更新日:2025年05月26日
びまん性脱毛症は女性に多く見られる脱毛症の一種であり、頭全体の髪の毛が、徐々に薄くなるのが特徴です。女性に発症しやすいびまん性脱毛症には、加齢による女性ホルモンの減少やホルモンバランスの乱れが深く関与しています。
この記事では、びまん性脱毛症の原因や予防法、治療方法について解説します。薄毛に関する不安や悩みがある方はぜひ参考にしてください。
びまん性脱毛症は、髪の毛の密度が全体的に薄くなる脱毛症状です。「びまん」は、「広範囲に広がっている状態」を指します。びまん性脱毛症は主に女性に見られますが、男性も発症する可能性があります。
具体的には、髪全体のボリュームが減少したり、分け目が薄くなったり、地肌が透けて見えるようになったりする症状です。部分的な脱毛ではなく、頭髪全体が徐々に薄くなっていきます。
女性の脱毛症の中でも発症しやすく、人によっては20代で発症するケースもあります。気づいたときには薄毛がかなり進行していることもあるため、「分け目が薄くなった」と感じたら要注意です。
女性のびまん性脱毛症の原因は多岐にわたりますが、主に以下の3つの要因が挙げられます。
これらの要因がどのように髪の健康に影響を与えるのか見ていきましょう。
加齢により女性ホルモンの分泌量が減少すると、髪の成長に影響を及ぼします。特に「エストロゲン」という女性ホルモンは、健康な髪を育む役割があり、エストロゲンが減少すると髪のボリュームも低下し、びまん性脱毛症を発症しやすくなります。40代から50代にかけて分泌量が急激に減少するため、この年代での発症が多い傾向があります。
女性ホルモンのバランスの乱れは、びまん性脱毛症の原因の一つです。加齢だけでなく、過度なダイエットやストレス、貧血などもホルモン分泌に影響を与えます。
ホルモンバランスを整えるためには、規則正しい生活リズムを心がけ、栄養バランスのとれた食事をとることやストレス管理が重要です。
頭皮は髪の生育基盤として重要な役割を果たしています。しかし、日常的なヘアケアやカラーリングなどが知らず知らずのうちに頭皮にダメージを与え、びまん性脱毛症の原因となることがあります。
過剰なヘアケア、たとえば1日に複数回のシャンプーや、強力な洗浄力のシャンプーの使用は、頭皮に負担をかけるため注意が必要です。また、洗髪後の自然乾燥や頻繁なカラーリング、パーマの施術も頭皮環境を悪化させる原因となるでしょう。
これらの行為は頭皮にかゆみやフケを引き起こすだけでなく、健康な髪の成長を阻害し、びまん性脱毛症のリスクを高めます。
びまん性脱毛症が女性に多い理由は、女性ホルモンの影響を強く受けるためです。女性は妊娠や出産、月経などによるホルモンバランスの変動が大きいため、びまん性脱毛症を発症しやすくなります。
一方、男性の脱毛症(AGA)は主に男性ホルモンの「ジヒドテストステロン(DHT)」が原因であり、生え際や頭頂部から抜け毛が進行することが多いとされています。
このように、びまん性脱毛症は女性ホルモンと密接な関係があるため、男性よりも女性に多く発症しやすいと考えられています。
びまん性脱毛症の予防や改善には、日々の生活習慣の見直しが重要です。以下では、具体的な予防法や対策について紹介します。
びまん性脱毛症の予防には、生活習慣の改善が重要です。成長ホルモンの分泌を促すため、十分な睡眠時間の確保が不可欠です。規則正しい睡眠サイクルを維持し、質の高い睡眠を心がけましょう。
また、栄養バランスのよい食事をとることも大切です。髪の健康に必要な栄養素を意識的に取り入れ、偏食を避けるよう心がけます。特にタンパク質やビタミン、ミネラルなどを十分に摂取しましょう。
びまん性脱毛症の改善には、日々のヘアケアの見直しが重要です。まず、使用しているシャンプーを自分に合った薬用シャンプーや育毛用シャンプーなどに変更しましょう。これらは頭皮や髪にダメージを与えにくいとされる製品です。
洗髪時は、お湯の温度を38度程度にし、シャンプーの洗い残しがないよう丁寧にすすぎます。また、1日に複数回シャンプーをすることや、強い洗浄力のシャンプーの使用は避けましょう。洗髪後は自然乾燥ではなくドライヤーでしっかり乾かすことが大切です。
さらに、入浴時や就寝前の頭皮マッサージも効果的です。これにより頭皮の血行が促進され、健康的な頭皮環境の維持につながります。
適度な運動は、びまん性脱毛症の予防や改善に効果的です。運動によって血流が促進されるため、頭皮への栄養供給が高まります。一方、激しい運動はストレスにつながる可能性があるため、適度な運動を長く続けることが大切です。
ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動は、特におすすめです。下半身の筋肉を刺激することで全身の血液循環を促進し、頭皮への栄養供給を高められます。忙しくて運動する時間がない場合は、エレベーターの代わりに階段を使うなど、日常生活の中で工夫して適度に体を動かしましょう。
びまん性脱毛症の治療には、さまざまな方法があります。効果的な治療を選択するためには、脱毛の原因や症状の程度、個人の体質などを考慮することが大切です。
ここでは、主な治療方法として、注入治療・内服薬・外用薬について解説します。
メソセラピーは、髪の成長を促進するために、薬剤成分を直接頭皮に注入する治療法です。この治療法では、注射器などを使って必要な成分を直接頭皮に届けられます。
注入方法には、注射器の他に針付きローラーやレーザー照射などがあり、痛みや不快感が少ない方法も選択可能です。定期的な施術で効果が期待できますが、1回あたりの費用は服薬治療に比べると高額になると考えられます。
注入治療を受ける際は、注入方法や成分、費用などについてクリニックで確認しましょう。
パントガールは、ドイツの製薬会社が開発した女性用の薄毛治療薬です。世界で初めて、女性の薄毛治療薬として効果と安全性が認められました。
主成分は「パントテン酸カルシウム」という成分で、頭皮や髪の毛を健康な状態に保つ効果が期待できます。パントガールには、健康な髪の発育に欠かせないケラチンやシスチン、ビタミンB群なども配合されています。
パントガールはサプリメントに近い薬として開発されており、重篤な副作用は報告されていません。ただし、体質や体調によっては、副作用が現れる可能性もあります。服用前に副作用について確認し、副作用が出た際は医師に相談して指示に従いましょう。
ミノキシジルは、脱毛症治療に用いられる液状の塗り薬です。もともとは血圧降下剤として開発されましたが、体毛が濃くなる副作用が確認されたため、再開発されて薄毛改善の治療薬として広く使用されています。
女性の薄毛治療にもミノキシジルは効果が期待できます。ただし、女性の場合は濃度を低くするなどの調整が必要であり、妊娠・授乳中の使用は避けましょう。また、ミノキシジルが配合された市販薬もありますが、脱毛症の種類によっては効果が期待できないため、原因がわからないときは医師の診断を受けることが大切です。
近年では、ミノキシジルの処方にオンライン診療を利用することが可能になりました。これにより、クリニックに直接足を運ばず医師の診察を受けられ、治療方法や薬に関する相談も行えます。
オンライン診療は通販とは異なり、医師の診察・処方が行われるため、安全性が保証された薬を使用できる点が大きなメリットです。また、医師に相談して治療を進められることも、患者にとって心強いといえるでしょう。
びまん性脱毛症は、女性に多く見られる頭髪全体のボリューム減少を特徴とする症状です。主な原因は女性ホルモンの減少やホルモンバランスの乱れ、頭皮のダメージなどが考えられます。
びまん性脱毛症の予防には生活習慣の改善やヘアケアの見直しが効果的です。治療法としては、メソセラピーやパントガールの内服、ミノキシジル外用薬の使用などがあります。早期発見と適切な対策で、健康的な髪を維持しましょう。
この記事の監修:
慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会認定専門医。 医師免許取得後、外資系経営コンサルティング企業のヘルスケア・IT領域にて従事。 慶應義塾大学医学部助教を経て、美容医療を主としたJSKINクリニック、及びオンライン診療サービス「レバクリ」監修。
<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS)