レバクリ

更新日:2024年07月11日

生理痛で病院を受診する目安は?受診時のポイントや診察内容も解説

この記事のまとめ
  • 生理痛で病院を受診する目安は、痛みで動けない、市販の痛み止めが効かない、日常生活に支障がある場合など
  • 生理痛で病院を受診するときは、日ごろから基礎体温や症状がいつ出たかを記録しておき、前日の性行為は控える
  • 病院で受診するときは、問診のほかに、内診や超音波検査、採血などを行う場合がある
  • 生理痛の原因は、プロスタグランジンの過剰な分泌や子宮内膜症などの疾患である

生理が来るたびに生理痛がひどく、病院で受診しようか悩んでいる方もいるのではないでしょうか。生理痛の感じ方には個人差があり、つらいと感じているなら我慢せずに病院で受診することが大切です。

本記事では、生理痛で病院を受診する目安や受診するときのポイントを解説します。また、受診するときの診察内容や、生理痛が起こる原因とその治療方法についてもお伝えします。

生理痛で病院を受診する際の目安

生理痛で病院を受診する目安は下記のとおりです。

  • 痛みで動けない
  • 市販の痛み止めが効かない
  • 生理のたびに痛みが強くなる
  • 出血量が多くなった
  • 日常の仕事や学校生活に支障がある

生理痛で病院を受診する際は、痛みを感じたときに婦人科や産婦人科に行くのが一つのタイミングです。ただし、生理で出血している場合、実施できない検査もあるため、なるべく生理が終わってから受診するのが望ましいでしょう。

生理中は受診を避けた方が良いですが、どうしても痛みが強いときは生理中でも問題ありません。また、痛みを我慢することは不要です。経済産業省の資料によると、働いている女性の2人に1人が女性特有の健康課題に悩まされた経験があるとしており、そのうちの72%が生理痛・生理不順といった月経関連の症状・疾病とされています。

生理中の出血量の増加や、生理痛に対して薬を服用しても改善しない場合にも病院で受診すると良いでしょう。

参考:経済産業省ヘルスケア産業課「健康経営における女性の健康の取り組みについて

生理痛で病院を受診するときのポイント

生理痛で病院を受診するときのポイントは、下記の4つです。

  • 着脱しやすい服装を着る
  • 受診日前日の性行為は避ける
  • 基礎体温を記録しておく
  • 生理痛などの症状がいつ起こっているか記録しておく

1つずつ解説します。

着脱しやすい服装を着る

生理痛により病院で受診するときは、問診だけでなく内診を行う場合があります。着脱しやすい服装にし、なるべくスカートで受診しましょう。

内診を行う際は下着まで脱ぐ必要があるため、デニムなどのパンツスタイルで受診すると、すべて脱ぐことになってしまいます。

スカートであれば、下着のみ脱ぐことで内診を受けられます。また、スカートが汚れてしまう可能性があるため、白色は避けるのが無難です。

受診日前日の性行為は避ける

受診日前日は性行為を避けましょう。性行為により、膣内が傷ついたり、短期間ではあるものの細菌が増えてしまったりします。

膣内が傷ついていると、内診に影響が出てしまいます。また、細菌が増えている状態で検査をすると、正しい結果が出ず、診断結果に影響を及ぼす可能性があります。

生理痛により病院で受診すると決めたら、パートナーと相談して性行為は控えましょう。

基礎体温を記録しておく

基礎体温を記録しておくと、生理周期における卵胞期や黄体期のリズムが分かります。リズムが分かっていると、生理痛が起こるタイミングの予測が可能です。

基礎体温を計測する方法は、朝目覚めて寝たままの状態で基礎体温計を使用します。測定した体温を基礎体温表に記録します。基礎体温表は、「基礎体温表 ダウンロード」などで検索すると無料でダウンロードできるサイトが見つかるため、そちらを印刷して使用すると良いでしょう。

基礎体温の記録期間の理想は2~3ヶ月とされており、毎日測定することが望ましいです。しかし、1~2日忘れても問題ありません。

普段から基礎体温を記録しておくと、自分で症状が出現する時期がわかったり、受診時に医師が症状を把握しやすくなったりするメリットがあります。

生理痛などの症状がいつ起こっているか記録しておく

生理痛などの症状がいつ起こっているか記録しておきましょう。基礎体温の記録とともに、症状を記録しておくと、症状の出現時期が分かりやすくなります。

記録しておく主な症状は、下記のとおりです。

  • 生理痛
  • 不正出血の有無
  • 月経周期や出血量

記録があると問診や診察の際に、記録した内容を確認しながら説明できます。

生理痛で病院を受診するときの診察内容

生理痛で病院を受診したときの診察内容は、下記のとおりです。

  • 問診
  • 診察
  • 内診
  • 超音波(エコー)検査
  • 採血や尿検査

問診で確認するのは、いつから生理痛があるのか、どれくらいの痛みがあるか、性行為の経験があるかなどです。また、子宮に関する疾患の既往歴なども質問されます。

問診を実施し、必要に応じて内診や検査が実施されます。

内診とは、医師が膣に指や器具を入れ、子宮の腫れや痛みの有無を確認することです。内診を終えて、検査の必要があると医師が判断した際は、採血や尿検査、超音波検査が行われます。

生理痛が起こる原因

生理痛が起こる原因は、子宮内膜が剥がれるときに分泌されるプロスタグランジンという物質です。

子宮は、月経が近づくにつれ、女性ホルモンであるエストロゲンにより、子宮内膜が厚くなっていきます。妊娠が成立しなければ、厚くなった子宮内膜が剥がれ落ちます。このとき、プロスタグランジンの分泌が促進され、痛みが生じるのです。

生理痛がひどい場合は、月経困難症と診断されることがあります。月経困難症は、約8割の女性が経験しているという報告があります。他にも、子宮内膜症などの子宮に関係する疾患を発症している可能性があります。

参考:野萱 純子, 女性の痛みを心身から考える, 特集 第30回日本女性心身医学会研修会報告, 2020年 25巻 2号 p.100-102

関連記事:生理はなぜ起こる?メカニズムや生理痛の仕組みについて詳しく解説

月経困難症の種類

日常生活に支障をきたすほど生理痛がひどい場合は「月経困難症」と診断されることがあり、月経困難症は下記の2種類に大別できます。

  • 機能性月経困難症
  • 器質性月経困難症

それぞれ解説します。

機能性月経困難症

機能性月経困難症とは、子宮内膜症などの疾患が原因ではない月経困難症を指します。初経後2~3年以内に起こりやすく、10~20代の方に多い症状です。主な原因は、プロスタグランジンが多く分泌されたり、子宮頸管の縮小により経血が流れず、プロスタグランジンによる子宮の収縮回数が多くなったりすることです。

また、生理に対する不安などの心理的な要因も機能性月経困難症に影響すると考えられています。

器質性月経困難症

器質性月経困難症は、原因となる疾患がある月経困難症を指します。主な疾患は下記のとおりです。

  • 子宮内膜症
  • 子宮筋腫
  • 子宮腺筋症
  • 卵巣嚢腫

1つずつ解説します。

子宮内膜症

子宮内膜症は、本来子宮にできる内膜が、卵巣や卵管など子宮以外の場所で増殖してしまう疾患です。卵巣に子宮内膜が発生すると、チョコレート嚢胞と呼ばれます。

子宮内膜症を発症すると、生理周期に合わせて子宮以外でできた子宮内膜も厚くなるため、血液がうまく排出されなかったり、周囲にある組織と炎症を起こし、くっついたりして痛みを引き起こします。

子宮内膜症は長期的にそのままにしておくと、不妊の原因になる可能性があります。

子宮筋腫

子宮筋腫は、子宮の粘膜や筋層などにできる腫瘍のことです。子宮筋腫は、エストロゲンの作用によって大きくなります。

子宮筋腫は良性の腫瘍で、ほとんどの場合は無症状で経過します。しかし、子宮の内側に子宮筋腫ができると、生理中の出血量が増えたり、生理痛・腰痛を起こしたりする可能性があります。

子宮腺筋症

子宮腺筋症は、子宮内膜に類似した組織が子宮の筋層にできる疾患です。エストロゲンにより症状が進行します。

主な症状は、生理痛や生理中の出血量増加、貧血です。

卵巣嚢腫

卵巣嚢腫は、卵巣に発生した腫瘍のことです。多くは無症状のまま経過しますが、卵巣嚢腫が進行し20~30cmまで大きくなることもあり、お腹の張りや下腹部の痛み、頻尿などの症状が現れます。

月経困難症の治療方法

機能性月経困難症と器質性月経困難症の治療方法をそれぞれ解説します。

機能性月経困難症の治療方法

機能性月経困難症の治療としては、プロスタグランジンの産生を抑えるために、非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)が有効です。NSAIDsを服用しても痛みが軽減しない場合は、低用量ピルが有効です。

ほかにも、カウンセリングも一つの方法とされています。初経後に起こりやすい機能性月経困難症の方は、月経に対する捉え方がネガティブになっており、心理的な原因もあるからです。月経が将来的に妊娠するための準備であるなど、ポジティブな考えを持てるように意識を改善することも効果的です。

器質性月経困難症の治療方法

器質性月経困難症を治療するには、原因となる疾患の治療が必要です。

また、疾患による生理痛に対しても、NSAIDsを服用して痛みの軽減を試みます。NSAIDsを服用しても痛みが改善しない場合は、低用量ピルを服用します。ただし、NSAIDsはあくまで痛みを和らげるための対症療法で、子宮内膜症などの疾患の進行を止める効果は乏しい点に注意しておきましょう。

子宮内膜症や子宮筋腫、子宮腺筋症は、エストロゲンにより症状が進行します。そのため、低用量ピルを服用して排卵を抑制すると、エストロゲンの分泌が減少して進行を抑制することが可能です。

低用量ピルを服用しても改善しない、もしくはチョコレート嚢胞を発症している場合、必要に応じて手術療法を行うケースがあります。

まとめ

生理痛により病院で受診する目安は、痛みで動けない、市販の痛み止めが効かない、日常生活に支障があるなどです。

生理痛で受診しようと考えた際は、基礎体温や症状がいつ起きているかを記録して、受診の際に医師にスムーズに説明できるようにしておくと良いでしょう。

生理痛は、厚くなった子宮内膜が剥がれ落ちるときに起こる症状で、生理の度に起こります。痛みに悩まされないで過ごしたいと考えている方は、低用量ピルの服用を検討してみてはいかがでしょうか。

低用量ピルは、排卵を抑制する効果があり、子宮内膜が厚くならないため痛みの軽減が期待できます。また、器質性月経困難症による生理痛の場合、原因となる疾患の進行を抑制する効果も期待できます。

生理痛は多くの女性が悩まされており、感じ方には個人差があります。痛みを我慢せずクリニックで受診し、医師に相談してみましょう。また、生理痛があるときにクリニックへ行くのは大変なため、自宅で医師に相談できるオンライン診療の利用も検討してみてください。

この記事の監修:

牧野潤医師

慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会専門医。 医師免許取得後、株式会社ボストンコンサルティンググループにてヘルスケア・IT領域にて従事。 現在は慶應義塾大学医学部助教、美容医療を主としたJSKINクリニックを経営・監修、オンライン診療サービス「レバクリ」監修。

<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS) 日本乳癌学会

※この記事は産婦人科専門医と共同で監修を行いました