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更新日:2024年02月15日

円形脱毛症の治療方法とは?原因やセルフケアについて解説

この記事のまとめ
  • 円形脱毛症は自己免疫性疾患の一種で、ストレスや遺伝などが要因となって発症する
  • 推奨されている治療方法は、ステロイド局所療法や局所免疫療法など
  • 推奨されていない治療方法は、シクロスポリンA内服療法や抗不安薬などの内服療法、鍼灸治療など
  • セルフケア方法としては、食生活の改善、十分な睡眠の確保、ストレスを貯めないことなどが有効

ストレスが多い現代社会において、円形脱毛症で悩んでいる方も多いのではないでしょうか。円形脱毛症を回復させるには、医療機関による治療を受けることが大切です。

今回は、円形脱毛症の治療方法について、円形脱毛症ガイドラインで推奨されているものを解説していきます。また、推奨されない治療方法やご自身でできるセルフケアの方法についても紹介するのでぜひ参考にしてください。

円形脱毛症とは

円形脱毛症(Alopecia Areata)とは、その名のとおり頭髪の一部が円形や楕円形に脱毛してしまう疾患です。一般的には10円ハゲなどとも呼ばれ、過度なストレスがかかると発症する、などという話を聞いたことがある人もいらっしゃるのではないでしょうか。

しかし、近年になって円形脱毛症とは自己免疫性疾患の一種であり、必ずしもストレスが直接的な原因ではないということが分かってきました。 自己免疫性疾患とは、自身の免疫にかかわる抗体が、自身の細胞を異物だと誤った認識をしてしまい自身の細胞を攻撃してしまう疾患のことです。自己免疫性疾患の一種としては、円形脱毛症のほかに、関節リウマチや全身性エリテマトーデス(SLE)などが知られています。

これらの自己免疫疾患は、遺伝による影響や、疲労などの肉体的要因、ストレスなどの精神的要因が引き金になり発症することが多くあります。ただ、発症にかかわる要因が多く、根本的な原因が明らかにならないことも多いのも特徴です。

また、円形脱毛症はアトピー性疾患との合併率が高く、特定の遺伝子異常を持つ人は円形脱毛症を発症しやすいことが分かっています。

円形脱毛症の治療方法

円形脱毛症診療ガイドラインでは、治療方法の推奨度を下記のように定めています。

  • A:行うよう強く勧める(少なくとも1つの有効性を示す良質のエビデンスがある)
  • B:行うよう勧める(少なくとも1つ以上の有効性を示す、質の劣る、もしくは良質のエビデンスがある)
  • C1:行ってもよい(質の劣る、もしくは良質なエビデンスがある)
  • C2:行わないほうがよい(有効のエビデンスがない、あるいは無効であるエビデンスがある)
  • D:行うべきではない(無効あるいは有害であることを示す良質のエビデンスがある)

円形脱毛症の治療には推奨度Aのものはないため、ここでは、ガイドライン上で推奨度Bとされている治療方法を解説します。また、ガイドラインには記載されていない、最新のJAK阻害薬による治療についても紹介していきます。

参考:公益社団法人 日本皮膚科学会「円形脱毛症診療ガイドライン 2017 年版

ステロイド局所注射療法

ステロイド局所注射療法は、病状が固定した成人のS1(脱毛巣が頭部全体の 25%未満)以下の単発型 および多発型円形脱毛症の第一に選択する治療方法とされています。円形脱毛症が発症している箇所に、ステロイドを直接注射することで行います。

副作用として注射部位の疼痛や委縮、血管拡張が報告されており、治療には十分な注意が必要です。また、症状が広範囲の場合はかなり多くの注射回数と注射量を必要とするため、その場合はほかの治療方法が選択される場合もあります。

局所免疫療法

局所免疫療法はS2(脱毛巣が頭部全体の25〜49%) 以上の多発型、全頭型や汎発型の症例において第一選択肢とされる治療方法です。治療薬としてはスクワレン酸ジブチルやジフェニルシクロプロペノンなどの成分が使用され、症状が出ている箇所にそれらの薬を塗ることで円形脱毛症の治療を行います。

局所免疫療法は、ステロイド外用療法との併用は行わず、発毛が認められても3〜4週間に1度、外用薬の塗布を継続します。また、治療薬による皮膚炎や蕁麻疹などが出た場合は局所免疫療法を中止し、抗ヒスタミン薬やステロイドの軟膏で治療を行います。

ステロイド外用療法

単発型から融合傾向のない多発型の円形脱毛症に対しては、1日1〜2回のステロイド外用療法を行います。ステロイドは強さによって5つのランクに分かれており、weak、medium、strong、very strong、strongestがあります。円形脱毛症で使用されるのは、strong以上の効果の強いステロイドです。

ステロイド外用療法では、脱毛が生じている箇所へはもちろん、今後脱毛が生じる可能性のある箇所や痒みや違和感などの脱毛前駆症状がある箇所への使用も可能です。

ただし、副作用として毛嚢炎や、長期使用による皮膚の萎縮や血管拡張などが報告されているため、長期間使用することは推奨されません。

かつらの使用

意外に感じられる方も多いかと思いますが、かつらの使用はガイドライン上で「多発型・全頭型・汎発型円形脱毛症に対して使用するよう勧める」とされており、立派な治療方法です。

紫外線や頭皮への刺激の軽減などの観点からも推奨されますし、円形脱毛症ガイドラインでは円形脱毛症患者におけるQOLの改善についての研究結果も報告されており、円形脱毛症の治療に有効な手段の1つです。

JAK阻害薬による治療

JAK(ヤヌスキナーゼ)とは、炎症や免疫機能に関する反応が起こる際に必要な酵素の一種です。JAK阻害薬はJAKを阻害することで、自身の細胞を自己抗体が攻撃してしまうことを防ぎ、円形脱毛症の治療を行います。

ただし、JAK阻害薬は2022年6月より保険適用された比較的新しい薬で、15歳以上で頭部全体の50%以上の毛髪が脱毛し、6か月以上発毛が診られない重症円形脱毛症の患者が治療の対象となります。 また、副作用として上気道感染や頭痛などが生じる可能性があります。

円形脱毛症の治療方法については、「円形脱毛症は病院に行くべき?円形脱毛症の病院の選び方、治療法を解説!」でも詳しく解説しています。

円形脱毛症の治療に推奨されていない治療方法

ここでは、円形脱毛症ガイドラインで推奨度C2(行わない方が良い)となっている治療方法について紹介していきます。 C2に該当する治療方法は多いため、ここでは代表的な下記の治療方法を取り上げます。

  • シクロスポリンA内服療法
  • 抗不安薬などの内服療法
  • 漢方療法の単体使用
  • 鍼灸治療
  • アロマテラピー
  • 心理療法

それぞれ解説します。

シクロスポリンA内服療法

シクロスポリンAとは免疫抑制薬の1種で、前述したJAK阻害薬とは違い身体の免疫に関わっているリンパ球に特異的に作用し、免疫を抑制します。円形脱毛症患者に対する内服において脱毛症状を改善する効果が報告されていますが、シクロスポリンAの使用中止による再発や、腎障害・高血圧などの副作用が起こる頻度が高いため、推奨されていません。

また、シクロスポリンAの内服中でも円形脱毛症を発症した報告もあるため、治療効果と評価が一定ではなく、2023年7月現在では別の治療方法を優先的に行うこととされています。

参考:National Library of Medicine「Alopecia areata presenting in 2 kidney-pancreas transplant recipients taking cyclosporine

抗不安薬などの内服療法

円形脱毛症患者に対する抗不安薬などの内服療法は、研究結果も少なく2023年7月現在では十分な治療効果の実証がされていないため、推奨されていません。

円形脱毛症の発症にはストレスなどの精神的要因も多くかかわるため、抗不安薬や向精神薬などによる治療効果が望める可能性はあります。今後の治療・研究実績次第では抗不安薬の治療効果が確立される可能性もありますが、今は研究結果の蓄積を待つのが望ましいでしょう。

漢方薬療法の単体使用

漢方薬単体による円形脱毛症の治療は、2023年7月現在では治療効果を示す研究結果はないため推奨されていません。また、漢方薬は作用発現に個人差が大きく、適切な漢方薬を選ぶのにも知識が必要なため、推奨度は低いとされています。

ただし、これは円形脱毛症患者に対して単体で漢方薬を使用する場合の話です。別の治療方法との併用療法で漢方薬を使用することはあり、漢方薬の使用自体が推奨されていないわけではありません。たとえば、円形脱毛症の原因が疲労やストレスと考えられる場合に、補助の目的で使用する場合もあります。

鍼灸治療

円形脱毛症に対し、鍼灸治療による治療は推奨されていません。

鍼灸治療は、施術者の経験・知識や患者の体質、発症原因により、治療効果の差が大きいもの。そのため、研究結果の蓄積が不十分であり、2023年7月現在では治療効果の評価が行えていません。今後の治療・研究実績の蓄積を待つのが望ましいでしょう。

アロマテラピー

アロマテラピーによる円形脱毛症の治療は推奨されていません。

円形脱毛症の原因としてストレスなどの精神的要因が関わっており、アロマテラピーはエッセンシャル(精油)を用いてリラックス効果を得るなどして、症状の改善が期待できる可能性があります。

しかし、2023年7月現在ではエッセンシャルオイルを使用したアロマテラピーで発毛の促進効果がみられたとされる研究報告は1件のみで、十分な治療効果の研究がされていないため今後の研究結果の蓄積を待つのが望ましいでしょう。

参考:National Library of Medicine「Randomized trial of aromatherapy. Successful treatment for alopecia areata

心理療法

心理療法による円形脱毛症の治療は推奨されていません。円形脱毛症の発症にストレスなどの精神的要因がかかわることは分かっていますが、詳しい関係性などの研究はまだ不十分です。

また、心理療法も施術者によって治療方法が異なり、患者ごとの治療効果が一定ではないため2023年7月現在では有効性に関する検証が十分に実施されていません。 そのため、今後の研究結果の蓄積を待つのが望ましいでしょう。

円形脱毛症の治療に役立つセルフケア

ここでは、円形脱毛症の治療に役立つセルフケアについて紹介していきます。

円形脱毛症は、疲労などの肉体的要因とストレスなどの精神的要因によって、発症したり症状が悪化したりします。そのため、食生活の改善や十分な睡眠をとること、ストレスを貯めないことなどの実践によって、心身を整えることで、回復を早められる可能性があります。

食生活を改善する

髪も身体の一部であり、日々の食事によって摂取された栄養から構成されています。そのため、食生活の改善は円形脱毛症の治療に役立ちます。

髪はタンパク質やビタミン、ミネラルなどによって作られているため、それらの栄養を摂取できるようバランス良く食事を摂ることが非常に重要です。特に、身体のエネルギー産生にかかわるビタミンB1・B2・B6などは疲労回復を助けます。また、亜鉛・鉄分・カルシウムなどの髪の成長に必要なミネラルも、積極的に摂取するのが良いでしょう。

十分な睡眠をとる

十分な睡眠をとることは、疲労回復やストレス軽減へ繋がり、円形脱毛症の改善に役立ちます。

実際に、ストレスがたまると身体は睡眠時間の延長や質の向上を求めるということが分かっていますし、睡眠時間が少ないとストレスを感じやすくなるという悪循環が発生します。 また、髪の成長に関わる成長ホルモンは寝ている間に分泌されます。寝ている間に身体の組織の修復や疲労の回復も行われるため、十分な睡眠時間と質の確保は円形脱毛症の治療に非常に重要です。

適切な睡眠時間は個人差が大きく、睡眠時間がどれくらいが良いか、というのは明言できません。1つの目安として、目が覚めたときに眠気が残っていない程度の睡眠であれば、十分な睡眠がとれたと判断するのが良いでしょう。

ストレスを貯めない

ストレスが溜まると、交感神経が優位の状態になります。交感神経が優位になる状態が続くと、身体や脳が興奮している状態が維持され、疲れやすくなったり睡眠の質が悪くなったりします。

また、慢性的なストレスで自己免疫性疾患が悪化することが分かっており、円形脱毛症の治療においてもストレスを貯めないことは非常に重要とされています。

お風呂にゆっくり浸かったり、趣味の時間を作ったりするなど、ストレスを発散する時間を定期的に作ると良いでしょう。

円形脱毛症のセルフケアについては、「円形脱毛症を早く治す方法は?初期症状や病型から治療法やセルフケアを解説」でも詳しく解説しています。

まとめ

今回は円形脱毛症の治療方法について、円形脱毛症ガイドラインで推奨されている治療方法や推奨されていない治療方法、セルフケアの方法についてなど紹介してきました。円形脱毛症の治療方法はまだ研究段階の物が多く、JAK阻害薬のような新しい治療方法が発見されるなど、より治療効果の高い方法が発見される可能性が非常に高いです。現在治療を行っている人は、医師から提案された治療方法を行いながら、セルフケアを実施するのが良いでしょう。

また、脱毛の症状が円形脱毛症のものではない場合は、AGAの可能性があります。 年齢とともに前頭部や頭頂部の髪の毛が薄くなっている、細くなっているといった症状であれば、円形脱毛症ではなくAGAかもしれません。

レバクリでは、AGA治療のオンライン診療サービスを提供しています。診察は無料なので、ぜひお気軽にご予約ください。

この記事の監修:

牧野 潤医師

慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会専門医。 医師免許取得後、株式会社ボストンコンサルティンググループにてヘルスケア・IT領域にて従事。 現在は慶應義塾大学医学部助教、美容医療を主としたJSKINクリニックを経営・監修、オンライン診療サービス「レバクリ」監修。

<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS) 日本乳癌学会