更新日:2025年01月21日
生理前の精神不安定はなぜ起こる?PMS・PMDDについて解説
- 生理前に精神不安定や頭痛などの不快症状が起こる場合、PMSやPMDDの可能性がある
- 精神不安定といたPMSやPMDDによる生理前の不快症状は、女性ホルモンの影響といわれている
- 生理前の精神不安定の症状を改善したい場合、漢方薬や低用量ピルの服用が効果的
- 生理前の精神不安定を改善するには、生活習慣の見直しといったセルフケアも大切
生理前になると「精神不安定になりやすい」「腰痛や頭痛がある」などの不快症状に悩む方もいるでしょう。生理前に不快症状が起きている場合、PMSやPMDDの可能性があります。PMSやPMDDは、女性ホルモンの影響によるものとされています。
本記事では、生理前の精神不安定を引き起こす月経前症候群(PMS)や月経前不快気分障害(PMDD)について解説します。また、生理前の精神不安定の治療方法やセルフケアも紹介するので、ぜひ参考にしてください。
生理前の不快症状とは
生理前に精神不安定や胸の張り、頭痛といった不快症状が起きている場合、PMSやPMDDの可能性があります。ここでは、PMSとPMDDのそれぞれについて、起こりうる症状や不快症状が生じる原因について解説します。
月経前症候群(PMS)
月経前症候群(PMS)とは、生理の約1週間前から表れる下腹部痛・腰痛などの身体症状やイライラ・憂鬱などの精神症状により、日常生活に支障をきたす状態のことです。
PMSの原因ははっきりとはわかっていませんが、女性ホルモン(卵胞ホルモン・黄体ホルモン)の急激な変動が関係していると考えられています。
PMSの主な身体症状は、以下のとおりです。
- 乳房痛・乳房の張り
- 腹痛
- 腰痛
- 関節痛
- 頭痛
- 体重増加
- むくみ
PMSの精神症状としては、以下の例が挙げられます。
- 抑うつ
- イライラ
- 怒りっぽい
- 不安
- 混乱
PMSの症状の表れ方や程度には個人差があり、症状が一つだけの場合もあれば、複数の症状が重なって表れることもあります。なお、月経が始まってからも上記の症状が続く場合、PMSではなく月経困難症の可能性があります。
月経前不快気分障害(PMDD)
月経前不快気分障害(PMDD)とは、PMSの症状のなかでも精神的な症状が強く表れる状態を指します。PMDDの主な症状は、以下のとおりです。
- 気分の落ち込み
- イライラ
- 怒りっぽい
- 情緒不安定
- 集中力の低下
- 理由のない不安感や緊張感
- 睡眠過多・不眠
- 流涙
PMDDは、精神不安定・集中力の低下といった症状により日常生活に支障をきたす状態を指します。月経が始まると、症状は次第に軽快します。
PMSとPMDDとの違い
PMSとPMDDの違いは、精神症状の程度です。PMDDは、PMSの症状のうち精神不安定・イライラ・集中力の低下といった精神症状が強い状態を指します。精神症状の深刻度が高いほど、PMDDの可能性が高まるでしょう。
PMSやPMDDが起こる原因
PMSやPMDDの原因は解明されていませんが、女性ホルモンの急激な変動が影響していると考えられています。ほかにも、セロトニンの低下や神経伝達物質の減少も影響を及ぼすとされています。
PMSやPMDDの発症は、飲酒・喫煙などの生活習慣やストレス、うつ病・不安神経症などの精神疾患の既往歴が関係する場合もあるようです。
PMSやPMDDの症状が出る時期
PMSやPMDDの症状が出る時期は、排卵後の黄体期です。生理周期は月経期・卵胞期・排卵期・黄体期の4つに分けられ、排卵後から生理開始までの約2週間を黄体期と呼びます。黄体期には女性ホルモンの卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)が分泌されますが、月経直前に急激に減少します。女性ホルモンの急激な変動により、身体的・精神的な不快症状が出やすくなると考えられています。
年齢やライフステージによって症状が異なる傾向がある
PMSやPMDDの症状は年齢によって異なる傾向があり、例えば20代の女性はくよくよしたり、憂鬱になったりすることが多いといわれています。30代になると怒りやイライラの症状が強くなり、精神症状だけでなく、頭痛やめまい、吐き気などの身体症状も出やすくなるようです。
PMSやPMDDの症状は、妊娠や出産、子育てなど、ライフステージの変化も影響します。妊娠や出産、子育て中の女性は、イライラ・怒りっぽいなど、精神症状が表れやすいといわれています。
ただし、個人差が大きく、年齢・ライフステージに関係なくPMSやPMDDになりやすい人とそうでない人もいます。普段から悩みやすい・几帳面・真面目・完璧主義といったタイプの人は、PMSやPMDDを発症しやすいようです。
生理前の精神不安定を和らげる治療方法
生理前の精神不安定を和らげる治療方法として、大きく対症療法と継続療法の2つがあります。ここでは、それぞれの治療方法について解説します。
対症療法
対症療法とは、症状にあった薬を服用し、症状を軽くする治療方法です。例えば、頭痛や腰痛に対しては鎮痛剤、消化器症状には整腸剤、むくみには利尿剤を服用するといった方法が挙げられます。精神不安定といった精神症状には、抗うつ剤が用いられる場合もあります。
ただし、対症療法は一時的に症状を改善するための方法です。根本的に治すためには、時間をかけて治療する継続療法をおすすめします。
継続療法
生理前の精神不安定を改善するための継続療法には、以下の3つがあります。
- 漢方薬
- 低用量ピル
- 心理カウンセリング
それぞれの継続療法について解説します。
漢方薬
PMSやPMDDの治療には、漢方を使った治療が有効です。
漢方医学では、人体も自然の一部であり、自然のサイクルから外れると不調が出るといわれています。また、人間の体は「気・血・水」の3要素で構成されており、これらのバランスをとることで健康を維持できると考えられています。月経に関する不快症状には、「血」の異常が多いと考えられているようです。
漢方薬には多くの種類があり、症状に合わせて選択します。
- 加味逍遙散:精神不安定・イライラといった精神症状がつらいとき
- 桃核承気湯:イライラ・のぼせ・便秘などの症状があるとき
- 当帰芍薬散:冷え・むくみ・頭重などの症状があるとき
- 桂枝茯苓丸:肩こりや冷え、のぼせなどの症状があるとき
漢方薬はドラッグストアや薬局で購入できますが、自分の症状・体質に合う漢方薬を飲むために医療機関で処方してもらうのも一つの方法です。
低用量ピル
PMSやPMDDの治療に、低用量ピルの服用も効果的です。低用量ピルには、エストロゲンとプロゲステロンの2種類の女性ホルモンが含まれています。低用量ピルの服用により女性ホルモンを安定的に補充することで、ホルモンの急激な増減によって生じる不快症状を抑えられます。
ただし、低用量ピルは1回服用しただけで生理前の不快症状が改善するわけではありません。2~3か月程度服用を続けることでホルモンバランスが安定し、生理前のイライラや気分の落ち込みなどの改善が期待できます。
低用量ピルは市販されておらず医療機関での受診が必要で、忙しい方におすすめなのがオンライン診療です。都合のよい時間に予約して自宅で診察を受けられ、待合室で長く待つ必要がありません。薬が自宅に配送されるオンライン診療であれば、薬局まで取りに行く手間も省けます。
心理カウンセリング
心理カウンセリングも、PMSやPMDDの治療に役に立ちます。抑うつやイライラ、情緒不安定などの精神症状が強く出る場合、カウンセリングを受けることを検討してみましょう。
とくに、認知行動療法による治療が有効です。認知行動療法により、不安やイライラなどの精神症状が出るタイミングを把握し、対応策を考えられます。
生理前の精神不安定を和らげるセルフケア
ここでは、生理前の精神不安定を和らげるセルフケアを2つ紹介します。できることから取り入れてみてください。
日記をつけて生理の症状を把握する
セルフケアの1つは、日記をつけて生理の症状を把握することです。月経が始まった日を1日目とし、月経の周期や症状を記録してみましょう。日記をつけると、月経周期の中でいつ・どのような症状が表れるのかがわかります。記録をもとに自分の生理前・生理中の症状を予測できれば、対策を立てやすくなります。
例えば、生理開始数日前に精神不安定・イライラといった症状が出る場合、その期間は「できる限り大事な予定を入れない」「自宅でゆっくり過ごすことを心掛ける」といった対策がとれるでしょう。また、生理中に下腹部痛や乳房痛が表れる場合、生理が始まったら身体を締めつける下着を避けるなどの対策が有効です。
生活習慣を改善する
生理前の精神不安定を和らげるには、生活習慣を改善することも大切です。
栄養バランスのとれた食事は、PMSやPMDDの症状を和らげるのに役に立ちます。タンパク質やカルシウム、ビタミンなどを十分に摂るとともに、カフェインやアルコールなどの摂り過ぎは避けましょう。
そのほか、ストレスが大きくなると、PMSやPMDDの症状がひどくなるといわれています。ストレスをためないために規則正しい生活を送り、適宜気分転換をすることが大切です。
生理前の精神不安定を改善するためには、運動もおすすめです。適度な運動をすると脳内にセロトニンやエンドルフィンなどが分泌され、気分が高揚したり、痛みを感じにくくなったりするなど、心や身体によい効果をもたらします。
まとめ
生理前に精神不安定になる場合、PMSやPMDDの可能性があるでしょう。PMSは、生理前にイライラ・憂鬱などの精神症状や、頭痛・腰痛・乳房の張りなどの身体症状が出る状態を指します。PMSの症状のうち、精神症状が強く出る場合、PMDDの可能性があります。
PMSやPMDDの原因は解明されていませんが、女性ホルモンのエストロゲンやプロゲステロンの急激な増減が関係していると考えられています。そのほか、ストレスや生活習慣の乱れなどが誘引している場合もあるようです。
PMSやPMDDには、漢方薬や低用量ピルの服用、心理カウンセリングが効果的です。低用量ピルは医療機関での受診が必要で、クリニックに直接足を運ぶほか、オンライン診療でも処方してもらえます。
オンライン診療のレバクリでは、ピルの処方を行っています。都合のよいときに自宅で診察が受けられ、薬は自宅に配送します。PMSやPMDDに悩んでいる方は、オンラン診療のレバクリをぜひご利用ください。
この記事の監修:
慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会専門医。 医師免許取得後、株式会社ボストンコンサルティンググループにてヘルスケア・IT領域にて従事。 現在は慶應義塾大学医学部助教、美容医療を主としたJSKINクリニックを経営・監修、オンライン診療サービス「レバクリ」監修。
<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS) 日本乳癌学会
※この記事は産婦人科専門医と共同で監修を行いました