更新日:2025年05月26日
生理不順の症状があるものの、何となくそのまま放置している人も多いのではないでしょうか。しかし、生理不順を長く放置していると無月経につながり、将来的に不妊の要因にもなりかねません。
生理不順は、自分の生理周期を把握し生活習慣を改善することで改善する場合もありますが、適切な治療が必要な場合もあります。そこで本記事では、生理不順の原因と改善するための方法について解説します。また、生理不順の際に受診すべきケースについても紹介します。
産婦人科診療ガイドラインによると、正常な月経(生理)は、周期(月経初日から次の月経が始まる前日までの期間)が25〜38日とされています。
生理不順は、24日以内に次の月経が来るものを頻発無月経、もしくは39日以上経っても次の月経が来ない状態を希発月経、90日以上停止した場合を続発性無月経と分類されます。
特に3ヶ月以上生理がこないことを無月経といいます。無月経の状態をそのまま放置していると将来的な不妊につながる可能性があります。よって、3ヶ月以上生理がこない場合は、医療機関を受診しましょう。
参考:日本産科婦人科学会/日本産婦人科医会「産婦人科診療ガイドライン婦人科外来編2020」
生理不順の主な原因は、女性ホルモンのバランスが乱れることによって引き起こされます。ホルモンバランスが乱れる主な原因として、以下の5つが挙げられます。
それぞれ解説していきます。
日本産科婦人科学会によると、ダイエットなどで体脂肪率が22%以下になると生理不順や月経異常が起こりやすいとされています。また、体重が5kg以上もしくは10%以上減少し、かつ体脂肪率が17%以下になると、体重減少性無月経になる可能性があるとしています。
体重が減少すると無月経を起こす機序をくわしくみていきましょう。
レプチンは、視床下部からのゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)の分泌を促進するホルモンで、GnRHは、排卵を起こすために必要なホルモンの1つです。
そのレプチンは、脂肪細胞から分泌されるため、体脂肪が低下するとレプチン産生が減少します。
よって、体重減少が起こりレプチンが低下するとGnRHの分泌が低下し排卵障害が起こるとされています。
参考:
日本産科婦人科学会「やせすぎ、肥満の女性への影響」
日本産科婦人科学会/日本産婦人科医会「産婦人科診療ガイドライン婦人科外来編2020」
女性ホルモンの分泌は、脳の視床下部・脳下垂体・卵巣が連携して行っています。
視床下部は、精神的な影響を受けやすい器官のため、ストレスや疲労などによって視床下部の働きが乱れます。それが結果的に女性ホルモン(エストロゲン・プロゲステロン)の分泌の乱れにつながり、生理不順を引き起こします。
不規則な生活は自律神経を乱し、ホルモンバランスを乱れさせ、生理不順の原因になります。
たとえば、生活リズムが一定せず寝る時間が不規則な生活が続くと、自律神経が乱れて女性ホルモンの分泌を妨げる要因になります。
そのほか、睡眠不足や栄養バランスが偏った食事、運動不足や体の冷えも女性ホルモンの分泌を乱し、生理不順につながります。
甲状腺ホルモンは、女性ホルモンの分泌に関与します。バセドウ病や橋本病など、甲状腺ホルモンの過剰分泌や分泌の低下が見られる病気にかかっている場合、ホルモン量のコントロールが乱れ、生理不順になる場合があります。
日本産婦人科医会によると、多嚢胞性卵巣症候群(polycystic ovary syndrome : PCOS)は、「両側の卵巣が腫大・肥厚・多嚢胞化し、月経異常や不妊に多毛・男性化・肥満などを伴う症候群」と定義されています。
多嚢胞性卵巣症候群は女性の約5~10%にみられ、不妊症の原因になるとされています。多嚢胞性卵巣症候群になる原因は完全に解明されていませんが、脳下垂体から分泌されるホルモンと、卵巣から分泌される女性ホルモンのバランスが崩れ、排卵が障害されると考えられています。
多嚢胞性卵巣症候群の診断は、月経異常があること、超音波断層法検査で両側卵巣に多数の小卵胞が見えること、血中ホルモン量の異常から判断されます。
妊娠希望の有無により治療方針は異なります。いずれにしても、肥満であれば減量や運動を行います。妊娠を希望していない場合の治療は低用量ピル(経口避妊薬)等のホルモン剤で治療をします。
参考:日本産婦人科医会「多のう胞性卵巣と言われました。どのような病気ですか」
生理不順は、ホルモンバランスを整えることで改善につなげられます。ここでは、ホルモンバランスを整えるための方法について解説します。
基礎体温とは、女性が朝目が覚めたときに、起き上がらず寝たままの状態で舌の下に婦人体温計を入れて5分間測った際の温度のことを言います。
計測を続けると、基礎体温のグラフが低温期と高温期を繰り返す様子がみられます。これは、月経が始まると体温が低くなり、排卵直後から次の月経までは体温が高くなるためで、基礎体温がこのような二相性を示せば排卵があったと推定できます。
日本産科婦人科学会によると、高温期は正常であれば11〜16日続くとしています。このとき、体温が上がらず低温期が続いている場合、無排卵の可能性が考えられます。
このように、基礎体温をつけることによって、生理不順の原因を把握することが可能になります。月経周期に問題がないか把握することは、生理不順を改善するための第一歩です。
生理不順が長く続き医療機関を受診する際も、基礎体温表があればより正確な診断・治療につながるでしょう。
基礎体温表は厚生労働省のサイトよりダウンロード可能です。自分自身の月経周期を把握するためにも基礎体温をつけてみましょう。
参考:
厚生労働省「女性の障害健康手帳」
日本産科婦人科学会「女と男のディクショナリー HUMAN+」
食生活が乱れると、十分な栄養が身体に行き渡りません。人の身体は、生命維持に欠かせない臓器(脳や心臓)に優先して栄養を運びます。そのため、栄養バランスが乱れた状態では、ホルモンバランスが乱れ、なかなか生理がこない状態になることがあります。
つまり、食生活の乱れは生理不順の元です。まずは、栄養バランスの整った食事を3食とることから始めましょう。
ホルモンバランスを整えるにあたり、良質な睡眠の確保は欠かせません。良質な睡眠を確保するためには、「入浴」と「光の調整」「寝る前の飲料調整」が有効です。
厚生労働省によると、就寝の2〜3時間前に入浴をすませたり、半身浴も寝つきをよくする効果が認められています。また、運動習慣がある人には不眠が少ないと言われ、特に習慣的に運動を続けることが重要とされています。
反対に、寝る前にテレビやスマートフォン、蛍光灯などの光を見ると睡眠の質を低下させるため、できるだけ控えるようにしましょう。
ほかにも、寝る前にコーヒーやココアなどカフェインが含まれる飲み物やお酒を飲むのが習慣になっている場合は、睡眠の質が低下するため控えるようにしてください。
参考:厚生労働省「快眠と生活習慣」
ストレスは、ホルモンバランスを乱れさせ、生理不順の原因となります。そのため、ストレスを解消することで、生理不順の改善効果が期待できます。
音楽を聴いたり、適度な運動をしたりして気分転換をする、ゆっくり湯船につかるなど、自分なりのストレス解消法を見つけ、ストレスを減らすように心がけてみてください。
標準体重を保つことは、生理不順を改善させるために重要です。標準体重を保つための適度な運動は、基礎代謝を上げ、太りにくい体を作ります。標準体重は、「身長(m)×身長(m)×22」という計算式から算出できます。
肥満と多嚢胞性卵巣症候群は関連があると言われ、その治療として減量の指導が入ります。そのため適度な運動をし、基礎代謝を上げ太りにくい体を作ることは大切です。
ただし、いきなり激しい運動をするのは、急激な体重減少につながり逆効果です。負担の少ないウォーキングやサイクリングなどから始めてみましょう。ストレッチやヨガなどもおすすめです。
通勤方法を徒歩や自転車などに変えたり、ストレッチを寝る前の日課にしたりと、できるところから少しずつ取り入れられるといいですね。
このように、適度な運動は、適正体重を維持し、良質な睡眠を促す効果があり、生理不順の改善につながります。
妊娠の希望がなければ、低用量ピルを用いて生理不順を改善することが可能です。
低用量ピルは、1サイクル28日間のうち、7日間ピルを飲まない休薬期間を設けて服用します。低用量ピルを服用している間は生理は起こらず、休薬期間に生理が起きるようにコントロールすることで、生理不順の緩和が期待できます。
ただし、服用開始から約3ヶ月間は、不正出血や頭痛・吐き気などのマイナートラブルが起こりますが、ほとんどの場合2〜3ヶ月で症状は落ち着いてきます。
ピルは、婦人科などの医療機関を受診することで処方してもらえます。また、オンライン診療を行っている医療機関もあり、オンライン診療は通院することなく処方箋を受け取れるため、忙しくてなかなか通院ができない方におすすめです。
それでは、どのような状況になったら病院を受診すべきなのでしょうか。この章では生理不順があった場合の受診のタイミングについて解説します。
生理が3ヶ月以上来ない場合は、無月経と診断され、そのまま放置すると将来的な不妊につながる可能性が高まります。早めに医療機関を受診し検査を受けるようにしてください。
ただし、生理が来ない場合は妊娠している可能性も考えられます。少しでも妊娠の可能性があるならば、妊娠検査薬で確認してみましょう。妊娠がわかった場合にも、必ず医療機関を受診するようにしてください。
過度なダイエットが原因で一度無月経になると、体重を元に戻しても月経や排卵が再開しないこともあります。
体重減少性無月経は、摂食障害などの心身症が関連している場合もあるため、婦人科以外にも心療内科などの受診が必要になるケースもあります。
生理不順を引き起こす主な原因は、ホルモンバランスの乱れです。原因によっては、生理が3ヶ月以上来なくなってしまう場合があります。 \
生理不順は、生活習慣を見直し、ストレスを軽減するだけで改善していく場合もあります。そのためにも、まずは基礎体温を記録し、自分自身の生理周期を把握することが大切です。
そのほかに、生理不順改善の治療として低用量ピルの服用も効果的です。
また、低用量ピルの処方にはオンライン診療を行っているクリニックも増えてきており、仕事で忙しい、医療機関が自宅から遠いなどの場合でも治療が可能なのでおすすめです。
特に、生理が3ヶ月以上来ない、過度なダイエットで生理が来なくなった、生理周期が不規則な状態が続いているときは、早めに医療機関を受診してください。
この記事の監修:
慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会認定専門医。 医師免許取得後、外資系経営コンサルティング企業のヘルスケア・IT領域にて従事。 慶應義塾大学医学部助教を経て、美容医療を主としたJSKINクリニック、及びオンライン診療サービス「レバクリ」監修。
<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS)
※この記事は産婦人科専門医と共同で監修を行いました