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更新日:2024年07月24日

低用量ピルの副作用とは?症状やリスクを詳しく解説!

この記事のまとめ
  • 低用量ピルの副作用には、頭痛や吐き気、不正出血などがある
  • 副作用は、低用量ピルを開始してから1~3ヶ月程度で改善することが多い
  • 血栓症のリスクが増加する可能性がある方は、服用が禁忌となることがある
  • 低用量ピルを飲むと、妊娠しづらくなったり、太ったりするのは誤解である

低用量ピルの服用を検討している方の中には、「副作用が起こるのか怖い…」「リスクはあるのかな?」と不安に感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。低用量ピルの飲み始めは、頭痛や吐き気、不正出血などの副作用が起こることがありますが、飲み続けることで治まることがほとんどなので安心してください。

この記事では、低用量ピルの副作用について詳しく説明します。そもそもピルを飲むことができない方の条件や低用量ピルの誤解についても解説していくので、ピルの服用を検討するうえでぜひ参考にしてください。

低用量ピルとは

低用量ピルとは、プロゲステロン(黄体ホルモン)とエストロゲン(卵胞ホルモン)の2種類の女性ホルモンを合わせてできた錠剤です。「経口避妊薬」や「OC」とよばれることもあります。

低用量ピルを飲むことで、下記のようなさまざまなメリットがあります。

  • 99.7%の避妊効果
  • 生理不順の改善
  • 生理痛・PMS(月経前症候群)の緩和
  • 肌荒れ・ニキビの改善
  • 子宮内膜症の悪化予防
  • 生理周期のコントロール

低用量ピルの副作用

低用量ピルには下記のような副作用があります。

  • 頭痛・吐き気
  • 不正出血
  • 下痢・嘔吐
  • 抑うつ
  • 血栓症

これらの副作用は、服用を開始してから1~3ヶ月ほどで症状が落ち着いてくることがほとんどなので、安心してください。ただし、低用量ピルの重大な副作用である血栓症には注意が必要です。

下記で主な副作用を詳しくご紹介します。

頭痛・吐き気

低用量ピルを飲み始めると、ホルモンバランスの変化によって頭痛や吐き気が起こることがあります。症状がひどい場合は、頭痛薬や吐き気止めを服用し、症状を緩和しましょう。

低用量ピルは頭痛や吐き気止めの薬と併用しても基本的に問題なく、クリニックによっては医師から処方してもらうこともできます。自分で市販薬を購入する場合にも、念のためピルを処方してもらうときに医師に相談しておくことをおすすめします。

不正出血

不正出血は、ピルの副作用の症状の中で最も多く、低用量経口避妊薬、低用量エストロゲン・プロゲストーゲン配合剤ガイドラインによると、服用者の5人に1人が経験するとされています。人によって出血の色や量はさまざまで、茶色っぽいおりもののようだったり生理に似た鮮血だったりします。

参照元:公益社団法人 日本産科婦人科学会「低用量経口避妊薬、低用量エストロゲン・プロゲストーゲン配合剤ガイドライン

下痢・嘔吐

低用量ピルの副作用で、下痢や嘔吐が起こる可能性があります。

特に、水っぽい下痢や嘔吐がある場合は、体内にピルの成分が吸収されず、避妊効果が低下してしまうことがあります。ピルを服用してから2時間以内に下痢や嘔吐をした場合は、追加でピルを1錠服用するようにしましょう。

また、下痢や嘔吐が24時間以上続く場合は、ピルの服用を中止してください。回復次第、ピルを飲み忘れた場合と同じ対応をとりましょう。

抑うつ

発生頻度は低いですが、ピルの副作用で気分の落ち込みや食欲不振などの抑うつ状態になる場合があります。

低用量経口避妊薬、低用量エストロゲン・プロゲストーゲン配合剤ガイドラインによると、うつ症状の原因が低用量ピルだという研究結果はなく、低用量ピルとうつの因果関係ははっきりしていません。

一方で、ピルの服用によってホルモンバランスの変化が生じることで、感情にも影響が出る可能性があると考えられています。ピルに含まれるエストロゲンは、神経伝達物質の一種であるセロトニンの分泌にも関係しているためです。

生理前のうつ症状に悩んでいる方は、ピルを飲むことで症状が緩和されることがあります。PMSの中でも精神的な症状がひどい場合は、「PMDD(月経前不快気分障害)」と診断されます。この場合、ヤーズやヤーズフレックスなどのピルで抑うつを緩和させることが可能です。

血栓症

血栓症とは、何らかの原因で血管をつまらせる血のかたまり(血栓)ができる病気です。ピルに含まれているエストロゲンには血液を固まりやすくする作用があり、それにより血栓症のリスクが高まる可能性があります。

日本医事新報社の「低用量ピルによる血栓症リスク」では、日本産科婦人科学会によると、低用量ピルを服用していない人の静脈血栓症発症のリスクは、年間1万人の中で1~5人であるのに対し、服用している人は3~9人になると報告されています。

血管の中に血栓ができた場合は、血液検査で発見することが可能です。発症頻度は稀ですが、発症した際に適切な処置を行うためにも、定期的に血液検査を行いましょう。

特に、喫煙者や肥満の方は、血栓症リスクを高める可能性があるため、ピルを処方してもらう際に医師に確認してください。前兆のない片頭痛(偏頭痛)をお持ちの方も、医師と相談しながら服用しましょう。

ピルの服用中に下記の症状が出た場合は、血栓症の初期症状である可能性があります。速やかに服用を中止し、医師の診察を受けてください。

  • 手足のまひやしびれ
  • しゃべりにくさ
  • 胸の痛み
  • 息苦しさ
  • 足の急激な痛みや腫れ(片足のみ)

参照元:「低用量ピルによる血栓症リスク」

低用量ピルの服用が禁忌の方

そもそも低用量ピルを服用することが禁忌となる方もいます。禁忌に当てはまる方がピルを服用すると、血栓症のリスクが増加したり、ピルの効果が減少したりすることがあります。

下記に当てはまる方は、低用量ピルの服用を控えるようにしましょう。

  • 50歳以上または閉経している方
  • 35歳以上で1日15本以上たばこを吸う方
  • 前兆のある片頭痛がある方
  • 重い持病のある方
  • 過去に肺梗塞・脳梗塞・心筋梗塞などの病気にかかったことのある方
  • 高血圧の方
  • 乳がん・子宮体がんの疑いがある、またはかかっている方
  • 妊娠中や授乳中の方

低用量ピルに関するよくある誤解

ここでは低用量ピルについてのよくある誤解を解説します。

がんのリスクが高まる

低用量ピルを服用することで、あらゆるがんのリスクが高まるわけではありません。実際には、発症リスクが低下するがんとわずかに上昇するがんがあります。

低用量経口避妊薬、低用量エストロゲン・プロゲストーゲン配合剤ガイドラインによると、ピルを服用することで、卵巣がんや大腸がん、子宮体がんのリスクが低下することが報告されています。

卵巣がんは、排卵によって卵巣の壁がダメージを受けることでリスクが上がる疾患です。そのため、ピルの服用によって排卵する回数を減らすことで、リスクを低減することができるのです。

一方、乳がんや子宮頸がんのリスクはわずかに上昇するという報告があります。

ガイドラインによると、2009年までに実施された研究では、ピルの服用によって乳がんのリスクが上昇するという結果が認められています。ただし、これらの調査はエストロゲンの含有量が多い中用量ピルが多く用いられていた時代に実施されたものです。そのため、現在主流となっている低用量ピルを用いた場合には、リスクが増加しない可能性もあり、検討が必要であるとされています。

子宮頸がんの発症リスクは、低用量ピルの服用期間が長いほど上昇するという研究結果があります。

子宮頸がんの主な原因は、ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスへの感染です。低用量ピルを服用することで、新たなHPV感染のリスクは増加しない一方で、既に感染したことのあるHPVの排除率が低下するため、リスクが上昇すると考えられています。

妊娠しづらくなる

低用量ピルを長期間飲んでいたとしても、服用をやめた後に妊娠しにくくなることはありません。

低用量経口避妊薬、低用量エストロゲン・プロゲストーゲン配合剤ガイドラインによると、ピルの服用を中止した人の妊娠率は、通常と変わらなかったという研究結果が報告されています。

ピルの服用をやめれば、排卵が再開され、再び妊娠できる身体になるので、安心してピルを服用してください。

太る

低用量ピルの作用で太ることは基本的にありません。

実際に、低用量経口避妊薬の使用に関するガイドラインによると、低用量ピルと体重増加との間の因果関係は立証されていないと報告されています。

ただし、ピルに含まれる女性ホルモンの作用で、一時的に身体がむくんだり、食欲が増進して食べすぎてしまうことで、太ったと感じることがあります。

むくみや食欲増進の症状は、ピルの副作用と同様に飲み始めてから数ヶ月で落ち着いてくるので、あまり心配する必要はありません。それでも気になる場合は、適度な運動をしたりバランスのよい食事をとったりすることを心がけるとよいでしょう。

参照元:低用量経口避妊薬の使用に関するガイドライン

まとめ

低用量ピルを服用することで、頭痛や吐き気、不正出血などの副作用が起こる可能性があります。しかし、いずれもピルを飲み続けることで、数ヶ月で改善していくので安心してください。発症は稀ですが、重大なリスクである血栓症が起きる可能性もあるので、定期的に血液検査を受けましょう。

また、低用量ピルを飲んで、卵巣がんや子宮体がんのリスクが高まったり、妊娠しづらくなったりすることはありません。副作用やリスクを正しく理解したうえで、低用量ピルを服用しましょう。

この記事の監修:

牧野潤医師

慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会専門医。 医師免許取得後、株式会社ボストンコンサルティンググループにてヘルスケア・IT領域にて従事。 現在は慶應義塾大学医学部助教、美容医療を主としたJSKINクリニックを経営・監修、オンライン診療サービス「レバクリ」監修。

<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS) 日本乳癌学会

※この記事は産婦人科専門医と共同で監修を行いました