更新日:2024年06月11日
ピルは何歳まで飲むことができる?40歳以上でも服用できる条件や注意事項
ピルを何歳まで飲めるかは、喫煙習慣や持病の有無によって異なる
ピルの服用は、喫煙者では原則として35歳まで
ピルの服用は、健康な非喫煙者であっても、閉経もしくは50歳が上限である
ピルが服用できなくなった場合は、子宮内避妊リングや他の治療薬などで代替できる
40歳以降にピルの服用を続ける場合は、必ず医師の指示に従う
避妊や月経トラブルに高い効果があるピルですが、「この先何歳まで飲めるのだろう?」と不安に思う人も多いのではないでしょうか。ピルの年齢制限の目安は40歳までですが、条件次第では40歳以降も服用できます。この記事では、年齢に応じた服用の条件や、ピルが飲めなくなった場合の代替策について詳しく解説します。ピルを何歳まで続けて良いか悩んでいる人は参考にしてみてください。
ピルの服用は40歳以降注意が必要
ピルの服用可能年齢は、初経後から閉経もしくは50歳までです。
ただし、40歳以降の女性がピルを服用する場合には、注意が必要です。
ピルに含まれるエストロゲンというホルモンには血液を凝固させる作用があり、年齢が上がるにつれて血栓症のリスクが上昇することがわかっています。喫煙者や持病がある人の場合、血栓症のリスクはさらに高まります。
日本産科婦人科学会のガイドラインでは、ピルをやめる年齢の目安を以下のように定めていますので、参考にしてみてください。
対象 | 服用をやめる年齢 |
---|---|
喫煙者 | 35歳 |
非喫煙者で下記に該当する人 ・肥満(BMI値30以上) ・高血圧 ・高脂血症 ・糖尿病 | 40歳で投与の可否を医師が慎重に判断する |
心血管系疾患のリスクのない非喫煙者 | 閉経もしくは50歳まで |
喫煙者とは、習慣的に喫煙をしている(約15本/1日)方のことを指します。喫煙者は35歳以下であっても血栓症のリスクが高いこともわかっています。喫煙者は年齢に関わらず慎重投与になるので、場合によってはピルを処方してもらえないこともあるため注意しましょう。 また、喫煙本数が少なく、喫煙者の基準に満たない場合でも、医師の判断でピルが処方されないことがあります。ピルを服用したい場合は、まず禁煙することをおすすめします。
また、高血圧や高脂血症、糖尿病などの持病がある40歳以上の方は基本的には服用できません。持病があると、血栓症や脳梗塞、心筋梗塞のリスクが高まるためです。持病がない40歳以上の場合でも、医師が慎重に判断し処方の可否を決定します。
また、持病のない非喫煙者であっても、閉経もしくは50歳が服用可能な年齢の上限になることも知っておきましょう。
参考:日本産科婦人科学会「低用量経口避妊薬、低用量エストロゲン・プロゲストーゲン配合剤ガイドライン(案)」
40歳以降にピルを服用するリスク
40歳以降の方がピルを服用すると、次のような病気を発症するリスクがあります。
- 血栓症
- 心筋梗塞
- 脳梗塞
- がん
前述のとおり、ピルの服用を続けるとエストロゲンの血液凝固作用により、血の塊(血栓)ができやすくなります。血栓が起こると、血栓が起こった箇所の細胞が壊死し、身体の正常な機能が失われてしまいます。血栓が起きる場所によっては、心筋梗塞や脳梗塞にもつながるため、注意が必要です。
また、日本産科婦人科学会によると、エストロゲンにはがんの発症を促す働きがあるため、子宮頸がんや乳がんの発症率がわずかに上がるというという報告がされています。
参考:日本産科婦人科学会「低用量経口避妊薬、低用量エストロゲン・プロゲストーゲン配合剤ガイドライン(案)」
40歳以降にピルを服用するメリット
40歳以降もピルを服用し続けるメリットには、次のものがあります。
- 月経周期の安定
- 子宮内膜症の予防・治療
- 骨粗鬆症の予防
- がんの発症予防
- 更年期障害の軽減
ピルには、女性特有の月経関連の症状や子宮内膜症の症状を改善できるメリットがあります。また、骨粗鬆症やがんといった、年齢とともに発症しやすい疾患の予防効果もあります。さらに、40代以降では更年期障害で苦しむ人が増えてくるので、更年期障害の軽減ができることも大きなメリットといえるでしょう。
前述したリスクとこれらのメリットを踏まえた上で、ピルの服用を継続すべきかどうか、医師に判断してもらう必要があります。
40歳以降にピルが飲めなくなったときの代替策
月経の安定化やPMSの改善、避妊など多くのメリットを感じてピルを飲んでいる人にとって、40歳以降でピルが飲めなくなるのは不安かもしれません。ピルの服用によって得られる効果は、ほかの方法で代替できる場合もあります。 目的別の代替案について、詳しく説明します。
避妊目的の場合
避妊目的でピルを服用している場合、他の避妊方法を検討しましょう。最も手軽で一般的な避妊具はコンドームです。
また、最近では子宮内避妊リング(IUD)を扱っているクリニックも増えているので、IUDを検討するのも一つの方法です。IUDとは、プラスチックでできた3㎝ほどのT字型の器具です。子宮内に入れることで精子の運動を抑制し受精を阻害し、避妊効果を得ることができます。また、持続的に黄体ホルモンを放出させる機能を持つ薬剤付加IUDもあり、より高い避妊効果を発揮します。一度の挿入で約5年間避妊効果が維持されるため、高い避妊効果と長期にわたる効果から、費用対効果が高い避妊法だと言われています。
治療目的の場合
治療目的でピルが処方される疾患には次のものがあります。
- 月経困難症
- 月経前症候群(PMS)
- 過多月経
- 月経不順
- 子宮内膜症
これらの治療目的でピルを処方されている場合、手術療法、子宮内避妊リング(IUD)、薬物療法で代替できる場合があります。
たとえば、子宮内膜症は嚢胞がある場合など、症状次第で手術による治療が適応します。また、月経関連の症状は前述したIUDで改善できるものがほとんどです。
また、PMSの症状には、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)といった漢方や、ビタミンB1・B2、葉酸を含むサプリメントが効く場合もあります。
40歳以降のピルの服用は医師の指示に従う
ピルを服用すると血栓ができやすくなるため、40歳以降では、血栓症などの心血管系障害のリスクが上がります。自分は何歳までピルが飲めるのか、他の治療で代替できるのか、気になる人は医師に相談してください。服用の中止を指示された場合は、医師の指示を必ず守りましょう。
まとめ
ピルは、健康な女性の場合、閉経するまでピルを服用することができます。しかし、ピルの服用を続けると血栓症のリスクが高まるため、喫煙者は35歳以降は服用できません。また、40歳以降では慎重投与の対象となり、高血圧や高脂血症、糖尿病などの持病のある人は服用できません。安全に服用を続けるためには喫煙を控え、医師の指示に従うことが大切です。中止を指示されたら必ず服用はやめ、別の治療や代替策を相談しましょう。
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この記事の監修:
慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会専門医。 医師免許取得後、株式会社ボストンコンサルティンググループにてヘルスケア・IT領域にて従事。 現在は慶應義塾大学医学部助教、美容医療を主としたJSKINクリニックを経営・監修、オンライン診療サービス「レバクリ」監修。
<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS) 日本乳癌学会
※この記事は産婦人科専門医と共同で監修を行いました