更新日:2024年07月11日
ピルでイライラする理由は?対処法やピルで改善するイライラについても解説
- ピルを服用するとイライラするのは、ホルモンバランスの変化によるものである
- ピルのイライラは、3ヶ月ほど服用を続けると改善すると考えられる
- 3ヶ月ほど服用してもイライラが改善しないときは、ピルの種類を変更してもらう
- ピルの服用で改善できるイライラは、月経困難症やPMS、PMDDである
PMSによるイライラを解消しようとしてピルの服用を始めたのに、イライラが改善しないと悩んでいる方もいるのではないでしょうか。ピルの服用を始めて1~2ヶ月はイライラなどの副作用が出現しやすいですが、3ヶ月ほど服用を継続すると副作用が減少してイライラの改善が期待できます。
本記事では、ピルを服用するとイライラしてしまう理由や対処法について解説します。また、ピルで改善が期待できるイライラの種類や、ピルでイライラが改善しないときの対処法についてもお伝えします。
ピルを服用するとイライラしてしまう理由
ピルを服用するとイライラしてしまう理由は、ホルモンバランスの変化が起こるからです。ピルには、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)が含まれています。
エストロゲンは、セロトニンという脳内の神経伝達物質に関係しています。ピルの服用でエストロゲンの分泌量が減ると、セロトニンの分泌量も減り、イライラしてしまう原因になるのです。
ピルでイライラしてしまうときの対処法
ピルでイライラしてしまうときの対処法は、下記の2つです。
- 3ヶ月服用を続けて様子を見る
- 医師に相談してピルの変更を検討する
それぞれ解説します。
3ヶ月服用を続けて様子を見る
ピルの服用開始によるイライラは、ホルモンバランスの変化による一時的なものです。ピルの服用を3ヶ月ほど継続すると、ホルモンバランスが安定して副作用の症状がおさまり、イライラの軽減が期待できます。
医師に相談してピルの変更を検討する
低用量ピルは、種類によりエストロゲンやプロゲステロンの含有量が異なるため、ほかのピルに変更すると副作用による悩みを解決できる可能性があります。
3ヶ月ほど服用しても副作用が改善しない場合や、副作用の症状がつらくて服用を3ヶ月続けられないと感じたときは、医師に相談してピルの変更を検討しましょう。
ピルを服用することで改善が期待できるイライラの種類
ピルで改善できるイライラの種類は、下記のとおりです。
- 月経困難症
- PMS(月経前症候群)
- PMDD(月経前気分障害)
それぞれ症状と原因を解説します。
月経困難症
月経困難症の症状と原因を解説します。
月経困難症の症状
月経困難症の症状には下記のものがあります。
- 下腹部痛
- 腰痛
- 頭痛
- 吐き気
- おなかが張る
- だるさや疲労感
- 食欲不振
- イライラ
- 下痢
- 気分がすぐれない
症状は、生理の初日および生理が始まってから24時間ごろの出血が多いときに強く現れます。日数が経過すると症状は軽減していくことが特徴です。
月経困難症の原因
月経困難症は、器質性(続発性)月経困難症と機能性(原発性)月経困難症に分けられます。器質性月経困難症は、子宮内膜症や子宮筋腫、子宮腺筋症などの疾患が原因です。
子宮内膜症は、子宮内膜が本来存在しないところに増えます。子宮内膜症を発症した状態で生理がくると、子宮内膜は脱落して出血しますが、血液の出口がないため炎症を起こして下腹部痛を発生させます。
子宮筋腫は、子宮の筋肉層に筋腫(筋肉の塊でできた腫瘍)ができる状態であり、良性腫瘍のため多くは無症状です。しかし、筋腫が大きくなると生理のときに出血量が増えたり、痛みが出現したりします。
機能性月経困難症は、子宮内膜で作られるプロスタグランジンという物質が多くなり、子宮が過収縮することで起こります。プロスタグランジンは、痛みを感じやすくする作用も持っています。
低用量ピルを服用すると、エストロゲンを分泌する信号が脳から送られない状態になります。エストロゲンの産生が抑えられると、子宮内膜の増殖が起こらずプロスタグランジンの産生も抑えられます。
プロスタグランジンの産生が抑えられると、頭痛や腰痛、下腹部痛の軽減が期待できます。痛みを軽減できると、イライラの改善も期待できるでしょう。
PMS(月経前症候群)
PMSの症状や原因を解説していきます。
PMSの症状
PMSは、下記のような身体的・精神的・行動上の症状が出現します。
症状 | |
---|---|
身体的症状 | 頭痛(片頭痛)・関節痛・筋肉痛・めまい・眠気・乳房の痛みや張り・むくみ・体重増加・倦怠感・体温上昇 |
精神的症状 | イライラ・うつ状態・怒りやすくなる・不安・緊張感・不眠 |
行動上の症状 | 落ち着きがない・食欲が増す |
上記の症状は生理前の3~10日程度続いて、生理が始まると症状が軽くなったり、なくなったりします。PMSの発生頻度は、全女性の50~80%とされていますが、治療の必要性を感じている女性は約3~7%と報告されており、積極的に治療を行う女性が少ないのが現状です。
参考:昭和学士会誌「PMS,PMDDの診断と治療」
PMSの原因
PMSの原因ははっきりと分かっていませんが、排卵後に上昇するプロゲステロンの関与が指摘されています。また、エストロゲンやプロラクチンなどの生理周期におけるホルモンバランスの変動が関与しているとも推測されています。
プロゲステロンが上昇すると、上記で解説した身体的・精神的・行動上の症状が現れやすくなります。
低用量ピルを服用するとホルモンバランスが一定に保たれ、プロゲステロンの分泌が抑えられるため、PMSの症状軽減が期待できます。
関連記事:PMS改善にはピルが効果的?効果や値段、処方を受ける方法についても解説
PMDD(月経前不快気分障害)
PMDDの症状・原因を解説します。
PMDDの症状
PMSよりもイライラや精神的な不安定さが強く出る状態のことをPMDDといいます。幅広い年齢で発症し、月経のある女性のうち3~8%に存在すると考えられていると報告されています。
PMDDはDSM-5により診断基準が決められています。DSM-5とは、アメリカ精神医学会が作成する精神疾患の診断や統計のマニュアルで、DSMの後ろの数字は第5版という意味です。
PMDDのDSM-5による症状の例は下記のとおりです。
症状 | |
---|---|
身体的症状 | 乳房の痛みや腫れ・関節痛・筋肉痛・体重増加・倦怠感・疲れやすい・不眠 |
精神的症状 | 気分変動(突然悲しくなる、涙もろくなる)・他者に対する興味の減少・不安・緊張・怒り・抑うつ・絶望感・自己批判 |
行動上の症状 | 食欲が増える・特定の食べ物を欲する |
参考: 昭和学士会誌「PMS,PMDDの診断と治療」 女性心身医学「精神科からみたPMS/PMDDの病態と治療」
PMDDの原因
PMDDの原因は、PMSと同様にはっきりしていません。
ある研究によると、プロゲステロン代謝物であるアロプレグナノロンと関係性があると報告されています。アロプレグナノロンは、GABA受容体に作用し、神経の高ぶりを抑える働きがあります。PMSの症状がある方は、アロプレグナノロンが少ないとされており、不安を抑えるGABAの働きが弱くなりイライラなどの精神的症状が出現しやすいのではないかと考えられています。
PMDDの治療において、ドロスピレノン・エチニルエストラジオール錠であるヤーズやドロエチは、PMDDへの有効性が認められていると報告されています。また、レボノルゲストレル・エストラジオール錠であるラベルフィーユはPMDDの改善効果があるとしています。
しかし、これらの薬剤は、2024年1月時点で日本における適応症は月経困難症のみとされており、PMDDに適応が認められていない点には注意してください。
PMDDもPMSと同様に、ピルを服用してホルモンバランスを一定に保つことで、頭痛や下腹部痛などの身体的な症状や精神的な症状を軽減できる可能性がありますは。
しかし、PMDDはPMSと比較して精神的な症状が強く出るため、症状が重い場合はピルを服用しても改善しない場合があります。精神的な症状が軽減しないときは、医師に相談することが大切です。症状によっては、SSRI(選択的セロトニン受容体阻害薬)という抗うつ薬が処方されることもあります。
参考:日本産科婦人科学会「産婦人科診療ガイけドライン―婦人科外来編2020」「低用量経口避妊薬、低用量エストロゲン・プロゲストーゲン配合剤ガイドライン(案)」
ピルでイライラが改善しない場合の対処法
ピルを服用してイライラが改善しない場合は、原因がホルモンバランスではなくストレスや生活習慣の乱れなどの可能性があります。ストレスや生活習慣の乱れなどが原因の場合は、ピルを服用してもイライラの改善が期待できません。
ピルを3ヶ月以上服用してもイライラが改善しない場合は、クリニックに相談してピルの種類の変更を検討したり、心療内科への紹介状を書いてもらったりすると良いでしょう。心療内科を受診する場合は、イライラを感じる時間や症状を記録しておくと医師が症状の程度を判断しやすくなります。
また、イライラの改善には生活習慣の見直しも重要です。規則正しい睡眠習慣や適度な運動、ストレスの定期的な解消を心掛けるとともに、低脂肪食やビタミンB6・ミネラルの多い食事内容に変更するなどの方法が効果的です。取り入れられる習慣から始めてみましょう。
ビタミンB6・ミネラルを摂ることでストレス緩和につながり、低脂肪食を摂ることで脂質の代謝を減らし、脂質の代謝に必要なビタミンの消費を抑えることに役立ちます。
まとめ
ピルを服用すると、ホルモンバランスが安定してPMSのイライラ改善が期待できます。
しかし、ピルの服用初期には副作用でイライラしてしまう可能性もあります。また、長期的に服用してもイライラが改善しない場合は、ピルが合っていなかったり、原因がホルモンバランスではなかったりするかもしれません。
ピルを服用してもPMSが改善しない場合は医師に相談し、心療内科を受診する必要性やピルの変更を検討してもらいましょう。
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この記事の監修:
慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会専門医。 医師免許取得後、株式会社ボストンコンサルティンググループにてヘルスケア・IT領域にて従事。 現在は慶應義塾大学医学部助教、美容医療を主としたJSKINクリニックを経営・監修、オンライン診療サービス「レバクリ」監修。
<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS) 日本乳癌学会
※この記事は産婦人科専門医と共同で監修を行いました