更新日:2024年07月11日
生理痛がひどく、日常生活に支障をきたしている人もいるかもしれません。生理痛は、低用量ピルを服用することで改善が期待できます。また、ピルは使用目的によって保険が適用されるかどうかが変わりますが、日常生活に支障をきたすほどの生理痛は、保険適用になる可能性があります。
本記事では、低用量ピルがなぜ生理痛改善に効果があるのかを解説するとともに、低用量ピルのその他の効果や副作用などについて説明します。
低用量ピルには、エストロゲンとプロゲステロンの2種類の女性ホルモンが含有されています。
低用量ピルを服用して2種類の女性ホルモンを補充すると、必要なホルモンがすでに分泌されていると脳が判断し、卵巣にホルモン分泌の指令を出さなくなります。通常の月経・排卵に伴う急激な女性ホルモンの変化を抑えることで、月経・排卵に関連する悩みの改善に働きかけます。
日本産科婦人科学会によると、低用量ピルは、器質性月経困難症・機能性月経困難症における生理痛を軽減するとされています。器質性月経困難症は、子宮内膜症や子宮筋腫などを原因とする月経困難症(月経に伴う病的症状)です。機能性月経困難症は、子宮内膜症などの疾患がないにもかかわらず起こる月経困難症を指します。
生理痛は、子宮内膜から分泌されるプロスタグランジンという物質が原因で起こります。低用量ピルの排卵を抑制する作用によって子宮内膜を薄く保ち、プロスタグランジンの産生を抑制することで、生理痛を軽くします。
また、低用量ピルには、「低用量経口避妊薬(OC)」と「低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)」の2種類があります。OCは避妊を、LEPは月経困難症や子宮内膜症などの疾患の治療を主な目的としていますが、どちらにも生理痛緩和に効果があります。
しかし、日本のOCは自費診療であることから、生理痛をはじめとした月経困難症の緩和が目的であればLEPが選択されるのが一般的です。
参考:日本産科婦人科学会「低用量エストロゲン・プロゲストーゲン配合剤ガイドライン(案)」
低用量ピルには、生理痛緩和の効果以外にも、主に以下の4つの効果があります。それぞれ解説します。
低用量ピルは、服用している間に生理を止め、休薬期間の間に生理を促すという一連のサイクルで服用します。つまり、低用量ピルの服用により生理周期をコントロールすることで、生理不順が改善します。
具体的には、低用量ピルを21日間内服した後、7日間の休薬期間を設けます。この休薬期間に生理が生じます。
ただし、服用開始から約3ヶ月間はホルモンバランスが不安定なため、服薬期間中に不正出血が生じることもあります。これは、しばらく服用を続けていれば徐々に改善していきます。
服用を開始して3ヶ月以降も不正出血が続く場合は他の病気の可能性が考えられるため、早めに医療機関で受診しましょう。
関連記事:生理不順はピルの服用で改善が期待できる!生理不順の原因についても解説
日本産科婦人科学会によると、月経前症候群(PMS)は、月経前3~10日間続く精神的あるいは身体的症状で、月経開始とともに軽快ないし消失するものとされています。
PMSの原因ははっきりと解明されていませんが、女性ホルモンの変動が関与していると考えられています。
低用量ピルには、エストロゲン・プロゲステロンが配合されているため、服用を続けることで体内の女性ホルモンのバランスが整っていきます。
低用量ピルを服用してホルモンバランスを整えることで、月経前症候群(PMS)の改善が期待できます。
参考:日本産科婦人科学会「月経前症候群(premenstrual syndrome : PMS)」
関連記事:PMS改善にはピルが効果的?効果や値段、処方を受ける方法についても解説
日本産科婦人科学会によると、低用量ピルは、正しく服用していた場合、99.7%の避妊効果が期待できます。他の避妊法と比較しても避妊効果が高いと言われています。
ただし、低用量ピルには性感染症を防ぐ効果はないため注意が必要です。
参考:日本産科婦人科学会「低用量経口避妊薬、低用量エストロゲン・プロゲストーゲン配合剤 ガイドライン(案)」
卵巣癌は、排卵の回数が多いほど発症リスクが高まると言われています。
低用量ピルを服用すると、低用量ピルの排卵を抑制する作用が、排卵による卵巣上皮の損傷やゴナドトロピン(卵巣を刺激して卵胞を発育させるホルモン)の分泌の軽減につながります。
このことから、低用量ピルは卵巣癌の発症リスクを低下させるとされています。
また、低用量ピルは、子宮体癌の発症リスクも低下させます。子宮内膜細胞はエストロゲンにより増殖しますが、低用量ピルに含まれるプロゲステロンが細胞の増殖を抑えることで、がん細胞の生成リスクも下げるため、子宮体癌の発症リスクが低下します。
低用量ピルの副作用には、主に吐き気や頭痛、不正出血などのマイナートラブルのほか、場合によっては重篤な副作用になる血栓症があります。それぞれ解説します。
低用量ピルを服用し始めると、特に飲み始めの1〜3ヶ月はマイナートラブルの症状が現れることがあります。主なマイナートラブルの症状は以下のとおりです。
上記のマイナートラブルは、低用量ピルの服用によりホルモンバランスが変化したことで起こる症状であるため、服用を続けることでホルモンバランスは安定していき、徐々に改善します。
もし、服用を続けて3ヶ月以降も副作用の症状が続く場合は、ほかの病気の可能性が考えられるため、早めに医療機関で受診しましょう。
エストロゲンには血液を固まりやすくする作用があります。そのため、低用量ピルを服用すると血栓症の発症リスクが高まります。
日本産科婦人科学会によると、低用量ピルの服用によって血栓症を発症する確率は、年間1万人に3〜9人とされています。 一方、低用量ピルを服用していない場合に血栓症を発症する確率は、年間1万人に1〜5人です。低用量ピルを服用している人は、低用量ピルを服用していない人に比べると血栓のリスクがわずかに高まると言えるでしょう。
しかし、低用量ピルの服用で血栓が生じても、適切な治療を行えば、ほとんどの症例の血栓は消失するとされています。よって、医療機関できちんと医師による問診を受け、定期的な検査を受けていれば、万が一血栓症の兆候が見られてもすぐに治療を受けられるため、それほど怖がることはないでしょう。
参考:日本産科婦人科学会「低用量経口避妊薬、低用量エストロゲン・プロゲストーゲン配合剤ガイドライン(案)」
低用量ピルを服用できない人の例として、下記が挙げられます。
上記の喫煙習慣がある・高血圧症である・片頭痛があるという人の場合、心筋梗塞や脳卒中のリスクが高まるため、低用量ピルを服用できないことになっています。また、重篤な肝機能障害がある人は代謝能が低下しており、低用量ピルを服用すると肝臓への負担が増加してしまい、症状が増悪する可能性があります。
また、以下の項目に当てはまった場合は、低用量ピルの服用に慎重になるべきです。
上記の他にも低用量ピルの禁忌・慎重投与の項目があります。よって低用量ピルの服用を開始したい場合は、個人輸入などで入手せず、必ず医師の診察を受けて処方してもらうようにしましょう。
参考:日本産科婦人科学会「低用量経口避妊薬、低用量エストロゲン・プロゲストーゲン配合剤ガイドライン(案)」
生理痛に対する治療には、低用量ピルの服用以外に、鎮痛薬や漢方薬による治療があります。それぞれ解説します。
生理痛を抑えるためには、非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)が有効です。
NSAIDsは、プロスタグランジンの働きを抑制し、痛みを改善する効果があり、生理痛の改善に対する治療として使われます。
漢方薬は、月経困難症を効果的に治療できる可能性があるとされており、生理痛の改善のために用いられることがあります。生理痛の改善に使用される主な漢方薬は、以下のとおりです。
芍薬甘草湯は、生理痛が激しい場合に頓服で用いることができます。
なお、漢方薬治療に即効性はありません。 4〜12週間の投与で症状の改善が期待できるため、長期的に服用する必要があります。漢方薬は副作用が少なく、他の治療薬と併用できる場合もあるため、そのような治療を望む際は選択するのも一つの方法です。
参考:日本産科婦人科学会「低用量経口避妊薬、低用量エストロゲン・プロゲストーゲン配合剤ガイドライン(案)」
低用量ピルは、使用目的によって保険適用になるかならないかが決まります。具体的には、下記のとおりです。
生理痛の症状が日常生活に支障をきたしており、医師の診断によって生理痛の状態が月経困難症と認められた場合は、保険適用になります。
低用量ピルを処方してもらうには、直接医療機関に行く方法と、オンライン診療サービスを利用する方法の2つがあります。
直接医療機関に行くメリットは、対面で診察を受けられ、必要な検査もその場で実施できることです。しかし、仕事や家事などで忙しく、なかなか病院に行けないという方もいるでしょう。
オンライン診療サービスを利用するメリットは、医療機関を訪問せず、自宅で空き時間を利用して受診できる点です。また、薬局に向かう必要もなく、薬が自宅に届くのもメリットと言えるでしょう。しかし、オンライン診療サービスでは血液検査や血圧・体重・がん検診などの検査を受けることができません。問診で検査の必要性が生じた場合、医療機関に行く必要があります。
低用量ピルは、生理痛の緩和に効果があります。また、その他にも生理不順や月経困難症の改善、避妊効果、卵巣癌・子宮体癌の予防効果が期待できます。
一方で、低用量ピルを服用することで起こる吐き気や頭痛、不正出血といった副作用には注意が必要です。低用量ピルの服用を開始してから3ヶ月程度で症状は落ち着きますが、3ヶ月以降も症状が続く場合は早めに医療機関で受診しましょう。
また、重度の高血圧症や前兆のある片頭痛などにかかっていて低用量ピルを服用できない人もいます。低用量ピルが服用できない場合でも、鎮痛薬や漢方薬を服用することで生理痛を改善することは可能です。
生理痛の改善のために低用量ピルを服用したい場合は、医療機関で受診することで処方を受けられます。しかし、中には仕事で忙しい、医療機関が自宅から遠いなどの理由でなかなか受診できない人もいるでしょう。そのような場合は、オンラインで診療を行っているクリニックもあるため、ぜひ利用してみてください。
レバクリでは、低用量・中用量ピルのオンライン診療サービスを提供しています。オンライン診療であれば通院の手間や交通費などをかけずに医師に相談することが可能です。診察は無料なので、ぜひお気軽にご相談ください。
この記事の監修:
慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会認定専門医。 医師免許取得後、外資系経営コンサルティング企業のヘルスケア・IT領域にて従事。 慶應義塾大学医学部助教を経て、美容医療を主としたJSKINクリニック、及びオンライン診療サービス「レバクリ」監修。
<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS)
※この記事は産婦人科専門医と共同で監修を行いました