更新日:2024年07月19日
ピルを飲むときは血液検査が必要?検査を行う理由や内容について解説
- ピル処方時の血液検査は必須ではない
- 血液検査はピルの副作用のリスクをチェックする目的で行われる
- 血栓症のリスクがあると判断された場合、ピルの処方前に血液検査を受ける場合がある
- 病気の治療目的でピルを服用する場合は、保険適用で血液検査が受けられる
ピル処方時の血液検査は任意ですが、人によっては必要となる場合もあります。本記事では、ピルの処方時に血液検査をすることがある理由や、どういった人に血液検査が必要となるのかを解説します。また、血液検査の費用についても解説するため、ぜひ参考にしてください。
ピルの処方にあたり血液検査は必須ではない
ピルを処方してもらうにあたり、血液検査は必須ではありません。血液検査を受けなくてもピルの処方を受けられます。
ただし、どのような場合でも血液検査をしなくて良いということではなく、医師が必要と判断した場合には血液検査を受けなければなりません。
また、ピル服用中は、副作用の有無を確認する目的で採血を実施することがあります。
特に、ピルの服薬を開始して半年〜1年ごとに各種血液検査を行うことが推奨されているため、ピル服用中の方に血液検査を半年〜1年ごとに行う医療機関もあります。
ピル処方の際の血液検査で確認する内容
ピルの処方の際に血液検査を行うことで、下記の2つの状態が確認できます。
- 血栓症のリスク
- 肝機能
それぞれについて解説します。
血栓症のリスク
ピルは血栓症のリスクをわずかに高めるため、血栓症になりやすいかどうかを確認する目的で血液検査を行います。
ピルを服用すると、血液を凝固させる物質が増え、血液をサラサラにする物質の量が減るため、血液が固まりやすくなり、血栓症の発症リスクが高まるのです。
日本産科婦人科学会によると、ピルを服用していない人の深部静脈血栓症リスクは10,000人に1〜5人であるのに対し、ピルを服用している人は10,000人に3〜9人であるとしています。特に血栓症のリスクが増加するのは、ピルの服用を開始してから4か月以内です。
ピルを服用した場合の血栓症のリスクが高まる確率はわずかですが、リスクはゼロではないため、血栓症のリスクが高い場合は血液検査を行うとしています。
血栓性素因を保有する、いわゆる血栓症になりやすい女性は以下のとおりです。
- 35歳以上で1日15本以上の喫煙している人
- 血栓症になったことがある、あるいは家族に血栓症になった方がいる人
- 脂質代謝異常がある人
- 高血圧の人
- 肥満の人
- 糖尿病の人
ピルの服用を開始する際は、血液検査を行い、血栓症ができやすいかどうかを確認することが推奨されます。
参考:日本産科婦人科学会「低用量経口避妊薬、低用量エストロゲン・プロゲストーゲン配合剤 ガイドライン(案)」
肝機能
ピルに限らず、薬物全般は肝臓を通って代謝されるため、ピルを処方する際に肝臓が正しく機能しているか確認することがあります。特に、ピルは毎日服用することになるため、肝臓に負担をかけます。
肝臓の機能が悪い場合には、ピルの処方を受けられないケースもあります。
ピルの血液検査の内容
ここからは、ピルの血液検査でどのような検査をするのかについて解説します。
血算・生化学検査
血算・生化学検査とは、健康診断でも行われる一般的な血液検査です。血算・生化学検査では、赤血球・白血球・血小板・総タンパク質量・脂質の状態などを調べます。この検査は、基本的な身体の状態をチェックすることを目的としています。
血算・生化学検査には肝機能検査や脂質検査なども含まれているため、この検査によって肝臓にダメージがないかが分かります。また、脂質やコレステロール値が高くなっていると、血栓症のリスクが高まることから、この点についてもチェックしています。
血液凝固検査
ピル服用において重要な検査が血液凝固検査で、血液凝固能が亢進しているかを調べます。血液凝固能の亢進とは、血液が固まりやすい状態になっていることを指します。血液が固まりやすくなっていると、血栓症をはじめとした心血管系の副作用の危険性が高くなります。
Dダイマー検査
Dダイマーとは、凝固した血液に発生するフィブリンという物質が、プラスミンという物質に溶かされたときに生まれるFDPという分子を構成する物質です。
Dダイマーが高いということは血栓ができている、あるいは過去に血栓ができていた可能性が考えられます。つまり、血栓症のリスクが高い可能性があり、今後のピル服用については慎重に検討されます。
Dダイマーは血液検査のたびに必ずチェックする医療機関もありますが、血液凝固検査をして、血栓のリスクがあると判断されたときに行われるケースの方が多い傾向があります。
ピルの血液検査に引っかかるとどうなる?
血液検査で異常が出た場合、再検査をします。再検査をしても検査値が異常値であった場合には、ピルを服用できないと考えられるでしょう。
ピルの血液検査は、副作用が出やすいかどうか、あるいはすでに副作用が出ているかどうかを知る目的で検査をしています。そのため、血液検査に引っかかると、ピルの処方を受けられなくなるのです。
一生涯ピルを服用できないケースもあれば、一時的なケースもあります。血液検査で引っかかった内容によっては、治療をしながらピルを服用できることもあるでしょう。
そのため、血液検査に引っかかった場合は、今後の方針を医師とよく話し合いましょう。
また、すでにピルを服用している場合、ピル服用時の定期血液検査だけでなく、勤め先での定期健康診断によって検査値の異常が指摘され、ピルの服用中止を検討しなければならなくなる場合もあります。
その場合、ピルの処方医に会社で受けた血液検査のデータを提出したうえで、再検査および今後の方針について話し合いましょう。
ピルの血液検査の費用
ここでは、ピルの血液検査の費用や保険適用の有無について解説します。
避妊目的の場合は自費
避妊目的でピルを服用する場合には、ピルの処方は自費診療であるため、検査費用も自費となります。
自費診療の場合、料金は医療機関が自由に設定できるため、医療機関によってかかる費用が異なりますが、3,000~5,000円程度のところが多いようです。この検査費用は、血液検査のみならず、血圧測定や子宮・卵巣の状態を知る目的で実施されるエコー検査の費用も含まれていることがあります。
また、ピルの処方と検査をパッケージ化しているところもあり、そういった医療機関の場合はピルの費用と検査費用を合わせて10,000円程度かかることもあるようです。
治療目的の場合は保険適用
子宮内膜症など、病気の治療目的でピルを服用する場合には、血液検査の費用も保険適用となります。保険適用の場合の費用の目安は、3割負担で1,000〜1,500円程度です。
ただし、保険適用の場合に処方されるピルのシート数は、1回の診察で最大3シート、つまり3か月分です。自費診療の場合は、最大6シートとする医療機関が多い傾向があります。
まとめ
ピル処方時に行う血液検査は任意検査で、必須ではありません。しかし、医師が必要と判断した際は血液検査を受け、ピルを服用して問題ないか判断されます。また、ピルの服用中に血液検査を受け、検査値に異常があった場合にはピルの服用が継続できなくなる場合があります。
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この記事の監修:
慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会専門医。 医師免許取得後、株式会社ボストンコンサルティンググループにてヘルスケア・IT領域にて従事。 現在は慶應義塾大学医学部助教、美容医療を主としたJSKINクリニックを経営・監修、オンライン診療サービス「レバクリ」監修。
<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS) 日本乳癌学会
※この記事は産婦人科専門医と共同で監修を行いました