更新日:2024年07月11日
生理前に頭痛が起きる原因とは?月経周期と片頭痛の関連について解説
- 生理前の頭痛は、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌量低下が関与するとされている
- 生理前の頭痛が起きた場合の対処方法は、静かな部屋で安静に過ごし、患部を冷やすこと
- 生理前の頭痛を予防するには、食生活を見直し、良質な睡眠をとることが大切
- 生理前の頭痛を改善させるためには、医療機関で受診すると良い
- 医療機関で受診する際は、基礎体温表や頭痛ダイアリーを持参すると確実な診断につながる
生理前になると頭痛が起こり、悩んでいる方もいるでしょう。生理前の頭痛は女性ホルモンとの関係が深く、月経周期に関連があるとされています。生理前の頭痛は、適切な対処や予防をすれば改善が見込めます。
本記事では、生理前に頭痛が起こる原因や対処法・予防法について詳しく解説します。ぜひ参考にしてください。
生理前に頭痛が起こる原因
生理前の頭痛の原因は、まだはっきりと解明されていませんが、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌量低下が関与するとされています。
エストロゲンは、月経前や排卵直後に分泌量が急激に低下します。そして、エストロゲンの低下に伴って、脳内のセロトニンも一緒に減少します。
セロトニンは、血管の収縮をコントロールしたり、痛みを抑えたりする働きがあります。セロトニンの減少によって脳内の血管が拡張することで、頭痛が起こりやすくなると考えられています。
生理前に起こる頭痛の種類
頭痛には、大きく分けて片頭痛と緊張型頭痛の2種類があり、生理に関連するのは片頭痛とされています。
片頭痛は、片側あるいは両側のこめかみあたりが、脈にあわせてズキズキと痛むのが特徴です。片頭痛は、前兆がないタイプと、主にキラキラした光が見える視認性前兆があるタイプに分かれます。
頭痛の診療ガイドラインによると、日本における片頭痛の有病率は、20〜40歳代の女性が高いという結果が出ています。性別・年齢別に見ると、最も片頭痛有病率の高い30代女性では有病率は約20%に達し、40歳代女性でも約18%と高い有病率を示しています。
また、同ガイドラインによると、女性の片頭痛の約半数は、月経周期に関連するとされています。
月経に関連する頭痛は、生理時のみに起こる場合を純粋月経片頭痛と呼び、生理時に加え、その他の時期にも発生する頭痛を月経関連片頭痛と呼びます。
参考:頭痛の診療ガイドライン作成委員会「頭痛の診療ガイドライン2021」
生理前の頭痛が起こった場合の対処方法
生理前の頭痛が起こった場合、セルフケアで症状が改善する場合があります。それぞれ解説します。
静かな部屋で安静に過ごす
光や音、においなどの刺激は、生理前の頭痛を悪化させる要因になります。また、身体を動かすことで痛みが助長されます。そのため、静かな部屋で安静に過ごすことで、頭痛を改善できる可能性があります。
冷やす
頭痛は、血管の拡張により増悪します。そのため、頭痛が起こったときは、血管の拡張を抑えるために冷やすのが有効です。額やこめかみ、首筋などの血管を、冷却シートや保冷剤、冷たいタオルなどで冷やすと良いでしょう。
入浴やマッサージは血管を拡張させてしまうため、頭痛があるときは控えるようにしてください。
頭痛薬を飲む
月経が関連する片頭痛には、ロキソプロフェンなどのNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)が有効です。ロキソプロフェンが配合されている薬はドラッグストアで購入できるため、突然頭痛が起きたときのために常備しておくと良いでしょう。
生理前の頭痛の予防方法
生理前の頭痛を抑えるためには、予防することも大切です。ここでは、生理前の頭痛の予防方法について解説します。
自分の月経周期を把握する
前述したように、生理前の頭痛は月経周期に関連するとされています。そのため、生理前の頭痛を予防するために、自分の生理周期を把握することが大切です。
自分の生理周期は、基礎体温を毎日計測することで把握できます。
排卵は、基礎体温が急激に下がったタイミングで起こり、その後高温期へ移行します。このタイミングでエストロゲンの急激な低下が起こり、頭痛の症状が現れます。この高温期に後述する規則正しい生活を心がければ、頭痛の予防につなげることができるでしょう。
頭痛ダイアリーをつける
頭痛ダイアリーとは、頭痛をじっくり観察し記録する用紙のことです。頭痛ダイアリーに記録する内容は以下のとおりです。
- 頭痛が起こった日時
- どのような痛みか(脈を打つようか、締め付けられるようかなど)
- 頭痛はどれくらい続いたか
- 吐き気や光・音・匂いなどが気になったか
- 薬を飲んだかどうか
頭痛ダイアリーには、頭痛の起こった時間帯に合わせて頭痛の程度を3段階に分けて記録し、その際に使用した薬剤名と効果を記載します。頭痛が日常生活にどの程度影響があったかも書いておきましょう。また、外出の有無や天気など頭痛を引き起こしたと思われる原因があれば記載してください。
頭痛ダイアリーの用紙は、日本頭痛学会の公式サイトよりダウンロードが可能で、記載方法の詳細も書かれているので参考にすると良いでしょう。
頭痛ダイアリーをつけることで、自分自身がどのような頭痛に悩まされているのか、どういうときに症状が出るのか、その要因は何だったのかを把握することができます。頭痛の要因を避けたり、症状が出る前に日常生活を見直したりするなどの対策をとることが可能になります。
また、医療機関を受診した時に、より詳細に症状や要因を説明でき、確実な診断や治療につながります。
参考:日本頭痛学会「頭痛ダイアリー」
頭痛を緩和させる栄養を摂る
頭痛は、マグネシウムが不足すると血管が収縮してしまい頭痛が起こるとされています。また、生理前に起こる頭痛はエストロゲンの急激な減少が要因と考えられています。
そのため、食生活の中で、マグネシウムを多く含む海藻類や、エストロゲンとよく似た働きをする大豆イソフラボンを多く含んだ大豆製品を積極的に摂取するのがおすすめです。
マグネシウムを多く含む食品は以下のとおりです。
- あおさのり
- 乾燥わかめ
- 昆布
- 乾燥ひじき
また、大豆イソフラボンを多く含む食品は以下のとおりです。
- 豆乳
- 納豆
- 油揚げ
- 豆腐
- きなこ
これらの食材の中で、普段の食事に取り入れやすいものを選んで積極的に摂取すると良いでしょう。
良質な睡眠を確保する
睡眠不足も頭痛の原因と言われています。厚生労働省によると、成人において6〜8時間が適正睡眠時間とされています。人によって必要な睡眠時間は異なりますが、6〜8時間を目安に睡眠をとることを心掛けましょう。
また、ただ睡眠をとるのではなく、良質な睡眠をとることも大切です。眠る直前はテレビやスマートフォンを見るのを控える、身体にあった寝具を使うなど工夫してみましょう。
なお、睡眠の取りすぎは頭痛を誘引する可能性があるため、休日に寝だめするのは避け、規則正しい生活を送るようにしてください。
参考:厚生労働省「良い睡眠の概要」
頭痛薬を予防内服する
頭痛薬は、頭痛の症状が強いときに服用しても効果を感じづらいことがあります。そのような場合は、予防内服が有効とされています。予防内服とは、NSAIDsといった頭痛の治療に使う薬を予防目的で服用することです。
月経周期が予測可能で月経に関連して頭痛が起こり、月経期間以外の頭痛の回数が少ない場合には、月経開始数日前から月経が終了するまでの短期間、予防的に治療薬を服用することが有効とされています。
生理前の頭痛をしっかり改善させるには、医療機関で受診する
生理前の頭痛には、医師が処方する医療用医薬品を服用するなどの有効な治療法があります。そのため、生理前の頭痛をしっかり改善させるには、医療機関で受診しましょう。
月経が関連しているようであれば、基礎体温表や頭痛ダイアリーを持参すると、確実な診断や治療につながるでしょう。
生理前の頭痛がある場合、ピルを飲んではいけない可能性がある
生理前の頭痛に悩む女性の中には、低用量ピルを服用して症状を抑えることができないか検討している方もいるでしょう。しかし、前兆のある片頭痛を患っている場合は低用量ピルの使用は禁忌とされており、前兆を伴わない片頭痛でもピルは慎重投与とされています。
なぜなら低用量ピルには、片頭痛がある方の脳卒中のリスクを高める可能性があるためです。よって、低用量ピルの服用を検討している方は、まずは生理前の頭痛をしっかり治療することが大切になります。
生理前の頭痛の程度には個人差がありますが、場合によっては、日常生活や仕事に支障をきたす恐れがあります。無理をせずに医療機関で受診し、適切な治療を受けるようにしましょう。
まとめ
生理前の頭痛は、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌量低下が関与するとされていますが、具体的な原因はまだはっきり解明されていません。ただし、生理前の頭痛は、適切な対処と予防を行えば改善が見込めます。
生理前に頭痛が起こった場合は、静かな部屋で安静に過ごし、患部を冷やしてみましょう。また、自分の生理周期を把握する・頭痛ダイアリーをつける・食生活を見直す・良質な睡眠をとる・頭痛薬を服用するなどの対策を行うことも大切です。
生活に支障をきたすほどの頭痛があり、しっかり改善したいならば、医療機関で受診することをおすすめします。
この記事の監修:
慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会専門医。 医師免許取得後、株式会社ボストンコンサルティンググループにてヘルスケア・IT領域にて従事。 現在は慶應義塾大学医学部助教、美容医療を主としたJSKINクリニックを経営・監修、オンライン診療サービス「レバクリ」監修。
<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS) 日本乳癌学会
※この記事は産婦人科専門医と共同で監修を行いました