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更新日:2024年06月25日

授乳中にピルは服用できる?服用できる時期や他の避妊方法も解説

この記事のまとめ
  • 授乳中に低用量ピルが服用できるのは、産後6ヶ月以降
  • 産後すぐに低用量ピルが服用できないのは、産後6ヶ月未満、特に産後1~6週は血栓のリスクが高いため
  • 授乳中の低用量ピル服用による赤ちゃんへの影響は明らかになっていない
  • 授乳中であっても排卵している可能性があるため、妊娠を避けたい場合は避妊が必要
  • 低用量ピル以外の避妊方法には、コンドームや子宮内避妊用具などがある

授乳中でも排卵が起きている可能性はあり、妊娠を望まない場合は何かしらの避妊方法をとる必要があります。避妊方法として低用量ピルの服用を検討しているけれど、授乳中に服用しても良いのか、赤ちゃんに影響はないのかが気になっている人もいるでしょう。

本記事では、授乳中の低用量ピルの服用について解説します。また、低用量ピルが服用できない期間の他の避妊方法についても紹介します。

授乳中にピルを飲んでも大丈夫?

日本産科婦人科学会によると、低用量ピルは、授乳中でも産後6ヶ月以降であれば服用可能とされています。

産後に避妊目的で低用量ピルを服用したい場合は、授乳の有無や血栓症のリスクによって対応が異なるため、必ず医療機関で受診し、処方してもらうようにしてください。

授乳していない人は、血栓症のリスクがない場合は産後21日以降、血栓症のリスクがある場合は産後42日以降に低用量ピルの服用を開始できます。

参考:日本産科婦人科学会「低用量経口避妊薬、低用量エストロゲン・プロゲストーゲン配合剤ガイドライン(案)

産後すぐの低用量ピル服用がダメな理由

もともと妊娠中から産後6ヶ月までの間は、エストロゲンの作用や血液が固まろうとする血小板の働きが強くなり、血栓症のリスクが高くなります。そのため、血栓症の副作用がある低用量ピルを服用することはできません。

日本産科婦人科学会のガイドラインを参考に、以下に産後の血栓症の発生倍率について、非妊娠時を1とした比較表を記載します。

時期倍率
非妊娠時1
妊娠初期・中期1.6
妊娠後期8.8
産褥1〜6週84
産褥7週〜3ヶ月8.9
産褥4ヶ月〜1年0.3

産褥(分娩後から非妊娠時の体に戻る期間)1~6週の血栓症の発生倍率をさらに細分化した比較表は、以下のとおりです。

時期倍率
妊娠後期1
産褥1週24.8
産褥2週10.2
産褥3週4.4
産褥4週2.2
産褥5週1.5
産褥6週2.2

産褥1〜6週の血栓症の発生率は時間とともに低下し、産褥4週以降はほぼ一定です。

上記の表からわかるとおり、産後すぐは血栓症のリスクが高く低用量ピルを服用できません。また、人によって血栓症リスクの高さが違うため、服用を開始できる時期は異なります。

参考:日本産科婦人科学会「低用量経口避妊薬、低用量エストロゲン・プロゲストーゲン配合剤ガイドライン(案)

授乳中の低用量ピルの赤ちゃんへの影響

日本産科婦人科学会によると、「授乳中のOC使用による母児への影響に関する報告は一致しておらず、重篤もしくは長期にわたるリスクが存在するかどうか明らかではない」としています。

つまり、低用量ピルの赤ちゃんへの影響に対する科学的データがないため、「授乳中で避妊したいけれど低用量ピルの赤ちゃんへの影響が心配」という場合は、他の避妊方法を選択することをおすすめします。

参考:日本産科婦人科学会「低用量経口避妊薬、低用量エストロゲン・プロゲストーゲン配合剤ガイドライン(案)

授乳中でも妊娠する可能性はある

産後に性行為を再開できるのは、産後およそ1ヶ月です。ただし、医師の許可のもと再開してください。 産後の1ヶ月検診の際に、医師が悪露や傷、子宮の回復状態を確認し、問題ないと判断すれば再開することができます。

また、授乳していない場合、一般的に産後4~8週間後に生理が始まります。一方、授乳中であれば生理の再開は遅れる傾向があります。 授乳の回数が多く、授乳期間が長いほど生理の再開は遅れることが多いとされています。

しかし、産後の生理の再開時期には個人差があり、授乳中であっても早いタイミングで生理が再開したり、生理がなくても排卵していたりする場合があります。「授乳中であれば、生理の再開が遅れ、排卵もしないため妊娠しない」と思っている人もいるかもしれませんが、授乳中であっても妊娠する可能性はあります。

したがって、妊娠を望んでいないのであれば、授乳中で生理が再開していなくても避妊なしの性行為は避けるようにしましょう。

低用量ピル以外の授乳中の避妊方法

妊娠を望んでいない場合、産後6ヶ月までは低用量ピル以外の避妊方法を選択しましょう。低用量ピル以外の避妊方法には、コンドームと子宮内避妊用具があります。それぞれ解説します。

コンドーム

厚生労働省研究班監修のヘルスケアラボによると、コンドームの避妊失敗率は、理想的な方法で使用した場合が2%、一般的な方法で使用した場合が15%とされており、一定の避妊効果が見込めます。

コンドームは、副作用がないことと性感染症の予防ができることが大きなメリットです。コンビニや薬局などで手軽に購入でき、費用が安いのも良い点です。

ただし、性行為中にコンドームが破れたり外れたりする危険性や、正しく装着していないと避妊効果が得られなくなるため取り扱いには注意しましょう。

また、コンドームの使用はパートナーの協力が不可欠ですので、妊娠を望んでいないことやピルを服用できないことを理解してもらったうえで使用するのが望ましいです。

参考:ヘルスケアラボ「避妊

子宮内避妊用具(IUD)

子宮内避妊用具(IUD)とは、子宮内に装着し、受精卵が子宮内膜に着床することを防ぐ小さな器具のことです。

子宮内避妊用具は、一度装着すれば、数年にわたり避妊効果が得られます。基本的に、子宮内避妊用具の装着は出産経験者で長期の避妊を望む人に適しています。なぜなら、出産経験がない方は子宮が開きにくく、装着時に痛みを伴いやすいからです。

日本で使用可能な子宮内避妊用具は、従来型のIUD(FD-1)のほかに、銅イオンによって精子の侵入と着床を防ぐ銅付加IUDや、レボノルゲストレルを放出する子宮内システム(LNG-IUS)などがあります。レボノルゲストレルは、低用量ピルにも使われる女性ホルモンで、避妊効果や生理痛・出血の軽減効果が期待できるものです。

これらは授乳中であっても使用することが可能で、かつ子宮内に避妊用具を挿入するため、避妊にパートナーの協力は必要ありません。

しかし、子宮内避妊用具による妊娠率は、銅付加IUDは装着初年度0.5%、装着後5年間で1.9%、レボノルゲストレル放出子宮内システムは装着初年度0.1%、装着後5年間で0.5%と報告されており、完全な避妊はできません。

また、子宮内避妊用具の位置や部分脱落、子宮に穴が空いていないかの確認のために、装着後の定期的な診察が勧められています。

費用は、医療機関によって異なりますが、銅付加IUDは15,000~30,000円程度、IUSは30,000〜60,000円程度かかります。

参考:日本産科婦人科学会/日本産婦人科医会「産婦人科診療ガイドライン―婦人科外来編2020

まとめ

授乳中の場合、低用量ピルの服用が開始できるのは産後6ヶ月以降です。

しかし、低用量ピルの赤ちゃんへの影響に対する科学的根拠は明らかにされていないため、赤ちゃんへの影響が心配な場合は、他の避妊方法を選択しましょう。低用量ピル以外の避妊方法には、コンドームや子宮内避妊用具などがあります。

産後授乳していない人に比べ、授乳している人は生理の再開が遅れる傾向があります。しかし、生理が再開していない場合でも排卵している可能性はあります。よって、産後に妊娠を望んでいない場合は、避妊を行うことが重要です。妊娠を望んでいない場合、低用量ピルを服用できない時期は必ず他の方法で避妊するようにしてください。

もし、産後6ヶ月が過ぎて低用量ピルの服用を開始したい場合は、オンライン診療が便利です。産後は育児で忙しく、「病院に行きたいけれどなかなか時間をとれない」という方もいるでしょう。オンライン診療であれば自宅にいながら診察を受けられ、低用量ピルを自宅に届けてもらうことが可能です。医療機関への通院が難しい場合は、ぜひオンライン診療を活用してみてください。

この記事の監修:

牧野潤医師

慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会専門医。 医師免許取得後、株式会社ボストンコンサルティンググループにてヘルスケア・IT領域にて従事。 現在は慶應義塾大学医学部助教、美容医療を主としたJSKINクリニックを経営・監修、オンライン診療サービス「レバクリ」監修。

<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS) 日本乳癌学会

※この記事は産婦人科専門医と共同で監修を行いました