更新日:2025年01月21日
生理痛がひどいときの対処法は?原因や和らげる方法を解説
- 生理痛がひどいとき、機能性月経困難症や器質性月経困難症の可能性がある
- 生理時の不快症状には下腹部痛のほか、腰痛や吐き気、下痢、頭痛などが挙げられる
- 生理痛がひどいときは身体を温めることやストレッチによる血流改善、服薬などが効果的
- 生理痛がひどいときは病院で受診すると安心
生理痛がひどいとき、どのように対処したら良いか迷う方もいるでしょう。ひどい痛みがあるときは、身体を温めたりストレッチしたりするほか、服薬するのも一つの方法です。
この記事では、生理痛を引き起こす2つの原因と生理痛以外の不快症状、生理痛を和らげるセルフケア、病院で受診する目安を解説します。「つらい生理痛を何とかしたい」「生理中の不快症状を軽減したい」「生理痛がひどすぎて不安」と感じている方は、ぜひ参考にしてください。
ひどい生理痛を引き起こす2つの原因
「痛みがひどく通勤できない」「痛みで夜も眠れない」といった状況で生理痛がひどいとき、月経困難症の可能性があります。ここでは、月経困難症が起こる2つの原因を解説します。
1.機能性月経困難症
機能性月経困難症とは、子宮や卵巣などの病気がない月経困難症です。機能性月経困難症による生理痛の主な原因には、子宮の収縮が挙げられます。
子宮の収縮は、「プロスタグランジン」という物質の分泌によって起こります。プロスタグランジンは生理が開始する前に急激に増加し、厚くなった子宮内膜を血液とともに身体から排出させることで、子宮内をリセットさせる役割を持っているのです。
プロスタグランジンの分泌量は人によって差があり、分泌量が多く子宮収縮の作用が強いほど生理痛は重くなるといわれています。
2.器質性月経困難症
器質性月経困難症とは、子宮や卵巣など身体に何らかの原因疾患があって表れる症状です。生理痛以外にも不正出血や性交痛、排便痛などさまざまな症状が表れる可能性があります。生理痛がひどいときや生理痛以外の痛みもあるときは、早めに病院で受診しましょう。
器質性月経困難症の原因となる病気として、下記の3つの例が挙げられます。ここでは、それぞれの病気について確認しましょう。
子宮内膜症
子宮内膜症とは、子宮内だけにあるはずの子宮内膜が、子宮の内側以外の場所にできてしまう病気です。子宮内膜症を患っていると、子宮の外側にできた子宮内膜が生理のたびに炎症を起こし、生理痛の悪化や経血量の増加、吐き気、排便痛などが引き起こされます。
子宮内膜症の発症の原因は明らかになっていませんが、女性の社会進出や晩婚化に伴う出産年齢の高齢化が原因の1つとして考えられています。症状が重い場合は手術するケースもありますが、多くはホルモン剤などにより痛みをコントロールしながら長く付き合っていく病気です。
子宮筋腫
子宮筋腫とは、子宮の筋肉に由来する良性の腫瘍です。ひどい生理痛や経血量の増加だけでなく、頻尿や貧血、不妊の原因となることもあります。
子宮筋腫は女性ホルモンの1つであるエストロゲンの影響により、閉経まで少しずつ大きくなります。子宮筋腫は、必ずしも治療が必要なわけではありません。しかし、腫瘍の大きさや症状の程度によっては、ホルモン剤などの服用により腫瘍を小さくしたり、手術によって取り除いたりします。
子宮腺筋症
子宮腺筋症は、子宮の内側だけにあるはずの子宮内膜が子宮筋の中にできる病気です。子宮腺筋症になると、ひどい生理痛や経血量の増加、貧血、腰痛、不正出血などの症状が現れます。
子宮腺筋症も、治療しなければ閉経まで進行する病気です。そのため、症状に合わせてホルモン剤の服用や手術などを行います。
生理痛以外にも?生理中に起こる不快症状
生理中は、生理痛以外にもさまざまな不快症状が発生します。ここでは、生理中に表れる主な不快症状と原因を見ていきましょう。
下腹部痛
下腹部痛が発生する原因は、プロスタグランジンによる子宮の収縮です。プロスタグランジンには子宮を収縮させるだけでなく、痛みや腫れ、発熱を誘発したり、血管を収縮させたりする作用があります。これらの作用により、子宮周辺に痛みが発生します。
プロスタグランジンによる下腹部痛は、主に生理開始の前日~生理前半に起こります。生理後半には、痛みは少なくなるでしょう。
腰痛
腰痛も、生理中にみられる症状の1つです。腰痛の原因には、プロスタグランジンによる骨盤内の血流悪化と、女性ホルモンの1つであるリラキシンの作用が挙げられます。
リラキシンとは、分娩時に赤ちゃんが産道を通れるよう骨盤内の関節や靭帯を緩ませる作用を持つホルモンです。生理中にリラキシンが分泌されると経血をスムーズに排出できますが、関節が緩むことで骨盤回りが不安定な状態になります。
不安定になった骨盤をサポートするために周辺の筋肉に負担がかかったり、ちょっとした動きが骨盤内の神経を圧迫したりすることで、腰痛が起こるといわれています。
吐き気や下痢
吐き気や下痢も、生理中によく見られる不快症状です。吐き気や下痢を起こす原因も、プロスタグランジンとされています。プロスタグランジンには、子宮だけでなく胃腸の収縮を誘発する作用もあるため、吐き気や下痢といった症状が表れることがあります。
プロスタグランジンによる下痢や吐き気は、生理痛と同様に分泌量が多いほど症状が重くなるとされています。生理期間中に症状がつらいときは、婦人科で相談してみましょう。
頭痛やイライラ
生理中は、頭痛やイライラを感じる方もいるでしょう。頭痛やイライラの原因には、女性ホルモンのエストロゲンが挙げられます。
エストロゲンは妊娠に備えるための女性ホルモンで、心身をリラックスさせる作用がありますが、生理中はエストロゲンの分泌が低下します。そのため、些細なことでイライラしたり気分が落ち込んだりする可能性があります。
また、生理前にエストロゲンが急激に減少して血管の収縮と拡張が起こると、頭痛を誘発します。この頭痛は「月経関連片頭痛」と呼ばれており、一般的な偏頭痛よりも痛みが強いといわれています。
生理痛がひどいときにおすすめの対処法
生理痛がひどいとき、「まずは自分で対処したい」と考える方もいるでしょう。ここでは、生理痛の軽減が期待できる9つのセルフケアを紹介します。生活に取り入れられそうなものから、無理なく実践してみてください。
身体を温める
生理痛がひどいとき、身体の冷えによる血行不良が原因となっている場合が多くあります。ひどい痛みを和らげるために、まずは身体を温めましょう。身体を温める方法として、以下の例が挙げられます。
- 湯船に浸かる
- 足湯をする
- カイロを使用する
- 靴下やレッグウォーマーを着用する
生理中は体調がすぐれず、シャワーのみで入浴を済ませる方もいるでしょう。しかし、身体を温める点でいえば、生理中も湯船に浸かることで生理痛が緩和される可能性があります。出血が気になり湯船に浸かるのが難しいときは、足湯をしましょう。
足湯は洗面器に41度前後のお湯を張り、15~20分程度くるぶしまで足を入れると身体全体が温まります。手軽に身体を温めたい場合は、お腹や背中にカイロを当てることも効果的です。
身体の冷えを予防するには、靴下やレッグウォーマーの着用も有効です。足首には、血流の多い太い血管が皮膚の近くを通っています。血流が多い箇所を温めると効率的に全身の血液を温められるため、足首を温めることで、身体を冷えから守れます。
身体を冷やす食べ物を避ける
生理痛を和らげるには、身体を冷やす食べ物を避け、身体を温める効果がある食べ物を積極的にとると良いでしょう。身体を冷やす食べ物や身体を温める食べ物として、以下の例が挙げられます。
身体を冷やす食べ物 | 身体を温める食べ物 |
---|---|
・脂肪分が多い食べ物(チョコレートやアイスクリームなど) ・カフェインが多い飲み物(エナジードリンクやコーヒーなど) | ・生姜 ・ビタミンB群が多い食材(うなぎ・カツオ・サバ・まぐろなど) ・大豆製品 ・ナッツ類 ・鉄分が多い食べ物(ほうれん草・ひじき・レバーなど) ・カリウムが多い食べ物(バナナ・きゅうり・きのこ類) |
そのほか、生理痛がひどいときのおすすめの飲み物には、ホットミルクやハーブティー、ジンジャーティー、ホットココアなどがあります。
ストレッチによる血流改善
ストレッチによる血流改善も、生理痛がひどいときの対策として役立ちます。生理痛を和らげるとされるストレッチの例を、以下で確認しましょう。
ストレッチの種類 | やり方 |
---|---|
腰回し | 1. 両足を肩幅に開いてまっすぐに立ち、両手を腰に当てる 2. 円を描くように腰をゆっくり回す。なるべく足や上半身が動かないようにする 3. 左右5回ずつ、1日3セット程度行う |
足首の曲げ伸ばし | 1. イスに深く座り、足の裏を床につける 2. かかとを床につけたままつま先を上げ、5秒キープする 3. ゆっくりつま先を下ろし、次はかかとを上げて5秒キープする 4. 5~10セット程度行う |
赤ちゃんのポーズ | 1. 仰向けになり、両手で両膝を抱えてお腹に引き寄せる 2. 頭を持ち上げ膝とあごを近づける 3. ゆっくり3回呼吸したら、手をほどき体を伸ばす |
骨盤ほぐし | 1. 仰向けになり、足裏を合わせて膝を両サイドに開く 2. 両手を下腹部において、ゆっくりと深呼吸する 3. そのまま身体全体の力を抜いて呼吸しながらリラックスする |
マンスリービクス | 1. 仰向けに寝る 2. 左足を抱えてゆっくり胸元まで引き寄せる 3. 右足も同様に行う 4. 最後に両足を抱えてゆっくり引き寄せる |
生理痛がひどいときは、身体に負担がかかる激しい運動は避けたほうが良いでしょう。ストレッチのほか軽めのウォーキングやリラックスできるヨガなどがおすすめです。
生理痛に効くツボを押す
東洋医学に基づくツボ押しも、生理痛の緩和効果が期待できます。全身に300以上あるツボの中で、生理痛に効くといわれる代表的なものは以下の4つです。
ツボの名前 | 位置と概要 |
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気海(きかい) | ・位置:へそから指1~2本分下 ・概要:生殖機能に関するツボ。生理不順・不正出血・生理痛・便秘・下痢に効果 |
三陰交(さんいんこう) | ・位置:足の内側にあるくるぶしの頂点から、指4本分上 ・概要:生理痛・生理不順・更年期障害等の婦人科系トラブル、下痢・便秘など消化器系の不具合、冷えに効果 |
合谷(ごうこく) | ・位置:人差し指と親指の骨が交わる少し手前 ・概要:万能のツボと呼ばれる。生理痛や頭痛、肩こりに効果 |
照海(しょうかい) | ・位置:内くるぶしの骨の下から、親指1本分程下の少し凹んだ部分 ・概要:ホルモンバランスを整え、冷えや不眠の改善に効果 |
ツボを押す際のポイントは、深呼吸をしながらゆっくりと適度な圧で行うことす。深く息を吐きながら、気持ちいいと感じる指圧で3~5回程度押します。
投薬治療
ここまでのセルフケアで生理痛が改善しないときは、投薬治療も選択肢となるでしょう。生理痛に効果がある薬には、鎮痛薬や漢方薬のほか、低用量ピルやミレーナがあります。ここでは、それぞれの薬の概要と効果を解説します。
鎮痛薬
鎮痛薬は痛み止めの効果がある薬で、市販薬としてドラッグストアや薬局で購入できます。鎮痛剤には複数の種類があり、生理痛を引き起こすプロスタグランジンの分泌を抑えられる鎮痛剤は、以下のとおりです。
- ロキソプロフェン(ロキソニン)
- ブルフェン(イブプロフェン)
- アスピリン
- アセトアミノフェン
どの薬を選んだらよいか不安なときは、店頭の薬剤師または登録販売者に相談してください。鎮痛剤を服用しても生理痛がひどいときは、病院の受診を検討しましょう。
漢方薬
漢方薬は血の巡りを良くしたり、体内の水分バランスを改善したりする効果が期待できます。生理痛の緩和効果が期待できる漢方薬は、以下のとおりです。
- 桃核承気湯(とうかくじょうきとう):生理痛、精神不安、腰痛、便秘
- 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん):生理痛、手足の冷え、肩こり、めまい
- 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん):生理痛、貧血、疲労倦怠、めまい
- 加味逍遙散(かみしょうようさん) :生理痛、冷え、のぼせ、不眠
漢方薬も市販されていますが、症状や体質に合う漢方薬を飲むために、病院で受診し医師の処方を受けると安心です。
低用量ピル・ミレーナ
ホルモンバランスのコントロールにより生理痛の緩和を図るのであれば、低用量ピルの服用やミレーナの使用を検討しましょう。低用量ピルは、排卵を抑制し女性ホルモンの量を安定させ、子宮内膜の増殖を抑えることで生理痛を軽減します。低用量ピルは、子宮内膜症の治療にも効果があるとされています。
ミレーナは子宮内に装着することで子宮内膜に作用し、月経時の経血量を減らしたり月経痛を和らげたりする子宮内システム(Intrauterine System:IUS)です。正しく装着すれば、最長5年にわたって効果を得られます。
低用量ピルやミレーナの処方・処置には、病院の受診が必要です。生理痛がひどいとき、医師に相談したいものの忙しくて通院が難しい方は、電話やビデオチャットによる診察が可能なオンライン診療の利用も検討しましょう。
無理せず休息をとる
生理痛がひどいときは、職場や家族に相談し、無理せず休息をとることも大切です。身体的・精神的なストレスや疲労が溜まると、生理痛が悪化する可能性があります。身体の不調が長引かないよう、症状がひどくなりそうだと感じたら大事をとって休みましょう。
生理痛がひどいときは病気の可能性もある
生理痛がひどいときは、子宮内膜症や子宮筋腫といった病気が隠れている可能性があります。「生理痛がひどすぎてつらい」「生理痛以外の不調も多く不安」といった悩みがある方は、病院での受診も検討しましょう。
受診の目安
病院で受診する目安としては、以下を参考にしてください。
- 強い痛みで寝込んでしまう、通学・通勤が困難
- 市販の痛み止めが効かない
- 不正出血がある
- 生理の出血量が増えてきた
- 生理痛が生理のたびに強くなっている
- 生理痛以外にも吐き気や頭痛、下痢などの症状がある
- 貧血
- 生理以外でも下腹部痛などの痛みがある
上記に該当するときはもちろん、日常生活に支障が出る症状が表れている場合は、一度医師に相談すると安心です。
受診のタイミング
生理痛や月経困難症の診察では、問診のほか必要に応じて経腟超音波による内診や尿検査、血液検査を行うことがあります。そのため、できれば出血が終わったタイミングでの受診が望ましいと考えられます。
ただし、生理痛がひどいときや、すぐに改善したい身体の不調があるときは、生理中であっても受診するとよいでしょう。オンライン診療であれば、通院時間がかからず、通院に負担を感じる方や忙しい人も手軽に受診できます。病院に行く時間が取れない方は、オンライン診療の利用を検討してみてください。
まとめ
生理痛には、子宮や卵巣の病気がない「機能性月経困難症」と子宮内膜症や子宮筋腫といった病気が原因の「器質性月経困難症」があります。まずは自分の症状を把握し、不調の原因を考えてみると良いでしょう。
生理痛は、セルフケアによっても和らげられる可能性があります。「身体を温める」「身体を冷やす食べ物を避ける」といった生活習慣の見直しはもちろん、ストレッチやツボ押しを取り入れることで、痛みの軽減を図りましょう。
セルフケアをしても生理痛がひどいときは、薬の服用や病院の受診も選択肢です。医師の診察を受けることで、適切な薬の服用や治療による症状改善を図りましょう。
レバクリでは、低用量ピルのオンライン処方を行っています。場所や時間にとらわれずビデオチャットや電話で診察が受けられ、処方された薬は自宅など好きな場所に届きます。診察料は無料なので、ぜひご予約ください。
この記事の監修:
慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会専門医。 医師免許取得後、株式会社ボストンコンサルティンググループにてヘルスケア・IT領域にて従事。 現在は慶應義塾大学医学部助教、美容医療を主としたJSKINクリニックを経営・監修、オンライン診療サービス「レバクリ」監修。
<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS) 日本乳癌学会
※この記事は産婦人科専門医と共同で監修を行いました