。AGAは男性型脱毛症ともいい、男性ホルモンの増加や遺伝、ストレスなどが原因で生じるものです。FAGAのメカニズムや主な症状、原因などについては以降で解説します。
女性の脱毛症であるFAGAは、女性男性型脱毛症とも呼ばれます。男性のAGAのように、FAGAもホルモンが関係していると考えられる脱毛症です。
FAGAは、加齢・出産による女性ホルモンのバランスの変化や過度なダイエット、睡眠不足、ストレスなどが引き金となって発症します。男性のように局所的に薄毛になるのではなく、全体的に髪の毛が薄くなる「びまん性」の症状が特徴です。
FAGAはヘアサイクルが乱れることにより生じます。ヘアサイクルとは、発毛から脱毛までの周期のことです。
ヘアサイクルは、成長期・退行期・休止期の3段階に分けられます。通常、髪の毛は2〜6年ほどの時間をかけて長く太く成長し、この期間を成長期といいます。全体の85〜90%ほどは、成長期の髪の毛です。
その後、2週間ほどの退行期に入ります。退行期には毛根の退縮が始まり、成長が鈍化します。全体の1%ほどが、退行期の髪の毛です。
髪の毛は、退行期を経て休止期に入ります。休止期は、髪の成長が完全に止まった状態で、2〜3ヶ月ほど続きます。全体の10〜20%ほどが、休止期の髪の毛です。
やがて毛乳頭細胞(栄養供給や発毛・脱毛の指令を行う細胞)が活動を再開すると、新しい毛が古い毛を押し出すようにして生え、古い毛は自然に抜け落ちます。これが、健康的なヘアサイクルです。
FAGAの場合、ヘアサイクルが乱れて成長期が短くなったり、休止期が長くなったりします。成長期が短くなると、髪の毛は十分に成長できません。また、休止期が長くなると、新しい髪の毛がなかなか生えてこないため、徐々に薄毛が進行します。
個人差がありますが、FAGAの主な症状は次のとおりです。
これらの症状にいくつかあてはまる場合は、FAGAを疑い、クリニックで診てもらうとよいでしょう。
FAGAとAGAの主な違いは、症状の現れ方と発症時期です。男性のAGAは、ジヒドロステロンという男性ホルモンが毛根部の細胞を弱らせてしまうことで生じます。髪の毛を産毛のように変えてしまい、ボリュームが減って薄毛を引き起こします。
女性のFAGAは、髪の毛が大量に抜け落ちるのではなく、髪全体のボリュームが減ってしまうものです。分け目やつむじが透けてみえる状態になりますが、男性のように生え際や頭頂部がハゲることはほとんどありません。
また、男性のAGAは、FAGAに比べて発症時期が早い傾向があります。男性の場合、早い人では10代で発症します。女性は20代でFAGAを発症する方もいますが、稀なケースといえるでしょう。FAGAの多くは、ホルモンバランスが変化し始める40〜50代に発症します。
FAGAは、抜け毛の進行の仕方により3つの型に区分されます。この3つの型から、どのように症状が進行するのかを確認してみましょう。
ルードウィッグ型は、FAGAのなかで多くみられる型です。頭頂部から後頭部にかけて、徐々に薄くなります。進行度によって、Ⅰ〜Ⅲ型に分類されます。
クリスマスツリー型は、生え際から頭頂部にかけて薄くなります。前側が広く、頭頂部にかけて狭い形の薄毛になるため、クリスマスツリーのように見えるのが名前の由来です。額の生え際から薄毛が広がるため、初期段階でも気づきやすいとされています。クリスマスツリー型のFAGAは、それほど多くはありません。
ハミルトン型は、額の生え際から剃り込みを入れたように脱毛が進行するのが特徴です。左右の生え際から薄くなる点が、AGAと似ています。生え際から薄毛が進行するハミルトン型は、早い段階から目立つ可能性があります。この名前の由来は、AGAの進行パターンを分類化したハミルトン氏の名前です。
女性のFAGAを引き起こす主な原因は、次の6つです。
それぞれの原因を解説します。
FAGAの原因の一つは、加齢や出産によるホルモンバランスの変化です。卵巣から分泌されるエストロゲンは、健全なヘアサイクルを維持するために欠かせません。20代後半をピークに徐々に減少しますが、40歳前後で急激に減少します。
また、妊娠・出産によっても、エストロゲンの分泌量は大きく変化します。出産してから2〜3ヶ月ほど経ったころに髪の毛が大量に抜け落ちるのは、エストロゲンの分泌量が減るためとされています。出産による脱毛は、半年〜1年ほどで自然に落ち着くため、それほど心配はいりません。
生活習慣の乱れも、FAGAの原因になります。極端なダイエットによる栄養不足や睡眠不足、過度な喫煙・飲酒などは、FAGAを引き起こす要因です。
極端なダイエットで栄養不足になると、頭皮まで栄養が行き渡りません。健康的な髪の毛を育むためには、栄養バランスの取れた食事が大切です。
髪の毛は、睡眠中に分泌される成長ホルモンによって発育が促されます。睡眠不足の場合、十分に成長ホルモンが分泌されないため、健康な髪の毛が育ちません。
過度な喫煙や飲酒も、髪の毛の成長を阻害する要因です。特にタバコのニコチンは、血管を収縮させる作用があるため、毛根に栄養が届きづらくなります。
FAGAの原因の一つは、ストレスによる自律神経の乱れです。自律神経には交感神経と副交換神経があり、継続的にストレスを感じると交感神経が優位に働きます。交感神経が優位な場合、身体は緊張状態になるため、血流が悪くなったり、良質な睡眠を取れなくなったりします。
また、ストレスにより自律神経が乱れると、ホルモンバランスも崩れ、髪の毛の成長に欠かせないエストロゲンの分泌量も減少します。
遺伝的な要素もFAGAの原因の一つとして考えられています。FAGAと遺伝的要素との関係は研究段階ですが、母から娘へ遺伝するケースもみられるようです。
病気や薬剤も、FAGAを引き起こす原因です。膠原病や鉄欠乏性貧血、甲状腺機能低下症など、女性がかかりやすい病気で抜け毛や薄毛が生じる場合があります。突然、大量の髪の毛が抜けたときは注意が必要でしょう。
また、抗がん剤やピルなどの薬剤によっても髪の毛が抜けることがあります。特に抗がん剤は、髪の毛の成長にダメージを与えるため、大量の抜け毛を招きます。
間違ったヘアケアによっても、FAGAは引き起こされます。肌に合わないシャンプーや育毛剤を使うと、頭皮に負担がかかりFAGAの進行を早めてしまう可能性があります。
また、頭皮を清潔に保ちたいからと、1日に何度もシャンプーをするのは逆効果です。シャンプーを使って洗うのは1日に1回にとどめ、すすぎ残しがないようきれいに洗い流しましょう。
ここでは、女性のFAGAへの対処法を解説します。主な対処法は、以下の3つです。
それぞれの対処法を解説します。
クリニックでFAGAを治療する場合、外用薬や内服薬を用います。薄毛の症状や進行度によって、処方される治療薬はさまざまです。外用薬と内服薬の両方を用いて治療する場合もあります。
ここでは、外用薬や内服薬を使った治療について確認しましょう。
外用薬を使ったFAGAの治療では、ミノキシジルが用いられます。外用薬のミノキシジルは頭皮に直接塗布して使用するため、全身性の副作用が出る可能性は低いとされています。
FAGAの内服薬として用いられる薬には、パントガールやミノキシジルがあります。髪の毛に必要な栄養素が豊富に含まれており、頭皮環境を整えて薄毛を改善する効果が期待できます。
パントガールは副作用の少ない薬ですが、妊娠中や授乳中の場合は医師に相談しましょう。
ミノキシジルの内服薬は、有効性は高いとされていますが、初期脱毛や多毛症といった副作用が生じる場合があります。多毛症とは体毛が増えてしまう症状のことで、ミノキシジルの服用を中止すると改善します。
FAGAの対処法として、オンライン診療の利用もおすすめです。薄毛や脱毛などデリケートな悩みを自宅にいながら医師に相談でき、自分の体質や症状などに合わせて治療を行えます。
基本的に初診からオンライン診療の利用が可能です。また、FAGAの治療薬は自宅に配達されるため、仕事で忙しい方も無理なく治療を続けられるでしょう。
FAGAを改善する方法として、セルフケアもおすすめです。「規則正しい生活を送る」「栄養バランスの取れた食事をとる」「良質な睡眠を取る」など、日常的なケアを心がけましょう。また、適宜ストレスを発散し、溜め込まないことも大切です。入浴中や睡眠前に頭皮マッサージを行うこともおすすめします。
FAGA以外の女性の脱毛症には、次の4つがあります。
女性に起こりうるそれぞれの脱毛症について解説します。
円形脱毛症は、髪の毛が円形または楕円形に抜けてしまう脱毛症です。頭髪だけでなく全身の毛が抜けてしまう場合もあります。髪全体が徐々に薄くなっていくFAGAに対して、円形脱毛症は局所的に短期間で症状があらわれます。
円形脱毛症は、自己免疫疾患やストレス、アレルギー疾患などが引き金となって生じるとされています。年齢や性別にかかわらず、誰にでも起こりうる疾患です。ほかの自己免疫疾患と併発するケースもあります。
脂漏性脱毛症は、皮脂の過剰分泌が原因です。皮脂が頭皮に詰まることで炎症を起こし、脱毛症を発症することがあります。生活習慣の乱れやストレス、間違ったヘアケアなどによって、頭皮環境が悪化することが原因です。
脂漏性脱毛症は、早い段階で正しい頭皮ケアを行うことにより改善を見込める場合がありますが、症状がひどいときは皮膚科で受診するのがおすすめです。
粃糠性脱毛症とは、大量のフケが毛穴につまることで起こる脱毛症です。誰でもフケは出ますが、粃糠性脱毛症になると、頭皮を覆うほどのフケが出ます。大量のフケが毛穴を塞ぎ、頭皮に炎症が起こることで髪の毛が抜け落ちます。
大量のフケの原因は、皮膚アレルギーやホルモンバランスの乱れ、生活習慣の乱れ、間違ったヘアケアなどが考えられるでしょう。受診した際はフケが生じている原因を医師が判断し、治療を行います。
分娩後脱毛症は、出産後に抜け毛が増えてしまう脱毛症です。妊娠すると、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌が増えますが、出産後は通常の分泌量に戻ります。この急激な変化が、分娩後脱毛症の原因と考えられています。
出産後の心身の状況や生活環境の大きな変化によって生じるストレスも、分娩後脱毛症の原因の一つです。通常、出産後半年から1年ほどで元に戻るため、それほど心配する必要はありません。
女性のFAGAは、ホルモンバランスの変化やストレスなどによりヘアサイクルが乱れることで引き起こされます。髪全体のボリュームがなくなるFAGAでは、男性の脱毛症のように部分的にはげることはほとんどありません。
FAGAは基本的に自然治癒しないため、早めに医師に相談して治療するのがおすすめです。薄毛や脱毛といったデリケートな悩みは、オンライン診療で相談するのもよいでしょう。オンライン診療であれば、自宅にいながら都合のよい時間に診療を受けられます。薬は基本的に自宅に配達されるため、忙しい方にも向いています。FAGAの治療にぜひオンライン診療を活用してみてください。
この記事の監修:
慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会認定専門医。 医師免許取得後、外資系経営コンサルティング企業のヘルスケア・IT領域にて従事。 慶應義塾大学医学部助教を経て、美容医療を主としたJSKINクリニック、及びオンライン診療サービス「レバクリ」監修。
<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS)