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更新日:2024年07月24日

ピルで太るって本当?太ると言われる理由と太らないための対処法

この記事のまとめ
  • ピルの服用と体重の増加に直接的な関係はない
  • 女性ホルモンの作用によるむくみや食べ過ぎにより太る可能性はある
  • ピルには避妊やPMSの改善、生理周期のコントロールなどのメリットがある
  • ピルの服用で太らないためには、食べ過ぎを防ぐ、身体を温めるなどの対策を行おう

低用量ピルの服用を検討している方で、「ピルを飲んだら太る」という噂に不安を感じる方もいるでしょう。低用量ピルの服用で体重が増えることはありませんが、ホルモンの作用で一時的にむくみがおきたり食欲が増進したりすることがあります。

この記事では、「ピルを飲むと太る」と言われる理由について解説します。そのほかに、ピルを服用することのメリットやピルを飲んでも太らないための対処法についても紹介するので、ぜひ参考にしてください。

低用量ピルとは

低用量ピルとは、プロゲステロン(黄体ホルモン)とエストロゲン(卵胞ホルモン)という2種類の女性ホルモンが配合されている薬です。「経口避妊薬」や「OC(Oral Contraceptives)」と呼ばれることもあります。

毎日1回、一定の時間に服用することで、避妊やPMS(月経前症候群)の緩和などの効果が得られます。

ピルを服用すると太ると言われる理由

結論から言うと、低用量ピルの副作用で太ることはありません。

日本産科婦人科学会によるガイドラインには、「低用量ピルと体重増加との間の因果関係は立証されなかった」と記されており、医学的にも太らないことが明らかにされています。

直接の原因ではないにもかかわらず、「低用量ピルを飲むと太る」と言われるのはなぜでしょうか。

ピルで太ると言われる理由には、ピルの服用によって生じる下記の2つの症状が関係しています。

  • エストロゲン(卵胞ホルモン)の保水作用によるむくみ
  • プロゲステロンの食欲増進作用による食べ過ぎ

それぞれについて、以下で詳しく解説します。

エストロゲンの作用によるむくみ

ピルに含まれるエストロゲンには、体内に水分をためる保水作用があるため、身体に余分な水分がたまってむくみやすくなります。そのため、太ったように感じることがあります。

しかし、1~3ヶ月服用を続けることで体内のホルモンバランスが整ってくるので、数ヶ月でむくみがおさまるケースがほとんどです。

また、ピルを服用すると太ると言われるのは、以前使用されていた高用量ピルの影響が大きいです。

ピルは、エストロゲンが含まれる量によって、高用量ピル・中用量ピル・低用量ピルに分類されています。高用量ピルは、このエストロゲンの含有量が多いため、むくみが強く出ることが多くありました。

プロゲステロンの作用による食べ過ぎ

同じくピルに含まれる成分であるプロゲステロンにも保水作用があるほか、食欲を増進させる働きがあります。これは生理前と同じ現象で、一時的に食欲が増進するため、食べ過ぎることによって体重が増加することがあります。

しかし、毎日の食事や運動に気を使っていれば問題はなく、むくみと同様に服用を始めてから1~2ヶ月で落ち着く場合がほとんどです。体重の増加が気になる方は、ピルを飲み始めて数ヶ月の間は、食べ過ぎに気をつけましょう。

また、プロゲステロンの作用ではなく、PMSの軽減などのピルによる体調改善が食欲増進に繋がることもあります。

参照元:日本産科婦人科学会編「低用量経口避妊薬の使用に関するガイドライン(改訂版)

低用量ピルを服用するメリット3選

前述した通り、ピルに含まれる女性ホルモンの作用でむくみや食べ過ぎなどの症状が生じることもありますが、低用量ピルの服用にはデメリットだけでなく多くのメリットがあります。

ここでは、低用量ピルを服用するメリットを3つご紹介します。

避妊

低用量ピルには、子宮内膜を薄くし排卵を抑制する作用があるため、服用している間は基本的に妊娠することがありません。

厚生労働省の「経口避妊薬(OC)の有効性についてのとりまとめ」によると、ピルを正しく服用した場合の避妊失敗率は0.1%と明記されています。

これはコンドームの避妊失敗率である3%と比較してもかなり低い数値であり、低用量ピルには高い避妊効果があると言えます。

ただし、低用量ピルでは性感染症を防ぐことができないため、妊娠を望む場合でなければ、性交渉の際はたとえピルを飲んでいたとしてもコンドームを使用しましょう。

参照元:厚生労働省「経口避妊薬(OC)の有効性についてのとりまとめ」

PMS(月経前症候群)の改善

PMS(月経前症候群)とは、生理前3~10日に現れる精神的・身体的症状のことです。

低用量ピルは、このPMSによる頭痛やイライラ、下腹部痛などの症状を軽減する効果があります。

さらに、低用量ピルには排卵を抑制する作用があることから、子宮内膜症や子宮体癌、卵巣癌などの疫病リスクを低減することにも繋がります。

生理周期のコントロール

低用量ピルを服用することで、生理周期をコントロールすることが可能です。

低用量ピルを服用して排卵が抑制されても、月に1度生理のような出血(消退出血)が起こります。

低用量ピルには1シート21錠のタイプと28錠のタイプがあり、それぞれ7日間の休薬・偽薬期間があります。個人差はありますが、出血が始まるのは休薬・偽薬期間にはいって2日前後のタイミングです。

そのため、「次の生理がいつくるかわからない...」という不安を抱える必要がなくなり、自分のスケジュールを組みやすくなります。大切なイベントや旅行をストレスフリーに過ごしたい方におすすめです。

ピルの服用で太らないための対処法3選

「ピルを服用したいけど、体重は増やしたくない...」という方もいると思います。ここでは、ピルを服用しても太らないための対処法を3つご紹介します。

食べ過ぎを防ぐ

食べ過ぎを防ぐためには、食事をよく噛んでゆっくりとることがおすすめです。具体的には、一口で30回噛むことを心がけましょう。

たくさん噛むことで満腹中枢を刺激する化学物質であるヒスタミンが分泌され、食欲を抑制することができます。

また、テレビやスマホを眺めながら食べる「ながら食べ」をやめ、食べることだけに集中することもおすすめです。食感や食べ物の香りで満足感を得られるため、結果的に食べ過ぎを抑えられる可能性があります。

身体を温める

身体の冷えはむくみの大敵です。むくみ改善のためには、身体を温めるのがおすすめです。

入浴する際は、湯船に浸かる習慣をつけましょう。38~40℃のぬるめのお風呂に15~20分ほど浸かり、ゆっくりと身体を温めるのがおすすめです。

さらに、お風呂の中で足先から太もものリンパマッサージを行うことで、血行を促進することができます。気持ちいいと感じるくらいの強さで、リンパを刺激して老廃物を排出しましょう。

日中でも、室内の空調で身体が冷える場合があるので、あらかじめ羽織れるものを用意しておくか、ブランケットやひざ掛けを使用して、身体を温めましょう。

適度な運動をする

軽い運動やストレッチをすることで血行がよくなり、むくみの改善に繋がります。

学校や職場などで長時間同じ姿勢で過ごすことが多い方は、足マッサージをしたり、移動の際はなるべく階段を使ったりしましょう。

また、身体を動かすことでストレス発散効果が期待できます。ストレスが減ることで、衝動的な食欲や甘いものの食べ過ぎを抑制することができます。

まとめ

ピルが太ると言われる理由と対処法について紹介しました。ピルの服用と体重の増加に直接的な関係はありません。適切な対処を行えば、ホルモンによる食欲増進やむくみを防ぐことが可能です。しかし、1~2ヶ月ほど服用しても改善が見られなければ、ピルと身体の相性が合っていない可能性があります。自分に合ったピルを服用するためにも、産婦人科やオンライン診療でお気軽に相談してみてください。

この記事の監修:

牧野潤医師

慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会専門医。 医師免許取得後、株式会社ボストンコンサルティンググループにてヘルスケア・IT領域にて従事。 現在は慶應義塾大学医学部助教、美容医療を主としたJSKINクリニックを経営・監修、オンライン診療サービス「レバクリ」監修。

<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS) 日本乳癌学会

※この記事は産婦人科専門医と共同で監修を行いました