更新日:2025年05月26日
「亜鉛が薄毛によいと耳にしたけれど本当だろうか」と、疑問を抱いている方もいるのではないでしょうか。薄毛で悩んでいる場合、髪のケアだけではなく、亜鉛の効果について知っておくことも大切です。
本記事では、亜鉛が髪の毛に与える効果や亜鉛不足がもたらす体への影響について解説します。また、髪の毛のトラブルを抱えている方が亜鉛を摂取するときに知っておきたい、適切な亜鉛の摂取方法と注意点もお伝えします。
亜鉛は、髪の健康維持や薄毛対策に効果が期待される栄養素の一つです。はじめに、亜鉛が髪に与える効果について解説します。
亜鉛は、髪の主要成分であるケラチンの合成に不可欠な栄養素です。髪の90%以上はタンパク質でできており、タンパク質はアミノ酸から構成されています。とくに、ケラチンはシスチンを中心とした18種類のアミノ酸から作られており、シスチンは食事でのみ摂取可能な必須アミノ酸であるメチオニンから合成されます。
アミノ酸を十分に摂取していても、それだけではケラチンを作り出せません。ケラチンを生成して健康な髪を生み出すには、亜鉛の助けが必要です。亜鉛を適度に摂取することで、髪の強度や弾力性が保たれ、ダメージを受けにくくなります。
ヘアサイクルとは、「成長期」「退行期」「休止期」の一連の過程のことです。ヘアサイクルが乱れると、髪が十分に成長しないまま抜け落ちるため、薄毛の原因となります。
亜鉛を適切に摂取することで、ヘアサイクルが整いやすくなります。とくに亜鉛は、毛母細胞の分裂に深く関与しており、新しい髪の毛が生えてくるのをサポートし、髪の毛全体の毛量を一定に保つのに役立ちます。
AGA(男性型脱毛症)は、男性ホルモンが関わる進行性の脱毛症です。AGAの主な原因として、男性ホルモンの一種であるテストステロンが、5αリダクターゼという酵素によってジヒドロテストステロン(DHT)に変換されることが挙げられます。このDHTが毛根にダメージを与え、髪の成長を妨げることで、薄毛が進行する仕組みです。
亜鉛には、5αリダクターゼの働きを抑制する作用があります。亜鉛を適切に摂取することで、AGAの予防や進行抑制の一助となることが期待できるでしょう。
亜鉛は薄毛対策だけではなく、体の健康維持にも関与します。亜鉛が不足すると、体に対してどのような影響があるのか見ていきましょう。
亜鉛は、皮膚・肝臓・膵臓・前立腺などのさまざまな臓器に存在するミネラルで、非常に多くの酵素の構成要素です。
成人の体内には、約2gの亜鉛が存在するといわれています。アミノ酸からタンパク質を再合成する過程や、DNAの合成に必要とされており、とくに胎児や乳児の発育・健康維持に欠かせません。そのほか、細胞にダメージを与える活性酸素を除去する酵素や味蕾細胞(味覚を感じる細胞)、免疫細胞の働きにも関与します。
ヒトの体内で合成されない亜鉛は、食事から摂取する必要があります。一般的な食事をしていれば基本的に不足することはないものの、過度な食事制限や偏った食事を続けていると亜鉛不足に陥る可能性があります。
さらに、日ごろから飲酒の習慣がある方は注意が必要です。体内のアルコールを代謝する酵素には亜鉛が含まれており、定期的にアルコールを摂取したり、大量に飲酒したりすると体内の亜鉛が消費されてしまいます。また、アルコールは亜鉛の尿中排泄を促進するともいわれており、その結果として亜鉛不足になる可能性もあります。
亜鉛は、多くの臓器の健康維持に関わるミネラルです。体内で不足すると、免疫力が低下して風邪をひきやすくなったり、感染症にかかりやすくなったりするリスクが高まります。さらに、味覚を司る味蕾細胞が生成されずに味覚障害が起きたり、爪・皮膚のトラブルが起きたりするリスクもあるでしょう。男性の場合、精子の運動率や精子数など生殖機能にも悪影響を及ぼすとされており、ときにはEDを引き起こす場合もあります。
ヒトの体内で合成されない亜鉛は、1日あたりの推奨摂取量が定められています。亜鉛不足が気になる場合には、亜鉛を豊富に含む食品を積極的に摂るとよいでしょう。
ここからは、亜鉛の理想的な摂取量や亜鉛を豊富に含む食品を解説します。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、亜鉛の理想的な1日あたりの摂取量は、男性の場合18〜74歳なら11mg、75歳以上なら10mgとされています。18歳以上の女性の場合は8mgが推奨されます。なお、妊婦や授乳婦の場合には血液中の亜鉛が不足しやすいため、さらに多くの亜鉛が必要です。
また、同基準において亜鉛の耐容上限量も定められており、18〜29歳の男性は40mg、30〜64歳は45mg、65歳以上は40mgとされています。女性の場合には、18〜74歳で35mg、75歳以上は30mgまでの摂取に留める必要があることに注意しましょう。
参考:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
亜鉛を豊富に含む食品として、以下のものが挙げられます。
クエン酸やビタミンC、動物性タンパク質と一緒に摂ると、亜鉛の吸収率を高められるとされています。ビタミンCが豊富な食品として挙げられるのは、パプリカやキャベツ、ブロッコリーなどです。
一方、亜鉛の吸収率を悪くする食品には注意しましょう。加工食品に含まれるポリリン酸のほか、食物繊維やフェチン酸を多く含む食品を摂取すると、亜鉛が十分に吸収されない可能性があります。
亜鉛を摂取するときにはサプリメントや医薬品による過剰摂取に気を付けるとともに、生活習慣を見直すことが大切です。
亜鉛を摂取する際の注意点を2つお伝えします。
薄毛に対して効果が期待できる亜鉛ですが、過剰に摂取すると体調を崩してしまう可能性があります。過剰摂取によって現れる代表的な症状は、以下のとおりです。
亜鉛は通常の食事では、過剰摂取につながることは少ないでしょう。ただし、亜鉛を豊富に含むサプリメントや医薬品を継続的に服用している場合には注意が必要です。National Library of Medicineの「亜鉛サプリメントの使用と前立腺がんのリスク」の研究によると、1日100mgを超える亜鉛摂取を続けていると、進行性前立腺がんにかかるリスクが2.29倍に上昇するという報告もあるため、サプリメントの長期的な使用は控えたほうがよいでしょう。
参考:National Library of Medicine「亜鉛サプリメントの使用と前立腺がんのリスク」
薄毛など髪のトラブルに対処する場合、亜鉛を積極的に摂取するとともに、生活習慣の見直しを図ることが大切です。
睡眠不足は自律神経やホルモンバランスが乱れる原因となり、内臓の働きや血流が悪化します。そうなると、頭皮に十分な栄養や酸素が行き届かず、髪の成長に悪影響を及ぼしかねません。また、睡眠中には髪の毛の成長に必要な成長ホルモンが分泌されるため、毎日決まった時間に就寝し十分な睡眠時間を確保するよう心がけましょう。
そのほか、タバコや飲酒もAGAにつながる可能性があります。生活習慣を見直し、頭皮環境や髪の毛に悪影響を与えるタバコや飲酒はできる限り控えるようにしましょう。
また、薄毛が気になり治療したい場合は、クリニックへ相談するのもおすすめです。オンライン診療を利用すれば、忙しい方や直接クリニックに行くことに抵抗がある方も自宅で気軽に相談できます。髪のトラブルに悩んでいる方は、オンライン診療の利用を検討してみてください。
亜鉛は、髪の健康維持に欠かせない栄養素です。髪の主成分であるケラチンの合成を助けたり、ヘアサイクルを整えたりする働きがあります。AGA(男性型脱毛症)の進行を抑制する効果も期待できるため、髪の毛のトラブルが気になる場合には積極的に摂りたい栄養素の一つです。
亜鉛は体内で合成されないため食事から摂取する必要があります。亜鉛を豊富に含む食品は、牡蠣や豚レバー、赤身の牛肉などです。亜鉛の吸収率を高めるため、クエン酸やビタミンCとともに摂取することが推奨されます。ただし、サプリメントなどで亜鉛を過剰摂取すると、体調不良につながる恐れがあるため注意が必要です。
髪のトラブルに悩んでいる場合には、専門クリニックに相談するのもおすすめです。忙しい方や直接クリニックに行くことに抵抗がある方は、オンライン診療を活用すれば、自宅で気軽に薄毛の相談ができます。
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この記事の監修:
慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会認定専門医。 医師免許取得後、外資系経営コンサルティング企業のヘルスケア・IT領域にて従事。 慶應義塾大学医学部助教を経て、美容医療を主としたJSKINクリニック、及びオンライン診療サービス「レバクリ」監修。
<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS)