更新日：2025年05月26日
生理中に胃が痛いと感じ、原因が気になっている方もいるでしょう。生理中の胃痛の原因として考えられるのは、プロスタグランジンの過剰分泌やPEMS（周経期症候群）です。プロスタグランジンは、血行が悪くなると骨盤内にとどまって胃痛が起こりやすくなるため、体を温めたり適度に運動したりすることが大切です。
この記事では、生理中に胃が痛いと感じる原因や痛みを緩和する方法などについて解説します。
生理中に胃が痛いと感じる主な原因として、以下の2点が挙げられます。
胃痛への対策を講じるためにも、それぞれの原因を確認しましょう。
ホルモンの一種である「プロスタグランジン」の過剰な分泌が、生理中に胃が痛いと感じる原因となることがあります。
生活習慣の乱れや慢性的なストレスによって女性ホルモンのバランスが乱れると、子宮内膜が厚くなりすぎてしまい、プロスタグランジンが過剰分泌される可能性があります。
プロスタグランジンには胃粘膜の保護作用がありますが、胃腸を収縮させる働きもあるため、過剰に分泌されると胃痛が引き起こされる場合があります。
プロスタグランジンは、生理痛の原因となるホルモンでもあります。プロスタグランジンには、子宮を収縮させる働きがあるためです。剥がれ落ちた子宮内膜を経血として、体の外に排出する役割を担います。
胃が痛いのが生理中のみの場合、PEMS（周経期症候群）が原因の可能性があります。PEMSとは、生理前から生理中にかけて腹痛や頭痛、イライラなどの身体的または精神的不調があらわれる病気です。
似ている病気にPMS（月経前症候群）がありますが、PMSとPEMSでは症状が出現する時期が異なります。PMSは生理前から症状が出始めて生理が始まる頃には落ち着くのに対し、PEMSは生理前から症状が出始め、生理中に症状が強くなることが特徴です。
生理中に胃が痛い原因は、プロスタグランジンの過剰分泌やPEMS以外の可能性もあります。その場合、主に以下の2点が考えられます。
胃が痛いと感じるそれぞれの原因について確認しましょう。
強いストレスを感じると、胃炎になって生理中に胃が痛いと感じる可能性があります。ストレスによって胃の働きをコントロールする自律神経が乱れることで、胃酸が過剰に分泌されたり、胃粘液の分泌が減少したりするためです。
そもそも生理のタイミングでストレスを感じる傾向があるのは、生理前からの卵胞ホルモン（エストロゲン）の減少による、セロトニンの分泌量の減少が関係していると考えられます。セロトニンは「幸せホルモン」とも呼ばれており、精神を安定させる働きがあります。
通常の生理痛とは異なるようなひどい胃痛の症状がある場合、胃潰瘍などの消化性潰瘍が原因の可能性があります。
胃潰瘍とは、鎮痛薬の副作用やストレスなどによって、胃粘膜が傷ついている状態のことです。胃の痛みが強く生活に支障が出るレベルのときは、なるべく早く医療機関を受診しましょう。
生理中に胃が痛いときの緩和方法は、以下のとおりです。
それぞれの方法を解説します。
生理中に胃が痛いと感じたら、体を温めて血行をよくしましょう。胃痛を引き起こす原因となるプロスタグランジンは、血行が悪くなると骨盤内にとどまり、胃痛が起こりやすくなります。
白湯や生姜入りの飲み物、ゴボウ茶などの温かい飲み物を飲んだり、湯たんぽや温熱シートで体を直接温めたりする方法が有効です。
生理中に胃が痛いときは、楽な姿勢をとることで、胃の痛みが緩和することもあります。とくに効果的なのは、前かがみや体育座りで体を丸める姿勢です。腹部が温まりやすくなり、胃の痛みがおさまるといわれています。
横向きに寝て、膝を軽く曲げることで胃の痛みが改善することもあります。胃の4分の3程度は体の左側にあることから、左側を下にすることで胃にかかる負担を軽くし、痛みを緩和することが可能です。胃痛の緩和につながる姿勢は人によって異なるため、胃が痛いときは自身が一番楽だと感じる姿勢をとりましょう。
生理中に胃が痛いと感じる場合、適度な運動によって改善する可能性があります。運動には血行促進効果があるためです。
胃痛の原因となるプロスタグランジンは血行不良によって骨盤内に溜まり、胃の痛みを引き起こすことがあります。生理中の胃の痛みに悩んでいる場合は、まずはストレッチや散歩などの運動習慣をつけることをおすすめします。
生理中の胃の痛みは、空腹時に悪化することがあります。そのため、胃が痛い状況になるのを防ぐには、空腹を避けることも大切です。
胃は、胃粘膜を胃酸から守るために、粘液を分泌しています。しかし、空腹時は胃酸の分泌が盛んになり、大量に分泌された胃酸が胃粘膜を刺激して、胃痛を引き起こすことがあります。
空腹を避けるために何かを口にする際は、消化のよい食べ物・飲み物を選びましょう。脂質や塩分が多いメニューは、胃に負担をかけてしまいます。
おすすめなのは、牛乳です。胃に膜を張り、胃酸を薄める効果が期待できます。そのほか、ヨーグルトを食べるのもよいでしょう。
生理中に胃が痛い場合、症状緩和のために胃への負担が少ない鎮痛薬を飲むことも選択肢の1つです。
胃粘膜を保護する成分を配合した鎮痛薬は、胃への負担を減らして胃痛を和らげる効果があります。鎮痛薬を飲む際は、胃に負担のかかる空腹時は避け、消化のよい食事をした後に服用しましょう。
生理中の胃が痛い状況を改善するために、低用量ピルを服用する方法もあります。
低用量ピルとは、卵胞ホルモン（エストロゲン）と黄体ホルモン（プロゲステロン）の2種類の女性ホルモンが配合された薬です。
低用量ピルを服用することで子宮内膜の増殖を抑えられるため、プロスタグランジンの分泌量が減少し、胃痛や腹痛、腰痛の緩和効果が期待できます。
生理中に「胃が痛い」という事態に陥らないように、日頃からできることもあります。効果的な対策は、以下のとおりです。
それぞれの内容を解説します。
生理中に胃が痛いと感じるのを防ぐため、日頃から胃への負担が少ない食生活を心掛けましょう。暴飲暴食をしたり食事時間が不規則だったりすると、胃腸に負担をかけてしまいます。
また、香辛料が多く使われている食品や甘味が強い食品は、胃酸の分泌を促進するため避けたほうがよいでしょう。
生理中の胃が痛い状況を防ぐため、ホルモンバランスが乱れないよう意識することも大切です。ホルモンバランスの乱れは、自律神経に影響を及ぼします。自律神経は臓器の働きにつながっているため、ホルモンバランスを整えることは、胃痛の予防にもつながるでしょう。
ホルモンバランスを整えるためには、以下のような方法が効果的です。
できることから少しずつ実践し、ホルモンバランスを整えましょう。
過度なストレスは自律神経の乱れを招き、生理中の胃が痛い状況につながるため、日頃からストレス解消を心掛けることが大切です。
自律神経には「交感神経」と「副交感神経」があり、過度なストレスによって交感神経が優位になると胃の血管が収縮します。胃の中での血液量や粘液量が減少することで、胃に負担がかかり、胃痛を感じる恐れがあるでしょう。
好きなことをする時間をとる、十分な睡眠をとるなどして、可能な限りストレスを解消しましょう。
生理中に胃が痛いとき、市販薬を飲みたくても、どの薬を選んだらよいかわからない場合もあるでしょう。生理中の胃の痛みに有効な薬・成分は、主に以下の3つです。
薬局やドラッグストアなどで市販薬を購入する際に、ぜひ参考にしてください。
生理中に胃が痛いときに有効な薬として、非ステロイド性抗炎症薬が挙げられます。
非ステロイド性抗炎症薬の成分は、イブプロフェンやロキソプロフェンナトリウムなどが代表的で、炎症や痛みを引き起こすプロスタグランジンの生成を抑える働きがあります。
ただし、非ステロイド性抗炎症薬によりプロスタグランジンの産生が抑えられると、胃粘膜の防御機能が低下して胃粘膜が荒れることがあります。もともと胃が弱い方は、別の成分が含まれた薬を選ぶとよいでしょう。
アセトアミノフェンは、解熱鎮痛薬に使われている成分です。主に、脳の体温調節中枢や中枢神経に作用します。
胃粘膜を保護するプロスタグランジンの分泌を妨げないため、非ステロイド性抗炎症薬と比べて胃への負担が少なく、胃が弱い方にも適しています。
また、眠気を催さない成分であることも、メリットといえるでしょう。
ブチルスコポラミンは、内臓の筋肉を活性化させるアセチルコリンという物質の働きを抑える、抗コリン薬です。抗コリン薬であるブチルスコポラミンを服用すると、胃の緊張が緩和され、痛みを鎮めやすくなります。
ブチルスコポラミンは、副作用として口の渇きや目のかすみなどを引き起こすことがあります。服用後の乗り物の運転はできないため、注意しましょう。
「胃が痛い」症状以外に、生理中に起こることがある症状は以下のとおりです。
それぞれの症状と対策を見ていきましょう。
生理中に、下腹部痛や下痢の症状を経験したことのある方もいるでしょう。下腹部痛や下痢といった症状は、胃痛と同様にプロスタグランジンの働きによって、子宮や胃腸が強く収縮することで引き起こされます。
また、ストレスや冷えなどによって血行が悪くなると、骨盤内にプロスタグランジンが留まり、下腹部の痛みが強くなることがあります。生理中はお腹周りを温めるとともに、ストレスを溜めないようリラックスして過ごしましょう。
下痢の症状は、生理開始1～2日目頃にあらわれる傾向があります。通常は自然におさまるため、とくに心配する必要はありません。症状がひどい場合は、整腸剤や下痢止めによって抑えるのも一つの方法です。
生理中に下痢の症状が出る方がいる一方で、便秘に悩まされる方もいます。排卵後から生理前にかけて分泌量が増えるプロゲステロンは、腸の動きを鈍くする働きがあるためです。生理初期に便秘になった場合でも、生理が開始してから3日程度経つ頃には改善されることが多いでしょう。
生理中の便秘は自然に治ることがほとんどですが、気になる場合は、座ったまま体を左右にねじる運動を行うことをおすすめします。お腹周りが冷えないように、冷たい飲み物を控えたり腹巻きをしたりすることも効果的です。
頭痛は、生理と密接な関係があるといわれています。生理中の頭痛は、大きく分けて以下の2種類があります。
卵胞ホルモン（エストロゲン）が関係しているとされる月経関連片頭痛は、市販の痛み止めでは効果を感じられないことがあります。市販薬で効果が感じられない場合は、医療機関の受診を検討しましょう。
また、片頭痛は急激に血行がよくなると起こるため、痛みのある部分を冷やす、こめかみを押さえるなどして、一時的に血流を妨げることも一つの方法です。
一方、生理時の緊張型頭痛は、生理痛のストレスや疲れによって引き起こされることがあります。
緊張型頭痛は、片頭痛とは逆に血行をよくして筋肉をゆるめると、痛みが緩和されるでしょう。痛みを感じる後頭部や首、肩などを蒸しタオルで温めるほか、首や肩を回すストレッチも効果があります。
イライラ・憂鬱は、生理前から生理中に起こるホルモンバランスの変化が原因と考えられています。排卵が起こるとエストロゲンが減少し、精神の安定に作用するホルモンのセロトニンも減るため、精神的に不安定になるとされています。
また、生理中は、生理痛や出血、デリケートゾーンのムレなどがストレスになり、イライラしたり憂鬱な気分になったりする可能性があります。
趣味を楽しむ、お気に入りの香りでリラックスする、好きなものを食べるなど、ストレス解消方法をあらかじめ見つけておくとよいでしょう。
貧血も、生理中に起こりやすい症状です。貧血とは、血液中の赤血球に含まれるヘモグロビンが減少する状態のことで、経血量が過剰になる過多月経などにより引き起こされます。
ヘモグロビンは主に鉄とタンパク質によって構成されているため、貧血を改善するには鉄やタンパク質の摂取が欠かせません。生理中は、肉や魚、卵、大豆食品などを積極的に食事に取り入れましょう。
生理中に胃が痛いことが多く、原因がはっきりとわからない場合は、早めにクリニックを受診するのがおすすめです。
原因がわからない状況で市販薬を飲んでも、根本的な解決にはなりません。胃の痛みの原因が、プロスタグランジンの過剰分泌やPEMSではなく、別の病気の可能性もあります。胃痛の症状がつらいと感じているときは、早めに医師に診てもらいましょう。
生理中に胃が痛い原因がホルモンバランスによるものである場合、低用量ピルの服用によって痛みが緩和する可能性があります。低用量ピルは市販されていないため、医療機関で受診しましょう。
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生理中に胃が痛いと感じる主な原因として、プロスタグランジンの過剰分泌やPEMSが考えられます。そのほか、強いストレスや消化性潰瘍が原因の可能性もあります。
生理中の胃痛を改善するためには、体を温める・楽な姿勢をとる・空腹を避けるといった対処法をとることが有効でしょう。
胃の痛みがひどいときは、鎮痛薬を飲むことも対処法の一つです。生理中に胃が痛いときに有効な薬は、非ステロイド性抗炎症薬やアセトアミノフェン、ブチルスコポラミンなどです。胃の痛みの原因がホルモンバランスによるものである場合は、低用量ピルの服用により症状を改善できるでしょう。
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この記事の監修：
慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会認定専門医。 医師免許取得後、外資系経営コンサルティング企業のヘルスケア・IT領域にて従事。 慶應義塾大学医学部助教を経て、美容医療を主としたJSKINクリニック、及びオンライン診療サービス「レバクリ」監修。
＜所属学会＞ 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS)
※この記事は産婦人科専門医と共同で監修を行いました
