更新日:2024年10月29日
低用量ピルとアフターピルの違いとは?種類による用途や避妊率の違いも解説
- ピルの種類によって用途や効果に違いがある
- 低用量ピルは、避妊のほか月経困難症やPMSの治療にも効果的
- アフターピルは、性交渉のあと72時間以内に服用することが大切
- 毎日服用する低用量ピルは、単発的に飲んでもアフターピルの代わりにならない
低用量ピルとアフターピルの違いが気になる方もいるでしょう。どちらも避妊効果を期待できますが、服用の仕方が異なります。
本記事では、ピルの種類による用途や効果の違いを解説します。ピルの種類による避妊率の違いや低用量ピルとアフターピルの関係も解説するので、ぜひ参考にしてください。
ピルの種類による用途や効果の違いとは
ピルには、中用量ピル・低用量ピル・ミニピル・アフターピルがあります。それぞれ期待できる効果や使う場面が異なるため、まずはおおまかな違いを知っておきましょう。以下に、ピルの種類ごとの用途を表にまとめました。
ピルの種類 | 用途 |
---|---|
中用量ピル | ・緊急避妊(ヤッペ法) ・生理のタイミング調節 ・月経困難症や子宮内膜症の治療 |
低用量ピル | ・避妊 ・月経困難症や月経前症候群(PMS)の治療 ・生理のタイミング調節 |
ミニピル | ・避妊 ・月経困難症の治療 |
アフターピル | ・緊急避妊 |
上記以外に高用量ピルもありますが、副作用のリスクが高いため、中用量ピルや低用量ピルなどが処方されるのが一般的です。
次に、それぞれのピルの特徴を解説します。
中用量ピル
ピルには、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)という2種類の女性ホルモンが配合されています。
中用量ピルと低用量ピルには卵胞ホルモンが含まれていますが、それぞれ含有量が異なります。中用量ピルの場合、1錠あたりの卵胞ホルモンの含有量は0.05mg以上です。
中用量ピルは、卵胞ホルモンの含有量が低用量ピルよりも多いため、高い効果を期待できます。その反面、副作用のリスクが高いのがデメリットです。中用量ピルの副作用として、頭痛や吐き気、血栓症などが挙げられます。
中用量ピルは、主に避妊や月経トラブル改善のために利用されます。
低用量ピル
低用量ピルは経口避妊薬とも呼ばれ、毎日服用することで高い避妊効果を得られます。避妊以外にも、月経困難症・月経前症候群(PMS)の治療や、肌荒れ・ニキビ改善のためにも利用されています。
また、低用量ピルは、月経不順の改善にも効果的です。そのほか、旅行や試験などに合わせて生理のタイミングをずらしたい場合に服用するケースもあります。
低用量ピルは、ピルに含まれる黄体ホルモンの種類によって、第一世代から第四世代まで4つに分類されます。
第一世代のピル
第一世代のピルは、日本で初めて製造が認可されたピルです。ノルエチステロンという黄体ホルモンが用いられています。第一世代のピルは、月経困難症や子宮内膜症の治療効果が高いことが特徴です。また、生理痛の緩和も期待できます。
ニキビや肌荒れに対しても効果を見込めますが、ほかの世代に比べて不正出血が起こりやすいのがデメリットです。しかしながら、ルナベルやシンフェーズといった第一世代のピルは、血栓症のリスクが少ないことで知られています。ピルの服用で血栓症が起きるのはまれですが、そうした不安のある方は第一世代を選ぶとよいでしょう。
第二世代のピル
第二世代のピルは、レボノルゲストレルという黄体ホルモンが用いられています。低用量ピルのなかでも第二世代は、生理周期を調節しやすいといわれています。避妊はもちろんのこと、月経困難症の治療や生理痛改善に対しても効果的です。
第二世代のピルは、第一世代のピルに比べて不正出血が起こりにくいのが特徴です。第二世代のピルには、トリキュラーやアンジュ、ラベルフィーユがあります。
第三世代のピル
第三世代のピルの黄体ホルモンにはデソゲストレルが用いられており、ニキビや肌荒れの原因になりやすい男性ホルモンの作用を抑える働きがあります。男性ホルモンの作用を抑制するため、性欲減退の副作用が出る場合があります。
第三世代のピルは、マーベロンやファボワールなどです。
第四世代のピル
第四世代のピルは、ドロスピレノンが用いられた低用量ピルです。第一世代から第三世代のピルに比べて、卵胞ホルモンの含有量が最も少ないのが特徴です。月経困難症や子宮内膜症の治療目的で使われます。
第四世代のピルは、むくみの副作用が起こりにくいとされています。むくみが気になる方やむくみによる一時的な体重増加が心配な方は、ヤーズやヤーズフレックスといった第四世代のピルの服用を検討するとよいでしょう。
第四世代のピルは、国内で避妊効果の検証が行われていないため、避妊目的では使用しません。
ミニピル
ミニピルは、卵胞ホルモンを含まず、黄体ホルモンのみが含まれている単独ホルモン剤です。ミニピルは国内で認可されていないため、保険適用外で自費診療でのみ処方が可能です。
ミニピルは卵胞ホルモンを含まないため、血栓症のリスクがほとんどありません。そのため、喫煙習慣のある方や35歳以上の方も服用できます。
ミニピルは副作用が起こりにくいとされていますが、飲み始めのころは不正出血や頭痛、吐き気などが起こる場合があるため注意が必要です。服用を続けると、次第に身体がピルに慣れてきて、症状は落ち着くでしょう。
アフターピル(緊急避妊薬)
アフターピルは、妊娠を防ぐために服用する緊急避妊薬です。低用量ピルを飲み忘れた、コンドームが破けたといった理由で、妊娠の可能性がある場合に服用します。アフターピルは、高確率で妊娠を防げます。
代表的なアフターピルであるレボノルゲストレルの避妊効果は、性交渉から24時間以内の服用で95%、72時間以内で85%とされています。性交渉から時間が経つほど妊娠のリスクが高まるため、避妊したい場合はできる限り早く服用することが大切です。
アフターピルの副作用は一時的なものですが、吐き気や頭痛、嘔吐などの症状が出る場合があります。アフタービルを服用して2時間以内に嘔吐した場合は、もう一度アフターピルの服用が必要になる場合があります。
ほかのピルと同様に、アフターピルはドラッグストアや薬局で購入できず、医療機関で受診して処方してもらう必要があります。薬局などで購入できないという理由で、ネット通販で海外から取り寄せようと考える方もいるかもしれませんが、偽物が送られる可能性もあるためやめましょう。
ピルを安全に服用して効果を得るために、医師の診察を受けて服用することが大切です。
ピルの種類による避妊率の違い
ピルの種類によって、避妊率は異なります。中用量ピルと低用量ピル、アフターピルの避妊率の違いを表にまとめました。
ピルの種類 | 中用量ピル | 低用量ピル | アフターピル |
---|---|---|---|
避妊率 | 57% (24時間以内の服用で77%) | 99.7% | 85% (24時間以内の服用で95%) |
服用方法 | 72時間以内に2錠、その12時間後に2錠を服用 | 休薬期間を除き毎日服用 | 72時間以内に1錠服用 |
避妊の判定方法 | 生理をもって確認 | 休薬期間中の消退出血 | 生理をもって確認 |
中用量ピルによる避妊率はそれほど高くなく、副作用が出やすいことから、緊急避妊ではアフターピルによる避妊が一般的となっています。
低用量ピルとアフターピルの関係
ここでは、低用量ピルとアフターピルの関係について解説します。避妊効果のある低用量ピルとアフターピルの知識を身につけておきましょう。
低用量ピルはアフターピルの代わりにはならない
アフターピルと低用量ピルのいずれも避妊効果がありますが、低用量ピルはアフターピルの代わりにはなりません。
つまり、避妊に失敗したからと性交渉後に単発的に低用量ピルを服用しても、避妊できる可能性は低いでしょう。低用量ピルは、毎日服用することで効果を発揮します。
一方、アフターピルは、性行為から72時間以内に1錠服用すると、排卵抑制と着床阻止により避妊効果を得られます。低用量ピルとアフターピルは、服用の仕方に大きな違いがあることを念頭に置き、正しく服用することが大切です。
低用量ピルとアフターピルの併用は可能
基本的に、低用量ピルとアフターピルの併用は問題ありません。たとえば、低用量ピルを飲み忘れて妊娠の可能性が生じた場合、アフターピルの服用により妊娠するリスクを減らせます。
ただし、低用量ピルを服用中でアフターピルを飲みたい場合、併用したい旨や併用後の低用量ピルの服用方法などについて医師に相談しましょう。
ピルの副作用とは
ピルの主な副作用は、次のとおりです。
- 吐き気
- 頭痛
- めまい
- むくみ
- 不正出血
- 乳房痛
- 血栓症
低用量ピルを飲み始めて2〜3か月間は、副作用が起こる可能性があります。身体がピルに慣れてくると、副作用も落ち着きます。
アフターピルの場合、副作用が生じても1日以内で治まることが多いようです。副作用が強く出たり長く続いたりする場合は、早めに医師に相談しましょう。
なお、下記のいずれかに該当する方は副作用のリスクが高く、低用量ピルを服用できないケースがあります。
- 喫煙習慣がある方
- 糖尿病や脂質異常症などを患っている方
- 肥満(BMI30以上)の方
ピルの服用を開始したいときは、受診時に喫煙習慣や治療中の疾患、既往歴などを漏れなく医師に申告しましょう。
まとめ
低用量ピルとアフターピルは、どちらも避妊効果を期待できますが、服用の仕方が異なります。妊娠のリスクがあるとき、アフターピルの代わりに単発的に低用量ピルを服用しても、避妊効果を得られません。
ピルにはさまざまな種類があるため、医師に相談して目的にあったものを選ぶことが大切です。
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この記事の監修:
慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会専門医。 医師免許取得後、株式会社ボストンコンサルティンググループにてヘルスケア・IT領域にて従事。 現在は慶應義塾大学医学部助教、美容医療を主としたJSKINクリニックを経営・監修、オンライン診療サービス「レバクリ」監修。
<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS) 日本乳癌学会
※この記事は産婦人科専門医と共同で監修を行いました