レバクリ

更新日:2024年05月31日

ピルと飲み合わせに注意すべき薬は?飲み合わせの悪い飲食物やサプリも解説

この記事のまとめ
  • ピルと解熱鎮痛剤を併用するときは、アセトアミノフェンが配合されていないか確認する
  • ピルとほかの薬を併用するときは、医師や薬剤師に相談して飲み合わせに問題ないか確認する
  • ピルと下剤を併用するときは、3時間以上間隔を空ける
  • 飲み合わせが悪い飲食物には、グレープフルーツやお酒、コーヒー、炭酸水などがある

ピルを服用中でほかの薬も飲もうと考えている方の中には、飲み合わせに注意する薬があると知って悩んでいる方もいるのではないでしょうか。

本記事では、ピルと飲み合わせが禁忌の薬、注意するべき薬を解説します。また、ピルと下剤を併用する際の注意点、飲み合わせの悪い飲食物やサプリメントについてもお伝えします。

ピルと飲み合わせが禁忌の薬

ピルと飲み合わせが禁忌となっている薬は、C型肝炎の治療薬であるヴィキラックス配合錠です。

ピルには、エチニルエストラジオールというエストロゲンが含まれており、ヴィキラックスと併用すると、肝臓の機能が低下してしまいます。肝機能が悪くなると、肝機能障害を起こすリスクがあり、禁忌とされています。

ただし、ヴィキラックスは2019年に販売中止されているため、誤って併用してしまう可能性は低いでしょう。

ピルと飲み合わせる際に注意すべき薬

ピルと飲み合わせる際に注意する薬は、4つの種類に分けられます。

  • ピルの効果を弱める薬
  • ピルの効果を強める薬
  • ピルの影響で効果が弱まる可能性のある薬
  • ピルの影響で効果が強まる可能性のある薬

1つずつ解説します。

ピルの効果を弱める薬

ピルとの飲み合わせにより、ピルの効用が弱くなる薬には下記の種類があります。

  • 抗てんかん薬(フェニトイン・カルバマゼピン・フェノバルビタール・プリミドンなど)
  • 抗結核薬(リファンピシン)
  • HIV感染症治療薬(エファビレンツ・ネビラピンなど)
  • 抗菌薬(ペニシリンなど)

ピルは、服用すると体内でチトクロームP450 3A4(CYP3A4)という酵素によって代謝されます。

上記の4種類の薬は、CYP3A4誘導作用を持っています。CYP3A4が誘導されると、ピルの成分の代謝が促進されて、血中濃度が低下してしまうのです。血中濃度が低下するとピルの作用が十分に発揮されないため、併用注意とされています。

また、併用するピルがLEP(超低用量ピル)でエストロゲン含有量が30μgの場合は、効果が不十分となる可能性もあります。LEPとは、エストロゲン含有量が少ないピルのことで、ルナベルやヤーズ、ジェミーナなどが当てはまります。

しかし、抗てんかん薬にはさまざまな種類があり、ピルと併用できる抗てんかん薬もあるため、医師に相談してみると良いでしょう。低用量ピルに影響のある抗てんかん薬を服用する必要がある場合は、ピルの服用ではなく、ほかの避妊方法を行う必要があります。

ピルの効果を強める薬

低用量ピルの効果を強める薬は下記の2つです。

  • 解熱鎮痛剤(アセトアミノフェン)
  • 抗真菌薬

アセトアミノフェンとピルを併用すると、ピルの成分であるエストロゲンの硫酸抱合と呼ばれる反応を阻害するため、ピルの成分が尿として排泄されず血液中に蓄積してしまいます。

ピルの成分が尿として体内から排泄されず血中に溜まってしまうと、作用が強く現れる可能性があります。作用が強くなると、副作用などの症状が出やすくなったり、強く出たりするといったリスクがあるのです。

アセトアミノフェンは、風邪薬や頭痛薬として薬局で市販されている薬に含まれているため、知らずに服用してしまう可能性があります。

ピルを服用中で解熱鎮痛剤の服用を考えているときは、購入時に自身で成分を確認するとともに、薬局にいる薬剤師または登録販売者に相談して服用する薬を検討しましょう。

フルコナゾールやボリコナゾールといった抗真菌薬も、アセトアミノフェンと同様にピルの効果を強くする作用があるため、医療機関で受診した際は、ピルを服用していることを必ず医師に伝えるようにしましょう。

ピルの影響で効果が弱まる可能性がある薬

低用量ピルとの飲み合わせで、飲み合わせた薬の効果が弱まる可能性がある薬は下記のとおりです。

  • 解熱鎮痛剤(アセトアミノフェン)
  • インスリン製剤などの血糖降下薬
  • Gn-RH誘導体(ブセレリン)

アセトアミノフェンとピルを併用すると、アセトアミノフェンのグルクロン酸抱合を促進して尿中に排泄しやすくなるため、アセトアミノフェンの血中濃度が低下して効果が弱まる可能性があります。

インスリン製剤とピルを併用するとインスリン製剤の作用が弱くなるため、高血糖を起こす可能性があります。また、糖尿病の方がピルを服用した場合、血糖値が上がったときに正常に戻す耐糖能が低下します。

糖尿病の方がピルの服用を考えている場合は、医師に糖尿病の薬を服用していることを伝えましょう。

子宮内膜症や子宮筋腫の治療に用いられるブセレリンは、性ホルモンの分泌を低下させることで薬効作用を示します。しかし、ピルには女性ホルモンであるエストロゲンやプロゲステロンが含まれているため、併用すると効果が弱まる可能性があるのです。

ピルの影響で効果が強まる可能性がある薬

ピルとの飲み合わせで、服用した薬の効果が強まる可能性がある薬は下記のとおりです。

  • 三環系抗うつ薬(イミプラミン)
  • 副腎皮質ステロイド
  • 気管支喘息治療薬
  • 胃潰瘍治療薬
  • 免疫抑制薬

ピルと三環系抗うつ薬(イミプラミン)を併用すると、三環系抗うつ薬の血中濃度が高くなると報告されています。ピルにより三環系抗うつ薬の肝臓での酸化が抑制され、生体内利用率が増加します。

生体内利用率とは、薬を服用して消化管から吸収されたり肝臓で処理されたりした後に、全身の血液に移行した薬の量を計算したものです。生体内利用率が増加すると、血液中に移行した薬の量が多くなるため、作用が強くなります。

そのほかの薬では、ピルと併用した場合に血液中の成分濃度が上昇します。血中濃度が上昇する理由は、肝臓の働きである代謝が抑えられて、尿中に排泄されないからです。血中濃度が高くなると薬の効果が強くなったり、副作用が出やすくなったりする可能性があります。

参考:日本産科婦人科学会「低用量経口避妊薬、低用量エストロゲン・プロゲストーゲン配合剤 ガイドライン(案)

ピルと下剤を併用する際の注意点

ピルと下剤を併用する際の注意点は、それぞれの薬の服用の間隔を空けることです。

ピルは、服用後2時間程度で成分の血中濃度が一番高い状態になり、薬の効果が得られます。ピルの服用直後に下剤を服用すると、下痢を起こしてピルの成分が十分に吸収されず、効果が得られないリスクがあります。

下剤の服用を考えている場合、ピルの服用から3時間程度は間隔を空けましょう。下剤は、錠剤であれば効果が出るまでに7~12時間ほどかかりますが、体調によっては2時間以内に下痢を起こすリスクがあるためです。また、座薬の下剤は約5~30分で効果が出ます。

ピルと飲み合わせが悪い飲食物

低用量ピルと飲み合わせが悪い飲食物は、4種類あります。

  • グレープフルーツ
  • お酒
  • コーヒー・お茶
  • 炭酸水

それぞれ解説します。

グレープフルーツ

グレープフルーツに含まれているフラノクマリンという成分が、CYP3A4の働きを抑えるため、ピルが代謝されづらくなり、成分が血液中に蓄積してしまいます。

また、グレープフルーツは薬の服用時だけでなく、グレープフルーツを食べてから24時間以上経過しても、薬の代謝に影響があるといわれています。

ピルを服用している期間は、グレープフルーツを食べるのは控えましょう。

お酒

お酒に含まれているアルコールは、摂取した後に肝臓で分解されます。もし、低用量ピルとアルコールを同時に飲んだ場合は、アルコールの分解が優先されるため、血液中にピルの成分が蓄積して、ピルの副作用が出現しやすくなります。

また、お酒を飲み過ぎると嘔吐や下痢を起こしたり、利尿作用を高めたりします。ピルを飲んでから2時間経過せずに嘔吐した場合は、十分な効果が得られないため、もう一度ピルの服用が必要です。

利尿作用により尿の排泄が促進されると、体内の水分が減少するため血栓症のリスクも高くなります。

アルコールを日常的に飲んでいると薬が効きにくいと感じることもあります。お酒は適度な量で楽しみ、薬の服用は水で行いましょう。

コーヒー・お茶

コーヒーやお茶に含まれるカフェインには、利尿作用があります。利尿が促進されると肝臓における薬の吸収量が低下し、ピルの十分な効果が得られません。

また、コーヒーやお茶を飲み過ぎるとカフェイン中毒となり嘔吐や下痢を引き起こしてしまうため、コーヒーを多量に飲むのはおすすめできません。

炭酸水

炭酸水は、低用量ピルを服用する際に飲むと、炭酸により成分の吸収に悪影響を及ぼす可能性があります。

ただし、影響の程度は低いと考えられるため、過度に気にする必要はありません。なるべく炭酸水を避けておけば問題ないでしょう。

ピルと飲み合わせが悪いサプリメント

低用量ピルと飲み合わせが悪いサプリメントは、セントジョーンズワート(西洋オトギリソウ)が含まれているものです。セントジョーンズワートは、薬物代謝のCYP3A4を誘導し、ピルの成分の排泄が促進されて血液中に少なくなり、効果を弱める可能性があります。

セントジョーンズワートが含まれていないサプリメントでも、ピルと一緒に服用するとピルの効果に影響を与えるリスクがあります。サプリメントとピルの併用は自己判断で行わないようにしましょう。

ピルと飲み合わせの悪い薬やサプリメントを飲んでしまったときの対処法

もし、ピルと飲み合わせの悪い薬やサプリメントを飲んでしまったときは、かかりつけの医師やピルを処方された医師に相談しましょう。

また、ピルの効果を弱める薬を飲み合わせてしまったときは、避妊効果が十分に発揮されないため妊娠する可能性があります。パートナーと相談して、コンドームを使用するなど避妊方法を検討したり性行為を控えたりしましょう。

医師に相談する前に体調が悪くなり異常を感じた場合は、受診を待たずに救急車を呼びましょう。

まとめ

ピルとそのほかの薬を飲み合わせるときには、注意すべき薬剤が多くあります。自己判断でピルとほかの薬を服用してしまうと、避妊効果が十分に出なかったり副作用が出たりする可能性があります。

現在ピルを服用していて、ほかの薬を服用したいと考えている場合は、かかりつけの医師や薬局の薬剤師に相談して、飲み合わせの悪い薬ではないか確認しましょう。また、薬を飲むときは水で服用するようにしてください。

レバクリでは、低用量・中用量ピルのオンライン診療サービスを提供しています。オンライン診療であれば通院の手間や交通費などをかけずに医師に相談することが可能です。診察は無料なので、ぜひお気軽にご相談ください。

この記事の監修:

牧野潤医師

慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会専門医。 医師免許取得後、株式会社ボストンコンサルティンググループにてヘルスケア・IT領域にて従事。 現在は慶應義塾大学医学部助教、美容医療を主としたJSKINクリニックを経営・監修、オンライン診療サービス「レバクリ」監修。

<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS) 日本乳癌学会

※この記事は産婦人科専門医と共同で監修を行いました