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更新日:2024年05月21日

ピルで血栓症になる?血栓症になりやすい人の特徴と予防方法を解説

この記事のまとめ
  • ピルの内服によって血栓症のリスクが上がる
  • 肥満・喫煙している・年齢が高い・長時間同じ姿勢でいることが多い方は血栓症リスクが上がる
  • ピル内服中の血栓症予防には、適度な運動・こまめな水分補給・弾性ストッキングが有効

ピルを飲むと血栓症になりやすいと聞いて、ピル服用に対して不安になる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、ピルの服用による血栓症のリスクはわずかであり、対処法もあります。

本記事ではピルと血栓症の関わり、ピルによって血栓症になりやすい人の特徴、そしてピル内服中に血栓症を予防する方法について解説します。

ピルと血栓症の関わり

ピルの内服は血栓症のリスクを高めます。ここでは、ピルを飲むと血栓症になりやすい理由、ピルにより血栓症となる確率、そしてピル内服開始後に血栓症になりやすい時期について解説します。

ピルを飲むと血栓症になりやすい理由

ピルを飲むと血栓症になりやすい主な理由は、ピルが血液の凝固系のバランスを乱す可能性があるためです。

血液は、血液を固める方向に働く凝固因子と血液をサラサラにする方向に働く線溶因子がバランス良く作用することで、適切な状態を保っています。ピルを内服すると、凝固因子が上昇する一方、凝固抑制因子が低下することが知られています。また、ピルを内服すると、抗血栓作用を持つプロテインCの血漿中濃度が上がることで、血栓ができやすい状況になることが報告されています。

ピルによる血栓症の確率

FDA(アメリカ食品医薬品局)によると、ピルを内服している方が血栓症を発症する確率は1万人に3〜9人程度です。対して、ピルを内服していない方が血栓症を発症する確率は1万人に1~5人程度であり、ピルの使用によって血栓症の確率が2倍程になります。

ピルによって血栓症のリスクが上がるといっても、妊婦さんや産褥婦さんの方が血栓症となるリスクは高いです。妊婦さんが血栓症を発症する確率は1万人に5~20人程度、産褥婦さんが血栓症を発症する確率は1万人に40~65人程度と報告されており、ピルを使用している方の血栓症の確率はこれらより低く、過度に心配する必要はありません。

参考:FDA「Drug Safety Communication: Updated information about the risk of blood clots in women taking birth control pills containing drospirenone

ピル内服後に血栓症になりやすい時期

ピルは内服を始めた直後に血栓症を起こすとは限りません。厚生労働科研究成果データベースの資料によると、最も血栓症を発症しやすい時期は、ピルの服用開始から3ヶ月後以内だと言われています。日々の体調に気を配り、些細なことでも異変や気になることがある場合は医師に相談するようにしましょう。

ピルの内服を始めて1年半ほど経過した場合は、血栓症発症のピークを過ぎており発症の可能性は比較的低いです。

血栓症の症状

血栓症の症状は下肢に出現することが多いです。主に、下肢のむくみ、腫れ、痛みなどが血栓症の代表的な初期症状です。

また、頻度は決して高くないですが、下肢に出来た血栓が流され肺の動脈に詰まることがあります。肺動脈の血栓症では、息苦しさや刺すような胸の痛みなどが初期症状として現れることがあります。

ほかにも、下記のような症状が見られることがあります。

  • 頭痛が起こる
  • めまいがする
  • 目が見えなくなる
  • ろれつが回らなくなる
  • 手足が麻痺・脱力する

血栓症は早期に治療することで重症化を防ぐことができる可能性があります。血栓症の症状に気が付いた時は決して放置せず、できるだけ早く病院へ相談するようにしましょう。

ピルによって血栓症になりやすい人の特徴

ピルを内服する方の中でも特に血栓症になりやすい方は注意が必要です。ピルによって血栓症になりやすい人の特徴は、下記の4つです。

  • 肥満である
  • 喫煙している
  • 年齢が高い
  • 長時間動かない姿勢をとる

それぞれについて説明します。

肥満である

ピルを使用することで血栓症になりやすい人の1つ目の特徴は、肥満であることです。実際に、海外の研究でBMIの上昇に伴って血栓症のリスクが増加することが報告されています。この研究によると、BMIが20未満の方は1万人に5.8人、BMIが20以上25未満の方は1万人に8人、BMIが25以上30未満の方は1万人に16.8人、BMIが30以上35未満の方は1万人に22人、そしてBMIが35以上の方は1万人に36.8人の確率で血栓症を発症すると報告されています。

また、肥満の方がピルを内服すると、血栓症を発症する確率がさらに高くなります。

BMIが20以上25未満の方がピルを内服した場合と比較するとBMIが25以上30未満の方は約2.4倍、BMIが30以上の方で約5.5倍、血栓症のリスクが上がると報告されています。

肥満は血栓症のリスクであり、特に注意が必要です。

参考: BMJ Journals「Comparative risks of venous thromboembolism among users of oral contraceptives containing drospirenone and levonorgestrel」 BMJ「Risk of venous thromboembolism in users of oral contraceptives containing drospirenone or levonorgestrel

喫煙している

ピルを使用することで血栓症になりやすい人の2つ目の特徴は、喫煙していることです。

海外の研究によると、喫煙している方は、喫煙していない方に比べ、血栓症のリスクが1.43倍上がるとしています。また、ピルを使用している喫煙者の方は、ピルを服用せず喫煙していない方に比べ、8.8倍血栓症のリスクが上がったようです。

そのため、喫煙している方がピルを使用するのは注意が必要です。ピルの服用中はできる限り禁煙をすることを勧めます。

参考:National Library of Medicine「Smoking increases the risk of venous thrombosis and acts synergistically with oral contraceptive use

年齢が高い

ピルを使用することで血栓症になりやすい人の3つ目の特徴は、年齢が高いことです。

日本産科婦人科学会によると、血栓症のリスクは、30歳未満の方と比較すると、35~39歳の方は約1.2倍、40~44歳の方で約1.6倍、45~49歳の方で約2.1倍、そして45歳以上の方で2倍以上になるとされています。

また、ピルを内服している方も年齢が上昇するにつれて血栓症のリスクが増加することが報告されています。 比較的年齢が高い方でピルを内服する場合は注意が必要です。

参考:日本産科婦人科学会「低用量経口避妊薬、低用量エストロゲン・プロゲストーゲン配合剤 ガイドライン(案)

長時間動かない姿勢をとる

ピルを使用することで血栓症になりやすい人の4つ目の特徴は、長時間動かない姿勢をとることです。

具体的には、長時間の飛行機、バス、鉄道などによる移動は血栓症のリスクになります。海外の研究によると、特に長時間の飛行機移動は3〜12%程の血栓症のリスクがあるとしています。

ピルを使用している方の長距離移動は特に注意が必要です。適切に血栓症の予防を行いましょう。

参考:National Library of Medicine「Air travel and the risk of thromboembolism

ピル内服中に血栓症を予防する方法

上記のように、血栓症のリスクが比較的高い方は血栓症予防をすることが大切です。ここでは、ピル内服中に血栓症を予防する具体的な方法を紹介します。

運動する

ピル内服中に血栓症を予防する1つ目の方法は、運動することです。運動することで静脈のうっ滞を改善することができるためです。

適度なウォーキングや足の運動は血栓症の予防に有効です。長距離移動においても運動を行うことが重要な血栓症予防になります。

具体的には、1時間に1回2〜3分程、かかとの上下運動、足首・足の裏の運動を行うことで大腿静脈の血流速度が上がります。

ピルを内服している方は意識して運動を日常生活に組み込むようにしましょう。

こまめに水分を補給する

ピル内服中に血栓症を予防する2つ目の方法は、こまめに水分補給することです。なぜなら、脱水状態に陥ると血液が濃くなり、血栓症のリスクが上がるためです。 こまめに水分補給を行い、脱水にならないようにすることが血栓予防に大切です。

また、水分といっても、コーヒーやアルコールなどには注意が必要です。コーヒーやアルコールには利尿作用があり、水分補給をしているつもりが水分不足に繋がる可能性があります。

ピルを内服している方はこまめに水分補給を行うようにしましょう。

弾性ストッキング(着圧ソックス)を着用する

ピル内服中に血栓症を予防する3つ目の方法は、弾性ストッキング(着圧ソックス)を着用することです。弾性ストッキング(着圧ソックス)を着用することで下肢の血管の血流速度を上げることができるためです。

弾性ストッキング(着圧ソックス)は、飛行機移動や長時間のデスクワークなど、座ったままでいる時間が長い場合の血栓予防に特に有効です。血栓症のリスクが高い方は医師から着用を推奨される場合があります。また、自身で購入し使用することもできます。

ピルを内服している方で長時間同じ姿勢でいる機会がある方は、弾性ストッキングの着用を検討すると良いでしょう。

まとめ

ピルを内服すると体内の凝固因子のバランスが乱れることで血栓症のリスクが上がります。しかし、妊娠中の方、産褥の方と比べるとピル内服により血栓症のリスクは決して高くありません。

血栓症の症状は、下肢のむくみ、腫れ、痛みなどが代表的です。血栓症の症状に気が付いたときには出来るだけ早く病院を受診するようにしましょう。ピルを内服することで特に血栓症に気を付けるべき方は、肥満の方、喫煙している方、年齢が比較的高い方、そして長時間同じ姿勢でいる方です。

ピル内服中の血栓症予防には適度な運動、こまめな水分補給、そして弾性ストッキング(着圧ソックス)が有効です。ピルを内服する方は血栓症に注意し、適切に予防するように心がけましょう。 それでも心配な方は、クリニックやオンライン診療サービスなどで直接専門医に相談してから服用を判断するようにしましょう。

レバクリでは、低用量・中用量ピルのオンライン診療サービスを提供しています。オンライン診療であれば通院の手間や交通費などをかけずに医師に相談することが可能です。診察は無料なので、ぜひお気軽にご相談ください。

この記事の監修:

牧野潤医師

慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会専門医。 医師免許取得後、株式会社ボストンコンサルティンググループにてヘルスケア・IT領域にて従事。 現在は慶應義塾大学医学部助教、美容医療を主としたJSKINクリニックを経営・監修、オンライン診療サービス「レバクリ」監修。

<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS) 日本乳癌学会

※この記事は産婦人科専門医と共同で監修を行いました