更新日:2024年08月09日
低用量ピル服用中でも中出しはNG!?ピルの避妊効果について解説
- 低用量ピルは効果の高い避妊方法だが、中出しによる妊娠のリスクはゼロとは言い切れない
- 低用量ピルは避妊のほか生理痛の軽減や月経量減少などの効果が期待できる
- 低用量ピルには飲み忘れによる効果減少、吐き気や頭痛などの副作用といったリスクがある
- 低用量ピルは高い避妊効果が期待できるが、性感染症は予防できない
- 低用量ピル以外の避妊方法には、アフターピルやコンドーム、IUD/IUSなどが挙げられる
「低用量ピルを飲んでいれば、中出し(膣内射精)をしても妊娠しないの?」「コンドームなしでも大丈夫?」と疑問に思ったことはないでしょうか。
低用量ピルは、高い避妊効果が期待できる薬です。一方で、服用にはいくつかのリスクがあります。
本記事では、低用量ピルの効果やリスク、避妊効果について解説します。服用を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
「低用量ピル」の効果とリスク
低用量ピルは、黄体ホルモン(プロゲステロン)と卵胞ホルモン(エストロゲン)を主成分とする錠剤です。毎日服用することで、高い避妊効果が期待できます。PMS症状の改善や生理痛の軽減など、女性にとって嬉しい効果が見込める点も大きな特徴です。
一方で、服用には副作用を含む一定のリスクがあります。まずは低用量ピルがもたらす効果とリスクについて確認していきましょう。
低用量ピルの効果
低用量ピルを正しく服用することで、避妊以外に以下のような効果が期待できます。
- PMS(月経前症候群)の改善
- 生理不順の改善
- 月経量の減少
- 生理痛の軽減
- 子宮内膜症の予防や改善
- ニキビや肌荒れの改善
- 大腸がんの予防
- 子宮外妊娠、卵巣嚢腫の減少
- 卵巣がん、子宮体がん、乳房良性疾患の予防
- 更年期症状、骨粗鬆症の予防
これらの効果がある低用量ピルは、生理不順やPMSの治療などに使用されています。また、低用量ピルよりも卵胞ホルモンの含有量が多い中用量ピルであれば、生理を早めたり、遅らせたりといった月経移動が可能です。
コンドームのように外的な避妊方法に対し、低用量ピルは女性が主導となった避妊方法といえます。服用をやめれば排卵や生理が再開され、将来的に妊娠を希望する方にもおすすめの避妊方法です。一方で、服用には以下のようなリスクへの理解が必要になります。
低用量ピルのリスク
低用量ピルの避妊効果は、毎日服用することで得られます。そのため、避妊を目的に服用する場合は飲み忘れに注意が必要です。服用を忘れたまま中出しすると、妊娠する可能性があります。
また、服用から数日間は以下のような副作用が生じる場合があります。
- 頭痛
- 吐き気
- 下腹部痛
- 乳房の張り、痛み
- 下痢
- むくみ
- 血栓症
これらの副作用は、服用を続けるうちに解消される傾向にあります。一定期間服用した後も副作用が続く場合は、ピルの種類の切り替えや他の避妊方法を検討しましょう。
中出ししても妊娠しない?低用量ピルの避妊効果
低用量ピルには、99.7%の避妊効果があるといわれています。これは、ピルに含まれる卵胞ホルモンと黄体ホルモンの働きによるものです。
数字だけ見ると、低用量ピルを服用していれば、中出ししても妊娠する確率は非常に少ないといえます。ただし、性感染症は防げない点に注意が必要です。
ここからは低用量ピル服用中もコンドームの使用をおすすめする理由も含め、低用量ピルの避妊効果について解説します。
低用量ピルの避妊効果は99.7%
低用量ピルを正しく服用した場合の避妊効果は高く、99.7%とされています。仮に中出しをしたとしても、妊娠する確率は非常に少ないでしょう。
一般的な避妊方法であるコンドームの避妊効果は、98%です。ただし、これは正しく使用した場合の確率であり、破れたり、外れたりしてしまった際の避妊効果は82%まで下がるといわれています。
2つを比較しても、低用量ピルは非常に効果が高い避妊方法です。ただし、低用量ピルを服用していれば、「中出ししても絶対に妊娠しない」というわけではありません。
低用量ピルには、わずかながらも避妊に失敗する可能性があります。より確実な避妊効果を期待するのであれば、後に続く性感染症予防の観点からもコンドームの併用を検討してください。
低用量ピルで避妊効果が得られる仕組み
低用量ピルが99.7%もの高い避妊効果を生む理由には、主成分である卵胞ホルモンと黄体ホルモンの働きが関係しています。
低用量ピルを服用すると、卵胞刺激ホルモンの分泌が抑えられ、排卵が抑制される仕組みです。そのため、中出しをしても精子と卵子が結びつく「受精」が行われず妊娠することはありません。
また、子宮内膜の増殖が抑制されることによる月経量の減少、月経痛の改善や子宮内膜症予防などの効果が期待できます。
避妊効果は高いが性感染症は予防できない
性感染症とは、性的接触により口や性器などの粘膜や皮膚から感染する疾患のことです。主に、以下のような感染症が挙げられます。
- 性器クラミジア感染症
- 性器ヘルペスウイルス感染症
- 尖圭コンジローマ
- 梅毒及び淋菌感染症
感染症の種類によっては、不妊の原因になったり、合併症を引き起こしたりする可能性があります。
また、無症状で治療をしなかった場合、知らない間にパートナーへと感染させる恐れがあるため注意が必要です。粘膜が傷つくことにより、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染しやすくなるなど、他の感染症に罹るリスクも高まります。
性感染症予防には、コンドームの使用が有効だといわれています。低用量ピルの避妊効果が高いからといって、中出しやコンドームを使わない性交渉は控えましょう。
低用量ピルの避妊効果が出るのはいつから?
低用量ピルの効果が出る時期は、服用を開始するタイミングにより異なります。
服用開始時期 | 避妊効果が発揮される時期 |
---|---|
生理初日(Day1スタート) | 服用初日 |
生理開始2~5日以内(Sundayスタート) | 7日間連続して服用した後 |
低用量ピルの飲み方は、生理が始まった日から服用する「Day1スタート」が一般的です。生理が始まった週の日曜日から服用する「Sundayスタート」の場合は、効果が得られるまで一定の期間を要します。
この間の中出しは、妊娠の可能性が高まります。避妊効果を得たい場合は、コンドームの併用を検討してください。
低用量ピルを飲み忘れたらどうする?
低用量ピルを飲み忘れた場合の対処法は、飲み忘れの回数により異なります。低用量ピルには服用周期があり、いつ飲み忘れたかによりリスクが異なるためです。
多くの場合、低用量ピルは21日間の服用と7日間の休薬を1セットにしています。1回の飲み忘れであればさほど焦る必要はないものの、2~3回以上飲み忘れると避妊効果が薄まるため注意が必要です。ここでは、飲み忘れの回数に応じた対処法を解説します。
1回飲み忘れた
低用量ピルを1回飲み忘れたときは、気付いた時点ですぐに1錠服用してください。さらに、いつも服用している時間がきたら1錠追加します。
翌日からは、普段と同じように低用量ピルを服用します。残りのシートをすべて飲み切り、通常通り休薬期間を迎えてください。飲み忘れが1回であれば、避妊効果に大きな影響はないといわれています。
2回飲み忘れた
2回飲み忘れた場合も、気付いた時点ですぐに1錠服用します。その後は1回飲み忘れた場合と同様に、いつもの時間に1錠服用しましょう。翌日からは通常通り服用し、残りのシートを飲み切ります。
2回飲み忘れた場合は、避妊効果が下がる傾向です。避妊効果を高めるのであれば、飲み忘れから1週間ほどはコンドームなどの避妊方法も検討してください。
3回飲み忘れた
3回続けて飲み忘れると、避妊効果はさらに低くなります。この間に性交渉をしていた場合は、アフターピル等の対処を検討してください。
ピルは、飲み忘れに気付いたところですぐに1錠服用します。その後もいつもの時間に1錠飲んだうえで、翌日から残りのシートを飲み切ってください。シート3週目で飲み忘れていた場合、休薬の必要はありません。間を開けず1周目にあたるシートを飲み始めましょう。
低用量ピル以外の避妊方法
低用量ピルは効果の高い避妊方法ですが、場合によっては以下のような他の方法との併用が必要です。
- アフターピル
- コンドーム
- IUD/IUS
前述したように、飲み忘れが続いていた場合はアフターピルの検討が必要になります。また、確実に避妊するのであればコンドームとの併用が安心です。ここでは、子宮内に装着する避妊具も含めた避妊方法を紹介します。
アフターピル
アフターピルは、緊急避妊薬と呼ばれる錠剤です。性行為後、通常72時間以内に服用することで妊娠が防げます。同意のない性交渉後やコンドームの破損、脱落などで避妊に失敗した場合に検討される方法です。
アフターピルは、低用量ピルよりもホルモンの配合量が多い中用量ピルにあたります。そのぶん効果が高く、性交渉後12時間以内に服用した場合の避妊効果は98~99%といわれています。
早く服用するほど効果は高く、性交渉から72時間以上経過すると避妊の成功率は下がっていきます。低用量ピルを3日以上飲み忘れ、その間に中出しをした場合は、なるべく早く服用を検討しましょう。
気を付けたいのは、アフターピルは医療機関でのみ処方される点です。薬局やドラッグストアなどでは入手できず、緊急時に対応したくても気軽に用意できません。
また、ホルモンの配合量が多いアフターピルは副作用のリスクも高い傾向です。アフターピルは、あくまでも緊急用の薬であることを理解しておいてください。
コンドーム
コンドームは、男性が性器に装着する避妊具です。薬局やスーパー、コンビニなどで入手できます。避妊だけでなく、性感染症予防に役立つ点もメリットです。
一方で、デメリットとして破れや脱落の可能性が挙げられます。正しい使用を心がけていても、失敗してしまう可能性はゼロとはいえません。コンドームは男性主体の避妊方法であることからも、100%避妊したい場合は、低用量ピルとの併用がベストでしょう。
IUD/IUS
IUD/IUSは子宮内に直接装着する避妊具で、以前は「避妊リング」と呼ばれていました。現在はリング状のIUDが用いられることは少なく、以下のようなIUD/IUSが使用される傾向にあります。
種類 | 特徴 |
---|---|
FD-1 | ・プラスチック製 ・受精卵の着床が阻害され避妊効果が期待できる |
ミレーナ | ・黄体ホルモン放出型子宮内避妊システム(LNG-IUS) ・子宮の中で持続的にレボノルゲストレル(合成黄体ホルモン)が放出され、子宮内膜が委縮することによる避妊効果が期待できる ・月経量の減少や生理痛改善に役立ち、月経困難症や過多月経の治療にも用いられる(保険適用あり) |
IUD/IUSは、妊娠率1%未満と非常に効果が高い避妊方法です。一度装着すると、最長5年間効果が持続します。
デメリットには、5年を超えないタイミングでの交換が必要なこと、人によっては装着時に痛みを伴う可能性があることなどが挙げられます。また、いずれも産婦人科の医師による挿入が必要です。
まとめ
低用量ピルは、効果の高い避妊方法です。正しく服用していれば、中出しをしても妊娠する可能性は非常に低いといえます。
飲み忘れや性感染症のリスクに備えるのであれば、コンドームとの併用がおすすめです。服用により、生理痛の軽減や生理不順の改善も期待できます。
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この記事の監修:
慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会専門医。 医師免許取得後、株式会社ボストンコンサルティンググループにてヘルスケア・IT領域にて従事。 現在は慶應義塾大学医学部助教、美容医療を主としたJSKINクリニックを経営・監修、オンライン診療サービス「レバクリ」監修。
<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS) 日本乳癌学会
※この記事は産婦人科専門医と共同で監修を行いました