更新日:2026年03月18日
部分的に禿げている箇所が複数あることに気づいて、不安になっている方もいるかもしれません。頭に複数の丸い禿げ部分がある場合は、多発型円形脱毛症の可能性があります。多発型円形脱毛症は、頭部に円形脱毛が2箇所以上現れる状態で、単発型に比べて自然治癒しにくいのが特徴です。
本記事では、多発型円形脱毛症の特徴や原因、効果的な治療法を解説します。髪の健康を維持するためのセルフケア方法も紹介するので、ぜひご一読ください。
円形脱毛症は単発型・多発型・全頭型・汎発型・蛇行型といった臨床型に分類されます。ただし、これは便宜的な分類であり、症状は連続して変化することがあるでしょう。多発型円形脱毛症は複数の脱毛斑(円形に毛が抜けた部分)が現れるのが特徴です。ここでは、多発型円形脱毛症の特徴と多発融合型との違いを解説します。
多発型円形脱毛症は、頭部に円形や楕円形の脱毛斑が2箇所以上現れる状態を指します。単発型の脱毛症とは異なり、複数部位で免疫反応が同時に起こるため、症状が拡大・縮小を繰り返すことがあるのが特徴です。

多発型脱毛症は、脱毛斑が拡大や縮小を繰り返しながら、慢性的に再発を繰り返します。経過が長期にわたるほど、完治までに相応の時間を要することになるため、早い段階で治療を開始することが重要です。
多発融合型とは、複数の脱毛斑が互いにつながり、多発型円形脱毛症より広範囲に広がった状態のことです。通常の多発型円形脱毛症は脱毛班が独立していますが、症状が進行すると隣接する脱毛斑が拡大して境界が不明瞭になり、大きな不整形の脱毛領域となります。
多発融合型は症状がさらに進行すると、全頭型や汎発型といったより重症なタイプへと移行するリスクも高まるため、注意が必要です。多発融合型は、早期に脱毛班の変化を察知し、融合が始まる前に適切な処置を講じることが、回復速度を左右します。
多発型円形脱毛症の発症には、自己免疫疾患や遺伝、アトピー素因といった要因が関わっています。ここでは、多発型円形脱毛症の主な原因3つをまとめました。
多発型円形脱毛症の原因の一つとして、自分自身の体を守るための免疫機能が誤って自分の細胞を攻撃してしまう自己免疫疾患が挙げられます。本来、体内に侵入した異物を排除する役割を担うTリンパ球が毛包(特に毛包下部)周囲に集積し、自己免疫反応が起こることで毛包の成長が阻害されます。Tリンパ球の攻撃によって毛根がダメージを受け、髪が抜け落ちてしまうことで脱毛斑が形成されるのが円形脱毛症の特徴です。

自己免疫による反応が頭部の広範囲で引き起こされたり、複数の箇所で同時に発生したりすることで、単発型から多発型へと症状が進行していきます。Tリンパ球の攻撃が始まると毛根の活動が阻害されるため、新しい髪が生えにくくなり、症状が長期化する要因となるでしょう。
多発型円形脱毛症の発症には、体質的な要因として遺伝が関わっていると考えられています。家族の中に円形脱毛症を経験した人がいる場合、体質を受け継ぐ可能性はあるでしょう。
円形脱毛症には遺伝的素因が関与するとされ、自己免疫反応の起こりやすさやアレルギー体質など複数の遺伝的要因が影響すると考えられています。ただし、親が円形脱毛症を経験しているからといって、子どもが必ずしも同じ症状を発症するわけではありません。遺伝は、あくまで発症しやすい体質という一つの要素に過ぎないでしょう。
アトピー性皮膚炎やアレルギー疾患と円形脱毛症の因果関係は、完全に解明されているわけではありません。しかし、円形脱毛症患者ではアトピー性皮膚炎やアレルギー疾患の合併が一般人口より多いと報告されています。アレルギーを起こしやすい体質は、円形脱毛症の発症や経過に影響を及ぼしている可能性が高いといえるでしょう。
アトピー素因を持つ方は、もともと外部の刺激に対して免疫機能が過敏に反応しやすい傾向にあります。円形脱毛症も免疫の誤作動によって引き起こされるため、アトピー素因を持つ方は、免疫反応が過敏に傾く傾向があり、そのことが円形脱毛症の発症や経過に影響している可能性があるでしょう。
円形脱毛症において、ストレスそのものが唯一の原因ではありませんが、円形脱毛症の発症や悪化に関与すると考えられています。ただし、強い精神的ストレスが円形脱毛症の症状を誘発したり、悪化させたりする可能性はあるでしょう。
ストレスは過度に恐れず、心身の負担を減らすことに注力して、免疫系が正常に働く環境を整えるという考え方が大切です。病気を引き起こす要因はストレスだけではないため、専門的な治療と並行しながら、リラックスできる時間を意識的に持ちましょう。

この記事の監修:
慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会認定専門医。 医師免許取得後、外資系経営コンサルティング企業のヘルスケア・IT領域にて従事。 慶應義塾大学医学部助教を経て、美容医療を主としたJSKINクリニック、及びオンライン診療サービス「レバクリ」監修。
<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS)
自然に改善する例もありますが、多発型は単発型と比べて再発・慢性化しやすい傾向があります。症状が次々と現れる多発型円形脱毛症では、放置して自然な回復を期待するよりも、早い段階で適切な治療を行うのがおすすめです。
また、多発型円形脱毛症は一度症状が落ち着いても、再び脱毛を繰り返す再発のリスクが高い点も特徴です。症状が慢性化しやすく、自己判断で経過を見守っているうちに脱毛範囲が広がり、重症な状態へ移行してしまう可能性もあります。
多発型円形脱毛症は自然治癒を待つのではなく、医療的アプローチを取り入れることで、進行を抑えながら健やかな髪の再生を促すことが可能です。自己判断で症状を放置せず、病院の受診を検討することが、着実な改善への第一歩となるでしょう。
円形脱毛症の再発について詳しく知りたい方は、「円形脱毛症は繰り返す?再発する原因と治療方法、予防について解説」をご一読ください。
多発型円形脱毛症の進行が止まらない要因として、精神的なストレスやホルモンバランスの乱れが関与している場合があります。過度のストレスがかかり続けると、自律神経が乱れて血管が収縮し、頭部の血行が悪化します。その結果、髪の成長に必要な栄養が毛根まで十分に行き届かなくなり、脱毛の進行を早めてしまうかもしれません。
また、髪の健やかな発育にはホルモンも関係しています。円形脱毛症は自己免疫性脱毛症であり、ホルモンバランスの乱れが直接原因となるわけではありません。しかし、生活習慣の乱れが免疫機能に影響し、結果としてヘアサイクルに変化を及ぼす可能性はあるでしょう。
円形脱毛症の治療の効果を引き出すためにも、ストレスやホルモンバランスの管理など、自分自身のケアを見直していくことが、進行を食い止めるための手段となります。
多発型円形脱毛症の治療には、ステロイド局所注射や局所免疫療法、ステロイド外用療法などの幅広いアプローチがあります。ここでは、多発型円形脱毛症の治療法をまとめました。
ステロイド局所注射は、免疫機能や炎症を抑える作用を持つステロイド薬を脱毛班に直接注入する治療法です。外用薬よりも成分が毛根の深部へ直接的に作用し、毛包を攻撃しているリンパ球の働きを抑制することで、脱毛の進行を止めて発毛を促します。
ステロイド局所注射は、4~6週間に1回の投与が推奨されていますステロイド局所注射は、脱毛範囲が比較的限られている場合に有効とされていますが、多発型のように複数の箇所に症状がある場合も、それぞれの患部へアプローチすることで治療効果を発揮します。
ステロイド局所注射の副作用として、注射を打った部位の皮膚が薄くなる萎縮や毛細血管の拡張などが起こる可能性があります。
局所免疫療法は化学的な薬を用いて、円形脱毛症の脱毛班にかぶれを起こす治療法です。かぶれさせることで、毛包を攻撃していた異常なリンパ球の働きをそらし、脱毛班に集まらないように誘導します。
アトピー性皮膚炎や湿疹、じん麻疹などの持病がある方は、治療によって一時的にかゆみが強まったり、症状が悪化したりする場合があるため注意が必要です。
また、局所免疫療法は公的医療保険の適応外(自由診療)となっているため、費用面についても事前に確認しましょう。
ステロイド外用療法は、抗炎症作用を持つステロイド外用薬を円形脱毛症の脱毛班に直接塗布することで、毛包への攻撃を抑える治療法です。継続的に使用することで、炎症を鎮め、髪が正常に育つための土台を整えていく効果が期待できます。
ステロイド外用薬は皮膚の表面から作用するため、比較的安全性が高く、子どもにも使用される治療です。ただし部位や薬剤の強さ(ストレングス)により注意が必要になります。
ステロイド外用療法では、外用薬を塗った場所にニキビ様発疹や皮膚萎縮、毛細血管拡張などの局所副作用が生じることがあります。そのため、医師の指導に従って適切な量と回数を守ることが大切です。
紫外線療法は、Tリンパ球の過剰な活性を抑制し、局所の免疫反応を調整することで脱毛斑の改善を促す治療になります。紫外線療法は比較的安全性の高い治療ですが、長期的には色素沈着や軽度の紅斑を生じることがあるため、医師の指導のもとで行うことが大切です。紫外線療法の効果の現れ方には個人差がありますが、漫然と照射を継続するのではなく、治療開始後には半年から1年を目安に効果の評価を行うことが推奨されます。
多発型円形脱毛症の治療法の中には効果が不十分であったり、副作用のリスクが懸念されたりすることから、積極的には推奨されていないものも存在します。たとえば、シクロスポリンAの内服療法は、一時的に発毛効果が見られる場合もありますが、服用を中止したあとの再発率が高いのが特徴です。腎機能障害・高血圧・感染症リスク増加など、免疫抑制剤としての全身副作用が問題となるため、通常は円形脱毛症の第一選択にはなりません。
漢方薬内服療法やビタミンD外用薬、レチノイド外用薬などは発毛効果が十分に実証されていないため、推奨されていません。タクロリムス外用薬についても、ステロイド外用薬と比較して効果が劣るという報告や、期待した結果が得られないというデータがあるためおすすめできないでしょう。
頭皮環境の悪化を防ぐには、日常生活でのセルフケアも役立ちます。ここでは、髪の健康を維持するためのセルフケアを見ていきましょう。
髪の健康を維持するためには、日常生活におけるストレスを管理しましょう。精神的な負荷が強くかかり続けると自律神経の乱れから頭部の血行が滞り、健やかな髪の成長に必要な栄養が毛根まで届きにくくなってしまいます。そのため、心身をリラックスさせる習慣を持つことが髪の健康を支える土台となるでしょう。
具体的なストレス解消法としては、ウォーキングやストレッチといった軽い運動が挙げられます。体を動かすことで全身の血流が促進され、気分のリフレッシュにつながるでしょう。また、ぬるめのお湯にゆっくりと浸かる入浴は、副交感神経を優位にし、心身の緊張を解きほぐすのに有効です。趣味に没頭する時間や親しい友人との会話など、円形脱毛症への不安から意識を逸らせるような活動を取り入れることも、心の平穏を保つのに役立ちます。
髪の毛は、摂取した栄養素が血液によって毛根へと運ばれることで作られるので、日々の食事が髪の毛の材料となります。ただし、バランスの良い食事が、円形脱毛症そのものの免疫異常を直接改善するわけではない点には注意が必要です。
厚生労働省の「食事バランスガイド」で示されているように、主食・主菜・副菜を基本に、多様な食品を組み合わせて摂取することが大切です。髪の毛の主成分であるタンパク質をはじめ、その合成を助けるミネラルや頭皮の環境を整えるビタミン類を不足させないようにしましょう。
バランスの良い食事を味わうことは、心身の健康と健やかな髪の維持につながります。体の内側から髪を育む意識を持ち、多様な食材を取り入れた規則正しい食生活を維持しましょう。
頭皮環境を整えるのをサポートする食べ物を知りたい方は、「円形脱毛症の改善に役立つ食べ物とは?栄養素やセルフケアについても解説」をチェックしてみてください。
参考:厚生労働省「『食事バランスガイド』について」
健康な髪の成長を促すためには、土壌となる頭皮環境を清潔な状態に整えておくことが大切です。皮脂や汚れの蓄積は頭皮のかゆみや炎症の原因となることがあります。ただし、円形脱毛症は自己免疫性の疾患であり、毛穴の詰まりが直接の原因になるわけではありません。 あくまで頭皮環境を整える補助的ケアとして重要です。
日々のケアでは、指の腹を使って頭皮を優しく揉みほぐすように洗うのが基本です。爪を立てて強くこすってしまうと、頭皮に細かな傷がつき、細菌感染や炎症を招く恐れがあるため注意が必要です。シャンプーやリンスが頭皮に残らないよう、ぬるめのお湯で十分にすすぐことも、清潔な環境を維持するためのポイントとなります。
洗髪後は、濡れたまま放置せずにドライヤーで速やかに乾かしましょう。湿った状態が長く続くと、雑菌が繁殖しやすくなり、頭皮のトラブルにつながる可能性があります。
多発型円形脱毛症は、複数の脱毛斑が発生する自己免疫性の疾患であり、単発型と比べて治療に時間がかかるのが特徴です。自己免疫異常を中心に、遺伝的要因・アトピー素因など複数の因子が関与すると考えられています。
円形脱毛症の治療法は、ステロイド局所注射や局所免疫療法、ステロイド外用療法などがあり、症状によって適切な方法が選択されます。多発型円形脱毛症の治療には時間がかかることが多いため、焦らず医師と相談しながら継続的に取り組む姿勢が重要です。頭皮の環境が悪化するのを防ぐセルフケアとして、ストレスマネジメントやバランスの良い食事、頭皮を清潔に保つことを意識しましょう。