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更新日:2024年03月05日

円形脱毛症の多発型は完治できる?原因と治療法を詳しく解説

この記事のまとめ
  • 多発型円形脱毛症は、円形脱毛症が2つ以上ある状態のことを指す
  • 頭皮の25%以上に脱毛斑が見られる場合は重症といえる
  • 多発型円形脱毛症の原因として多いのが、自己免疫疾患である
  • 多発型円形脱毛症の自然治癒は難しい
  • 多発型円形脱毛症の治療には、ステロイド剤の局所注射や外用薬の塗布、局所免疫療法がある

多発型円形脱毛症は、脱毛斑が多く、目立ちやすい円形脱毛症です。多発型円形脱毛症がなぜ起こるのか、多発型円形脱毛症は治るのか、お悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

本記事では、円形脱毛症のなかでも多発型円形脱毛症をピックアップし、多発型円形脱毛症が起こる原因と治療法について詳しく解説します。日常生活で注意すべき点についても紹介するので参考にしてみてください。

多発型円形脱毛症とは

まずは、円形脱毛症の種類の1つである多発型円形脱毛症について詳しく解説します。

多発型円形脱毛症は、円形脱毛症が2つ以上ある状態のこと

多発型円形脱毛症は、円形脱毛症が2つ以上ある状態のことを指します。多発型円形脱毛症の特徴は、脱毛斑が拡大・縮小、再発を慢性的に繰り返すことであり、この経過は多発型にしか見られません。慢性化してしまうと、治癒までにはかなりの時間がかかるため、早期に治療を開始することが大切です。

円形脱毛症の種類 (2).png

多発型と多発融合型の違い

多発融合型の円形脱毛症は、多発型円形脱毛症が複数できたうえで、さらにその脱毛斑が融合している状態を指します。 症状が悪化すると、脱毛範囲が頭部全体の25%以上になる重症の多発融合型に移行する場合もあります。

多発型円形脱毛症の原因

ここからは、多発型円形脱毛症の原因を解説します。

自己免疫疾患

円形脱毛症の多くは自己免疫疾患が原因と考えられています。自己免疫疾患とは、本来ならば自分と異なる異物を排除するための機能が、自分自身の正常な細胞や組織に対して過剰に反応して攻撃してしまうことをいいます。

自己免疫疾患が発生する理由には、自己免疫の1つであるTリンパ球が関係していると考えられています。Tリンパ球は、異物を除去する役割があり、普段は体内に入ったウイルスなどの異物を排除する役割を持つ非常に大切な細胞です。このTリンパ球が毛根を異物と間違えて攻撃してしまうことで、円形脱毛症が発症すると考えられています。

Tリンパ球がなぜ毛根を攻撃してしまうのか、その理由についてはわかっていません。とはいえ、Tリンパ球に攻撃された毛根は破壊されてしまい、髪が抜け落ち、生えてこなくなってしまうのです。

この自己免疫疾患による円形脱毛症がさらに進行することで、多発型脱毛症となります。また多発型円形脱毛症は、ほかの自己免疫疾患と併発するケースがあるともいわれています。甲状腺疾患のある方の約8%、尋常性白斑のある方の約4%が多発型円形脱毛症を合併するとも考えられています。

遺伝

円形脱毛症の原因の1つとして、遺伝も考えられています。円形脱毛症診療ガイドラインによると、中国で行われた疫学調査で、円形脱毛症の方の約8.4%が親族にも円形脱毛症の方がいたことが報告されています。また、一卵性双生児の両方が円形脱毛症を罹患する確率は、55%と高率であるとしています。

特に発症率が高まるのが、一親等に円形脱毛症の方がいた場合だと言われています。一親等に円形脱毛症の方がいる場合、円形脱毛症の罹患率は一般の方に比べると10倍ほど高くなることが分かっています。

アトピーなどのアレルギー疾患

アトピーなどのアレルギー性疾患も、円形脱毛症の発症へ関与しています。アレルギー性疾患は、アトピー以外にもアレルギー性鼻炎、気管支炎が該当します。

円形脱毛症診療ガイドラインでは、円形脱毛症に罹患した方の約40%以上がなにかしらのアレルギー性疾患にかかっているとされています。実際に、円形脱毛症の方の50%以上が本人もしくは家族にアレルギー性疾患が見られており、深い関係性が指摘されています。

参考:公益社団法人 日本皮膚科学会「日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン 2017 年版

ストレスは円形脱毛症に直接関係しない

よく、円形脱毛症の発症はストレスが原因であると考える方も多くいます。しかし、円形脱毛症診療ガイドラインによれば、円形脱毛症の原因がストレスであるという根拠は不十分とされています。

ただし、ストレスは多発型円形脱毛症の原因となる自己免疫疾患の引き金になると考えられています。つまり、直接的に円形脱毛症へ関係はしていないものの、間接的に関係している可能性はあるでしょう。

参考:公益社団法人 日本皮膚科学会「日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン 2017 年版

多発型円形脱毛症は自然治癒が難しい

多発型円形脱毛症は、円形脱毛症の中でも自然治癒が難しいとされています。

円形脱毛症診療ガイドラインによれば、脱毛面積が頭部全体の25%未満の場合、自然治癒による回復率は68%としています。脱毛面積50%未満では回復率は32%と急激に低下し、脱毛面積がさらに広範囲になってくると回復率は8%へ下落するという報告があります。

脱毛面積が増えれば増えるほど回復率も低下するため、自然治癒を期待して経過観察をしている間に、治療をしても円形脱毛症の回復が見込めなくなるというケースもあるかもしれません。自然治癒のみを期待して何も治療をしないのではなく、クリニック等で医師に相談することをおすすめします。

参考:公益社団法人 日本皮膚科学会「日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン 2017 年版

多発型円形脱毛症の治療法

多発型円形脱毛症の治療期間は、軽症でも半年から2年程度、重症例であれば数年を要します。できるだけ早くから専門医による治療をはじめるのが良いでしょう。

ここからは、日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドラインにおいて推奨されている、専門医による多発型円形脱毛症の治療方法について解説します。

ステロイド局所注射

ステロイド局所注射とは、脱毛している部分に直接ステロイドを注射する治療方法です。4~6週間ごとに1回打ち、数ヶ月から数年かけて治療を実施します。単発型、多発型どちらの脱毛症においても効果が見出されている治療法であり、日本の円形脱毛症において最も推奨されている治療です。

副作用として、注射をした部分の皮膚の萎縮や血管拡張が報告されています。また、脱毛が広範囲にわたっている場合には複数部位に注射をしなければならず、多くの部位に注射をすることに対して苦痛を感じるケースもあります。

局所免疫療法

局所免疫療法とは、円形脱毛症ができている部位に薬剤を塗布し、あえて接触皮膚炎を起こさせて発毛を促すという治療法です。脱毛症が頭皮全体の25%以上、50%未満に及んでいる重症の円形脱毛症の治療において第一選択となります。

多発型円形脱毛症の治療は、ステロイド局所注射だと注射をする部位が多く、苦痛を与えかねないため、この治療からスタートするケースが多いです。 副作用には、接触皮膚炎・局所のリンパ節腫脹・頭痛・倦怠感・蕁麻疹・色素沈着・色素脱失などがあります。特に、アトピー性皮膚炎がある方の場合にはこの副作用が重篤化する可能性もあります。

また、甲状腺疾患を伴う円形脱毛症には効果が期待できないため、この治療法が選択されないケースが多いようです。

ステロイド外用療法

クリーム状のステロイド剤を、脱毛部分に塗布する治療法です。単発型や、融合していない多発型の円形脱毛症においては、1日1~2回のステロイド外用薬の塗布にて25%以上の毛髪再生が見られました。

副作用として、ざ瘡(にきび)や毛包炎が発生する可能性があり、注意が必要とされています。また、ステロイド外用薬は長期間使用することにより皮膚の萎縮や血管拡張、陥凹をきたす可能性があると示唆されており、長期間の使用は推奨されていません。

多発型円形脱毛症の治療法については、「円形脱毛症の治療方法とは?原因やセルフケアについて解説」でも詳しく解説しています。

多発型円形脱毛症改善のために日常生活でできること

ここでは、多発型円形脱毛症改善のために日常生活でできることについて解説します。

ストレスをためない

ストレスは円形脱毛症の直接的な原因にはなりませんが、多発型円形脱毛症を誘発する自己免疫疾患の引き金になることがあります。自分の中でストレス発散ができる方法を探し、ストレスがたまった際に実践すると良いでしょう。

バランスのよい食事を取る

バランスのよい食事を摂り、髪や頭皮が健やかに育つ環境を作ってあげることも大切です。 たとえば、脂っこい食事を多くとれば頭皮にも脂が溜まりやすくなり、頭皮環境は悪くなるため、脂を摂りすぎない方が良いでしょう。

また、発毛は入眠中の成長ホルモンに影響されるため、質の良い睡眠に影響を与えるトリプトファンを摂取するのもおすすめです。トリプトファンは、牛乳やバナナに多く含まれています。

ストレスによって自己免疫疾患を悪化させないように、脳内の興奮やストレスを抑えると考えられているGABAを取るのも良いでしょう。GABAは玄米やトマト、発酵食品に多く含まれています。

栄養には相互作用があり、他の栄養によって吸収率を高める効果が期待できます。これらの食品のみを食べるのではなく、さまざまな食品をバランスよく摂るように心がけましょう。

頭皮を清潔な状態に保つ

頭髪の清潔を保つことで、髪の成長を促進できる可能性があります。健やかな頭皮は抜け毛の抑制へもつながると考えられているため、頭皮を清潔な状態に保ちましょう。

とはいえ、頭皮を清潔にしようと過度にシャンプーをすると頭皮の環境を悪くしてしまう可能性があります。シャンプーする際は、指の腹を使い、優しく洗うようにしましょう。 使用するシャンプーは、頭皮に優しいオーガニックシャンプーやアミノ酸系のシャンプーがおすすめです。

まとめ

円形脱毛症の多発型が起こる原因には、自己免疫疾患を筆頭にアトピーなどさまざまな理由が考えられます。単発型円形脱毛症など軽度な場合には自然治癒が期待できますが、多発型を含め、脱毛斑が多い場合には、自然治癒での改善が見込めないケースが多いです。自然治癒を見込むのではなく、まずは医療機関を受診して医師へ相談し、自分にとって最適な治療を検討してみることをおすすめします。