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更新日:2024年07月18日

ピル服用中でも妊娠の可能性はある?ピルと妊娠の関係や胎児への影響を解説

この記事のまとめ
  • ピルの服用中であっても、服用方法が誤っている、嘔吐や下痢をしたという場合は妊娠する可能性がある
  • ピル服用中で消退出血が起こらない、飲み始めでないのに不正出血がある場合は妊娠の可能性がある
  • 妊娠に気づかずピルを服用していても、胎児に影響が及ぶリスクは低い

避妊目的で服用されることも多いピルですが、ピルを服用していても妊娠する可能性はあります。

本記事では、ピル服用中の妊娠について解説します。ピル服用中に妊娠につながる要因や、妊娠に気づかずピルを服用した場合に胎児への影響があるのかなども解説するため、ぜひ参考にしてください。

ピルを服用中でも妊娠する可能性はある

ピルとは女性ホルモンが主成分の薬剤で、女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロンが含まれています。エストロゲンは子宮内膜を増殖させる役割があり、プロゲステロンには増殖した子宮内膜を維持、つまり妊娠を継続させるための役割があるホルモンです。

ピルを服用すると、体内のホルモンバランスが妊娠したときの状態に近づきます。そのため、ピルを服用すると体が妊娠していると勘違いし、排卵を促すホルモンが分泌されません。その結果として卵胞が形成されず、排卵もされないため、避妊できるのです。

しかし、ピルの服用中であっても妊娠しないわけではなく、少なからず妊娠する可能性はあります。

ピルを正しく服用すれば妊娠の可能性は0.3%

日本産科婦人科学会によると、ピルを正しく服用できていれば妊娠する可能性は0.3%程度であるとされています。

ここでいう「正しく」とは、毎日ほぼ一定の時刻に1日1錠を服用することです。ただし、毎日正しい時間に服用したとしても、わずかではありますが妊娠する可能性は否定できないということを念頭に置きましょう。

一般的なピルの服用では8%も妊娠の可能性がある

日本産科婦人科学会によると、飲み忘れなども考慮したうえで一般的な服用方法でピルを服用した場合、妊娠する可能性は8%であるとしています。

飲み忘れがたびたび発生していた周期においては、妊娠する可能性が高まるといえるでしょう。

参考:日本産科婦人科学会「低用量経口避妊薬、低用量エストロゲン・プロゲストーゲン配合剤ガイドライン(案)

ピルを服用中でも妊娠につながる要因

ここでは、ピル服用中に妊娠につながってしまう要因について解説します。

ピルの服用方法を間違えた

ピルの服用方法を間違えることで妊娠する可能性が高まります。

前述したように、飲み忘れを含め通常どおりにピルを服用できていなかった場合の妊娠率は、8%とされています。飲む時間が日によって異なっていた、1日あるいは2日分飲み忘れてしまったという場合には、正しく服用できているときに比べて妊娠するリスクが高まるといえるでしょう。

飲み合わせの悪い薬・サプリメントを飲んでいた

薬剤やサプリメントの中には、低用量ピルの効果を減弱させるものがあります。それらを服用しながら低用量ピルを服用した場合には、十分な避妊効果が得られません。ピルの効果を減弱させる薬・サプリメントの例は以下のとおりです。

種別製品名
抗生物質・ペニシリン・アンピシリン・セファロスポリン・テトラサイクリン系・クロラムヘニコール
抗結核薬・リファンピシン
抗てんかん薬・フェニトイン・バルビツール酸塩・プリミドン・エトスクシミド・カルバマゼピン
サプリメント・セント・ジョーンズ・ワート(セイヨウオトギリソウ)

抗生物質は、腸内細菌の成長を妨げ、嘔吐や下痢を引き起こしやすくするとされています。嘔吐や下痢といった症状が引き起こされた結果、腸管でピルの有効成分が十分に吸収されず血中の女性ホルモンの量が少なくなるため、併用することで避妊効果が得られない場合があります。

また、抗結核薬や抗てんかん薬、セント・ジョーンズ・ワートは、薬の成分の代謝を行うCYP3A4という酵素を誘導する作用があります。薬はCYP3A4によって代謝される量を見込んで成分の量が決められているため、代謝が促進されると、体内に吸収される薬の成分が少なくなってしまいます。

そのため、これらの薬を服用している方が低用量ピルを服用すると、ピルの効果が十分に出ないとされています。

ピルの副作用により嘔吐・下痢をしていた

ピルの副作用に嘔吐や下痢があります。

ピル服用後に下痢や嘔吐をするとピルが十分に吸収されず、薬の効果を十分に発揮できないケースがあります。

日本産科婦人科学会によると、ピル服用中に妊娠した方の46%が、嘔吐もしくは下痢に関連している可能性があるとしています。

ピルを服用後2時間以上経ってからの嘔吐や下痢については、ピルが体内で十分に吸収され、避妊効果が担保されると考えられているため、問題ありません。服用後2時間未満で嘔吐や下痢をした場合、できる限り早めにピルをもう1錠服用することが推奨されています。

また、24時間以上の嘔吐や下痢に見舞われているという場合には、ピルの成分が吸収されていない、あるいは吸収が不完全となっている可能性があるため、一旦ピルの服用を中止し、医師に今後の服用について相談するとよいでしょう。

参考:日本産科婦人科学会「低用量経口避妊薬、低用量エストロゲン・プロゲストーゲン配合剤ガイドライン(案)

ピルの効果がまだ出ていなかった

ピルの服用を開始してから効果が現れるのは、ピルの飲み始めのタイミングで変わります。生理が始まったタイミングで服用を開始した場合は当日から、それ以外のタイミングでは1週間後からといわれています。そのため、生理が始まったタイミングで服用を開始していない場合、ピル服用開始直後はまだ効果が得られておらず、妊娠する可能性が高いといえるのです。

日本産科婦人科学会によると、ピル服用開始時に卵胞径が10mmであった場合は、排卵した女性が0%であったものの、14mmでは36%、18mmでは 93%の女性が排卵したと報告されています。

また、この卵胞径が10mm以上に達した方の約9割が月経周期5日目にピルを服用開始していました。つまり、ピルの服用開始直後であり、なおかつ月経開始5日目にピルの服用を開始している場合には、妊娠の可能性は十分にあるといえるでしょう。

妊娠の可能性を十分に考慮し、WHOの指針では月経周期5日目を過ぎてからピルの服用を開始した場合には、追加の避妊法を用いるか、7日間は性交渉を避けておくべきであるとしています。

参考:日本産科婦人科学会「低用量経口避妊薬、低用量エストロゲン・プロゲストーゲン配合剤ガイドライン(案)

ピルの服用中に妊娠が疑われるケース

ここでは、ピルの服用中に妊娠が疑われる場合の症状について解説します。

消退出血が1週間以上遅れる

ピル服用中は生理周期が安定するケースがほとんどといわれています。そのため、生理が1週間以上遅れると妊娠している可能性があるといえるでしょう。

ピルの休薬期間に起こる出血は、生理ではなく消退出血と呼ばれるものです。ピルの休薬によってホルモンが補充されなくなった際に、子宮内膜が剥がれ落ちることで起こるとされており、通常は、生理と同じように5日程度起こるとされています。

日本産科婦人科学会によると、ピルを服用している人で消退出血が起こらない確率は1%未満とされているため、消退出血が起こらなかったら妊娠を疑って良いでしょう。

参考:日本産科婦人科学会「低用量経口避妊薬、低用量エストロゲン・プロゲストーゲン配合剤ガイドライン(案)

不正出血がある

ピルを飲み始めたときは不正出血することがありますが、飲み始めて1~2ヶ月ほど過ぎれば不正出血は起こらなくなるとされています。

そのため、休薬期間でない時期に少量の出血が短期間でも見られた場合には、妊娠の可能性があります。不正出血のあった周期に消退出血が起こらなかったという場合には妊娠を疑って検査をしてみてもよいでしょう。

ピル服用中の妊娠による胎児への影響

ピルは主に避妊を目的としており、妊婦が服用する薬剤ではないため、妊娠中の服用による安全性は確立されていません。そのため、ピル服用中に妊娠が分かったらすぐに服用を中止しましょう。

妊娠初期などで、妊娠に気づかずにピルを服用してしまうこともあるかもしれません。そのような場合でも、ピル服用による胎児の催奇性の報告はほぼないとされているため、ピルを妊娠中に服用していたとしても、胎児に大きな影響を与える可能性は少ないといえるでしょう。

まとめ

ピルを正しく服用しても0.3%の確率で妊娠する可能性があります。飲み忘れがあったり同じ時間に服用していなかったりする場合は8%程度妊娠する可能性があり、ピルを服用したとしても100%避妊できるというわけではありません。

また、飲み合わせの悪い薬との併用や嘔吐・下痢などの症状によってピルの効果が十分に出ず、妊娠する可能性もあります。

ピル服用中で、服用開始1~3ヶ月後でないにもかかわらず不正出血がある、もしくは消退出血が起こらないという方は、妊娠を疑い、妊娠検査薬あるいは医療機関で妊娠の有無を確認しましょう。

ピル服用中でも妊娠するリスクがあることを考慮し、妊娠したくないという方はほかの避妊方法も併用すると良いでしょう。

この記事の監修:

牧野潤医師

慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会専門医。 医師免許取得後、株式会社ボストンコンサルティンググループにてヘルスケア・IT領域にて従事。 現在は慶應義塾大学医学部助教、美容医療を主としたJSKINクリニックを経営・監修、オンライン診療サービス「レバクリ」監修。

<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS) 日本乳癌学会

※この記事は産婦人科専門医と共同で監修を行いました