更新日:2024年07月11日
中用量ピルとは?低用量ピルとの違いや処方目的・服用方法を解説
- 中用量ピルと低用量ピルの違いは卵胞ホルモンの配合量
- 中用量ピルの処方目的は月経移動や月経困難症などの治療
- 中用量ピルは低用量ピルより副作用が強く出る傾向がある
- 中用量ピルは婦人科の病院に行くかオンラインクリニックで受診することで入手できる
中用量ピルの服用を検討している方の中には、中用量ピルの服用目的や、低用量ピルとの違いがよくわからない方もいるのではないでしょうか。中用量ピルは、月経移動や月経困難症などの治療に用いられる薬です。
この記事では、中用量ピルの特徴や低用量ピルとの違い、処方目的、服用方法を解説します。また、中用量ピルで生理日を移動するための具体的な服用方法や、中用量ピルの副作用についても解説します。中用量ピルについて詳しく知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
中用量ピルとは
現在、中用量ピルとして処方されている薬は1シート21錠のプラノバールのみになります。はじめに、中用量ピルの特徴や、低用量ピルとの違いを解説します。
中用量ピルの特徴
中用量ピルは、主に月経移動や月経困難症などの治療を目的として処方される薬です。卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)の2種類の女性ホルモンが配合されています。
1999年に低用量ピルが認可される前までは、中用量ピルが一般的なピルとして処方されていました。中用量ピルは、低用量ピルに比べて効き目が強い反面、副作用が強く出やすいという特徴があります。
低用量ピルとの違い
中用量ピルと低用量ピルの違いは、卵胞ホルモンの配合量です。中用量ピルは卵胞ホルモンの配合量が0.05mg以上、低用量ピルは0.05mg未満となります。
卵胞ホルモンの配合量が多いほど副作用が強く出る傾向があり、低用量ピルで十分避妊効果は得られるため、中用量ピルは避妊目的での使用には適していないと判断されています。そのため、避妊や月経トラブルの改善目的では、低用量ピルが処方されるのが一般的です。
なお、中用量ピルと低用量ピルのどちらが適しているかは、個人の体質や目的によって異なります。中用量ピルの服用を開始する際は、必ず医師の診察を受けましょう。
中用量ピルの処方目的
中用量ピルは、主に以下の3つの目的で処方されます。
- 月経移動
- 月経困難症の治療
- 緊急避妊
それぞれ解説します。
月経移動
中用量ピルに配合されている女性ホルモンは、生理をコントロールする働きがあり、生理を遅らせたり早めたりできます。そのため、旅行や試験などの予定にあわせて、生理の時期をずらしたい場合に使用されます。
なお、月経移動を希望する際は、後述する正しい用法・用量での服用が大切です。正しい方法で服用しないと、月経移動がうまくいかないだけでなく、副作用のリスクが高まる可能性があります。
月経困難症の治療
月経困難症とは、日常生活に支障をきたすほどの生理痛や生理不順などの月経トラブルの総称です。中用量ピルは、月経痛や出血量の多さ、月経前症候群(PMS)などの月経トラブルの改善を図る際に処方されます。
中用量ピルの服用により、卵胞ホルモンと黄体ホルモンのバランスを整え、月経痛や生理不順の改善が期待できます。また、子宮内膜症などの月経困難症につながる婦人科疾患の治療を目的として用いられる場合もあります。
緊急避妊
緊急避妊とは、性交後72時間以内にピルを服用することで、妊娠の可能性を下げることを指します。
中用量ピルを緊急避妊薬として服用する用法は、ヤッペ法と呼ばれています。日本産科婦人科学会によると、ヤッペ法の避妊率は、性行為から24時間以内の服用で約77%、48時間以内で約36%、72時間以内で約31%とされています。性行為から服用までの時間が早ければ早いほど、避妊効果は高くなります。
しかし、現在緊急避妊には中用量ピルではなくアフターピルの服用が主流です。日本産科婦人科学会によると、アフターピルは、性行為後24時間以内に服用すれば、約95%の確率で妊娠を防げるとのデータがあります。中用量ピルの避妊率約77%とくらべ、かなり高い避妊率です。また、アフターピルは副作用が比較的少ないというメリットもあります。
参考:日本産科婦人科学会「緊急避妊法の適正使用に関する指針 (平成28年度改訂版)」
中用量ピルの服用方法
中用量ピルは、正しく服用することで効果を発揮します。ここからは、中用量ピルの服用方法を状況別に解説します。
- 生理日を早めたい場合
- 生理日を遅らせたい場合
- 月経困難症を治療する場合
- 緊急避妊薬として服用する場合
それぞれ解説します。
生理日を早めたい場合
中用量ピルで生理を早める具体的な服用方法は、以下のとおりです。
- 早めたい生理日の一つ前の生理開始から5日以内に服用をはじめる
- 希望の生理予定日の2日前まで1日1錠の服用を続ける
- 服用をやめると2~3日後に生理がはじまる
上記の服用方法により、7~10日ほど生理を早めることが可能となります。
生理日を遅らせたい場合
生理日を遅らせたい場合は、遅らせたい生理予定日の5〜7日前から中用量ピルを服用します。中用量ピルを服用している期間は排卵が抑制されるため、生理が起こりません。
具体的な服用方法は、以下のとおりです。
- 遅らせたい生理予定日の5〜7日前から服用をはじめる
- 希望の生理予定日の2日前まで1日1錠の服用を続ける
- 服用をやめると2~3日後に生理がはじまる
月経を移動するには、普段から生理周期を正しく把握しておく必要があります。そのうえで、余裕を持ってクリニックで受診し、医師に中用量ピルを処方してもらいましょう。
月経困難症を治療する場合
月経困難症の治療目的で中用量ピルを服用する場合は、生理開始後の5日目から服用を開始し、21日間毎日1錠ずつ同じ時間に服用します。その後7日間の休薬期間を挟み、これを1サイクルとしてまた21日間の服用を開始します。
中用量ピルの継続した服用により、月経痛や出血量の多さなどの月経困難症の改善が期待できます。
緊急避妊薬として服用する場合
中用量ピルを緊急避妊薬として服用する方法は、以下のとおりです。
- 性行為後72時間以内に中用量ピルを2錠服用する
- 1回目の服用から12時間後にさらに中用量ピルを2錠服用する
先に述べたとおり、中用量ピルを緊急避妊薬として服用するのは、現在第一選択肢ではありません。より確実な避妊効果を得るためには、アフターピルを服用しましょう。
中用量ピルのデメリット
中用量ピルには、以下の注意すべきデメリットがあります。
- 副作用が強く出る傾向がある
- 血栓症のリスクが高まる
ここからは、それぞれのデメリットを解説します。
副作用が強く出る傾向がある
中用量ピルは卵胞ホルモンの量が多いため、低用量ピルと比べると副作用が強く出る傾向があります。中用量ピルの副作用の例は、以下のとおりです。
- 吐き気・嘔吐
- 頭痛
- 乳房の張り・痛み
- 体重増加
- 不正出血
- 食欲不振
これらの副作用は、低用量ピルでも起こる可能性がありますが、中用量ピルは、副作用がより強く出たり、長引いたりすることがあります。吐き気や頭痛には、市販の吐き気止めや鎮痛剤の服用が有効です。
血栓症のリスクが高まる
中用量ピルは、血栓症のリスクが高まるデメリットもあります。血栓症とは、血管内に血の塊ができて血流が阻害される病気です。血栓症が起きると、肺塞栓症や脳梗塞などの重篤な病気を引き起こす可能性があります。
低用量ピルを服用してもまれに血栓症になる可能性がありますが、中用量ピルのほうがリスクが高まります。
特に以下に該当する方は、中用量ピルの服用ができないケースが多いです。
- 35歳以上の喫煙女性
- 家族に血栓症の既往歴がある方
- 肥満の方
- 心臓病や脳血管障害の既往歴がある方
- 高血・糖尿病・脂質異常症の方
- 前兆を伴う片頭痛がある方
中用量ピルの服用を検討する際には、これらのデメリットを理解したうえで、医師と相談するようにしましょう。
中用量ピルの処方を受ける方法
中用量ピルは市販されていないため、ドラッグストアなどでは購入できません。入手するには、医師の処方が必要です。中用量ピルの処方を受ける方法には、以下の2つがあります。
- 婦人科の病院に行く
- オンラインクリニックを利用する
それぞれの方法の特徴を解説します。
婦人科の病院に行く
中用量ピルの服用を開始するには、医師の診察を受ける必要があります。診察では、生理周期や既往病などの健康状態についての問診があります。
対面診療では、問診の結果により必要に応じて血液検査などの検査を受けることが可能です。持病がある方や服用開始前に検査を受けたいと考えている方は、婦人科の対面診療が適しているでしょう。
オンラインクリニックを利用する
忙しくて病院に行く時間がない方や、婦人科の病院が遠方で通うのが大変という方はオンラインクリニックの利用が便利でしょう。
オンラインクリニックを利用する場合は、以下の流れで処方が受けられます。
- オンラインクリニックのサイトから、診察予約をする
- スマートフォンやパソコンを使って医師の診察を受ける
- 処方されたピルが配送で届く
オンライン診療では、ビデオ通話を利用して自宅や外出先など好きな場所で医師の診察が受けられます。誰にも知られずに診察が受けられるため、プライバシーが気になる人にも適しています。
また、オンラインクリニックは初診料や薬代が抑えられている傾向があります。中用量ピルの費用を抑えたい場合は、オンラインクリニックを利用するのも一つの方法です。
まとめ
この記事では、中用量ピルと低用量ピルとの違いや、処方目的・服用方法について解説しました。
中用量ピルは、主に生理日の移動や月経困難症などの治療に使用される薬です。低用量ピルと比較すると、副作用が強く出たり血栓症のリスクが高まったりするデメリットがあります。しかし、それらを理解したうえで医師の指導のもと服用すれば、安全に使用できる薬です。
中用量ピルの服用を検討している方は、まずは医師に相談し、自身の体質や状況にあっているかを判断してもらうことが大切です。
中用量ピルは、オンラインクリニックでも処方が受けられます。オンラインクリニックは、忙しくて病院に行く時間がない人や、自宅で診察を受けたい人におすすめです。ぜひ、自分にあった方法で受診し、中用量ピルを活用してみましょう。
レバクリでは、低用量・中用量ピルのオンライン診療サービスを提供しています。診察は無料なので、ぜひお気軽にご相談ください。
この記事の監修:
慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会専門医。 医師免許取得後、株式会社ボストンコンサルティンググループにてヘルスケア・IT領域にて従事。 現在は慶應義塾大学医学部助教、美容医療を主としたJSKINクリニックを経営・監修、オンライン診療サービス「レバクリ」監修。
<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS) 日本乳癌学会
※この記事は産婦人科専門医と共同で監修を行いました