レバクリ

更新日:2024/04/23

低用量ピル服用中のワクチン接種は大丈夫?想定されるリスクと注意点を解説

この記事のまとめ
  • 低用量ピルの服用中でも、新型コロナワクチンやインフルエンザワクチンを接種することはできる
  • 新型コロナワクチンを打っても、血栓症のリスクが高まるという統計データはない
  • 新型コロナワクチンによる血栓症は一般的な静脈血栓症ではなく、血小板の低下を伴う特殊なもの
  • ワクチン接種のために低用量ピルを中断する必要はない
  • 低用量ピル服用中のワクチン接種に不安がある場合は、かかりつけの医師に相談すること

低用量ピルを服用していると、新型コロナやインフルエンザなどの感染症予防のためのワクチン接種に不安を感じてしまうかもしれません。

この記事では、ピル服用中のワクチン接種の可否から、血栓症など副作用のリスク、流行している新型コロナに感染してしまった場合の対応などを解説します。

低用量ピルの服用中でもワクチン接種はできる

結論からいうと、低用量ピルの服用中でもワクチンの接種は可能です。

厚生労働省が発表しているワクチンの接種ができない、または注意が必要な人の条件に、低用量ピルの服用者は該当しません。特に新型コロナワクチン、インフルエンザワクチンは低用量ピルの服用中だけでなく、妊娠中・授乳中・妊娠を計画中のいずれの場合にも接種可能です。

ただし、ワクチン接種前に記入する問診票には、低用量ピルを服用していることを必ず記載するようにしましょう。また、医師による問診を受ける際にも忘れずに申告することが大切です。

参考:厚生労働省「新型コロナワクチンQ&A

ワクチン接種ができなくなる要件

低用量ピルの服用の如何にかかわらず、以下に該当する場合、各種ワクチンの接種ができないため、当てはまる事柄がある場合はかかりつけの病院で相談するようにしましょう。

  • 37.5度以上の発熱がある
  • 重い急性疾患にかかっている
  • 過去にワクチンを接種してアナフィラキシーなど重度の過敏症を起こした

上記に該当しない場合でも、ワクチン接種前の問診などで医師から接種を止められる場合があります。そのようなときは、必ず医師の指示に従って接種を見送るようにしましょう。

低用量ピルと新型コロナワクチンにおける血栓症のリスク

低用量ピルを服用している人が最も心配していることは、ワクチン接種による副作用ではないでしょうか。結論からいえば、低容量ピルを服用している人が新型コロンワクチンを接種したことで、血栓症のリスクが上がったという統計データはありません。

しかし、特に新型コロナワクチンの接種による血栓症のリスクを心配している人は多いようです。その理由として、以下の3つが考えられます。

  • 新型コロナウイルスの症状として血栓症がある
  • 低容量ピルの副作用に血栓症がある
  • 新型コロナワクチンの副作用に血栓症がある

そもそも血栓症とはどのような病気なのかを説明したうえで、それぞれの血栓症について、詳しく解説していきます。

血栓症とは

血栓症とは、血のかたまり=血栓によって血管が詰まってしまう症状を指します。血栓症は、心臓から血液を送り出す動脈に起こる動脈血栓症と、全身から心臓へ血液を戻す静脈に起こる静脈血栓症の2つに分けられます。

動脈血栓症の代表例としては、心筋梗塞や脳梗塞が、静脈血栓症の代表例ではエコノミークラス症候群などの肺塞栓症が挙げられます。正しい食生活や運動、水分補給により、血液や血管、血流を正常に保つことが、血栓の予防につながります。

新型コロナウイルスによる血栓症

新型コロナウイルスに感染すると、全身性の炎症によって血液が固まりやすくなり、年齢に関わらず血栓症を発症するリスクが高まることがわかっています。以下に該当する場合、血栓症を起こしやすくなるため注意が必要です。

  • 高血圧、糖尿病、肥満など生活習慣病の既往がある
  • 家族に血栓症を発症した人がいる
  • 長時間同じ姿勢でいることが多い

自分は血栓症の発症リスクが高いと感じている場合、風邪の諸症状を自覚した際はすみやかにかかりつけの医師に相談しましょう。病院に行くときは、感染予防のために必ず事前に連絡を入れるようにしてください。

低用量ピルの副作用による血栓症

低用量ピルの内服中にも、血栓症のリスクは上がります。日本産科婦人科学会によると、静脈血栓症の発症確率はピルを服用していない場合1万人に1〜5人、服用している場合1万人に3〜9人と、わずかですが高くなる傾向があるとしています。

しかし、妊娠中の静脈血栓症の発症確率は1万人に5〜20人、出産後では1万人に40〜65人と跳ね上がります。ピルの服用による血栓症より、周産期や出産後の血栓症の方が発症確率が高いということは理解しておくと良いでしょう。

参照:日本産科婦人科学会「低用量経口避妊薬、低用量エストロゲン・プロゲストーゲン配合剤 ガイドライン(案)

新型コロナワクチンと血栓症の因果関係

現在主流な新型コロナワクチンの種類と血栓症の因果関係を解説していきます。

アストラゼネカ社製のワクチンについては、10万〜25万回に1回の頻度で血栓症が起きるという報告があります。ただし、報告されている血栓症は一般的な動脈、静脈血栓症ではなく、血小板の減少を伴う特殊な血栓症です。(アストラゼネカ社製ワクチン「バキスゼブリア筋注」は、令和4年(2022年)9月30日をもって、接種が終了しています)

ファイザー社製ワクチン、モデルナ社製のmRNAワクチンについては、血栓症との因果関係は明らかになっていません。

厚生労働省によると、下記のように報告されており、ワクチン接種による動脈や静脈血栓症が起こる可能性は限りなく低いといえます。

”mRNAワクチン接種後の肺塞栓症に係る副反応疑い報告について、複数の条件でO/E(接種後の報告率/期待される発現率)解析を実施した結果、全ての解析条件で、いずれの性別及び年齢層においても、背景発現率と比較して報告頻度に統計学的に有意な上昇は見られない”

参考:厚生労働省「新型コロナワクチンQ&A

mRNAワクチンとは

新型コロナワクチンはmRNAワクチンという新しい仕組みのワクチンです。不活化ワクチンなどの従来のワクチンは、ウイルスの一部のタンパク質を注射することで免疫をつくるものでした。

mRNAワクチンは、ウイルスのタンパク質をつくる素となる遺伝情報(mRNA)を脂質の膜に包んで注射するワクチンです。ウイルスそのものを体内に取り込む訳ではないため、ワクチンの接種により新型コロナウイルスに感染することはありません。

限りなく頻度は低くとも、血栓症発症リスクが示唆されている限り、低用量ピルの服用中に新型コロナワクチンの接種することには抵抗を感じる人もいるかもしれません。しかし、低用量ピルのみが血栓症の原因になるわけではなく、ワクチン接種によるデメリットよりも、感染による重症化を防ぐメリットの方が大きいでしょう。

接種を考えているけれど、低用量ピルを服用しているために躊躇している人は、過度に不安にならずに医師と相談のうえワクチン接種をすることをおすすめします。

ワクチン接種のためにピルの服用を中断する必要はない

頻度は低くてもリスクがあるなら、ワクチン接種の前に一時的に低用量ピルの服用を止めればいいのではと考える人もいるでしょう。しかし、ワクチン接種のために低用量ピルを中断することはかえって血栓症などの副作用のリスクを高めてしまうため、おすすめはできません。

低用量ピルで血栓症の副作用が起こることは極めて稀ではあるものの、服用開始から4ケ月以内に起こる確率が高いとされています。一時的に中断してまた再開すると、身体が服用開始初期の状態に戻ってしまうため、副作用を発症しやすくなってしまうのです。

また、妊娠中、出産後といった周産期の方が血栓症の発症リスクが高いため、一時的に低用量ピルを中断した結果妊娠してしまうと、血栓症のリスクという点においては最も発症確率が上がってしまうという結果を招いてしまいます。服用しているピルを中断する場合は必ず医師の指示に従い、自己判断で止めないようにすることが重要です。

ピル服用中に新型コロナウイルスに感染した場合の対処法

低用量ピルを服用中に新型コロナウイルスに感染してしまった場合、症状に応じて対応が変わります。現在では軽症、または無症状の場合、基本的には低用量ピルの服用を継続しても良いことになっています。

入院が必要な中等症、重症の場合では服用を中止し、回復後に体調を考慮してピルの服用を再開することになるでしょう。

新型コロナウイルスに感染したかもと思ったら、低用量ピルを服用していることを伝えた上で医師の診断に従うことが重要です。

参照:日本産科婦人科学会「新型コロナウイルス感染症と OC・LEP、HRT に関する考え方

まとめ

低用量ピルを服用していても、ワクチンの接種は可能です。新型コロナワクチンについても、副作用を気にして接種を拒否する必要はないと考えられています。低用量ピルの副作用の頻度や、妊娠した場合のリスクを正しく理解したうえでワクチンの接種を考えることが大切です。

もし新型コロナウイルスに感染してしまった場合も、軽症であれば低用量ピルの服用は継続していいことになっています。自己判断で服用を中断することはかえって血栓症などの発症リスクを高めてしまうため、おすすめしません。不安なことや心配なことがあれば、必ずピルを処方してもらっている医師に相談するようにしましょう。

レバクリでは、低用量・中用量ピルのオンライン診療サービスを提供しています。オンライン診療であれば通院の手間や交通費などをかけずに医師に相談することが可能です。診察は無料なので、ぜひお気軽にご相談ください。

この記事の監修:

牧野潤医師

慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会専門医。 医師免許取得後、株式会社ボストンコンサルティンググループにてヘルスケア・IT領域にて従事。 現在は慶應義塾大学医学部助教、美容医療を主としたJSKINクリニックを経営・監修、オンライン診療サービス「レバクリ」監修。

<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS) 日本乳癌学会

※この記事は産婦人科専門医と共同で監修を行いました