更新日:2024年07月24日
ヤーズとヤーズフレックスの違いは?それぞれの効果や注意点を解説
- ヤーズとヤーズフレックスは、卵胞ホルモンの含有量がピルの中で最も少ない超低用量ピル
- ヤーズとヤーズフレックスには、月経前症候群(PMS)や月経困難症、生理の経血量を緩和する効果がある
- ヤーズは月経困難症の効果が認可されており、ヤーズフレックスは月経困難症に加えて子宮内膜症の効果も認可されている
- ヤーズは4日間の休薬期間を設けるが、ヤーズフレックスは120日間の連続服用が可能である点に違いがある
- ヤーズやヤーズフレックスは、避妊目的では服用できない点と、一定の条件に該当する人は服用できないことに注意する
日本国内にはさまざまな種類のピルがありますが、超低用量ピルの中に、ヤーズとヤーズフレックスという処方薬があります。「現在ピルを服用しているが、ヤーズとヤーズフレックスの違いがわからない」「これから服用してみたいと思っている」という方もいるのではないでしょうか。
この記事では、超低用量ピルである「ヤーズ」と「ヤーズフレックス」について解説します。服用した際の効果や服用方法の違い、注意点なども解説するのでぜひ参考にしてください。
ヤーズとは
ヤーズとは、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)という2種類の女性ホルモンが主成分の超低用量ピルです。
一般的に、避妊などを目的として処方される低用量ピルには、エチニルエストラジオールという卵胞ホルモンが約0.03mg含まれますが、ヤーズの場合は0.02mgしか含まれません。エチニルエストラジオールの含有量が0.03mgより少ないことから、超低用量ピルに分類されています。
また、避妊を目的とした低用量ピルでは、ピルを飲まない、あるいはプラセボ薬(偽薬)による休薬期間が7日間となりますが、ヤーズはプラセボ薬による休薬期間が4日間と短いです。
休薬期間中はホルモンバランスが変動しやすく、体調が悪くなったり、情緒不安定になったりすることがありますが、ヤーズは休薬期間が短い分、ホルモンバランスが崩れにくく体調が安定しやすいというメリットがあります。
ヤーズフレックスとは
ヤーズフレックスは、ヤーズと同じくエチニルエストラジオールが0.02mg含まれている超低用量ピルです。主成分もヤーズと同じくエストロゲンとプロゲステロンです。 \
ヤーズのプラセボ薬をすべて実薬にしたものがヤーズフレックスで、作用機序は基本的にヤーズと同じになります。
ヤーズ、ヤーズフレックスの効果
ヤーズやヤーズフレックスを服用することによって、主に以下の3つの効果を得られます。
- 月経前症候群(PMS)を緩和する
- 月経困難症を緩和する
- 生理の経血量を減らす
それぞれの効果について解説します。
月経前症候群(PMS)を緩和する
ヤーズとヤーズフレックスにはPMSを緩和する効果があります。
通常、生理前になると、頭痛や便秘などの症状が現れたり、精神的に不安定になったりするなど、心身ともに不調になりがちです。
ヤーズやヤーズフレックスを服用することで、女性ホルモンの血中濃度が上がるため、卵巣から女性ホルモンが分泌していると脳が勘違いし排卵が抑制されます。
排卵が抑えられることで女性ホルモンのバランスが崩れにくくなり、上記のようなPMS症状の緩和が期待できます。
月経困難症を緩和する
ヤーズやヤーズフレックスには、月経困難症を緩和する効果があります。
月経困難症とは、生理痛が非常に強く現れる症状のことであり、鎮痛剤を飲んでもなかなか緩和されないことがあります。
通常女性の体は、排卵の時期になると妊娠に備えて受精卵の着床準備を始めるため、子宮内膜が増殖して厚くなり、着床しなかった場合は生理時に血液とともに子宮内膜を子宮口から排出します。
子宮内膜を排出する際、子宮を収縮させて押し出すためのプロスタグランジンという物質が生成され、この物質が子宮や腸を過剰に収縮させることで激しい生理痛が生じるのです。
ヤーズやヤーズフレックスには子宮内膜の増殖を抑える作用があるため、生理痛の原因となるプロスタグランジンの生成が抑えられます。
プロスタグランジンの影響で、生理痛のほかに頭痛や腰痛、吐き気などを生じることもありますが、これらの症状も緩和する効果があります。
生理の経血量を減らす
ヤーズやヤーズフレックスを服用することで、経血量の軽減が期待できます。
先述したとおり、ヤーズやヤーズフレックスを服用することで子宮内膜の増殖が抑えられるため、その分子宮内膜の厚さが薄くなります。そのため、生理時に排出される経血量が少なくなるのです。
ヤーズとヤーズフレックスの違い
ヤーズとヤーズフレックスは、ともに超低用量ピルで配合されている有効成分や含有量は同じですが、以下2つの点が異なります。
- 認可されている効果
- 服用方法
ここからは、両者の違いについて解説します。
認可されている効果
ヤーズとヤーズフレックスは、日本国内で認可されている効果が異なります。
ヤーズの認可されている効果は月経困難症のみですが、ヤーズフレックスは月経困難症に加えて子宮内膜症に伴う疼痛改善の効果が認可されています。
ヤーズは月経困難症の治療目的の場合に保険が適用され、ヤーズフレックスは月経困難症や子宮内膜症の治療目的で服用する場合に保険が適用されます。
服用方法
ヤーズとヤーズフレックスは、服用方法が異なります。
先述したとおり、ヤーズは24錠に有効成分が含まれ、残りの4錠がプラセボです。一方、ヤーズフレックスは28錠全てに有効成分が含まれています。
ヤーズもヤーズフレックスも毎日1錠ずつ服用しますが、ヤーズの場合は、25日目から4日間はプラセボを服用します。その後、出血の有無にかかわらず、29日目以降はまた新しいシートの錠剤を飲み始めます。
一方、ヤーズフレックスは、25日目以降も継続して実薬を服用することができ、120日間の連続服用が可能です。
ただし、万が一ヤーズフレックスの服用を開始してから25日目以降に、3日間連続で出血があった場合は4日間の休薬期間を設ける必要があります。休薬期間後はまた通常どおり服用を再開すれば問題なく、3日間連続する出血が見られなければ、そのまま120日間連続で服用が可能です。
そして、121日目から4日間は休薬期間を設け、その後も上記を繰り返して服用を続けるという流れになります。
ヤーズ、ヤーズフレックスを服用する際の注意点
ヤーズとヤーズフレックスを服用する際は、以下の2つに注意が必要です。
- 避妊目的で服用しない
- 服用できない人もいる
それぞれの注意点について詳しく見ていきましょう。
避妊目的で服用しない
1つ目の注意点は、ヤーズやヤーズフレックスは、あくまで月経困難症などの治療を目的としたものであり、避妊を目的として処方されるものではないことです。
避妊目的のピルに比べて、女性ホルモンの配合量が少ないため、避妊効果があるとは言い切れません。また、ヤーズやヤーズフレックスの避妊効果を示す明確なデータもないため、避妊目的で服用するのは避けるべきです。
避妊のためにピルを服用する際は必ず医師に相談し、避妊効果のあるピルを処方してもらいましょう。
服用できない人もいるか
2つ目の注意点は、ヤーズやヤーズフレックスを服用できないケースがある点です。
たとえば、血栓症のリスクが高い人や重度の高血圧症の人、肥満(BMIが30以上)の人、子宮頸がんや乳がんを発症している人、肝臓や腎臓の働きに異常がある人、35歳でたばこを1日15本以上吸う人などは、基本的にヤーズの服用は禁止されています。
これらに該当する恐れがある場合は、必ず医師の診療を受け指示に従いましょう。
まとめ
ヤーズとヤーズフレックスは、月経困難症やPMSなどに効果的な超低用量ピルです。
配合されている有効成分や含有量などは同じですが、認可されている効果や服用方法に違いがあります。
それぞれの違いや得られる効果を理解したうえで、どのピルが自分に合っているか医師に相談するのがおすすめです。
最近は、病院やクリニックに行かなくてもオンラインで診療してもらえるサービスがあるので、手軽に受診してみたい方はそちらを利用してみるのも良いでしょう。
この記事の監修:
慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会専門医。 医師免許取得後、株式会社ボストンコンサルティンググループにてヘルスケア・IT領域にて従事。 現在は慶應義塾大学医学部助教、美容医療を主としたJSKINクリニックを経営・監修、オンライン診療サービス「レバクリ」監修。
<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS) 日本乳癌学会
※この記事は産婦人科専門医と共同で監修を行いました